燃えるフィジカルアセスメント

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プロフェッショナリズムが生んだChoosing Wisely Campaign

2015-06-15 | 徳田語録

 今回も賢い選択からお送りします。

本題の前に、メルマガ「ドクター徳田安春の最新健康医学」も宜しくお願いします。

 3年以上前にミッチェル・フェルドマン先生(カリフォルニア大学サンフランシスコ校内科教授、JGIMの編集長)が来日されたときに、JRで東京から水戸までご案内しながら雑談をしていました。

 欧米の知識人はよく

「いま読んでいる本は何だ?」

という質問をします。

 ミッチ(フェルドマン先生の愛称)がその質問をするので、私はさっとiPhoneのkindleを立ち上げました。

 その当時全米でベストセラーとなっていた本Overdiagnosed: Making people sick in the pursuit of health (Welch, Schwartz, Woloshin. Beacon Press)を読んでいたので、この本について話をしました。

http://www.jci.org/articles/view/57171

(日本語版もあります。タイトルは過剰診断: 健康診断があなたを病気にする)

  そのときに、私は人間ドック健診のことを思い出しました。そこで、

「ミッチ、日本には人間ドックというのがある」

と話したところ、

「それはなんだ」

ということで1時間ほど詳細に説明しました。

聞いているうちに、ミッチの表情が真剣になっていくのに気付きました。

 ミッチは

「そういうエビデンスの無いものを放置しているのは医師としてのプロフェッショナリズムに反する」

と述べ、私は叱られました。

 脳ドックやPETがんドックなどもふくめ、「ドック」にエビデンスがないのは明らかです。「コスト」だけでなく、偽陽性による追加侵襲検査の合併症、偽陽性による心理的ストレス、偽陰性による明らかな有症状放置、など「有害性」もあります。

 「人間ドックは保険診療でないから医師(保険医)には関係ない」という意見もあります。ところがそれで「要精密検査」とされた人が病院の初診外来を受診します。そこで「保険診療」がスタートするのです。

 全く元気で無症状のひとが、「CEA(腫瘍マーカーの1種)が5以上ですので精密検査お願いします。」と受診するのです。このような患者さんであふれる病院の初診外来がパンクして、本当に医療を必要としている人が受けられない。

 ポリファーマシーについては、我々のコンソーシアムがまず声を挙げました。「提言―日本のポリファーマシー」(尾島医学教育研究所、2013)。は、われわれが出版してよかった。薬剤師さんたちが先に出されたら面目なしです(笑)。「Choosing Wisely in Japan ~Less is More~」も、検査技師さんたちより先にわれわれが出すことができてよかった(笑)。

 Choosing Wisely キャンペーンは欧米を中心に全世界で脚光を浴びています。医療政策の是非を検討するとき、最後は倫理の話になります。今回のChoosing Wiselyも、プロフェッショナリズムという「医の倫理」からその活動が出てきました。

 今回は以上です、話かわって、女子サッカーなでしこジャパンは決勝トーナメント進出決まりました、スイス戦といい、カメルーン戦といい、後半はヒヤヒヤしましたね、しかし次戦のエクアドル戦は落ち着いて観戦できそうです、それから、沖縄は連日の32度超えらしいですね、熱中症にはお気をつけ下さい、では次回に。

 臨床推論の総論ルールがたった1時間で楽しく完全理解できる、

「マンガ臨床推論~めざせスーパージェネラリスト~」も宜しくお願いします。

こんなとき、フィジカル: 超実践的! 身体診察のアプローチ
徳田安春
金原出版

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