不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Palio di Siena

2010-08-10 18:25:35 | アート・文化

中世の伝統的な行事を引き継ぐ都市は
イタリア国内に山ほどありますが、
シエナのパリオはその中でもよく知られ、
イタリアでも有名な伝統行事の一つに数えられています。
7月2日と8月16日の年2回の開催で
簡単に言えばシエナの地区対抗馬レースです。

ここ数年は
動物愛護団体などの非難の的にもなっています。
世界で最も美しい広場のひとつに数えられる
Piazza del Campo(カンポ広場)に砂を入れて
競技場を作り上げるのですが、
かなりの速度でカーブに入るので、
中には転倒する馬もあり、
負傷は絶えず、時には命を落とすこともあります。
動物愛護団体が発表した数字によれば
1970年から2007年までに
レース中の怪我が元で死亡したり、
試合後に使い物にならないと判断され
されたりしたものも含めると
48頭の馬が命を落としているとか。
1990年代に動物保護の観点から
規則が改定されたことにより
死亡頭数は減ってはいますが、
それでも犠牲になる馬がいるのは事実です。

先週、動物愛護者としても有名な観光相Brambilla女史が
「イタリア国内には動物を利用したイベントが多すぎる。
カタロニアの闘牛を諦めたように
イタリアのイメージを悪くしている、
いくつかのパリオを諦めてもいいのでは。」と
パリオの廃止をほのめかしたことで、議論再燃。
シエナ市長自ら激しく反論し
観光相も「廃止しろ」とは言っていないと主張を和らげています。

何百年にもわたり受け継がれてきた
伝統文化の一部だと考えれば
今後もきちんと伝承されていくべき行事だと思います。
ましてや、シエナで行っているパリオのせいで
イタリアは動物を虐殺しているというイメージが
世界に植えつけられているとは思えません。
もちろん人間の快楽や伝統維持のためだけに
動物が命を落とすようなことはできるだけ避けるべきであり、
そのためにさまざまな規則改定が行われているのも事実。
今後はさらに詳細にわたり
動物の安全が確保できるようなレースが展開されるべく
規則も変わっていくのでしょう。

シエナのパリオは、7月30日にはユネスコに対して
世界文化遺産としての認定を求めて申請を行ったばかり。
ユネスコの判断も
今後のパリオの行方を大きく左右することになりそうです。