松下電器産業(現:パナソニック)を一代で築き上げ「経営の神様」とも呼ばれ、今なお多くの経営者に影響を与え続けている松下幸之助 が折々に語った人生や仕事、経営や国家・社会に関する英知と洞察にあふれる言葉を厳選して「一日一話」の形にまとめた語録集が、『松下幸之助 [一日一話]』 として、PHP研究所より発行されている。困難な時代を幾度も乗り越えた人生経験、また経営者としての数々の体験から得た考え方は示唆に富んでおり、多くの企業で、教育用にも使われている。
その9月27日の「1日1話」に「二代目は熱意で勝負」がある。内容は、以下の通り。
”先代が築いた基盤を受け継ぎ、若い二代目の人が社長に就任する場合、それなりのむずかしさが当然あると思います。
そこで、一つの行き方としては、まず、会社の古くからいる先輩の人に「私はこう思っているのだがどうでしょう」と、うるさいほど熱心に相談をもちかけていくことだと思います。そうしていけば、その熱心さが必ず相手に伝わり、信頼感を生むと思います。また、そういう熱意にあふれた姿に対しては、社員が頼もしさを感じて自然と助けてくれるようになります。ですから、そのような腹の底からの熱意を持ちうるかどうか、それが二代目社長としての勝負の一つの分かれ目である、という気がします。」・・・と。
私的なことになるが、私は、2度転職をしている。最初に就職をしたのは大阪の財閥系の企業であったが、そのため非常に古い体質である事から、自由奔放に仕事をやりたい私の体質には合わず、最初に転職したの、今まで仕事をしていた関係から良く知っていた、当時、最も急成長を続けていた東京の企業で、すでに、東証1部にも上場を果たしていた。トップには非常に先見性があり、急成長している新しい企業だけに社員の平均年齢も若く、明るく生き生きとした社風で仕事も非常にやりやすく今でも私の大好きな会社であったが、そんな企業にも弱点があった。それは、余りにも先進的であり過ぎたこと、そして、余りにも急成長をし過ぎたことから、企業としての管理の基本原則である成長性・安定性(安全性)・収益性のバランスを欠いたことである(これらの見方等は以下参考の※:「財務諸表の読み方 - 企業決算 - 株式 - goo マネー」参照)。細かいことは、省略するが、結果的に、特に在庫管理の不味さから財務面での問題を発生させ安定性に支障をきたした。財務面では、銀行その他企業の支援もあり、又、在庫管理面でも優秀な人材が派遣され問題は直ぐに解決し、今も立派に営業している。
しかし、私が転職したのはその後の更なる発展性に疑問をもったからだ。とはいえ、転職は、結婚をして6ヶ月程経った時であり、家人のお腹の中には既に我が2世ができているのがわかったときであり、しかも、バリバリの一流企業で、十分な成果をあげ、会社からも期待されていたにもかかわらず、当時はまだ中小の未上場企業へ転職するというのだから、家人をはじめ家族は非常に驚き、猛反対していたが、将来性を買い私は強引に決めた。まだまだ発展途上にある中小の企業であったが、非常に企業理念が確りしており、人(従業員)を大切にし、従業員教育を徹底していた。その企業のことは、取引もあったし転職する前に会社の内容等も十分調べておいたので、私は必ず成長すると確信していた。ただ、中小の急成長会社共通の弱点は人材不足であるが、そこにハントされ、自分の力が十分に発揮できれば十分満足である。転職に関しては支店長などから引き止めもされたが、最後には、私の熱意に負け支店長自ら推薦までしてくれた。しかし、外から、見るのと内から見るのとでは、かなりの差はあった、特に、人材の不足が目だった。しかし、中・長期の目標をきっちり立て、目的達成のために、単に数値目標だけではなく、企業を背負って立つ将来の幹部候補生を何時までにどのようなクラスを何人育成するかまで、確り計画し育成していた。企業にとって優秀な人材の育成が急務であること十分に認識していたからだ。そして、社風を守るため就業規則等社規を徹底。当時、普通の会社ではこのような規則はせいぜい数ページの簡単なものであったろうが、ここは、数十頁もあるもので、特に、懲罰規定がこと細かく決められていた。