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時代劇「必殺」シリーズなどで人気を集めた 俳優・藤田まことの忌日(Ⅱ)

2011-02-17 | 記念日
上掲の画像は、1987年、梅田コマ劇場のチラシ「藤田まこと特別公演”必殺仕事人 /地獄花”とまこと演歌を斬る!」で、中尾彬が神谷兵十郎役、誠直也が念仏の鉄役で出演している。チラシはマイコレクションより)
「必殺仕置人」での主人公・中村主水役を演じてからは、必殺仕事人が藤田まことの代名詞ともなり、同時に俳優としての地位を確立した。
必殺シリーズは1996(平成8)年公開映画「必殺! 主水死す」のキャッチコピーも「シリーズ完結、さらば婿殿」と必殺シリーズの終了を宣言するに等しい形をとったが、2007(平成19)年7月7日に東山紀之主演の「必殺仕事人2007」と題したスペシャル番組が放送された。
この作品は、主人公を藤田の中村主水からの東山の渡辺小五郎に交替した初の作品であり、新たな主人公としての東山演じる渡辺小五郎も、南町同心という表の顔と家庭での「ムコ殿」の立場を継承し、これまでの中村主水的な役割を担っているが、藤田演じる中村主水も登場した。そして、藤田も番組の“顔”としての立場を担うが、これまでの中心的な立場から一歩引き、新メンバー達を束ねる元締め的立場(専任ではなく、仕事人としても現役である)で登場した。
これが好評を得たため2009(平成21)年に連続テレビ時代劇として「必殺仕事人2009」が放映され、藤田演じる“番組の顔”としての中村主水と、東山演じる“物語の主人公”としての渡辺小五郎、という二枚看板での本格的な始動となった。
これは、ABC「必殺仕事人」シリーズ30周年記念、テレビ朝日開局50周年記念作品であり、第30弾「必殺仕事人・激突!」(1991年10月8日~1992年3月24日放送)以来18年ぶりの必殺シリーズの復活である。又、中村主水を演じる藤田にとっては、体調不良を検査した2008(平成20)年4月、食道癌であることが判明し、以降休養(入院加療)からの復帰第1作となっていたものである。
藤田はテレビで4つの山を作ったといわれているが、初期の藤田は、「てなもんや三度笠」で見られる2枚目半のコメディアンとして毒のあるアドリブとキャッチフレーズを連発し、典型的な上方芸人的な面白さと親しみやすさで売っていた。
この必殺シリーズでは、「てなもんや」のコミカル味を継承しつつ「ほんわかした親しみやすさ」が回を追うごとに前面に出てきて、妻と姑の間に置かれた肩身の狭い「婿殿」は「こういう人、おるおる」と言った感じで視聴者との距離を近づけていった。
そして、その典型が、1988(昭和63)年に始まった刑事ドラマ「はぐれ刑事純情派」での主人公・安浦吉之助(通称・やっさん)役である。誇張のない普通の話し声による台詞回しに、真っ白いワイシャツを着つつ一番上のぼたんを開け放したノーネクタイ姿の無造作ぶりが、身近にいる人間の存在を感じさせた。そして、このような人の良さがにじみ出る自然な演技で18年間この役を演じ続けた。
そこには、藤田自身が「てなもんや」では29歳の遅咲きで世に出たこと。それに加えその後の不遇も経験したことなどが、懸命に生きる市井の人々の喜びや悲しみを共有できる人間味あふれた大衆のヒーロー役を演じる力に繋がっていったのだろう。
そして、その演技力は、1998(平成10)年から放映された『剣客商売』シリーズの秋山小兵衛役にたどり着く。
無外流の達人でありながら郊外に庵を結び静かに余生を送る老剣士。人生の甘い苦いを全て知り尽くした先にいるかのごとき達観した佇(たたず)まい。このドラマもそんな平穏を打ち破る剣客たちとのぶつかり合いの対比が際立った味わい深い作品である。
この作品も『鬼平犯科帳』や『仕掛人・藤枝梅安』と並ぶ池波正太郎の代表作であるが、1973(昭和48)年から始まった最初のシリーズには、山形勲が小兵衛・加藤剛が小兵衛の息子大治郎役を演じた。10年後1983(昭和58)年からの2度目のシリーズでは、歌舞伎俳優の中村又五郎が小兵衛役・息子大治郎役には続いて加藤剛が演じていた。そして、3回目のシリーズが藤田の小兵衛・息子大治郎役は当初は渡部篤郎、後に山口馬木也が演じている。
