どもですあきらです!
先日あげた結婚式ゼルアメSSの続きです~。
書きたかった所が書けて満足です(笑)
ゼルアメばんざい!!
書けてすぐアップしたので、後で誤字とか見かけたらその時修正するかもです~。雑ですいません(汗
前編よりは短めです。
-------------------------------------------------------
朝。
空気は澄みきっていて、そして聖王都は城も街もどこかいつもよりも静かだった。数カ月前の、父さんの戴冠式の日を思い出す。あのときも同じように、聖王都はしんとした静謐な空気に満ちていた。勿論、その空気は人々の期待や興奮も内包している。
そんな中、わたしは父さんの腕を取って『赤の竜神(スィーフィード)』の神殿へと足を踏み入れた。
普段、大使としてどこかの国へ赴くよりも数段華やかで、たっぷりと布地を使ったドレスをまとい、ヒールの高い靴を履いて、わたしは父さんとゆっくり臣下達の前を歩いていく。
神殿には、城の者たちや王家の血を継ぐ者、そして他国からの来賓が沢山集まっていた。城の外では、国民達が城の前に集まっている事だろう。人々からの注目の視線に、自然に身体が緊張していた。
頭のティアラには宝珠がきらきらと輝く。六芒星の印が施されたその宝珠のティアラは、かつて母さんも父さんの隣で身に付けたそうだ。今朝、姿見に映した自分の姿は、まるで自分ではないみたいだった。
とうとう『赤の竜神』様の像までたどり着いて、わたしは父さんの腕から手を離す。一つ、ゆっくりと息を吸って吐いた。背筋を伸ばして、また歩き出す。
――わたしの『婚約者』の隣へと。
そこで待っていたハルト殿下は、わたしの姿を見て目を見張った。
「……驚きました。本当にお美しい」
そう言って、彼は胸に手をあてて小さく一礼する。
「ふふ、ありがとうございます」
笑顔で礼を言うわたしの胸の内で、もう一人のわたしが小さく溜め息をついた。
――本当は。本当に、この姿を見て欲しかったのは……。
そう思ってしまってから、目の前のハルト殿下に罪悪感を抱く。彼は何も悪くないのに。
「それでは、誓いの儀を始めさせて頂きます」
城付きの神官長が厳かにそう宣言した。その瞬間、静かにざわめいていた神殿内が水を打ったように静かになる。荘厳な空気が空間を支配する。
わたしの青春は、ここで終わりを告げるのだ。
「――……赤の竜神の前で、永遠の愛を誓えるか?」
問われたハルト殿下は、ちらりとわたしを見て微笑んだ。
「はい」
その瞬間に、ちりりと胸が痛む。
――でも、この人は良い人だ。きっと良い夫になる。良い王になる。それが分かる。だからわたしもいつかは、心からこの人を愛せるかもしれない。
必死に自分に言い聞かせて、わたしは目を固く閉じる。そう、セイルーンの為に。もう後戻りなんか出来ない。
――……でも。
「汝、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。汝は赤の竜神の前で、この者との永遠の愛を誓えるか?」
誓います。と、言おうとして口を開いて、でも言葉が出て来なかった。
「……わ、たしは……!」
震える声をいなして、誓いの言葉を交わそうとして。でもその言葉の続きは、もう出て来なかった。
わたしの震える声を遮るように、朗々とした叫び声が神殿に響いたから。その声が、今一番聞きたいと、願っていた声だったから。
「――その誓いは、お断りさせて貰おう!」
しんとした神殿の中に、響き渡る『彼』の声。わたしはとうとう幻聴を聞いてしまったのだろうか。――それでも、振り返る。
「アメリア!」
立ち並ぶ人々の中で、確かに彼はそこに居た。白いフードをかぶり、以前旅した『あのとき』と同じように、いつも逢う時と同じように、わたしの大好きな姿で。
「……っ、ゼルガディス、さん」
