燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

家庭医を持つ 連載 その39

2013-06-11 | 本の紹介

 健康長寿のためのライフスタイルについて考えていくシリーズ、今回は家庭医について考えていきましょう。

 家庭医療の医師すなわち家庭医(ファミリードクター)とは、小児から高齢者まで年齢・性別を問わず診療してくれる、家族全員のための「かかりつけ医」です。

 家庭医療が普及しているヨーロッパの各国では、住民が医師に受診する際、原則としてまず登録している家庭医を受診しなければなりません。 家庭医療は先進国・発展途上国を問わず、すでに多くの国で立派な専門科となっており、家庭医療の専門医としての地位も確立しています。

 一方、日本では受診する医師を選ぶ際、患者の自由裁量で選ぶことができます。 極端な場合、大学病院の専門科の診療部長を「かかりつけ医」にすることも可能です。 しかし、これが患者の「大病院志向」に拍車をかけています。 このため、大病院の外来はいつも満杯となり、大病院の本来の使命である専門医療に支障をきたしているのが現状です。 日本の医療現場が「三時間待ち、三分診療」となったのには、患者の受診行動が深く関係しています。

 日本医師会では1990年代より「かかりつけ医」を持ちましょうと国民に対して呼びかけています。 そして開業医師の家庭医療に関する関心も高まってきています。 日本家庭医療学会は 1985年の設立からほぼ10年間は会員数200人を下まわり低迷していましたが、2000年をすぎる頃より会員数が増加し、2005年には千人を超えるまでになりました。 新入会員医師の大多数は30歳代の若手医師です。 将来のかかりつけ医療の多くは家庭医がになうことになるでしょう。

 高齢者が健康長寿を目指すためには、優秀な家庭医を主治医として確保することが望ましいと思います。 高齢者は多くの疾患をあわせもっており、内科だけでなく、整形外科、皮膚科、耳鼻科などに加え、精神科的な診療にも対応できる家庭医が、理想的なかかりつけ医となるでしょう。 優秀な家庭医は、必要に応じて適切な判断を下し、専門科医師を素早く紹介してくれるものです。

 さて日本で、優秀な「家庭医」を探すにはどうすればよいでしょうか。 現在一般病院に通院している人の場合、その病院の医療連携室に相談して、住所近くの家庭医を紹介してもらうとよいでしょう。 あるいは、地域の保健所や役所、または県庁の医務係などに相談して、家庭医療学の専門医師を探してもらうこともできると思います。 直接近くの医院にかかる場合には、その医院の受付窓口で、担当医師が家庭医療学会の会員であるか確認することも一つの方法です。

 今回はこの辺で、次回から新シリーズ、健康長寿は子供からと題して考えていきましょう。

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