前回の続きです。
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メシ屋でおっさんと別れた後、オレ達は宿屋でそれぞれ取っておいた部屋に落ち着いた。
兄妹といえど別の部屋である。レオナに言わせれば、「兄妹間にもプライバシーは必要よ!」という事らしい。お年頃である。
少し休んでからレオナの部屋をノックすると、妹はパジャマ姿でオレを出迎えた。
「もう寝てたのか?さっき、後で明日の予定を話し合うって言ってたろう」
オレの言葉にはて、と可愛らしく小首を傾げる妹。
──実の兄に可愛い子ぶっても意味はないぞ。
「ああ......そういえばそんな事、言ってたっけ?」
オレは眉間にシワを寄せた。
「何度も言ってたよ!......まあ、いいや。入るぞ」
「はいはい、どうぞ」
簡素な部屋に二人で集まって、二人で作戦会議という名の雑談をする。
そろそろ路銀も少なくなってきたので、何か仕事を見つけなくてはならなかった。
そしてこの旅の目的も、忘れてはならない。
「この街なら、商人も傭兵も色んな人種が集まってるし、魔道士協会もでかい。情報が集まってるはずだ。どっかに『伝説の剣』の伝承だか噂もあるはずだ」
「だと良いけど......」
「地道に調べて行こうぜ。明日は図書館からだ。魔道士協会にも顔を出す」
オレ達の旅の目的は初めからただひとつ。かの有名な「光の剣」や「斬妖剣(ブラストソード)」に匹敵する、伝説級の魔法剣を手に入れることだ。
もちろん、そんな物がほいほい見付かるとは思っていない。しかし、世界のどこかには必ず存在するはずなのだ。
なにせ、その魔族をも両断するという伝説の魔法剣「斬妖剣(ブラストソード)」を持っているのが、どういう訳かオレ達の父親なのだから。
──まあ、その剣探しのために世界各地を巡って、見聞を深めることもまた一つの目的ではある。
「それにしても......母さんってほんとに有名人なのね。こんな所で都市伝説になってるなんて」
「......そうだな」
レオナの言葉にオレは頭を掻いた。
盗賊殺し(ロバーズ・キラー)だの、魔王の食べ残しだの、挙げ句の果てには「どらまた」だの、あまり自慢にはならないが。
この旅に出るまで、自分の母親がここまで有名だとは全く知らなかった。両親の数々の冒険譚は小さい頃から寝物語に聞かせて貰ったが、ほとんど作り話だと思っていた。
だが、今ではその認識を改めている。
──7割くらいは本当かもしれない。
だが、全ての話を鵜呑みにするつもりはない。母さんは、自分の都合の良いように話を盛る癖があるから。
黙って色々と考えていたオレを見ていたレオナが、ふいににやっと笑ってみせた。
「......兄さんは、母さんが有名人なの、気にくわないんでしょう」
「は?」
「兄さんも目立ちたがりだもんね」
「......」
──悪いかっ!
オレはいつか天才イケメン魔剣士として世界に名を残す男である。たぶん。
「まあ、目立ちたがり兄さんのことは置いといて」
「......レオナ、後でハリセンの刑な」
「結局明日はどうするんだっけ?」
──......。
「お、ま、え、はああああ!!」
オレは激しく頭をかきむしった。
「今話したろ!明日は図書館に行って、ついでに魔道士協会に顔出すって!」
思わず大声を出すと、レオナは手をぽん、と打って頷いた。
「ああ、そういえばそうだったかも」
全然聞いてなかったのか、ただ単に忘れたのか......。
「お前な、しまいにゃ脳みそチーズフォンデュみたいになるぞ......」
父さんはもう手遅れだが、妹にはなんとかまともに成長して欲しい兄心。
「チーズ...?なにそれ?」
「もういいよ」
はあ、と大げさにため息をついてみせると、レオナは頬を膨らませた。
──これでオレより魔道士としてのセンスが上だなんて、正直信じたくない。
呪文を覚える時だけ、別の脳を使ってるんじゃないだろうか?
本気で頭が痛くなってきたので眉間を押さえていると、レオナがオレの肩をぽん、と叩く。
「まあ、良いじゃない。どうせまた明日には忘れちゃうんだから。兄さんさえ覚えておけば」
この後、オレの携帯用ハリセンが華麗に妹の頭に直撃したのは言うまでもない。
続く
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次回に続きます!
