というわけで本日もゼルアメ強化月間です。
リクエストお題「リカバリィ講座 」
原作アメリアのふと見せるドライさが好きです。
------------------------------------------------------------
――旅路の途中、鬱蒼と茂る森の中で。
宵闇に沈む木々の中、パチパチと燃える火を囲む。
「……お嬢さん、ちょっとアンタに頼みがあるんだが」
少し躊躇いはあったが、共に火の番を任された少女に声を掛けたのには理由があった。
「アメリアでいいわ。……どうしたんです?」
顔を上げた彼女の瞳に、燃える火の明かりが映り込んで。
「俺に回復魔法を教えて欲しい。簡単なもので構わない」
「あら」
驚いたように目を瞬かせたアメリアに、俺は小さく咳ばらいをした。
「元々俺の身体は特別性だ。そうそう怪我などせんが……お前たちはそうもいかないだろうしな」
――リナの旅に同行すると決めた以上、治癒の呪文くらいは憶えておきたい。魔族だなんだと危ない橋を渡る事になりそうでもあるし。
「タダでとは言わん」
アメリアは回復魔法に掛けてはリナの上を行くエキスパートだ。専門家から教えを乞うのに対価を払わぬつもりは無い。……が、彼女は俺の言葉を聞くなりひらひらと手を振ってみせた。
「対価なんていらないわ。お安い御用よ」
「……いいのか?」
「回復魔法なんて、使える人は多ければ多い程良いもの」
「……」
何の含みもなく、心からそう返されて少しばかり面食らった。
――貴族や王族なんて奴らは皆鼻持ちならない傲慢な人間だと思っていたが……実際はそうでもないらしい。
「どうしたんです?」
「……いや、なんでも。それはありがたい」
*
治癒の呪文、その『力ある言葉』の連なりと意味を教わる。それと、唱える時のコツも少々。
「アンタ、教えるのが上手いな」
「いやぁそれほどでもありますけどー」
冗談めかして笑って、アメリアは小さく頭を掻いた。
――……。
ある程度話を聞いて、後は自分で彼女の術を盗むつもりで覚えよう、なんて考えていたのだが。こうも丁寧にしっかりと教えらえてしまうとは。ますます、受講料を要求しないアメリアが信じられない。
人が好いのも考え物ではないか? ……いや、これも持つ者ゆえの余裕から来ているのだろうか。持たざる者から見れば、とんだ傲慢かもしれない。そんな、意地の悪い考えが頭を過る。
が。一息ついて小さく欠伸を漏らした黒髪の少女は、俺の邪推など気にも留めずに微笑んだ。
「本当は、『復活』の術も皆使えたらいいんですけどねー。……回復役が少ないんじゃ、そこが落とされたらオシマイだもの」
「……!」
オシマイ。柔らかい言葉に替えてはいるが、つまりそれは『全滅』を意味する。
――そうだ。……自分だって、リスク分散のために彼女に教えを請うたんじゃないか。
セイルーンのお姫様は、きちんと『自分が斃れた後』を勘定に入れている。それに気づいて、俺は小さく息を呑む。
「わたしが怪我したら、これでちゃーんと手当てしてくださいね」
「……そんな場面があれば、だがな」
肩を竦めて見せた直後に、焚火の火はそんな俺を揶揄するようにパチリと音を立てて小さく爆ぜた。
宵闇に沈む木々の中、パチパチと燃える火を囲む。
「……お嬢さん、ちょっとアンタに頼みがあるんだが」
少し躊躇いはあったが、共に火の番を任された少女に声を掛けたのには理由があった。
「アメリアでいいわ。……どうしたんです?」
顔を上げた彼女の瞳に、燃える火の明かりが映り込んで。
「俺に回復魔法を教えて欲しい。簡単なもので構わない」
「あら」
驚いたように目を瞬かせたアメリアに、俺は小さく咳ばらいをした。
「元々俺の身体は特別性だ。そうそう怪我などせんが……お前たちはそうもいかないだろうしな」
――リナの旅に同行すると決めた以上、治癒の呪文くらいは憶えておきたい。魔族だなんだと危ない橋を渡る事になりそうでもあるし。
「タダでとは言わん」
アメリアは回復魔法に掛けてはリナの上を行くエキスパートだ。専門家から教えを乞うのに対価を払わぬつもりは無い。……が、彼女は俺の言葉を聞くなりひらひらと手を振ってみせた。
「対価なんていらないわ。お安い御用よ」
「……いいのか?」
「回復魔法なんて、使える人は多ければ多い程良いもの」
「……」
何の含みもなく、心からそう返されて少しばかり面食らった。
――貴族や王族なんて奴らは皆鼻持ちならない傲慢な人間だと思っていたが……実際はそうでもないらしい。
「どうしたんです?」
「……いや、なんでも。それはありがたい」
*
治癒の呪文、その『力ある言葉』の連なりと意味を教わる。それと、唱える時のコツも少々。
「アンタ、教えるのが上手いな」
「いやぁそれほどでもありますけどー」
冗談めかして笑って、アメリアは小さく頭を掻いた。
――……。
ある程度話を聞いて、後は自分で彼女の術を盗むつもりで覚えよう、なんて考えていたのだが。こうも丁寧にしっかりと教えらえてしまうとは。ますます、受講料を要求しないアメリアが信じられない。
人が好いのも考え物ではないか? ……いや、これも持つ者ゆえの余裕から来ているのだろうか。持たざる者から見れば、とんだ傲慢かもしれない。そんな、意地の悪い考えが頭を過る。
が。一息ついて小さく欠伸を漏らした黒髪の少女は、俺の邪推など気にも留めずに微笑んだ。
「本当は、『復活』の術も皆使えたらいいんですけどねー。……回復役が少ないんじゃ、そこが落とされたらオシマイだもの」
「……!」
オシマイ。柔らかい言葉に替えてはいるが、つまりそれは『全滅』を意味する。
――そうだ。……自分だって、リスク分散のために彼女に教えを請うたんじゃないか。
セイルーンのお姫様は、きちんと『自分が斃れた後』を勘定に入れている。それに気づいて、俺は小さく息を呑む。
「わたしが怪我したら、これでちゃーんと手当てしてくださいね」
「……そんな場面があれば、だがな」
肩を竦めて見せた直後に、焚火の火はそんな俺を揶揄するようにパチリと音を立てて小さく爆ぜた。