最初、それを見た者は、どうして、このような罰則規定をこと細かく定め、時間をかけて教育するのかと戸惑うのであるが、それには、理由があった。会社は、誰もが、前向きに自由に行動することを最も望んでおり、その為には、これだけは絶対に「してはいけないこと」を理解させ、それを犯さない限りにおいて、何でも自由にやってくれと言うのが本旨である。又、合理的に職務追行するための業務規定・マニュアルの教育と管理も徹底していた。それは、急成長会社である故に、人材の育成が間に合わず、それを補うため中間採用も多くしているが、それぞれ違った環境で異なった文化を持って育っている。又、プロパーの社員には経験・知識不足のものが多く、企業文化を共有し、誰にも最低限の仕事が出来るようにしておく必要があったからだ。そのような周到な企業が中・長期目標に向って、着実に地道な努力を重ねた結果、時流にも乗って、今では超一流の企業と言うよりもコングロマリット に成長し、グローバル化の中、今では世界のトップ企業を目指し、それに向けた目標を設定し邁進している。そのような企業へ家族たちの反対を押し切って転職したが、その企業の成長の基礎作りに、私なりの貢献をしてこれたことを非常な誇りに思い満足を感じている。同企業からは退職後もう10年以上にもなるが、今だに、毎月社内報等が送られてくるなど、退職者などとの繋がりも密接にしている。
その会社は、業界の中でも歴史的には古く、江戸時代から存在していたが、今のように発展させたのが創業者であるとすると、私がいた時、2代目が社長を務めるようになった。しかし、非常に先の先まで計画をし着実に、成長させ、バランスのとれた経営を進めてきた企業だから、創業者は従業員の教育だけではなく、ジュニアのことも十分に考えている。そして、帝王学を身につけさせるため、最初から自分の息子を自分の経営している会社に、入れたりはせず、他社で十分の経験を積ませる、昔で言うところの修行を積ませた後に入社させている。そして、社長に就かせる前には、現場でいろいろなポジションを経験させ、会社のこと、社内事情等十分に理解させながら、段階を経て社長に就任させている。私は、会社では入社当時から営業を主に担当していたが後に管理面の仕事もした後、上場する頃から社長スタッフとしての仕事を長年やっていたのでその辺の事情は良くわかっている。発展段階で合併業務が相次ぎ、その合併業務や管理業務に携り、後には私もそのような合併会社へ出向し、そこの役員を兼務するようになった。合併で、最も問題になるのは、2つ。先ず社風・文化の異なる人問題と、会計業務、コンピュータも含めたシステムの問題である。組織や制度・システムのほか文化(企業風土)の統一を早急に図らなければ非常にギクシャクした関係が出来合併の成果が出ない。その解決のための出向であった。
2世のことにもどるが、どこでも優良企業の場合、役員になると社用車で会社まで送り迎えするのが普通だろうが、この2代目は社長に就任してからも電車通勤を止めようとはしなかった。大企業の責任ある社長が、電車通勤では不測の事態があれば大変と、周りの者が気をもみ幾ら説得しても、社用車などで会社との往復をしていると、世間のことが分らなくなると言うのが理由である。関係者が総出で説得をして、やっと、社有車を使うようになるまでには相当の期間があった。
そのような、2代目だから、『松下幸之助 [一日一話]』に書かれている「二代目は熱意で勝負」のようなことは、まるで心配することなど無かった。親父が創業した会社だからと言って、偉ぶるようなところはなく、最初から非常に低姿勢で、誰の意見でもよく聞くし、逆に自ら周辺の者や専門のスタッフに質問し教わるようにしていた。
