朝日新聞は、11月1日「ホロコースト生還者 なぜガザ攻撃正当化」と題する記事を掲載しました。
ナチスの強制収容所の一つ「テレジン」の悲劇を伝えてきた作家の野村路子さんが、今夏、ホロコーストを生き延びた友人とチェコで再会したときの話です。
野村さんは、イスラム組織ハマスの急襲に対するイスラエルのガザ攻撃に衝撃を受け、すぐに知り合いにメールを送ったそうです。
その一人がディタ・クラウスさん(95)。野村さんにテレジンやアウシュビッツの体験を語ってくれた友人であり、今も「語り部」として活動している人だといいます。
下記のような内容です。
” しかし、その後のやるとりは険悪になった。
”<多くの子どもたちの命が奪われていくガザの現状はかなしい。一日も早く平和の訪れを>とつづったのに対し、
<日本ではパレスチナ寄りの情報しかないのか? あの日、ハマスは多くの赤ちゃんを殺し、その親たちを拉致した><イスラエルの行為は自分たちを守る正当なものだ>と激しい言葉が返ってきた。
「私はどちらの味方でもない。過酷な体験をしてきた彼女が、なぜ『子どもの命を大事に』という思いを共有してくれないのか」、野村さんは悲嘆に暮れた。
同じ頃、活動を長年支援してくれた在日イスラエル大使館との関係も悪化した。野村さんが停戦を要望するなどしたせいか、それまで届いていた大使館配信のメールマガジンが途絶えたという。”
ホロコーストの生還者は、筆舌に尽くしがたい恐怖や苦痛、怒りや悲しみを体験したからでしょうが、冷静な判断が出来なくなっているように思います。そしてそれが、イスラエルによる「民族浄化」の戦争を進めることにつながっているようい思います。
国際社会の声を無視し、ナチスドイツを思い出させるような残虐な民間人、特に女性や子どもの殺害をくり返すイスラエルの犯罪を直視すれば、「シオニズムを裏返すとナチズムになる」という高橋和彦氏の指摘は、単なる言葉遊びではなかったことがわかります。シニストは、現在もナチズムを乗り越えてはいないということです。
そういう意味で、野村さんにテレジンやアウシュビッツの体験を語ったというディタ・クラウスさんも、「ハマス殲滅」を主導するイスラエルの政治家や軍人と同じように、法や道義・道徳に基づく考え方ができなくなっているのだと思います。
他人の声が耳に入らなくなっているイスラエルの人たちの過ちは、戦争や紛争の経緯の無視として、また、客観的事実の無視としてあらわれていると思います。
バイデン大統領やゼレンスキー大統領やネタニヤフ首相は、自分の国が攻撃を受けたときから、相手国や敵対組織との対立を語ります。
相手の攻撃による深刻な被害をくり返し語ることによって、国際社会の多くの人びとに、相手の国や敵対組織を「絶対悪の独裁国家」と印象づけたり、「恐ろしいテロ組織」と受け止められるようにするのです。自らの戦いを「善と悪の戦い」にするために、戦争や紛争に至る経緯を隠すのです。
ハマスのイスラエル襲撃前、イスラエルが、どれくらいの土地や畑をパレスチナ人から奪ったか、パレスチナ人を分離壁で狭い土地に閉じ込め、どのような人権侵害をしてきたか、抵抗するパレスチナ人を何人くらい殺したか。
そういうことは、すべて隠され、なかったことにして、ハマスのイスラエル襲撃を非難するのです。だから、ハマスはテロ組織ということになるのです。
でも真実は、主として東欧系ユダヤ人アシュケナジームが、パレスチナの地に移住し、イスラエルという国を建国したときから、事実上の戦争状態が続いてきたのです。
イスラエルが、戦争に至る経緯を隠しても、下記のような動画が、シオニストはナチストと変わらないことを示しているように思います。女性や子ども容赦しないで殺し、パレスチナ人を皆殺しにしないと、解決しないという主張をしているように思うのです。
「イスラエル、イラク、アメリカ ─戦争とプロパガンダ3─」E.W. サイード:中野真紀子訳(みすず書房)に基づいて、過去をふり返れば、ユダヤ人、特に東欧系ユダヤ人・アシュケナジームが、パレスチナの地に不法に移住する前は、様々な人種や文化や宗教の人々が、多様性を維持しながらおおむね平穏に共存していたのです。
でも、そこに先住民を抑圧する排他的なユダヤ教徒が移住してきて、家を奪い、畑を奪い、抵抗する若者を殺害したりしたから、イスラエルの不当な略奪行為や占領地支配に対し、投石などによって抵抗する民衆蜂起、「インティファーダ」が発生し、「ハマス」が生まれることになったのです。
『「和平合意」とパレスチナ イスラエルとの共存は可能か』土井敏邦(朝日戦勝537)には、1987年12月ごろから、パレスチナ人が一斉に蜂起した自発的な民衆蜂起が、パレスチナ自治への動きの起爆剤となり、パレスチナ解放を目指すイスラーム組織ハマスが創設された、とあります。
こうした事実は、イスラエルの犯罪性を示していると思います。それを無視してはいけないのです。
同書の中には、「ハマスとは何か」と題する一節があります。
そのなかに、「イスラム抵抗運動」というアラビア語の頭文字を取ったのが、「ハマス」という名称であると書かれています。
また、ガザ地区で出された最初の声明の中で、ハマスは「当面のいくつかの目標」をあげていますが、それは、
”被拘置者の釈放、彼らに対する虐殺の停止、
入植の拒絶、国外追放または移動禁止の政策の拒絶 占領と市民に対する暴虐の拒絶、悪徳と堕落を(イスラエルが)広めることを拒絶。不当な重税の拒絶」”
というような目標です。どの目標も実態からして当然の目標で、テロ組織の目標とはいえないと思います。
また、その後発表された「ハマス憲章」では、
”ハマスの目標を「虚偽を失墜させ、真理を優越せしめ、郷土を回復し、モスクの上からイスラム国家の樹立を宣言する呼びかけをなさしめ、人びとと物事のすべてを正しい位置に戻すこと」(九条)とし、さらに「パレスチナの地の一部でも放棄することは、宗教の放棄の一部である。またハマスの愛国主義はその信仰の一部をなす」(13条)として、ハマスが現在のイスラエルを含むパレスチナ全土の解放をめざす”
とさらに、目標を深化させているのです。
上記の記事に、朝日新聞は、「復讐の連鎖を絶つ難しさを思う」というような副題をつけているのですが、ハマスのイスラエル襲撃とイスラエルの残虐行為を、同列に並べるような捉え方をしてはいけないと思います。
軍事的に優位な立場にあること、進んだ技術や文化をもっていること、経済的に裕福であること、西側諸国の支援があることなどをかさに着て、パレスチナ人から家や田畑を奪い、狭い地域に閉じ込め、差別・抑圧するような不当な支配、言い換えればイスラエルによるパレスチナ人に対するアパルトヘイトのような政策こそが問題なのです。それらは、すべて国際法違反です。
イスラエルが、国際法を尊重し、道義・道徳を重んじて、攻撃を停止するべきだと思います。
下記のような「叫び」を無視することは許されないと思うのです。
”疲れ切った北ガザの市民が叫び始めた、「屈辱より死」と。”
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます