真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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犯罪を犯しているのはイランかイスラエルか

2024年04月16日 | 国際・政治

 先日、朝日新聞は、バイデン大統領がアメリカのスペイン語放送「ユニビジョン」のインタビューに答えた内容の概略を、”バイデン大統領「ネタニヤフ氏は間違っている」”と題して掲載しました。インタビューでバイデン大統領は、「私がイスラエルに求めているのは、停戦して、今後68週間で全ての食料と医薬品が行き渡るようにすることだ」と述べたということです。”医療と食料を人々に提供しない言い訳はできない。今すぐやるべきだ”とも言ったといいます。

 さらに、ブリンケン国務長官も、市民を傷つけずにハマスを攻撃する代替策について、来週にもイスラエル側と協議する見通しを示したといいます。

 朝日新聞は、その意味を読者に示すかのように、”ガザ侵攻、イスラエルと溝深まる”という主題のような見出しもつけていました。

 でも、私は、こうした二人の発言は、アメリカがイスラエルと共有している戦略に基づくものだろうと思います。言い換えれば、高まる国際世論の批判を逸らすためのものだろうと思うのです。

 それは、こうした言葉とは裏腹に、アメリカのバイデン政権が、パレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸で戦争犯罪を続けるイスラエルのネタニヤフ政権に対して、水面下で戦闘機などの売却を承認していたことが分かったからです。ワシントン・ポスト紙(2004329日)によると、バイデン政権が、25機のステルス戦闘機および2300発以上の爆弾、その他、数十億ドル分相当の兵器の売却を承認していたと報じているのです。ワシントン・ポスト紙は、ガザへの軍事侵攻を続けるイスラエルに対して、バイデン政権が、民間人保護などを強く求めておきながら、水面下では兵器を供与している事実に対し、その矛盾を指摘する声があがっていることも報じているのです。

 また、見逃せないのは、バイデン政権が、過去に議会から武器売却の同意を得ていたということで、今回の武器の売却については、議会に通知していなかったばかりでなく、通常、外国への武器供与は、国防安全保障協力局のウェブサイトで情報公開されることになっているのに、今回の供与は公表されてもいなかった、という事実です。一般市民や国際世論を欺瞞する意図があったのではないか、と疑われます。 

 

 さらに、国連安全保障理事会は8日、パレスチナの国連加盟申請について協議をはじめたといいますが、アメリカはパレスチナの国連加盟に反対しているということも見逃すことはできません。アメリカの反対理由は不当で、法的には通用しないように思います。

 だから、アメリカは、イスラエルと事実上一体であり、決して、イスラエルを突き放し、孤立させることはないのだと思います。

 そういう意味で、私は、”ガザ侵攻、イスラエルと溝深まる”という朝日新聞の記事は、読者を欺瞞するものだと言いたいのです。

 

 アメリカの強いイスラエル支援の姿勢が、イスラエルのイラン大使館空爆につながっているという側面も見逃せません。アメリカがイスラエルに対する支援を止めれば、中東地域における戦いの拡大や、ネタニヤフ政権のラファ地上侵攻作戦も防ぐことができると思われますが、アメリカは、そういうことをしない国であることは、歴史が示していると思います。実態がどうであろうと、アメリカは、親米政権を支援し、反米政権を攻撃・転覆してきたのです。

 

 日本も、アメリカの肩代わりをするかのように、ウクライナ支援を強化したり、日米同盟を強化して、中国をにらんだ自衛隊の「南西シフト」を進めたり、急速な軍事予算の拡大をしたりしなければ、アメリカの戦争支援戦略を止める影響力を発揮することができると思います。

 戦争や紛争は、どちらかを支援したり、攻撃したりするのではなく、法に基づいて、話し合いによる解決を模索することが平和主義だと思います。アメリカに追随すれば、戦争を止めることはできないと思います。

 また、アメリカは、今なお、圧倒的な経済力と軍事力、さらには技術力などをもって、世界を思うように動かしていると思いますが、その衰退は明らかであり、その衰退を止めるためには、ロシアや中国など、非米・反米の国を弱体化するほかなく、戦争をやるしかない状態に陥っていることも、踏まえる必要があると思います。

 

 主要7カ国(G7)の首脳が、イランによるイスラエルへの攻撃を受けてテレビ会議を開き、声明で「直接的かつ前例のない攻撃」について、「最も強い言葉で明確に非難」したとの報道がありました。また、複数の国がイラン革命防衛隊(IRGC)をテロ組織に指定することを検討しているほか、各国で協調した制裁についても協議したと報道されています。イスラエルによるイラン大使館空爆がなかったかのような話で、随分おかしなことだと思いますが、それは、アメリカの覇権の大きさを示しているとも思います。