会社の従業員教育が徹底していることは、先にも述べたが、社員の評価に男女間格差や学歴・入社暦は関係なく、成果第一主義である。社是でもある絶えざる改革と新しいことへのチャレンジ精神とその実行力が最も評価される。決まりきったことを真面目にただ無難に処理はしても、失敗を恐れチャレンジしないものの評価は低い。その代わり、例え失敗しても必ず再チャレンジの機会は与えられている。又、上級職への登用も、全社員に平等に与えられており、資格試験をパスしないと上級職へは上れない。そのために普段からの自己育成が求められており、会社からは、絶えず、そのための機会を与えられるが、自己育成を兼ねて登用試験用の問題にも関連する図書などが多く紹介される。会社は常に、将来の為に自分自身への投資をすることの重要性を説いていた。今の時代、会社にとって、自分にとって必要なことが何かを悟り、的確に実行しうる知識を身につけておかなければならない。会社の急成長にあわせて、自分の能力も常にアップしてゆかないと、実力主義の中では後輩に直ぐに追い越される。松下幸之助のここに紹介の本程度のものは初級クラスの参考図書に含まれている。だから管理職と言われるもの読んでいないものはいない。ただそれを実行できるかどうかである。
何もないところからビジネスを作り上げるのが、創業者であるならば、2代目は、創業者の作り上げたものを受け継ぎさらに発展させてゆかなければいけない。
よく、創業の難しさよりも、それを守り育てる守成(維持継続)の難しさなどが中国の歴史上の人物、項羽と劉邦を例に議論され、守成(維持継続)の難しさが説かれている。そしてそれが、2代目の役目のように・・・。
私のいた会社でも成長の過程で、一呼吸おき、体制を立て直さなければいけない時期が何度かあった。そして、そのような時期には司馬遼太郎の歴史小説『項羽と劉邦』が会社からの推薦図書となったりもした。
私が関係していた関連会社などでもあったが、普通の会社でよく見られる光景は、2代目が社長に就任しても、創業者である元社長が会長や相談役に留まっており、旧来からいる幹部連中は相変わらず会長(創業社長)の指示で動いていたり、また、会長自身は、2代目の社長に全てを任せているにも拘らず、幹部連中が絶えず創業者の顔色を窺いながら仕事をしていることである。もっと困るのは、会長と2代目社長の意見が一致せず、権力の二重構造(以下参考のYahoo!百科事典参照)が出来、幹部や社員が右往左往させられることである。何もこの図式は、初代と2代目の関係だけではなく、社長と専務、又、専務対常務などでもよく見られる構図である。このような、関係が堂々とまかり通っている会社が上手く行くわけは無い。
先の第45回衆議院選で大勝した民主党においても、党首である鳩山対小沢の関係にこのような権力の二重構造が心配されている。これは、絶対に無くさなければいけない。
少なくとも、私がいた会社では、創業者である元社長と現社長の役割分担は明確に決まっており、また、思想や理念の違いがあるわけでもなく、創業者が蔭で社長とは別の支持を出すとか、2人から別々の指示が出るといったようなことは無かったが、やはり、当初は、幹部連中が小ざかしく、自分達の都合の良い方へすりよって、点数を稼ごうとする者は結構居た。これは、どこの企業でもある事だろう。ただ、その様な者の意見を採り上げるか採り上げないかは、創業者又社長の器の問題だ。会社の教育で、「あなたの上司はただ1人」であることは徹底されており、命令系統の混乱などは起らない仕組みになっている(命令系統の統一)。
それに、会社は、耐えざる変革(改革)と前進を目指しており、創業者が、つくり上げた会社を守成(維持継続)してゆくなどと言う考えは持っていない。その会社を絶えず変革させ前進させてゆくことが絶えず求められている。創業者の口癖に、“企業には寿命がある”。何時までも存続は出来ない。今の時代では、30年は持たないだろう。だから、絶えざる変革のもと新しいものに生まれ変わってゆかなければいずれ、滅び去るより仕方が無いだろう・・・と。
「経営の神様」とも呼ばれた松下幸之助が創業した企業でさえもも、刻々と日本及び世界の情勢が変化する中、世界展開において、企業名や、組織運営のこだわりがあったことから、「松下」「ナショナル」「パナソニック」などの名称を使い分けることによるデメリットが年々増大し、ブランドイメージの統一が課題となっていた。 そこで、幸之助氏の存命中から海外で知名度の高い「パナソニック」への統一が検討されていたが幸之助氏が激怒したため棚上げになっていたというが、その様なことは業績にも響いたであろう。そのような縛りから抜け出すために、2008年度定例株主総会にて社名を「パナソニック株式会社」とすることが承認され、新たな出発をしている。