この第1回・第2回の両シリーズでは、主役は小兵衛ではなく息子の大治郎であり、小兵衛はその補佐役を演じていた。それが、第3回目から小兵衛役を中心のドラマとなり藤田が主演をするようになった。
原作者の池波は新潮社刊『日曜日の万年筆』の中で、小兵衛役の風貌は旧知の中村又五郎をイメージして書いたといわれている(Wikipedia)ようだが、それが、第3回からは、藤田演じる小兵衛が主役となるのだが、これはどうも、藤田が自分の方から売り込んだらしく『池波正太郎の世界2号剣客商売<一>』という小冊子には藤田のインタビュー記事が掲載されており、藤田が「この役だけは他の誰にも渡したくない」と述べているそうだ(以下参考の※3参照)。
私は、第2回シリーズに出てくる小柄ながら強い老剣士の風貌と洒脱さあふれた中村の渋い演技とその持ち味が大好きであったが、藤田になって小兵衛を主役にしたのもうなづける。
中村とは風貌は異なるものの、年輪を重ね精進し、幅広い演技力を見につけた藤田は、中村に負けない渋い味をかもし出し、その上に、必殺シリーズで身につけた剣客としての凄みも加わり、最も老剣客秋山小兵衛らしい人物像を描き出していたと思っている。
このほか藤田の晩年を代表する作品のひとつに「その男ソルバ」のようなミュージカルの舞台もある。
上掲の画像は、梅田コマ劇場が移転し、その名も新たに劇場「飛天」となった記念公演の1つとして、1993(平成5)年5月に公演されたブロードウエイ・ミュージカル「その男 ゾルバ」のチラシである(マイコレクションより)、
原作はギリシャ人作家ニコス・カザンザキス(1883-1957)の小説「アレクス・ゾルバ」で、ゾルバは実在の人物で、作者自身の自伝的小説だそうだ。
1964(昭和39)年に映画化され、アンソニー・クイーン主演で大ヒットした。その後、ミュージカルとしての初演は1968年、ニューヨークらしいが、「ゾルバ」は彼のお気に入りの役で、ブロードウェイのミュージカルでも同じ役を演じているそうだ。
このアンソニー・クイーンは私の大好きな俳優なので、以前にこのブログ6月3日「アンソニー・クイン」の忌日の中で、この映画のことは詳しくとりあげた(ここ参照)。
「その男ゾルバ」は、ギリシャの寒村を舞台に、一人の孤独な男ゾルバと、鉱山の所有者である若者ニコとの交情を軸にして、ゾルバの人間性の豊かさ複雑さを描く、人間讃歌のミュージカルであり、 ”人生とは、愛とは” を考えさせてくれる作品である。
藤田は、この舞台の上演した50代を自らの人生の中で最も充実した時期であったと振り返っていたらしいが、今あるがままの人生を肯定し、決して自分を偽らずにストレートに生きる楽天家ゾルバに自分の姿を映して演じていたのかもしれない。漂白の男ゾルバと同じように、藤田が入れ込んだ役には出世とは無縁の男が多い。それにしても、藤田演じるゾルバの風貌は私の大好きなアンソニー・クイーンと非常に良く似ているな~。以下のYouTubeでアンソニー・クイーンの踊っているシーンが見れるので時間があれば見ると良い。
YouTube-Zorbas Syrtaki
藤田は俳優となる前は歌手を志望していたことはこのブログの最初の方でも述べたが、歌の好きな藤田はしばし歌を作って過ごしたという。1971(昭和46)年に発表した「十三の夜」(作詞・作曲供藤田)は晩年も公演などで歌い続けたという名曲である。
♪梅田離れて中津を過ぎりゃ思い出捨てた十三よ
 女一人で生きていく 娘ちゃん娘ちゃん十三の娘ちゃん
 涙をお拭きよ 化粧くずれが 気にかかる
十三は、大阪府大阪市淀川区にある地名で、一般に阪急電鉄十三駅付近の繁華街を指すことが多い。大阪梅田から阪急電車に乗るとここ十三駅で藤田の自宅である箕面方面・私の住んでいる神戸方面・京都方面への分岐となるところから、若い頃飲んだくれであった私も大阪の会社からの帰りに何度か寄ったことがあるが、この地域の夜のネオン街は多くのサラーリーマン客などで賑わっている。大阪の北(大阪駅・梅田周辺)や南(難波周辺)と異なり、非常に庶民的な町で、安く遊べることで有名である。この地域のネオン街の女性を大阪人は“十三の娘(ねえ)ちゃん”と親しみを込めて呼んでいる。藤田も良くこの辺で飲んでいたのだろう。