幻覚かと思った。目を閉じて、また開いて。それでも、彼はそこに居た。
幻覚では無い証拠に、ざわめく人々の中から、彼を捕えようと兵士達がやってくる。神聖な儀式を冒したのだから当然だ。
「殿下を安全な場所に! あの男を捕らえよっ!」
「奴は何者だっ!?」
叫び声、怒号。剣が抜かれる音と、呪文を唱える声。音の氾濫の中で、隣に居たハルト殿下が慌ててわたしの腕を引いた。
「アメリアさん、ここは危ないっ! 早く行きましょう……アメリアさん?」
わたしは動かなかった。……というよりも動けなかった。ずっと、彼を見つめていた。目を離すことなんて出来なかった。
「『幻霧招散(スァイトフラング)』!」
「!?」
煙幕。神殿中に霧が立ち込め、視界は白く染まる。
そんな中、わたしは誰かに手を掴まれた。そのごつごつと硬くて、わずかに感じる温かいぬくもり。懐かしさに泣きそうになる。
「ゼルガディス、さん……!」
わたしの呼びかけに彼は答えず、そのままわたしをその腕でふわりと抱き上げた。そして彼は、そのまま走りだす。
まるで、夢を見ているみたいだった。
「緊急事態だ! アメリア様が連れ去られたぞっ!」
「早く! 早く捕まえろっ!!」
混乱の声が聞こえてくる。それでも彼は足を止めず、わたしを抱えたまま、どこからか用意していたらしい馬に飛び乗った。
風に乗る。街を駆けて行く。王宮が、追手が徐々に小さくなっていく。
「……何を、しているんですかっ、ゼルガディスさんっ!」
彼にしがみついたまま、わたしは思わずそう問いただす。知らず、責めるような口調になっていた。
「こんな、こんな大変なことしてっ! 国際問題になってしまう……!」
前を向いて馬を走らせながら、彼はようやく口を開いた。
「そうだな」
「そうだなって……! わたしは、これでも王女なのよ!? ゼルガディスさん、あなた大罪人になるつもりなの!? これは立派な誘拐――」
言い募るわたしの言葉を、彼は軽く笑って遮った。
「――でも、あんたは抵抗しない。俺から逃げ出そうともしないんだな」
「……! それは」
思わず言葉に詰まった。――そうだ。……だって、わたしはずっと待っていた。こんな展開を。
「別に構わん、俺は元々日陰者だ」
「……ねえ、ゼルガディスさん。どうして……?」
尋ねたわたしに、ゼルガディスさんは少し意地悪そうに笑った。ちらりとわたしの顔を見る目の、悪戯っぽい輝きにどきりとする。
「あんたが言ったんじゃないか。どこかへ連れて行って欲しいと」
それはまさか。――昨日の夜の、姉さんとの会話。
「聞いていたのっ!?」
「フッ、あんたの姉さんも、なかなか変わり者だな」
「……姉さん」
こんな風に、彼を連れてきてくれたのは姉さんなのだろうか。父さんはこの事を知っていたのだろうか。急に、胸の奥がじんと熱くなった。色んな気持ちが溢れだす。
「まあ、なんとかなるだろう。後の事はあんたの家族に任せるさ。……それで、今更なんだが」
急に歯切れが悪くなって、彼は小さく咳払いした。
「何かしら?」
「俺はこんな身体だし、あの王子みたいな力も、金も、何もない。……それでも、俺はあんたに傍に居て欲しい。――ついて来てくれるか」
それは本当に彼らしく、簡潔で飾らない言葉だった。でもだからこそ、わたしは胸が締め付けられてたまらなくなる。少しだけ赤みを帯びた彼の横顔を、ずっと眺めていたい。
「……本当に、今更ね。こんな風に攫っておいて」
わたしの気持ちを知っていて、そんな風に聞くなんて。少し意地悪じゃないだろうか。それとも生真面目なのだろうか。
だけど。
「そうだな」
静かにそう返した彼の首に、わたしはぎゅっと抱きついた。
「――嬉しい。……ずっと、あなたの事待ってたの。ゼルガディスさん」
覚悟なら、とっくに決まっていた。彼がわたしの手を引いたその瞬間から。
……嘘。本当は、最初から。
Fin.
