ゆるい感じで。

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マスカレード!(ガウリナ)

2015-10-08 16:33:55 | スレイヤーズ二次創作
どもですあきらです!
もう10月ですね~。早過ぎじゃないですか!?
……というわけで、ハロウィンも近いので『マスカレード』なガウリナを一つ
書いてみました。
こんな二人、いかがでしょう?? 

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 魔法の光で彩られた会場。
 煌びやかな衣装を身に纏う女たちと、シックな装いに紳士を気取る男たち。
 その顔には、目元を隠す仮面が一つ。そんな仮面すら、きらきらと輝く石で縁どられている。
 ――仮面舞踏会。
 上流階級のお貴族様達が、身分を隠してダンスを楽しむ優雅なお遊び。
 そんな暇を持て余した金持ちの遊びに、どういうわけかあたしも参加させられていた。勿論、連れのガウリイも一緒に。


 しばらくは仕事を取らないでのんびりする予定だったのに、この街に入ってすぐ、成金趣味の派手なじーちゃんに声を掛けられた。一つ仕事を頼まれてくれないか、と。
 見た目の通り金持ちだった依頼人は、仮面舞踏会を開くのが趣味という、なんとも分かりやすくブルジョワな人で、彼の孫の誕生日にも大々的に舞踏会を開く予定なのだと言った。
 しかし、一つ問題が起きた。
 ――仮面舞踏会の夜、氏の持つ貴重な宝石『女神の涙』を頂戴する。
 ブルーのインクでそう書かれた手紙が、先日玄関先に落ちていたそうだ。差出人は不明。
「……なんというか、またベッタベタな文句ね」
 呆れてそう言ったあたしに、じーちゃんは肩を竦めた。
「全くその通りじゃよ。……だが、舞踏会を中止にするわけにはいかんのだ。『女神の涙』は当日、孫に皆の前で贈る事になっておるのじゃ。……どうにか、孫と宝石を賊から守ってくれんかの?」
 その年の孫の誕生日は一日だけ。その日に開くからこそ、舞踏会にも意味がある。そう力説するじーちゃんの目の輝きに、うっかりあたしは絆された。
 ……というよりも。
「仕事を受けてくれれば、パーティの馳走も食べ放題じゃ。報酬も弾むぞ」
 言って、広げて見せた彼の指の数。それを見て、あたしはすぐにその仕事に乗ったのだった。


 仮面を付けているせいで、少しだけいつもよりも視界が悪い。それにつけて、身にまとっている華奢なドレスとヒールの細い靴。そして手に持った小さな扇子。
 じーちゃんもその孫も、そして狙われている宝石も皆舞踏会に参加しているのだから、当然あたしたちも参加しなくてはならないわけで。
 慣れない程に着飾ったあたしとガウリイは、なんだか気恥ずかしくなりながら会場の客に紛れ込んでいた。
 気恥ずかしいけれど、でも妙な高揚感が胸の内を満たしていく。まるで、とても高貴な王女様になったような、そんな気分。
 ――まあ、実際に知り合いに一国の王女がいるあたしとしては、ただ華やかなだけが王室では無いとは重々分かっているのだけれども。

「まあ、そこの素敵なお方、私と一緒に踊ってくださいませんこと?」
「それならわたくしもお願いしますわ!」
「あー。えっと……」
 少し離れた位置で、あたしと同じく華美な衣装に身を包み、仮面を被ったガウリイが娘さんたちに囲まれていた。
 困っている様子だけど、あたしは何時ものようには助けてやらない。

 悔しいけれど、今日のガウリイはいつもよりちょっぴり格好良かった。
 金色の長い髪に綺麗に櫛を入れ、仮面から覗く淡いブルーの瞳は、のほほんとした表情を隠していつもよりも理知的に見える。背も高くスタイルも悪くないのだから、女の子が騒ぐのも分からなく無い。
 ――あたしはちっとも面白くないけど。
 困ったようにちらちらとこちらに視線を送って来る相棒に、あたしはべえっと舌を出して応えた。たまには、自分で断る事を覚えなさいっての。
 当のガウリイ君。困った風にしている割には、なんだか喜んでいるように見えなくもなくて。まったく男って奴は……。
 呆れながら、あたしは大皿料理のチキンに手を付けた。

 コルセットで締め付けられているためちょとずつしか食べられないものの、さすがお金持ち! と言って良い豪華な料理の数々に舌鼓を打つ。
 ――んんー、でりしゃす!
 ジューシーお肉のソテーと、豆を甘く煮込んだもの。ポテトはカリッと揚げられて。もう一切れ、と二枚目のソーセージにフォークを突き刺した所で、あたしは声を掛けられた。
「そこのお嬢さん。一曲、踊って頂けませんか?」
 顔を上げると、目の前には仮面を付けた青年。青みがかった黒髪は短く切りそろえられ、すらりとした長身は見目が良い。仮面の下は分からないけれど、一曲踊るのにはなかなか悪くない相手である。
「んんー、どうしようかしら?」
 勿体ぶって微笑んで見せる。――んふふ、悪くない気分。
「貴女はとても美しい。どうかこの手を…」
 彼の芝居がかった気障な台詞は、聞き覚えのある声に遮られた。
「――残念ながら、彼女には先約があるんだ」
「……!」
 ――ガウリイ。
 さりげなくあたしの手を取って、青年にそう笑いかけた彼。驚いて見上げたあたしに、彼は仮面の奥で小さくウインクして見せた。……ちょっと気障過ぎるぞ、ガウリイ君。皆、この空気に当てられているのか。

