不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Un'altro quadro di Caravaggio ?

2010-08-17 13:10:03 | アート・文化

一ヶ月ほど前にここで取り上げた
ローマ・イエズス教会に保管されている「聖ロレンツォの殉教」

カラヴァッジョのものではないかというニュースも
記憶に新しいところですが、
また別の絵画がカラヴァッジョ作ではないか
という説が浮上しています。

激昂する過激な美術評論家としてイタリアではよく知られる
Vittorio Sgarbi(ヴィットリオ・ズガルビ氏)が提唱する新説です。

ミラノの北、コモ湖の山間にあるZelbio(ゼルビオ)は
住民200人の小さな町。
この町の教区教会の聖具室に
いつもカーテンで覆うようにして隠されている絵画が一枚。
机に向かって書き物をする聖人が描かれています。
「San Geloramo(聖ジローラモ)」。
地元の言い伝えではMalta(マルタ島)に保管されている
カラヴァッジョの同テーマ作品のコピーだということになっています。

先週そのZelbioの作品をようやくの思いで
鑑賞することができたSgarbi氏は
「非常に質の高い作品で、コピーではない。
おそらく1600年代初めの作品で、
もちろん他のカラヴァッジョの作品に引けをとらないものだ。」と絶賛。
この作品をカラヴァッジョ・オリジナルだと
いわない理由が見つからないとまで豪語しています。

この作品は盗難に遭うことを恐れた教会の配慮で
常にカーテンの向こうに隠されてきたもので
目にした事のある人も少ないようです。
教会の記録によれば1900年代初旬に
9000リラで購入したもので
1984年に一度ミラノで修復が行われているようです。
しかし、美術監督局には登録さえもされていない絵画で、
コモ周辺の司教区文化財管理部でも
常にコピー作品として登録されてきた作品。

これまで誰も目にも止めなかった作品ということになりますが、
Sgarbi氏は自信満々で
カラヴァッジョ研究の権威である
Mina Gregori(ミナ・グレゴリ)女史をはじめ専門家に
一度Zelbioまで足を運んで確認するように推奨しています。

もしこれがカラヴァッジョ作だとなれば
山間の小さな町は
絵画盗難防止の策を真剣に考えなくてはならなくなるでしょうね。

しかし、今のところ、夏休みだからなのか、
いつものSgarbi節だと思っている人が多いのか
イタリアでもそれほど大騒ぎにはなっていないのが実情です。

ちなみにローマ・イエズス教会の「聖ロレンツォの殉教」は
非常に質のよい作品ではあるけれど
カラヴァッジョの作品ではないということで片付いています。