改革とは、既存の制度・機構(組織を組み立てているしくみ)・組織等を改めることである。
今回の衆議院選で自民党が大敗したのは、国民が、今までの自民党を否定し、それに代る政権党として民主党を選んだのであり、民主党のマニフェストが優れている、又、民主党員が優れているからではないだろう。
小泉政権の後、安倍・福田・麻生と政権のたらい回しをし、特に麻生氏らの首相としての適性や人間性が問題視されがちだが、自民党大敗の根幹には、国民が大きな期待を寄せ、前回の第44回衆議院選挙で大勝した小泉首相(元)の構造改革路線がかつての輝きを失い、それにつれて国民の期待感もしぼんできたことであることは、以下参考の※:「権力の二重構造にメスを入れよ」に書かれている通りであろう。つまり、構造改革に一番必要な「意思決定の構造改革」に十分手が回らなかった。意思決定プロセスにおける権力の二重・三重構造が弊害になっていたのである。内閣の主導権を確立できなければ、どこの政権であろうと、どんなに素晴らしい構造改革のアイデアを持っていたとしても、それをスピーディに実行することは不可能である。小泉政権での郵政民営化問題や格差社会の拡大等が問題視されているが、日本の政治が、意思決定の主導権を確立できない以上、改革はなかなか進まないであろう。小泉氏はそれが出来ないまま政権を安倍氏に譲り、その後次々と政権のたらい回しをしてきた。しかし、世界情勢が大きく変化しているにも拘わらず、結局どの政権も最も大事な構造改革問題には着手しないまま今日まできたことが、55年体制以来続いてきた自民党崩壊に結びついたものと私は思っている。
民主党が政権をとり、政治主導内閣をつくり、霞ヶ関の改革をしようとしているが、これが、出来なければ、これからの日本は本当にダメな国になってしまうであろう。ただ、政治主導のあり方については、過度の官邸への権力集中で問題となっている英国のようにはならないよう留意が必要(以下参考の※:過度の官邸権力集中、こじれた英の「政治主導」参照)。
政権交代したことについて、世間やマスコミでは、「民主党には経験と実績がないので心配」・・・などと言っているが、何を、ナンセンスなことを言っているのかと、ただ、呆れるばかりだ。今まで、政権に就いたことの無い党が、初めて、政権について、最初から、何事も無く、上手く行くはずが無いのは当たり前ではないか・・・。
先進の西欧諸国、イギリス、ドイツ、フランスなどでも、変革の痛みを味わいながら、それを何度も繰り返して今の時代に至っている。痛みを伴なわない変革などあるものか。
日本人は、改革を嫌い冒険をしようとしない人が多いとよく言われる。何もかも、人任せ、そのくせ、何か、問題があると、政治が悪い、行政が悪いと人事のせいにするところがある。そもそも、55年体制以降、全く政権が変わらず、それでも何もおかしいと思わないのが不思議なくらいである。政治が悪い、行政が悪いのも結局、国民が改革に臆病で、変化を好まず、政治や行政にたいしても無関心すぎたことが今日の結果を招いたと言える。しかし、今回、初めて、国民が選挙において本気で、清き1票を投じれば政治が変わることを証明した。これから、改革の苦しみが始まる。
今までのような、古いやり方をそのまま継続するのではなく、改革を進めるのには、大変な苦労と痛みを伴なうことは覚悟をしなければいけないだろう。それを、望んで民主党を選んだ以上、たとえ、途中で失敗することがあっても、改革に真剣に取り組んでいる以上は、そのような政権を長い目で、暖かく見守り、応援してゆく必要があるだろう。細かいマニフェストの実行云々ばかりに気をとられずに、政治改革を進める手を緩めないか・・・そのことを、しっかりと監視してゆかなければいけないだろう。日本の将来の為に・・・。又、そのために、野党となってしまった自民党も今までとは違う、健全な野党として、何でもかんでも反対の姿勢ではなく、是々非々で協力すべきところは、協力する姿勢がないと、次の政権交代は望めなくなるであろう。
(画像は、PHP総合研究所編・松下幸之助 [一日一話] )
