イギリスが、チャゴス諸島の領有権をモーリシャスに返還するとの報道がありました。
チャゴス諸島は、もともとモーリシャスの一部でしたが、1965年にイギリスがモーリシャスから分離し、イギリス領インド洋地域(BIOT)として編入していたということです。そして、イギリスのみならずアメリカも、インド洋の要衝だとして、そのチャゴス諸島に軍事基地をおいていたということです。
ふり返ると、第二次世界大戦後モーリシャスは、イギリスの植民地支配下にありましたが、独立を求める動きが高まり、1968年に独立、イギリス連邦の一つになったのです。
でも、モーリシャスは、多様な国際関係を築くために、特定の大国に依存しない外交政策を選択しました。「非同盟政策」を掲げ、様々な国との関係を築いて、国を発展させてきたのです。だから、長年にわたりチャゴス諸島の返還を求めてきたといいます。
にもかかわらずアメリカは、インド洋に位置する戦略的に重要な位置にあるとして、モーリシャスとの関係を重視し、経済や安全保障の分野で働きかけを続けて、ディエゴガルシア島に軍事基地を設置したといいます。その強引な姿勢は、ディエゴガルシア島に米軍基地を建設する際、島民を強制移住させたという話にあらわれていると思います。
「非同盟政策」を掲げるモーリシャスは、チャゴス諸島の返還を求めて、声を上げ続けていたので、2019年には、国際司法裁判所(ICJ)がイギリスに対し、チャゴス諸島の管理を放棄し、モーリシャスに返還するよう勧告していました。国連総会でも、同様の決議が採択されていました。だから、イギリスは、国際的な圧力に屈し、領有権を返還せざるを得なかったということだと思います。法に基づけば、領有権の返還は当然の成り行きだと思います。
でも見逃せないことは、領有権返還後も、イギリスとアメリカの軍事基地は残されるということです。それは、「非同盟政策」を掲げるモーリシャスの方針を無視するものではないかと思います。
そこに私は、米英の植民地支配の延長としての外交政策や対外政策の本質が見えると思います。
そういう意味では、昨年マクロン大統領が表明した、ニジェールからのフランス軍の撤退も、そして、最近のアメリカ軍の撤退も、共通の問題だと思います。
かつて欧米の植民地だったアフリカの国々で、近年発生したクーデターや軍事政権の樹立が何を意味しているのかを見極めることは大事なことだと思います。
日本政府は、G7を構成する国の一つとして、アメリカの戦略に基づく外交政策や対外政策をもって「G77(Group of Seventy-seven)」や「グローバルサウス」と呼ばれる国々に働きかけているようですが、それは、世界を分断することに与するばかりでなく、日本の衰退を加速することになると思います。衰退傾向にあるアメリカやG7に与して、衰退する国々の先頭を走るようなことはすべきではない、と私は思います。
日本は、大変な犠牲を払って定められた平和憲法を守り、平和主義に徹して諸外国の信頼を得、核兵器廃絶をはじめとする世界の軍縮を、先頭に立って進める責任があると思います。
ロシアや中国を敵視するアメリカの描き出す虚構の世界を現実と思い込み、軍事同盟を強化したり、防衛費を増額したりすることが、世界の緊張を高め、戦争につながる道であることに気づくべきだと思うのです。
アメリカはニジェールで、サヘル地域のテロ対策の拠点として、およそ1,100人の部隊を駐留させきました。でも、ニジェールでは去年、軍の部隊がクーデターを起こし、欧米寄りの大統領を排除して軍事政権が発足させました。だから、旧宗主国のフランスは去年、駐留部隊を撤退させていましたが、結局、アメリカも部隊を撤退させざるを得ない状況に追い込まれたのです。
西アフリカでは、最近ニジェールのみならず、マリやギニア、ブルキナファソでクーデターやクーデター未遂が起きているといいます。西アフリカ諸国は15世紀からの奴隷貿易、また、19世紀以降はヨーロッパ諸国の植民地として、西洋諸国から搾取され続けた歴史を持っているから、欧米に対する反発があるのだと思います。
だから、そういう歴史を踏まえた対応が必要だと思うのです。
日本ではほとんど報道されないのですが、下記のような動きを無視してはいけないと思います。
ニジェールの首都ニアメーで、アフリカのテロリストを支援するウクライナの政策に反対する抗議行動が行われているというのです。
ウクライナ支援のために欧米から送られた武器の一部が、世界各地のテロ組織その他に転売されているという話を、私は何度か耳にしていますので、そういう問題と関連しているのではないかと思います。
それは、G77(Group of Seventy-seven)やグローバルサウスと呼ばれる国々が、力を持ち始めているあらわれだと思います。
G77(Group of Seventy-seven)は、現在は135カ国になっているということですが、アパルトヘイトに反対し、世界的な軍縮を支持する共通の姿勢を持っているといいます。
軍事力を背景に、植民地支配の延長のような外交政策や対外政策を進めるG7の支配は受けたくないということだと思います。
ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体やアフリカ合衆国の構想もそうした流れのなかで生まれてきたのだと思います。
だから、日本はG7の側の立場で、それらの国々と関わるのではなく、G77やグローバルサウスと呼ばれる国々と手を結んで、軍縮外交を進め、経済交流を深めるべきだと思うのです。
喧嘩をする前から、喧嘩仲間を決めておくような軍事同盟や軍事的連携を強化することは、日本国憲法や欧米が発展させた国際法にも反することだと思います。またそれには、主権の放棄という側面もあることを見逃してはならないと思います。
欧米は、”われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進する…(国連憲章)”と約束したはずです。
自らが生みだした法を、自ら侵しているようでは文明国とは言えないと思います。他国の領土に強引に軍事基地を設け、植民地支配の延長のような外交政策や対外政策を進める欧米は、野蛮国家だと思います。