 イスラエルがイラン大使館を空爆したりしなければ、イランの反撃などはなかったということ、イランによるイスラエルへの報復攻撃を受け、パレスチナ自治区ガザでは14日、多くのパレスチナ人から喝采の声が上がったという事実も、見逃してはならないことだと思います。西側諸国がスラエルを支持し、支援するから、事態は悪化する一方なのだと思います。

 

 また、下記の抜粋文は、イスラエルの「パレスチナ難民救済事業機関(UNRW」敵視の姿勢を明らかにしていますが、イスラエルが、パレスチナ人を狭い地域に閉じ込め、支援なしには生きていけない状況に追い込んでおきながら、支援する組織を敵視しているという構図も見逃してはならないと思います。

  国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWAは、1949年の国連総会決議に基づき設立された組織です。イスラエルのパレスチナ占領によってパレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸のほか、レバノン、ヨルダン、シリアなど近隣諸国に避難し、難民となった多くのパレスチナ人を支援するためにできた組織で、避難所だけでなく、学校や病院も運営しているために、ガザだけで、約13000人のスタッフを雇っているといいます。だから、継続的な支援国の拠出資金が必要なのですが、UNRWAの一部職員がハマスのイスラエル攻撃に関与した疑いが浮上したということで、日本を含む多くの国が、パレスチナ難民救済事業機関(UNRW)に対する支援資金の拠出を停止しました。

 私は、その支援資金拠出停止も、おかしな話だと思います。なぜなら、UNRWAの一部職員がハマスのイスラエル攻撃にどのように関与したのか、また、UNRWAという組織が、そのことをどのように受け止めているのか、まったく不明だからです。どんな調査や聞き取りがなされ、その結果はどうであったのか、何もわかりません。にもかかわらず、支援資金の拠出を停止するということは、支援資金の拠出を停止した国が、パレスチナではなく、難民を生み出したイスラエルの側にあることを示しているように思います。パレスチナの地に、イスラエルというユダヤ人国家の建国を促し、多くのパレスチナ人を難民とし、苦難を強いておきながら、その支援をも断つという対応は、長く中東やアフリカ、アジアや中南米の国々を植民地として支配し続けてきた欧米の対応だと思います。

 イスラエルの「ハマス殲滅作戦」が、実は「パレスチナ人殲滅・追放作戦」であることは、イスラエルの見境のないガザ爆撃、また、イスラエルのリクードの歴史や政治家の言動、ネタニヤフ首相やネタニヤフ政権高官の発言などから察せられると思います。イスラエル軍が、ハマスと一般のパレスチナ人を区別している様子もありません。日本でも、便衣兵の問題が議論になったことがありますが、ガザやヨルダン川西岸地区で、パレスチナとハマスを区別することはできないだろうと思います。極論すれば、イスラエルのネタニヤフ政権にとって、パレスチナ人はすべてハマスなのだろうと思います。そうしたイスラエルのやりたい放題を止めなければ、戦争の拡大は防ぐことができないと思います。イランを支える国も少なくないと思います。

 下記は、「イスラム 超過激派」宮田律(講談社)、から「止まらない自爆テロ」を抜萃しました。

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             第五章 世界の「核爆弾」としてのパレスチナ・テロとイラクの泥沼

 

      止まらない自爆テロ

 ハマスにしろ、PLOにしろイスラエルを共通の敵として、パレスチナ人の権利拡大を図ろうとしている。つまりシャロン政権の強硬な姿勢は、パレスチナ各派をいっそう共闘させることになっているのだ。ハマスと「イスラムのジハード」の拮抗関係はほとんどない。パレスチナの過激派組織、「アル・アクサー殉教団(ファタハ内部の急進的組織)」「ハマス」「イスラムのジハード」などは、そのメンバーたちがイスラエルに対して自爆テロなどの攻撃を行っている。前述のとうり自爆テロは、自発的なもので、確かな指示・命令系統があるとはいえない。