参考は別紙です。⇒ ここ
その9月27日の「1日1話」に「二代目は熱意で勝負」がある。内容は、以下の通り。
”先代が築いた基盤を受け継ぎ、若い二代目の人が社長に就任する場合、それなりのむずかしさが当然あると思います。
そこで、一つの行き方としては、まず、会社の古くからいる先輩の人に「私はこう思っているのだがどうでしょう」と、うるさいほど熱心に相談をもちかけていくことだと思います。そうしていけば、その熱心さが必ず相手に伝わり、信頼感を生むと思います。また、そういう熱意にあふれた姿に対しては、社員が頼もしさを感じて自然と助けてくれるようになります。ですから、そのような腹の底からの熱意を持ちうるかどうか、それが二代目社長としての勝負の一つの分かれ目である、という気がします。」・・・と。
私的なことになるが、私は、2度転職をしている。最初に就職をしたのは大阪の財閥系の企業であったが、そのため非常に古い体質である事から、自由奔放に仕事をやりたい私の体質には合わず、最初に転職したの、今まで仕事をしていた関係から良く知っていた、当時、最も急成長を続けていた東京の企業で、すでに、東証1部にも上場を果たしていた。トップには非常に先見性があり、急成長している新しい企業だけに社員の平均年齢も若く、明るく生き生きとした社風で仕事も非常にやりやすく今でも私の大好きな会社であったが、そんな企業にも弱点があった。それは、余りにも先進的であり過ぎたこと、そして、余りにも急成長をし過ぎたことから、企業としての管理の基本原則である成長性・安定性(安全性)・収益性のバランスを欠いたことである(これらの見方等は以下参考の※:「財務諸表の読み方 - 企業決算 - 株式 - goo マネー」参照)。細かいことは、省略するが、結果的に、特に在庫管理の不味さから財務面での問題を発生させ安定性に支障をきたした。財務面では、銀行その他企業の支援もあり、又、在庫管理面でも優秀な人材が派遣され問題は直ぐに解決し、今も立派に営業している。
しかし、私が転職したのはその後の更なる発展性に疑問をもったからだ。とはいえ、転職は、結婚をして6ヶ月程経った時であり、家人のお腹の中には既に我が2世ができているのがわかったときであり、しかも、バリバリの一流企業で、十分な成果をあげ、会社からも期待されていたにもかかわらず、当時はまだ中小の未上場企業へ転職するというのだから、家人をはじめ家族は非常に驚き、猛反対していたが、将来性を買い私は強引に決めた。まだまだ発展途上にある中小の企業であったが、非常に企業理念が確りしており、人(従業員)を大切にし、従業員教育を徹底していた。その企業のことは、取引もあったし転職する前に会社の内容等も十分調べておいたので、私は必ず成長すると確信していた。ただ、中小の急成長会社共通の弱点は人材不足であるが、そこにハントされ、自分の力が十分に発揮できれば十分満足である。転職に関しては支店長などから引き止めもされたが、最後には、私の熱意に負け支店長自ら推薦までしてくれた。しかし、外から、見るのと内から見るのとでは、かなりの差はあった、特に、人材の不足が目だった。しかし、中・長期の目標をきっちり立て、目的達成のために、単に数値目標だけではなく、企業を背負って立つ将来の幹部候補生を何時までにどのようなクラスを何人育成するかまで、確り計画し育成していた。企業にとって優秀な人材の育成が急務であること十分に認識していたからだ。そして、社風を守るため就業規則等社規を徹底。当時、普通の会社ではこのような規則はせいぜい数ページの簡単なものであったろうが、ここは、数十頁もあるもので、特に、懲罰規定がこと細かく決められていた。最初、それを見た者は、どうして、このような罰則規定をこと細かく定め、時間をかけて教育するのかと戸惑うのであるが、それには、理由があった。会社は、誰もが、前向きに自由に行動することを最も望んでおり、その為には、これだけは絶対に「してはいけないこと」を理解させ、それを犯さない限りにおいて、何でも自由にやってくれと言うのが本旨である。又、合理的に職務追行するための業務規定・マニュアルの教育と管理も徹底していた。