 そんなあたしたちを見て、苦笑して去って行った青年の後ろ姿を見送る。
「――それで、あたしは貴方と約束した覚えはなくってよ?」
 あたしの手を取ったままのガウリイからさっと手を振り払って、あたしはつんと澄まして言い放つ。途端に、彼はとぼけた調子で頭を掻いた。
「ええー、そりゃないぜ」
 仮面をしていても、その声の調子も、仕草も、やっぱりガウリイだ。
「踊りたければちゃんと誘いなさいよ、仮面の紳士さん?」
 ふふふ、と扇子で口元を隠して笑う。大人ぶっても照れないで済むのは、ひとえに衣装と装飾品のおかげなのだ。
「それじゃ、私と一曲踊ってくれますか? お嬢さん」
「……よろしい」
 にっこり笑って見せて、今度は彼の差し出した手をあたしから取った。
 その瞬間。

 暗転。

「!」
 瞬時に、あたしは会場中央に目を走らせた。そこには依頼人と孫娘が居るはずだ。そしてそこには『女神の涙』も。
 賊の仕業か。
 靴をその場に脱ぎ捨てて、あたしは仮面と扇子を放り出す。
「『明かり(ライティング)』よ!」
 魔法の明かりを暗闇にいくつも浮かび上がらせた。
「リナ、見ろ!」
 隣で同じように仮面を外したガウリイが、仕込みナイフを握ってある一点を指していた。その方向へ目を向けた、あたしの視界に入ったものは。

「んなーっはっはっは!! 『女神の涙』はわしが頂くっ!」
 下品な声でそう叫んだそいつは。
 ふんどし一丁にマントをはおり、仮面を付けたじーちゃんだった。
 ――…………。さいあく。

 人々がどよめく中、依頼人のじーちゃんが声を荒げて叫ぶ。
「何奴っ!?」
「フッ。わしを忘れたとは言わせんぞ……ルドルフよ!」
 びし、と依頼人のじーちゃんを指差す変態じーさん。
「ま、まさかその声は…!?」
「そうじゃ、子供の頃お前に散々いじめられたハロルドじゃ!! 今日こそお前を泣かせてやりに来た……覚悟っ!」
 しゅばっ、とその場から数センチ飛び上がり、じーちゃんは依頼人に飛びかかる。
「な、なんじゃとーっ!? 返り打ちにしてやるわいっ、泣き虫ハロちゃん!!」
「その名前で呼ぶんでないわーっ!!」
 受けて立つ、とばかりにナイフとフォークを両手に構える依頼人。対峙する二人のじーさん。その横では、あまりの事に両手で顔を覆う孫娘さん。……うん、どんまい。

 ――…………。
「……ねー、帰って良いかな?」
「いちおー、アレ捕まえた方が良いんじゃないか? 仕事だし……」

 一気にテンションが下がったあたしたちは、それからすぐに騒ぐじーちゃん二人を『影縛り(シャドウスナップ)』でとっ捕まえて、変態の方を役人に突き出した。めでたしめでたし。
 ……とは行かない。
 二人一緒にとっ捕まえて会場から連れ出したのが納得行かなかったらしく、依頼人のじーちゃんは報酬の金貨を半分しか払ってくれなかった。
 ――どーしてそうなる!?
「結局、あやつは怪盗でもなんでもなかったわけじゃ。ただわしに嫌がらせがしたかっただけみたいだしの。『女神の涙』も守る必要はなかったわけじゃから、お前さんらも必要なかったわけじゃ。よって、報酬も半額でじゅーぶんじゃな!」
「なによその意味分からない理論はーっ!?」
「うるさいっ! お前さんらのせいでわしまで役人に連れて行かれそうになったんじゃ! もー帰れ帰れっ!」

 ……そんなわけで。
 あたしとガウリイは、半分追い出される形で会場から締め出される事になった。
「……あーあ。もう一切れ、あのビーフサンドイッチ食べときゃよかったー」
「それじゃーこれからどっか店でも入るか? せっかく報酬も、一応半額は貰ったわけだし」
 普段の格好に戻ったガウリイが、あたしが持つ金貨の詰まった巾着袋を指差しながら言う。かくいうあたしも普段の貫頭衣とマント姿である。ゆったりとした服はやはり落ち着く。コルセットから解放されたあたしは、今なら鶏二羽分くらい食べられそう。
「そうねー、それも良いかもね。――あ、チキンが美味しい店があるってさっきエステルさんに教えてもらったのよ」
「……誰だそれ?」
「……依頼人の孫娘!」
「あー。思い出した思い出した」
 うそつけ。
 相変わらず頭の中身が溶けだしそうなガウリイの顔を見て、なぜだかあたしは少し安心していた。どうにも、さっきの仮面姿のガウリイは見ていて落ち着かないと言うか。妙にどきどきして困る。
「――それにしても」
「なに?」
「いや、さっきの澄ましてるお前さんも悪くなかったけど、やっぱりいつものリナの方が良いな」
 にこりと笑ってあたしの頭に手を置いたガウリイが、わざとやっているのか天然なのか。赤くなった顔でそんな彼を睨みながら、あたしは判断に困るのだった。

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一応、くっついてるのかな?という二人です。
パンプキンなお菓子が食べたい!