昨日の日曜日、早朝からあいにくの雨になったが予定して
いた奈良国立博物館で開催中の正倉院展に出掛けた。
たまたまウォーキング倶楽部の女性メンバー二人が午前中
に奈良県立美術館の美術展を鑑賞した後、奈良ウォークを
したいのでとコースの紹介を頼まれたので、それならと一
緒に歩こうと昼前に県立美術館で合流した。
雨の東大寺西門跡から最初に訪れたのが戒壇院(堂)この
戒壇院(堂)は唐の僧・鑑真和上が754年に来日して
戒律を伝え僧侶の資格認定・受戒を行ったところとして知
られている。
戒壇院(堂)から正倉院へ向かいたかったが、雨が強くて
断念、そのまま東大寺大仏殿前へ回った。
中国人の団体、中国語の大きな声で猛烈な早口ガイドさん
に圧倒された
雨の大仏殿も大勢の観光客でいっぱいで鹿たちも愛嬌を
ふりまいて記念撮影のモデルをしていた。
お昼はお決まりの食事どころでお決まりの柿の葉寿司と
うどん定食、これがおいしいのだ!
午後のスタートは世界遺産の春日大社へお参りから
ここでは大勢の修学旅行生と鉢合わせ、すごすごと退散
して、いよいよお気に入りコースへすすむ。
雨の浮御堂を渡り高畑地域へ、背景の春日原生林が雨で
煙っている様が美しくて見とれていた。ここは夏の燈花会
のライトアップが美しいところ。
ここからしばらくすすんで緩やかな坂道を上がっていく
と白壁の道が続く、やがて文豪・志賀直哉旧居へ着いた。
ここで名作の「暗夜行路」を書き上げたと言われている
何度も来ているので二人が見物をしている間に周辺の
ひとり散策をして戻ってきたが・・・・
二人が出てくる気配がない、20分もあれば出てくると
思っていたのに30分余りしてやっと“楽しかった!”
どうやら建物内の部屋の様子や調度品に興味があったら
しい・・・やっぱり女性は楽しみ方を知っている、男と
は違うなあ・・・
色づき始めた木々と白壁の道、正面の雨に煙る春日の原
生林に包まれるようにここはのんびりウォークで次の新
薬師寺へ向かった。
このあたりが奈良で散策する一番のお気に入り歴史の道
コース、白壁の続く道にしゃれた店構えのカフェがあち
こちに佇んでいて観光客が覗いては通って行く、出会う
人のほとんどが女性グループでここはやさしい女性好み
の道かもしれない。
やがて新薬師寺へ着いた、ここも二人を案内してあげた
いと思ったお寺。
奈良には世界遺産登録の東大寺、興福寺、法隆寺をはじ
め多くの著名な寺院があるがその中でも特にお気に入り
がこの新薬師寺でこのお寺との出会いは学生時代まで
さかのぼるから半世紀前のこと。
747年に聖武天皇の病気平癒を願って光明皇后が建立
した由緒のあるお寺だが、現在は当時の8分の1の規模
とか、南門を入ると正面に唯一残っている本堂が静かに
佇んでいる。
国宝に指定されているこの小さな本堂は創建当時は食堂
であったとか、奈良時代の入母屋建築の代表的なものと
言われている。その本堂の中は国宝がずらり。
ご本尊のおだやかな表情の薬師如来さんを囲んで12の
神将が如来さんを守るように武器をもって闘う姿勢で並
んでいる。12の立像のうち地震で壊れて復元した一体
を除く11の神将が国宝になっている。
その立像が目の前でこちらに挑むように立っている様は
迫力満点!何度訪れても感動してしまう。そして、12
の神将立像に勇気を貰う、だから気持が萎えるとここに
来てしまう。
枯れかけた心に潤いがほしい時
ふと行きたくなるところ
ふと会いたくなる仏様
自分にとって新薬師寺はそんなお寺だ。境内には少し萩
が残っていたが新薬師寺も萩で知られている。
降り止まぬ雨の中を入江泰吉記念奈良市写真美術館へ向
かった。
ここは大和路の写真家として知られている入江泰吉さんの
大和路の作品が展示されている美術館で、ちょうど入江
さんと友人関係にあった画家の杉本健吉さんの
「大和路に魅せられた二人展」を開催していたのでどう
しても来ておきたかった。
ここには作品を通して戦後間もないころからの奈良に出
会うことができて楽しいやら懐かしいやら・・・ここにも
大勢の人が訪れていた。
二人が大変喜んで観賞している姿を見ていて雨の中を連
れてきてよかったと思った。
まだ時間はあったが雨も強くなったので二人を途中まで
送って一人で奈良国立博物館の正倉院展へ急いだ。
正倉院展は9000件ともいわれている正倉院の宝物の
中から毎年60件ほどを選び公開する展覧会で今年が
63回目
今年は初公開の17件を含む62件の宝物が出展される
というので楽しみに行った。
昨日から始まったばかりで雨の中だから人が少ないので
は?と思っていたら、とんでもないことで館内は鑑賞す
る人であふれていた、それでもいつものように入場制限
もなく入れて1時間余り、すべての展示品をみることが
できた。
楽しかった余韻に浸りたくて雨の街角にあるカフェに寄
ってのんびりと時を過ごして戻ってきた。
歩くことは簡単、歩き方もいろいろある
しかし、先を急ぐ素通り歩きは好きではない
歩いた後に余韻が残るようなウオーキングをしたい
しみじみとそう思った雨の古都、いいひとときだった。
明日は東から来る人に奈良を案内する、いい思い出をつくってあげたい。