それは、急成長会社である故に、人材の育成が間に合わず、それを補うため中間採用も多くしているが、それぞれ違った環境で異なった文化を持って育っている。又、プロパーの社員には経験・知識不足のものが多く、企業文化を共有し、誰にも最低限の仕事が出来るようにしておく必要があったからだ。そのような周到な企業が中・長期目標に向って、着実に地道な努力を重ねた結果、時流にも乗って、今では超一流の企業と言うよりもコングロマリット に成長し、グローバル化の中、今では世界のトップ企業を目指し、それに向けた目標を設定し邁進している。そのような企業へ家族たちの反対を押し切って転職したが、その企業の成長の基礎作りに、私なりの貢献をしてこれたことを非常な誇りに思い満足を感じている。同企業からは退職後もう10年以上にもなるが、今だに、毎月社内報等が送られてくるなど、退職者などとの繋がりも密接にしている。
その会社は、業界の中でも歴史的には古く、江戸時代から存在していたが、今のように発展させたのが創業者であるとすると、私がいた時、2代目が社長を務めるようになった。しかし、非常に先の先まで計画をし着実に、成長させ、バランスのとれた経営を進めてきた企業だから、創業者は従業員の教育だけではなく、ジュニアのことも十分に考えている。そして、帝王学を身につけさせるため、最初から自分の息子を自分の経営している会社に、入れたりはせず、他社で十分の経験を積ませる、昔で言うところの修行を積ませた後に入社させている。そして、社長に就かせる前には、現場でいろいろなポジションを経験させ、会社のこと、社内事情等十分に理解させながら、段階を経て社長に就任させている。私は、会社では入社当時から営業を主に担当していたが後に管理面の仕事もした後、上場する頃から社長スタッフとしての仕事を長年やっていたのでその辺の事情は良くわかっている。発展段階で合併業務が相次ぎ、その合併業務や管理業務に携り、後には私もそのような合併会社へ出向し、そこの役員を兼務するようになった。合併で、最も問題になるのは、2つ。先ず社風・文化の異なる人問題と、会計業務、コンピュータも含めたシステムの問題である。組織や制度・システムのほか文化(企業風土)の統一を早急に図らなければ非常にギクシャクした関係が出来合併の成果が出ない。その解決のための出向であった。
2世のことにもどるが、どこでも優良企業の場合、役員になると社用車で会社まで送り迎えするのが普通だろうが、この2代目は社長に就任してからも電車通勤を止めようとはしなかった。大企業の責任ある社長が、電車通勤では不測の事態があれば大変と、周りの者が気をもみ幾ら説得しても、社用車などで会社との往復をしていると、世間のことが分らなくなると言うのが理由である。関係者が総出で説得をして、やっと、社有車を使うようになるまでには相当の期間があった。
そのような、2代目だから、『松下幸之助 [一日一話]』に書かれている「二代目は熱意で勝負」のようなことは、まるで心配することなど無かった。親父が創業した会社だからと言って、偉ぶるようなところはなく、最初から非常に低姿勢で、誰の意見でもよく聞くし、逆に自ら周辺の者や専門のスタッフに質問し教わるようにしていた。
会社の従業員教育が徹底していることは、先にも述べたが、社員の評価に男女間格差や学歴・入社暦は関係なく、成果第一主義である。社是でもある絶えざる改革と新しいことへのチャレンジ精神とその実行力が最も評価される。決まりきったことを真面目にただ無難に処理はしても、失敗を恐れチャレンジしないものの評価は低い。その代わり、例え失敗しても必ず再チャレンジの機会は与えられている。又、上級職への登用も、全社員に平等に与えられており、資格試験をパスしないと上級職へは上れない。そのために普段からの自己育成が求められており、会社からは、絶えず、そのための機会を与えられるが、自己育成を兼ねて登用試験用の問題にも関連する図書などが多く紹介される。会社は常に、将来の為に自分自身への投資をすることの重要性を説いていた。今の時代、会社にとって、自分にとって必要なことが何かを悟り、的確に実行しうる知識を身につけておかなければならない。会社の急成長にあわせて、自分の能力も常にアップしてゆかないと、実力主義の中では後輩に直ぐに追い越される。松下幸之助のここに紹介の本程度のものは初級クラスの参考図書に含まれている。だから管理職と言われるもの読んでいないものはいない。ただそれを実行できるかどうかである。