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ゼルアメコースター、早く貰いに行きたいです^^*
※式の描写はめちゃくちゃ捏造しております。「赤の竜神様の前で~」とか。
先日あげた結婚式ゼルアメSSの続きです~。
書きたかった所が書けて満足です(笑)
ゼルアメばんざい!!
書けてすぐアップしたので、後で誤字とか見かけたらその時修正するかもです~。雑ですいません(汗
前編よりは短めです。
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朝。
空気は澄みきっていて、そして聖王都は城も街もどこかいつもよりも静かだった。数カ月前の、父さんの戴冠式の日を思い出す。あのときも同じように、聖王都はしんとした静謐な空気に満ちていた。勿論、その空気は人々の期待や興奮も内包している。
そんな中、わたしは父さんの腕を取って『赤の竜神(スィーフィード)』の神殿へと足を踏み入れた。
普段、大使としてどこかの国へ赴くよりも数段華やかで、たっぷりと布地を使ったドレスをまとい、ヒールの高い靴を履いて、わたしは父さんとゆっくり臣下達の前を歩いていく。
神殿には、城の者たちや王家の血を継ぐ者、そして他国からの来賓が沢山集まっていた。城の外では、国民達が城の前に集まっている事だろう。人々からの注目の視線に、自然に身体が緊張していた。
頭のティアラには宝珠がきらきらと輝く。六芒星の印が施されたその宝珠のティアラは、かつて母さんも父さんの隣で身に付けたそうだ。今朝、姿見に映した自分の姿は、まるで自分ではないみたいだった。
とうとう『赤の竜神』様の像までたどり着いて、わたしは父さんの腕から手を離す。一つ、ゆっくりと息を吸って吐いた。背筋を伸ばして、また歩き出す。
――わたしの『婚約者』の隣へと。
そこで待っていたハルト殿下は、わたしの姿を見て目を見張った。
「……驚きました。本当にお美しい」
そう言って、彼は胸に手をあてて小さく一礼する。
「ふふ、ありがとうございます」
笑顔で礼を言うわたしの胸の内で、もう一人のわたしが小さく溜め息をついた。
――本当は。本当に、この姿を見て欲しかったのは……。
そう思ってしまってから、目の前のハルト殿下に罪悪感を抱く。彼は何も悪くないのに。
「それでは、誓いの儀を始めさせて頂きます」
城付きの神官長が厳かにそう宣言した。その瞬間、静かにざわめいていた神殿内が水を打ったように静かになる。荘厳な空気が空間を支配する。
わたしの青春は、ここで終わりを告げるのだ。
「――……赤の竜神の前で、永遠の愛を誓えるか?」
問われたハルト殿下は、ちらりとわたしを見て微笑んだ。
「はい」
その瞬間に、ちりりと胸が痛む。
――でも、この人は良い人だ。きっと良い夫になる。良い王になる。それが分かる。だからわたしもいつかは、心からこの人を愛せるかもしれない。
必死に自分に言い聞かせて、わたしは目を固く閉じる。そう、セイルーンの為に。もう後戻りなんか出来ない。
――……でも。
「汝、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。汝は赤の竜神の前で、この者との永遠の愛を誓えるか?」
誓います。と、言おうとして口を開いて、でも言葉が出て来なかった。
「……わ、たしは……!」
震える声をいなして、誓いの言葉を交わそうとして。でもその言葉の続きは、もう出て来なかった。
わたしの震える声を遮るように、朗々とした叫び声が神殿に響いたから。その声が、今一番聞きたいと、願っていた声だったから。
「――その誓いは、お断りさせて貰おう!」
しんとした神殿の中に、響き渡る『彼』の声。わたしはとうとう幻聴を聞いてしまったのだろうか。――それでも、振り返る。
「アメリア!」
立ち並ぶ人々の中で、確かに彼はそこに居た。白いフードをかぶり、以前旅した『あのとき』と同じように、いつも逢う時と同じように、わたしの大好きな姿で。
「……っ、ゼルガディス、さん」