大阪の歓楽街・十三で働く女性を歌うこの詩は限りなく優しく、藤田の市井の人々に向ける目線の優しさが窺える。
それでは以下のYouTubeでこの曲を聴きながら藤田まことを偲ぶことにしよう。途中、一昔前の大阪梅田や十三の風景などと共に、「必殺!商売人」の頃からの懐かしいシーンも挿入されているよ。
YouTube -藤田まこと・十三の夜
上記YouTubeへアクセスすると藤田の歌う「黄昏のビギン」も聴ける。彼は小節を回す演歌などは苦手だったというが、きっちりと基礎を学んでいるだけにさすがこのようなポップス系の曲もきれいな声で、しっくりと歌っている。歌手としても一流である事が判るよ。

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参考:
※1:必殺仕置人BGM
http://flipnote.hatena.com/1F4A48E0A0A4FA58@DSi/movie/A4FA58_099C1251696B9_000
※2:YouTube-藤田まこと「必殺」を語る
http://www.youtube.com/watch?v=pibNpwrfJWw&feature=related
※3:池波正太郎 | Midodiary
http://mido-ri.net/diary/tag/ikenamisyotaro/
その男ゾルバ - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/movies/p5302/
必殺シリーズ同人サークル"江戸のクロねこ
http://homepage1.nifty.com/edonokuroneko/index.htm
朝日放送 | 必殺シリーズ
http://asahi.co.jp/hissatsu/
必殺シリーズとは -はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%AC%BB%A6%A5%B7%A5%EA%A1%BC%A5%BA
必殺シリーズ・データファイル
http://space.geocities.jp/wrjsw332/deta-file.htm
藤田まこと- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E7%94%B0%E3%81%BE%E3%81%93%E3%81%A8
必殺!主水死す - goo 映画
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD5895/index.html
必殺!
http://www.textlife.net/ccwa/CDROM/cdroms2/hittsats.html


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2 コメント

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ベルベ (ゆうさん)
2011-02-26 06:30:18
よーさん、お早うさんです。
藤田まことさんを最初に知ったのは、何だったか忘れましたがお笑い番組のCMで亜細亜製薬のベルベという薬の宣伝でした。ベルベを飲んだ後、体を上下に揺すって「ドンドンドン、あー、効いてきた」というものです。それ以降、急に色々な番組でダイラケさんや蝶々さんと共演されるようになりました。
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ゆうさんへ (よーさん)
2011-02-26 10:39:15
ゆうさん書き込み有り難う!
喜劇からしっくりしたドラマ、ミュージカルまで大変幅の広い芸達者な人でしたが、こんな大阪を代表する良い芸人が次々いなくなるのは哀しいですね。
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