何もないところからビジネスを作り上げるのが、創業者であるならば、2代目は、創業者の作り上げたものを受け継ぎさらに発展させてゆかなければいけない。
よく、創業の難しさよりも、それを守り育てる守成(維持継続)の難しさなどが中国の歴史上の人物、項羽と劉邦を例に議論され、守成(維持継続)の難しさが説かれている。そしてそれが、2代目の役目のように・・・。
私のいた会社でも成長の過程で、一呼吸おき、体制を立て直さなければいけない時期が何度かあった。そして、そのような時期には司馬遼太郎の歴史小説『項羽と劉邦』が会社からの推薦図書となったりもした。
私が関係していた関連会社などでもあったが、普通の会社でよく見られる光景は、2代目が社長に就任しても、創業者である元社長が会長や相談役に留まっており、旧来からいる幹部連中は相変わらず会長(創業社長)の指示で動いていたり、また、会長自身は、2代目の社長に全てを任せているにも拘らず、幹部連中が絶えず創業者の顔色を窺いながら仕事をしていることである。もっと困るのは、会長と2代目社長の意見が一致せず、権力の二重構造(以下参考のYahoo!百科事典参照)が出来、幹部や社員が右往左往させられることである。何もこの図式は、初代と2代目の関係だけではなく、社長と専務、又、専務対常務などでもよく見られる構図である。このような、関係が堂々とまかり通っている会社が上手く行くわけは無い。
先の第45回衆議院選で大勝した民主党においても、党首である鳩山対小沢の関係にこのような権力の二重構造が心配されている。これは、絶対に無くさなければいけない。
少なくとも、私がいた会社では、創業者である元社長と現社長の役割分担は明確に決まっており、また、思想や理念の違いがあるわけでもなく、創業者が蔭で社長とは別の支持を出すとか、2人から別々の指示が出るといったようなことは無かったが、やはり、当初は、幹部連中が小ざかしく、自分達の都合の良い方へすりよって、点数を稼ごうとする者は結構居た。これは、どこの企業でもある事だろう。ただ、その様な者の意見を採り上げるか採り上げないかは、創業者又社長の器の問題だ。会社の教育で、「あなたの上司はただ1人」であることは徹底されており、命令系統の混乱などは起らない仕組みになっている(命令系統の統一)。
それに、会社は、耐えざる変革(改革)と前進を目指しており、創業者が、つくり上げた会社を守成(維持継続)してゆくなどと言う考えは持っていない。その会社を絶えず変革させ前進させてゆくことが絶えず求められている。創業者の口癖に、“企業には寿命がある”。何時までも存続は出来ない。今の時代では、30年は持たないだろう。だから、絶えざる変革のもと新しいものに生まれ変わってゆかなければいずれ、滅び去るより仕方が無いだろう・・・と。
「経営の神様」とも呼ばれた松下幸之助が創業した企業でさえもも、刻々と日本及び世界の情勢が変化する中、世界展開において、企業名や、組織運営のこだわりがあったことから、「松下」「ナショナル」「パナソニック」などの名称を使い分けることによるデメリットが年々増大し、ブランドイメージの統一が課題となっていた。 そこで、幸之助氏の存命中から海外で知名度の高い「パナソニック」への統一が検討されていたが幸之助氏が激怒したため棚上げになっていたというが、その様なことは業績にも響いたであろう。そのような縛りから抜け出すために、2008年度定例株主総会にて社名を「パナソニック株式会社」とすることが承認され、新たな出発をしている。
改革とは、既存の制度・機構(組織を組み立てているしくみ)・組織等を改めることである。
今回の衆議院選で自民党が大敗したのは、国民が、今までの自民党を否定し、それに代る政権党として民主党を選んだのであり、民主党のマニフェストが優れている、又、民主党員が優れているからではないだろう。
