アメリカの力は、世界のすみずみまで及んでいると思います。
ハリス候補に大差をつけて大統領に返り咲いたトランプ氏を支持する主張は、日本ではほとんど表に出てきません。そして、トランプ氏の大統領に就任後も、いろいろなかたちで非難や批判が続いています。それは、日本が、トランプ大統領が指摘するいわゆるディープステート(DS)の影響下にあるからだといってもよいと思います。
好戦的だったバイデン政権と異なり、ウクライナ戦争を終わらせると宣言したり、イスラエルによるガザの攻撃についても「あれはわれわれの戦争ではなく、彼らの戦争だ」と突き放す発言をし、さらに、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱さえほのめかして、同盟関係を背景とした武力行使を否定する姿勢を見せ、アメリカで再び大統領に返り咲いたのに、トランプ氏を支持し、擁護する主張が出てこないのは、その証左だと思います。
確かに、トランプ大統領には看過できない発言が多々あります。でも、世界を分断し、軍事的な同盟関係の強化や武力主義的な戦略を進めるバイデン民主党政権の欺瞞的戦略に比べたら、戦争をしないトランプ大統領の単独主義、孤立主義、保護主義は、それほど悪いものではないと思います。ベストではなくても、ベターであり、支持する主張や擁護する主張が出てこない日本は、異常だと思います。
日本では相変わらず、トランプ大統領は、民主主義を破壊する大統領だとか、人権や環境への配慮が欠けているとか批判され、非難され続けています。バイデン民主党政権が民主的で、人権や環境への配慮できていたかどうかを不問に付して。
ふり返れば、第二次世界大戦後の世界が、アメリカの圧倒的な軍事力と経済力を背景にした覇権によって支配されてきたことは、日本や韓国の現状を見ても、否定できるものではないと思います。
それは、第二次世界大戦前のイギリスやフランスを中心とするヨーロッパ諸国の植民地支配とはちがって、直接権力を行使する支配ではありませんが、戦前の植民地支配を上回る絶大な権力に基づく欺瞞的な支配がなされてきたと思います。
だから、アメリカの覇権放棄は、アメリカが他国と同じ立場に近づくことであり、歓迎されてよいのではないかと思います。トランプ氏の問題発言にばかりこだわって、そういう大きな流れを見失ってはいけないと思います。
トランプ氏は大統領就任と前後して、ロシアや中国と連絡をとっているようですが、敵対するのではなく、平和的関係を深める方向へ、日本も方針転換するべきだと思います。軍事的同盟関係など強化すべきではないと思うのです。
米兵による少女に対する性的暴行事件が続いても、沖縄の基地に関する県民の意志がくり返し示されても、日米地位協定見直しの声が上がっても、日本政府が対応できないのは、日本政府が、アメリカの政権に隷属しているからだとしか考えられません。
韓国で混乱状態が続いていますが、私は、尹大統領の強引な姿勢は、緊密な関係が構築されているアメリカの支援がなければ、考えられないことだと思います。
尹大統領は、「非情戒厳」の宣布は、「統治行為」であって、司法判断の対象ではないなどと主張しているようですが、私は、砂川事件で、当時の田中耕太郎最高裁判所長官が、アメリカとの裏取引を背景に、米軍駐留は違憲であるという「伊達判決」を覆したことを思い出します。
現在韓国には、プサン、テグ、インチョンその他に、90をこえる米軍基地が存在するといいます。
そして、京畿道南部の平沢市彭城地区にある「ハンフリーズ米軍基地」は、世界最大の基地だというのです。
だから、アメリカは、韓国の人たちには、自由に政策決定をさせない力を持っているのではないかと思います。
日本にも、嘉手納基地や普天間基地、三沢基地、横田基地、横須賀基地、岩国基地、佐世保基地など100をこえる基地があります。
北朝鮮に、ロシアや中国の軍事基地があるわけではないのに、どうしてこんなに多くの米軍基地があるのかを考えれば、アメリカが、韓国や日本を、アメリカの戦略に合わせて利用するためであることは、否定できないと思います。
アメリカの中央情報局(Central Intelligence Agency)には
〇アメリカ合衆国に友好的な政権樹立の援助
〇アメリカ合衆国に敵対する政権打倒の援助
という任務があるといわれていますが(Wikipedia)、「朝鮮戦争 38度線の誕生と米ソ冷戦」孫栄健(総和社)の下記抜粋文を読めば、そのことがよくわかります。
