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三大死亡原因 がん 連載 その55

2013-08-10 | 本の紹介

 現代医学の進歩にはめざましいものがあり、不治の病であったがんも早期発見により治る可能性が高くなりました。 病気に罹るのは、人間誰もがもっている遺伝子により決められている場合、また遺伝子により病気に罹りやすさをもっている場合があります。 

 ただ、がんや心筋梗塞になる遺伝子をもっている人が必ずそれらの病気に罹るわけではありません。 病気が発症するかどうかはその人の生活習慣、すなわち環境要因により変わると考えられています。 

 今回から、生活習慣の改善や病気を予防する重要性も考えながら、日本の三大死亡原因となっている、がん・心臓病・脳卒中について、その予防法と治療法を具体的に考えていきましょう。

 がんは、日本人の死因のトップで、三人に一人ががんで亡くなっています。 がん予防と早期発見によりできるだけ多くのがんを治すことは健康長寿を達成するために大変重要です。 発がんには、遺伝要因と環境要因があり、環境要因、とくに生活習慣の影響が大きいということが、最近の研究でわかってきました。

 「移民の研究」では、ハワイに暮らす日本人の発がん傾向は、ハワイで暮らす白人の状況に近くなっていることが示されました。 これは遺伝要因のみでなく、環境要因が重要であることを示しています。

 ハーバード大学が1996年に行ったアメリカ人のがんの原因を推定した研究によると、がんの原因として喫煙30%、成人期の食事・肥満30%が最も多く、運動不足5%と飲酒3%をあわせて、生活習慣による環境要因が全体の三分の二以上を占めていることがわかります。

 ここで禁煙の重要性をもう一度強調しておきます。 「沖縄26ショック」の要因として、若年喫煙者の増加、肺がん死亡率が高いことを述べました。 肺がんだけでなく、喫煙が影響するがんは数多く知られています。 喫煙男性の妻の肺がん死亡率は非喫煙男性の妻よりもさらに高いという研究報告や、家庭内の喫煙で小児喘息、肺炎が増えるなど、周囲へ悪影響を及ぼしています。

 具体的な対策は喫煙者の禁煙・減煙です。 最近、アメリカ医師会雑誌に紹介された研究によると、15本以上の習慣性喫煙者が50%以上の減煙に成功した場合、肺がんのリスクが27%減ったということが示されました。 ただ、一日1~4本のたばこを吸うだけで、心臓病のリスクが三倍近く増えるというデータもあり、減煙では心筋梗塞のリスクはそれほど減らないので、やはり禁煙をおすすめします。 

 具体的な禁煙法としてまずは、禁煙日を設定し、身のまわりのタバコ、喫煙に結びつくものすべてを取り除き、喫煙者に近づかないなどの方法で、自分の意思によって禁煙をします。

 また、医師による個人指導、あるいは保健所やほかの機関が行う集団プログラム・講習会などに参加し、専門家の力も借りながら、禁煙を行います。

 さらに、ニコチン代替療法とは、ニコチン離脱症状(禁断症状)を緩和するために、ニコチンを補給しながらニコチン依存症から離脱する方法です。 日本では、代替品としてニコチンパッチやニコチンガムがあります。 これらを利用すると成功率は増加します。

 今回は、この辺で、次回もがんについて考えていきましょう。

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