小泉政権の後、安倍・福田・麻生と政権のたらい回しをし、特に麻生氏らの首相としての適性や人間性が問題視されがちだが、自民党大敗の根幹には、国民が大きな期待を寄せ、前回の第44回衆議院選挙で大勝した小泉首相(元)の構造改革路線がかつての輝きを失い、それにつれて国民の期待感もしぼんできたことであることは、以下参考の※:「権力の二重構造にメスを入れよ」に書かれている通りであろう。つまり、構造改革に一番必要な「意思決定の構造改革」に十分手が回らなかった。意思決定プロセスにおける権力の二重・三重構造が弊害になっていたのである。内閣の主導権を確立できなければ、どこの政権であろうと、どんなに素晴らしい構造改革のアイデアを持っていたとしても、それをスピーディに実行することは不可能である。小泉政権での郵政民営化問題や格差社会の拡大等が問題視されているが、日本の政治が、意思決定の主導権を確立できない以上、改革はなかなか進まないであろう。小泉氏はそれが出来ないまま政権を安倍氏に譲り、その後次々と政権のたらい回しをしてきた。しかし、世界情勢が大きく変化しているにも拘わらず、結局どの政権も最も大事な構造改革問題には着手しないまま今日まできたことが、55年体制以来続いてきた自民党崩壊に結びついたものと私は思っている。
民主党が政権をとり、政治主導内閣をつくり、霞ヶ関の改革をしようとしているが、これが、出来なければ、これからの日本は本当にダメな国になってしまうであろう。ただ、政治主導のあり方については、過度の官邸への権力集中で問題となっている英国のようにはならないよう留意が必要(以下参考の※:過度の官邸権力集中、こじれた英の「政治主導」参照)。
政権交代したことについて、世間やマスコミでは、「民主党には経験と実績がないので心配」・・・などと言っているが、何を、ナンセンスなことを言っているのかと、ただ、呆れるばかりだ。今まで、政権に就いたことの無い党が、初めて、政権について、最初から、何事も無く、上手く行くはずが無いのは当たり前ではないか・・・。
先進の西欧諸国、イギリス、ドイツ、フランスなどでも、変革の痛みを味わいながら、それを何度も繰り返して今の時代に至っている。痛みを伴なわない変革などあるものか。
日本人は、改革を嫌い冒険をしようとしない人が多いとよく言われる。何もかも、人任せ、そのくせ、何か、問題があると、政治が悪い、行政が悪いと人事のせいにするところがある。そもそも、55年体制以降、全く政権が変わらず、それでも何もおかしいと思わないのが不思議なくらいである。政治が悪い、行政が悪いのも結局、国民が改革に臆病で、変化を好まず、政治や行政にたいしても無関心すぎたことが今日の結果を招いたと言える。しかし、今回、初めて、国民が選挙において本気で、清き1票を投じれば政治が変わることを証明した。これから、改革の苦しみが始まる。
今までのような、古いやり方をそのまま継続するのではなく、改革を進めるのには、大変な苦労と痛みを伴なうことは覚悟をしなければいけないだろう。それを、望んで民主党を選んだ以上、たとえ、途中で失敗することがあっても、改革に真剣に取り組んでいる以上は、そのような政権を長い目で、暖かく見守り、応援してゆく必要があるだろう。細かいマニフェストの実行云々ばかりに気をとられずに、政治改革を進める手を緩めないか・・・そのことを、しっかりと監視してゆかなければいけないだろう。日本の将来の為に・・・。又、そのために、野党となってしまった自民党も今までとは違う、健全な野党として、何でもかんでも反対の姿勢ではなく、是々非々で協力すべきところは、協力する姿勢がないと、次の政権交代は望めなくなるであろう。
(画像は、PHP総合研究所編・松下幸之助 [一日一話] )
参考は別紙です。⇒ ここ
2代目はまだ親の苦労を見て育ってるからね。
民主党、どうなるかなと思ったけど、今のところ、各大臣、それぞれがんばってて、好印象を持っています。
これから結果を出していかないといけないけど、国民のために、がんばって欲しいと思います。
改革は痛みの伴うもの。
皆が選んだのだから、慣れるまで、辛抱強く見守ってやらナイトね。
いまのところ一生懸命やろうとしている姿勢は窺えるからね。