幻覚かと思った。目を閉じて、また開いて。それでも、彼はそこに居た。
幻覚では無い証拠に、ざわめく人々の中から、彼を捕えようと兵士達がやってくる。神聖な儀式を冒したのだから当然だ。
「殿下を安全な場所に! あの男を捕らえよっ!」
「奴は何者だっ!?」
叫び声、怒号。剣が抜かれる音と、呪文を唱える声。音の氾濫の中で、隣に居たハルト殿下が慌ててわたしの腕を引いた。
「アメリアさん、ここは危ないっ! 早く行きましょう……アメリアさん?」
わたしは動かなかった。……というよりも動けなかった。ずっと、彼を見つめていた。目を離すことなんて出来なかった。
「『幻霧招散(スァイトフラング)』!」
「!?」
煙幕。神殿中に霧が立ち込め、視界は白く染まる。
そんな中、わたしは誰かに手を掴まれた。そのごつごつと硬くて、わずかに感じる温かいぬくもり。懐かしさに泣きそうになる。
「ゼルガディス、さん……!」
わたしの呼びかけに彼は答えず、そのままわたしをその腕でふわりと抱き上げた。そして彼は、そのまま走りだす。
まるで、夢を見ているみたいだった。
「緊急事態だ! アメリア様が連れ去られたぞっ!」
「早く! 早く捕まえろっ!!」
混乱の声が聞こえてくる。それでも彼は足を止めず、わたしを抱えたまま、どこからか用意していたらしい馬に飛び乗った。
風に乗る。街を駆けて行く。王宮が、追手が徐々に小さくなっていく。
「……何を、しているんですかっ、ゼルガディスさんっ!」
彼にしがみついたまま、わたしは思わずそう問いただす。知らず、責めるような口調になっていた。
「こんな、こんな大変なことしてっ! 国際問題になってしまう……!」
前を向いて馬を走らせながら、彼はようやく口を開いた。
「そうだな」
「そうだなって……! わたしは、これでも王女なのよ!? ゼルガディスさん、あなた大罪人になるつもりなの!? これは立派な誘拐――」
言い募るわたしの言葉を、彼は軽く笑って遮った。
「――でも、あんたは抵抗しない。俺から逃げ出そうともしないんだな」
「……! それは」
思わず言葉に詰まった。――そうだ。……だって、わたしはずっと待っていた。こんな展開を。
「別に構わん、俺は元々日陰者だ」
「……ねえ、ゼルガディスさん。どうして……?」
尋ねたわたしに、ゼルガディスさんは少し意地悪そうに笑った。ちらりとわたしの顔を見る目の、悪戯っぽい輝きにどきりとする。
「あんたが言ったんじゃないか。どこかへ連れて行って欲しいと」
それはまさか。――昨日の夜の、姉さんとの会話。
「聞いていたのっ!?」
「フッ、あんたの姉さんも、なかなか変わり者だな」
「……姉さん」
こんな風に、彼を連れてきてくれたのは姉さんなのだろうか。父さんはこの事を知っていたのだろうか。急に、胸の奥がじんと熱くなった。色んな気持ちが溢れだす。
「まあ、なんとかなるだろう。後の事はあんたの家族に任せるさ。……それで、今更なんだが」
急に歯切れが悪くなって、彼は小さく咳払いした。
「何かしら?」
「俺はこんな身体だし、あの王子みたいな力も、金も、何もない。……それでも、俺はあんたに傍に居て欲しい。――ついて来てくれるか」
それは本当に彼らしく、簡潔で飾らない言葉だった。でもだからこそ、わたしは胸が締め付けられてたまらなくなる。少しだけ赤みを帯びた彼の横顔を、ずっと眺めていたい。
「……本当に、今更ね。こんな風に攫っておいて」
わたしの気持ちを知っていて、そんな風に聞くなんて。少し意地悪じゃないだろうか。それとも生真面目なのだろうか。
だけど。
「そうだな」
静かにそう返した彼の首に、わたしはぎゅっと抱きついた。
「――嬉しい。……ずっと、あなたの事待ってたの。ゼルガディスさん」
覚悟なら、とっくに決まっていた。彼がわたしの手を引いたその瞬間から。
……嘘。本当は、最初から。
Fin.
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ゼルアメコースター、早く貰いに行きたいです^^*
※式の描写はめちゃくちゃ捏造しております。「赤の竜神様の前で~」とか。