BC63年、キケロは12月末の任期末を向かえ「国家の父」と讃えられる賞賛と名声を浴びていた。
功なり名をとげた人が就任する名誉職のメテルス・ピウスという最高神祇官がこの年なくなり、直ちに後任を決める必要があった。これにカエサルは挑んだのであるが、
輝かしい経歴の対立候補の一人は、執政官経験で凱旋式経験者であった、またもう一人は執政官経験者で院内総務とも言える元老院第一人者であった。
普通ならとても勝ち目のある勝負ではないが、さすがわれらのカエサル、友人の護民官ラビエヌスに「宗教祭事の最高責任者を元老院階級の独占から市民全体からの選ぶ」という法案を提出させ、可決させた。
さらに、当選を確実にするため、次の当たり前ともいえる選挙運動を行い見事当選した。
1. 家庭訪問いわゆる日本では禁止されている戸別訪問
2. 有権者の通勤時の往または帰りに同行し勧誘
3. 影響力のある人を見定めて説得・勧誘する。
野心満々のカエサルが、このような利権や権力と無縁の名誉職をなぜ狙ったのかその理由は、
1.宗教面での最高責任者それゆえ単独職
2.他の公職との兼任が可能
3.終身職
4.唯一の公邸が与えられる
元老院体制という集団指導方式にもはや統治能力はないと考えた彼は、それを打倒したのち樹立しようとする新体制には権力と共に権威も必要と考えた。
宗教もまた統治の重要な一要素になるとして、一つの目的のためだけでなにごともやらない男のカエサルはこの地位を手にしたのだった。
また、公邸を手にした彼は、フォロロマーノ中心にある質素な公邸に直ちに引越し、フォロロマーノに集う民衆への心理的効果と誰にでも開かれた政治家の家としても有効に活用した。
そして彼はこの公邸に、暗殺される日まで住んだ。
謝辞:
読者の皆様には、駄文にもかかわらずご愛読いただきありがとうございました。
来年も引き続きお付き合いくださるようお願い申し上げます。
それでは、よいお年をお迎えください。