思ったより説明が長くなってしまった(゜Д゜;)
ちなみに、レオナは女の子なので、ラウディのツッコミは微妙に手加減してます。
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メシ屋でおっさんと別れた後、オレ達は宿屋でそれぞれ取っておいた部屋に落ち着いた。
兄妹といえど別の部屋である。レオナに言わせれば、「兄妹間にもプライバシーは必要よ!」という事らしい。お年頃である。
少し休んでからレオナの部屋をノックすると、妹はパジャマ姿でオレを出迎えた。
「もう寝てたのか?さっき、後で明日の予定を話し合うって言ってたろう」
オレの言葉にはて、と可愛らしく小首を傾げる妹。
──実の兄に可愛い子ぶっても意味はないぞ。
「ああ......そういえばそんな事、言ってたっけ?」
オレは眉間にシワを寄せた。
「何度も言ってたよ!......まあ、いいや。入るぞ」
「はいはい、どうぞ」
簡素な部屋に二人で集まって、二人で作戦会議という名の雑談をする。
そろそろ路銀も少なくなってきたので、何か仕事を見つけなくてはならなかった。
そしてこの旅の目的も、忘れてはならない。
「この街なら、商人も傭兵も色んな人種が集まってるし、魔道士協会もでかい。情報が集まってるはずだ。どっかに『伝説の剣』の伝承だか噂もあるはずだ」
「だと良いけど......」
「地道に調べて行こうぜ。明日は図書館からだ。魔道士協会にも顔を出す」
オレ達の旅の目的は初めからただひとつ。かの有名な「光の剣」や「斬妖剣(ブラストソード)」に匹敵する、伝説級の魔法剣を手に入れることだ。
もちろん、そんな物がほいほい見付かるとは思っていない。しかし、世界のどこかには必ず存在するはずなのだ。
なにせ、その魔族をも両断するという伝説の魔法剣「斬妖剣(ブラストソード)」を持っているのが、どういう訳かオレ達の父親なのだから。
──まあ、その剣探しのために世界各地を巡って、見聞を深めることもまた一つの目的ではある。
「それにしても......母さんってほんとに有名人なのね。こんな所で都市伝説になってるなんて」
「......そうだな」
レオナの言葉にオレは頭を掻いた。
盗賊殺し(ロバーズ・キラー)だの、魔王の食べ残しだの、挙げ句の果てには「どらまた」だの、あまり自慢にはならないが。
この旅に出るまで、自分の母親がここまで有名だとは全く知らなかった。両親の数々の冒険譚は小さい頃から寝物語に聞かせて貰ったが、ほとんど作り話だと思っていた。
だが、今ではその認識を改めている。
──7割くらいは本当かもしれない。
だが、全ての話を鵜呑みにするつもりはない。母さんは、自分の都合の良いように話を盛る癖があるから。
黙って色々と考えていたオレを見ていたレオナが、ふいににやっと笑ってみせた。
「......兄さんは、母さんが有名人なの、気にくわないんでしょう」
「は?」
「兄さんも目立ちたがりだもんね」
「......」
──悪いかっ!
オレはいつか天才イケメン魔剣士として世界に名を残す男である。たぶん。
「まあ、目立ちたがり兄さんのことは置いといて」
「......レオナ、後でハリセンの刑な」
「結局明日はどうするんだっけ?」
──......。
「お、ま、え、はああああ!!」
オレは激しく頭をかきむしった。
「今話したろ!明日は図書館に行って、ついでに魔道士協会に顔出すって!」
思わず大声を出すと、レオナは手をぽん、と打って頷いた。
「ああ、そういえばそうだったかも」
全然聞いてなかったのか、ただ単に忘れたのか......。
「お前な、しまいにゃ脳みそチーズフォンデュみたいになるぞ......」
父さんはもう手遅れだが、妹にはなんとかまともに成長して欲しい兄心。
「チーズ...?なにそれ?」
「もういいよ」
はあ、と大げさにため息をついてみせると、レオナは頬を膨らませた。
──これでオレより魔道士としてのセンスが上だなんて、正直信じたくない。
呪文を覚える時だけ、別の脳を使ってるんじゃないだろうか?
本気で頭が痛くなってきたので眉間を押さえていると、レオナがオレの肩をぽん、と叩く。
「まあ、良いじゃない。どうせまた明日には忘れちゃうんだから。兄さんさえ覚えておけば」
この後、オレの携帯用ハリセンが華麗に妹の頭に直撃したのは言うまでもない。
続く
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次回に続きます!
思ったより説明が長くなってしまった(゜Д゜;)
ちなみに、レオナは女の子なので、ラウディのツッコミは微妙に手加減してます。