大戦後、38度線で朝鮮を分断したアメリカは、朝鮮の人たちが強く望んだ朝鮮民族の独立を阻止し、「朝鮮人民共和国」を解体して、南朝鮮に強引に李承晩を中心とする反共右翼政権を樹立させたのです。
朝鮮民族の悲願である「朝鮮人民共和国」がすでに建国されていたにもかかわらず、それを解体したアメリカ軍政庁の方針は、朝鮮の人たちの主権の行使を認めなかったということだと思います。
日本でもアメリカは、日本人自身による重要な国策決定を封じ、レッド・パージや戦犯の公職追放を解除して、反共右翼政権を樹立させました。アメリカの介入がなければ、日本も組合労働者の支持した政権が日本の政治を動かしたのではないかと思います。でもアメリカは、それを許しませんでした。GHQの民主化政策を批判し、「逆コース」と呼ばれる占領政策の転換をもたらしたという当時のロイヤル陸軍長官の、「日本を極東における全体主義(共産主義)に対する防壁にする」という演説は、日本人の主権行使を認めないということだったと思います。
以来、韓国や日本は、事実上アメリカの属国状態にあるといってもよいと思います。だから、アメリカとの同盟関係の強化など、すべきではないと思うのです。
トランプ政権で、アメリカの属国状態を脱することができれば、日本や韓国は、もう少しまともな国になるのではないかと思います。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
第一章。戦後、米ソ対立と南北体制の起源
第四節 分割占領下における政情の混乱
(四)朝鮮人民共和国の解体
だが、一方でアメリカ軍政庁とホッジ中将は、この呂運亨の軍政協力への拒否に激怒したとされ、朝鮮人民共和国勢力の政府的機能を禁圧する方針を固めたとされた。軍政庁は、きわめて強硬な人民共和国勢力への圧迫政策をとることになった。まず、10月9日に、アーノルド軍政長官は人民共和国指導者は幼稚であるばかりか、「自分らが朝鮮の合法政府としての機能を果たしうると考えるほど愚劣な詐欺師どもである」との露骨な悪悪罵と人民共和国の合法性を一切否定する軍政長官声明文を起草した。さらに、それを10月10日付のソウルの全新聞に掲載せよとの占領軍命令を行った。
だが、南朝鮮のどの新聞もその声明を批判した。とくに人民共和国に同情的な毎日新報は声明の掲載を拒否した。そのため、この毎日新報は、翌月に停刊処分を下されることになった。さらに、アメリカ軍政庁より、人民共和国の政府機能の停止と傘下保安部隊の解散が厳命された。ホッジ米軍司令官も10月16日、南朝鮮における唯一の政府は軍政庁である旨を声明して、アメリカ占領軍の権力を宣明するとともに、人民共和国のような左派的勢力が「政府」を呼称し、行政類似行為を依然遂行していることに対する強硬態度を示した。
人民共和国側は、このようなアメリカ軍政庁の態度に反発した。だが、軍政庁の人民共和国抑圧政策がつづき、その結果、人民共和国内部的にも、このような政情を睨んで、解体につながる動きが現れてきた。また、人民共和国の指導者である呂運亨が、11月11日に新しい人民党を結成したことにより、それまで政府機能を維持し、議会や不安部隊をも構成、地方自治すら行っていた人民共和国は、一政党集団の位置にまで、みずから降りる方向にむかった。
そのソウルにおけるアメリカ軍政庁と人民共和国の、せめぎ合いの山場である人民共和国の全国人民委員会代表大会が、11月20日から22日までの3日間、南朝鮮全国の人民共和国参加諸団体の代表、およそ600名を集めて開かれた。その開催の注目的は、人民共和国はその名称から「共和国」という表現を取り去り、一政治団体として再編せよというアメリカ占領軍の指令に、どう対応するかにあった。
だが、参加諸団体代表の、この3日間にわたる討議の結果、占領軍に対する支持を表明し38度線以南におけるアメリカ占領軍の権力は認めたが、「共和国」の呼称あるいは「政府」であるとの主張を禁止するとのアメリカ占領軍の要求は拒否することになった。しかし、一般的には、現状に対応して、アメリカ占領軍による具体に協力することが確認された。こうして、解放直後の一時期、南北朝鮮の国民自治政府としての萌芽をみせて広範な影響力を発揮したろ呂運亨指導下の「朝鮮人民共和国」は、その政権樹立の初期段階で終息にむかうことになった。
それとは逆に、アメリカ軍政方針の支持のもとに、保守派の韓国民主党系などの右派的勢力がやがて南朝鮮政情の前面に出現して、徐々にその勢力を拡大するとともに、軍政下での南朝鮮行政機構の内部に浸透して行った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます