大阪府立高校教員井前弘幸さんに対する、これまでにない事情聴取を職務命令によって行おうとする教員委員会の遣り方に、5月19日、50名以上が教育委員会前に集まり抗議を行いました。結果、教育委員会は、明日(22日)までに集会決議への回答と話し合う場をもつことへの検討結果についての回答をすることを約束しました。私たちは、教育委員会の公正かつ公平な回答を待ちます。
さて、下記は、井前弘幸さんが、5月7日、同僚の教職員に配布したプリントの内容です。ご本人の了承を得て掲載します。
同僚のみなさまへ
4月8日入学式「国歌斉唱」時の不起立と経過について(ご報告とお願い)
井前弘幸(数学科)
異動してきたばかりの4月1日の職員会議でいきなり入学式要項を批判し、8日の入学式では役割分担にしたがって入場し、「国歌斉唱」の号令と同時に着席しました。そして、不起立の現認報告が校長によって府教委にあげられ、今、「事情聴取」と「職務命令違反確認」のための出頭を府教委から求められています。
来た早々、⚪︎⚪︎高校のことを何も分かっていない者が、いきなりなんやねんと思われているかもしれません。私自身、そのようなそしりを受けても当然だろうという思いを持ちながら日々過ごしています。
しかし、大阪府「国旗国歌強制条例」(2011年6月)と教育長通達(2012年1月)以降も、前任校では以前と同様の対応をしてきましたし、私には、異動を理由に、これ以外の行動をとる余地はありませんでした。
なぜ「そこまでこだわるのか」について、この紙面一枚で言い尽くすことはできません。ただ、「国のために一命を賭して戦うこと」を唯一の正義として「特攻機」乗りに志願し、生きて敗戦を迎えた父の「教育」への無念を聞いた息子として、また単に一人の教員として、戦前のように、教育を国家・行政が自由に動かせる時代を取り戻そうとする者たちの介入を止めなければならないと考えるからです。「評価・育成システム」と給与反映も、教育の行政支配の一環であると考えて、2006年から2011年まで裁判で争ってきました。「なぜ」について、今後、別の形で継続してお伝えでき、それをお読みいただけるならば幸いです。
入学式の不起立について、5月1日に、府立支援学校の教員1名への処分が発令されました。しかし、私に対しては、別の形で「職務命令」がエスカレートされています。
理由は、3つあります。第一に、中原教育長が自身の「口元チェック」指示に落としどころをつけるために、3月25日の教育委員会議及び4月3日の校長会で、「不起立者が少数になったため、起立斉唱をチェックする特別な体制が不要になった。今後、この問題は通常の校長によるマネジメントに委ねる。」との発言が影響している点です。本校校長は、この中原訓話を受けて、4月7日の職員会議において、校長が「文書を新たに配布することはしませんが、平成24年1月17日の教育長通達の通り、入学式においては、式場内の教職員は起立し斉唱するようお願いします」とのみ伝えました。しかし、不起立者がでるや、府教委は態度を豹変させ、「府教委マニュアル」の通りに、式場の内か外かを明示した「役割分担書」の配布と「職務命令であり、違反した場合の職務上の責任を問われます」と明言しなかったこと、「起立する」と明言しない私に対して個別の職務命令を発しなかったことは、「校長として不適切な行為」と糾弾し始めました。
第二に、この3月の卒業式では、3年生の担任に対する事前の「起立」確認を行い、「起立」を明言しない3年担任を式場に入れない職務命令を発したり、その職務命令をたてに「起立」を迫る校長が幾人も確認されたことです。生徒よりも「起立」が大事だということです。式場外の命令を受けた3年担任複数から、弁護士会への人権救済申立の動きなどが生まれています。
第三に、私は、「事情聴取」に弁護士または教職員組合執行部の立ち会いを要求しています。府教委は、「事情聴取」は「大阪府職員基本条例第26条2項」に規定する「意見の陳述」に該当する「弁明の機会」(権利)であることを認めています。しかし、府教委は、「事情聴取」を「処分を受ける側」に処分を受け入れさせる確認の場に留めるために、弁護士等の立ち会いを絶対に認めないという態度を変えていません。
これらの理由から、「事情聴取」の1回1回もすべて「職務命令」とし、三度目の職務命令違反をしたとして、重い処分を行うという脅しをかけています。
今後、友人や同僚の皆さんからのご意見やご忠告もいただきながら、弁護士とも相談しながら、場合によっては人事委員会への不服申立など法的な対応も考えていきたいと思っています。
ご協力をお願いすることもあると思います。どうか、ご意見やご批判をお願いします。
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教委職人第1284号
平成26年4月30日
大阪府立○○高等学校
教諭 井前 弘幸 殿
大阪府教育委員会
事情聴取の実施について
貴職は、平成26年4月8日(火)に行われた大阪府立○○高等学校の入学式において、国歌斉唱時に起立して斉唱するよう教育長及び校長から職務命令を受けていたにもかかわらず、当該職務命令に違反して、国歌斉唱時に起立して斉唱しなかった。
このことについて、大阪府教育委員会は事実確認を行うため、校長を通じ、貴職に対して事情聴取に出席するよう命じた。貴職は弁護士の同席を求め、それが認められなければ出席を拒否する旨回答した。事情聴取に弁護士の同席を認めないことを、同委員会が、校長を通じ示したところ、貴職は事情聴取に出席しなかった。事情聴取への弁護士の同席は、円滑な事情聴取の進行に支障があると考えられ、また、これを認めなければならない法的義務はない。
貴職が、校長から事情聴取に出席するよう職務命令を受けたにもかかわらず出席しなかったことは、先の職務命令違反と併せ、2回の職務命令違反行為を構成する。
ついては、上記2回の職務命令違反行為について事情聴取を実施するので、下記の日程調整期間内で出席可能な日時をすべて平成26年5月9日(金)までに校長に申し出た上で、決められた目時の事情聴取に出席すること。
期日までに申出がない場合は、事情聴取に応じない旨意思表示をしたものとみなされ、3度目の職務命令違反行為となる。
記
1 日程調整期間 平成26年5月13日(火)から平成26年5月26日(月)まで
2 所 要 時 間 約2時間
3 場 所 大阪府庁内会議室(大阪市中央区大手前)