燃えるフィジカルアセスメント

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子供を死なせない5 連載 その54

2013-08-07 | 本の紹介

 前回に引き続き、健康長寿は子供から、親がいますぐできることの今回は、あらゆる事故から子供を守ることを考えていきましょう。

 五歳以下の子供の死亡原因で上位を占めるのは、不慮の事故、つまり交通事故、溺死、やけど、窒息などです。 そのほとんどは親の努力で未然に防ぐことができるといわれています。 一瞬でも子供から目を離さず、子供のあらゆる事故を防ぎ、子供を危険から守りましょう。

 子供には車の怖さを教育しましょう。 また、チャイルドシートを正しく装着していれば車の事故による死亡の半分以上を防ぐことができるというアメリカの研究報告もあります。 必ずチャイルドシートを正しく装着してください。

 溺死は、アメリカのプールやビーチの多い州(カリフォルニア州、アリゾナ州、フロリダ州など)では、五歳以下の不慮の死亡の原因の第一位です。

 幼児は頭が大きく身体が小さいため前かがみになると転倒しやすく、水につかるとパニックとなって、正常の呼吸パターンを失い、水を誤嚥し窒息にいたります。 バスタブ、家庭用プール、トイレ、バケツなど水たまりのまわりでは一瞬たりとも子供から注意をそらしてはいけません。 また、海、川、湖、池、プールなど、レジャーに行く際は、子供同士では行かせないこと。 迷子から水難事故に発展してしまう恐れもあります。

 子供は何にでも興味をもちます。 幼児が手にしたライターやマッチ棒一本でさえ大火事になることもあります。 火事にならなかったとしても、火、油、湯以外に、やかんなどの水蒸気でさえも、やけどになることがあります。 大人に比べて皮膚の薄い乳幼児はとくに要注意です。

 ビー玉、ボタンなどを誤飲しての窒息、割れた風船を飲み込んで声帯が閉塞する窒息、猛毒が入っている灰皿の液を誤飲したりなどと、身近な事故は後を絶ちません。

 医師になりたての小児科短期研修中、約二ヶ月で、はしかによる肺炎、脳炎で死亡した子供を、少なくとも五人以上担当しました。 WHOの報告では、日本の麻疹罹患者数は発展途上国並みです。

 MMR(はしか、おたふく風邪、風疹)ワクチンは自閉症を引き起こすとの疑いがもたれていましたが、その因果関係ははっきりとは証明されていません。 インフルエンザウイルス、そのほかにもワクチンで予防できる疾患が数多く存在します。 主治医と相談しワクチン接種年齢を確認してください。 そして罹らなくてもよい病気を防ぎましょう。

 長寿を誇る日本ですが、1~4歳児の死亡率は先進国の平均より三割高く、実質的に「最悪」なことが最近の厚生労働省の研究班の調査でも明らかになりました。 この数字をみると、医療だけではなく、国全体が将来を担う子供たちに対して無関心になっていると思えてなりません。 そして、家庭レベルでは子供を大切にし、慈しんで育てようとする能力を、失いつつあるのだとも思います。 こういうことのないように、愛情をもって、注意深く、子育てしていただきたいと願っています。

 今回まで健康長寿は子供から、親がいますぐできること、でお送りしました、次回から「三大死亡原因」がん・心臓病・脳卒中について考えていきましょう。

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