 シャロン政権は結果的にハマスの活動を先鋭化させたり、またパレスチナ人の間におけるハマスのなど求心力を高める方策を取り続けている。シャロン政権の方針は、ガザでのハマスなど急進派の軍事的活動を徹底的に抑圧することにある。20049月終わりからイスラエルはガザ地区北部に対して軍事的制圧を行った。イスラエル軍は、イスラエル南部のゼデロトでハマスのミサイルによってイスラエル人の子どのも2人が殺害されたことへの報復として占領地最大のジャバリーヤ難キャンプ(およそ10万人の住民が住む)に侵攻して、80人のパレスチナ人を殺害したのである。しかし、犠牲者の多くはパレスチナ人のどもたちで、300人以上が負傷した。また、多くのパレスチナ人の家屋や農地が破壊され、数百人のパレスチナ人が家屋を喪失したとみられている。  

 パレスチナ市民の犠牲者は、ハマスや「イスラムのジハード」「アル・アクサー殉教団」などの民兵の犠牲者をはるかに上回っている。ベツレヘムを拠点とするイスラエルの人権団体は、ジャバリーヤ難民キャンプでは5万人のパレスチナ人が軍事的に包囲され、電気や水の提供が遮断され。食料も底をついたと報告した。

 イスラエル政府の公式発表では、ガザ自治区北部への軍事侵攻は、イスラエル南部に対するカッサーム・ロケット弾の発射を封じる事が目的だったという。カッサーム・ロケット弾は、ハマスなどパレスチナの武装勢力の手作りによるもので、イスラエルをてこずらせてきた。ハマスなどによる抵抗はあるものの、イスラエルの近代的な兵器の前にパレスチナ人たちは、ほとんど無力の状態なのだ。シャロン首相は、パレスチナ人の武力抵抗が行われる中で、ガザを放棄したくない。イスラエル軍がガザの抵抗にてこずりながら撤退するのは、イスラエルの威信低下になるからだ。

 2004103日にイスラエルのシャワル・モファズ国防相は、イスラエル軍の人道的な将校団をガザに派遣した。これらの将校とイスラエル国防軍は、ガザの難民キャンプで悲劇の発生を防ぐために活動するという構想を明らかにしたのだ。しかし、こうした構想が実際に有効に機能するとは思われない。いくら「人道支援」のためとはいえ将兵たちが、ガザで武力抵抗に遭った場合、パレスチナ人に対する報復を行ない、一般市民たちが巻き添えとなる可能性がないとはいえないのだから。

 イスラエルの『ハアレツ』紙に関連するインターネットのサイトである「ワッラ」は、世論調査を行ない、カッサーム・ロケット弾にどう対処するかという質問を出したところ、65%が軍事的、あるいはテクノロジーの力で防ぐことができると回答した。14%の人々が、政治的解決、すなわちガザからの撤退がミサイルの発射を防ぐことになるのではないかと答えた。

 ハマスは、イスラエルの人口密集地帯に対して、爆発物や自爆攻撃によって報復し、また、イスラエルの軍事基地を攻撃すると誓った。こうしたハマスの「誓約」がイスラエルの国民を恐怖に陥れていることは間違いない。しかし、イスラエル政府は、国民の批判が自らに向かうことを回避しようとし、国連、特に「パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に非難の矛先が向かうよう仕向けたのである。2004103日、イスラエル政府は、ガザのUNRWAの事務局長であるピーター・ハアンセンの辞任を要求した。イスラエルの主張によると、UNRWAの救急車がガザでカッサーム・ロケット弾の輸送に使われたというものだが、ハンセン事務局長は、「イスラエルがロケット弾だと主張した物体はじつは担架である」と反論した。このようなことから当初はイスラエル・パレスチナ問題に対して中立的な立場だったハンセン事務局長のような人物も、イスラエルにある種の反感を持つようになってしまった。

 ハマスや「イスラムのジハード」などパレスチナのイスラム勢力の活動は中東和平のバロメーターになっている。93年に「暫定自治に関する原則宣言」が成立し、中東和平が進むかに見えた時期、ハマスや「イスラムのジハード」の活動は一時的に影を潜めた。しかし現在、パレスチナのイスラム勢力は、イスラエルシャロン政権の強硬な姿勢に対して、過激な活動を志向するようになっている。イスラエルが力による抑圧を考え続けているうちは、イスラム勢力による自爆テロは決して無くならない。ハマスや「イスラムのジハード」の活動を抑制するには何よりも和平の進行が必要だ。20052月、エジプトのシャルム・エル・シェイクで、イスラエル・パレスチナ双方の暴力停止宣言があったものの、イスラエルには和平を積極的に進めようとする姿勢が見られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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