北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】VBTP-MRグラアニ装輪装甲車とパトリアNEMO搭載AMPV自走迫撃砲,PULSロケットシステム

2024-05-27 20:08:17 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は陸軍関連の話題ですがグラアニ装甲車という96式装輪装甲車と同程度の取得費用d調達できる装備の話題を最初に。

 フィリピン陸軍は新たにVBTP-MRグラアニ装輪装甲車の配備を開始しました。VBTP-MRグラアニ装輪装甲車はブラジル製でイヴェコ社がブラジル国内において製造している装輪装甲車、車体部分はドイツのウニモグトラックが応用され、6輪式装甲車ながら安価にまとまっていることでブラジル軍は2012年より2044両の調達を決定している。

 VBTP-MRグラアニ装輪装甲車はフィリピン陸軍にも安価で高性能として28両の採用が決定、今回最初の5両がフィリピンに到着したとのこと。ただ、この車体にウニモグ社製車体が採用されていたため、ブラジルとドイツの国家間摩擦に際してドイツ政府がウニモグ車体輸出を規制対象としたため納入が大幅に遅れ、昨年末漸く出荷が叶いました。
■スカイレンジャー
 沿空域という高度10mから50mまでの利用されていない空域の軍事利用に対して日本は無防備すぎやしないかと。

 オーストリア軍はパンドゥールEVO装甲車にスカイレンジャーシステムを搭載します。これはラインメタル社との間で現在調整が進められているもので、オーストリア軍が装備するパンドゥールEVO装輪装甲車の一部、少なくとも36両に対してスカイレンジャー機関砲システムを搭載、30mm機関砲による低空防空に充てるというもの。

 スカイレンジャーシステムは2023年12月にハンガリー軍が開発契約を結んでおり、オーストリア軍もこの潮流に乗ったかたち。一時は時代遅れと言われた30mm機関砲による低空防空システムは、国境地域などでの小型自爆用無人機多数による攻撃という新しい脅威を迎える現代に在って、安価だが確実な防空システムとして注目を集めています。
■レオパルト2A8
 あれだけチェンタウロ装甲偵察車を保有し120mm砲搭載のチェンタウロ2を量産開始するイタリアでも、機動砲は戦車の代りにはならないのだという実情を突き付けていますが本邦は。

 イタリアが導入するレオパルト2A8戦車はイタリア製戦車砲を搭載する方針とのこと。アリエテ戦車の深刻な稼働率低下を前にイタリア軍はロシアウクライナ戦争を受け従来型の大規模戦争への対応能力を再構築するべく主力戦車部隊の稼働率強化を模索、この結果アリエテ主力戦車の稼働率強化は費用対効果に乏しいと判断しました。

 レオパルト2A8をドイツより導入しつつ独仏将来戦車計画に参加する、こうした方針を示したものですが、レオパルト2A8について、ドイツから完成車体を導入するのではなく、イタリアのレオナルド社がラスペツィアに有している装甲車両組み立て施設においてレオパルト戦車を組み立てる方針で調整を進めています。この際に仕様も変える。

 イタリア仕様レオパルト2A8戦車の開発については既に2023年12月にレオパルト2に関する改良などを担うKNDS社との間で契約に盛り込まれているとのことで、レオナルド社は火器管制装置や指揮統制システムと無線機のイタリア軍仕様搭載を進めていますが、ここにイタリア製120mm戦車砲の搭載が加わる。イタリアは130両を導入する。
■アージュンMk-1
 日本の10式戦車はT-72戦車と同じ重量に90式戦車以上の性能を注ぎ込む事に成功した訳ですがこの困難さをインドが示している感じ。

 インド軍が導入するアージュンMk-1戦車の製造が遅延の見込み。これはエンジンとして1400hpのドイツMTU社製4ストロークV型10気筒多燃料液冷ターボチャージドディーゼルエンジンを採用したものの、肝心のエンジンがMTU社からの納入遅延があったため。このエンジンはターボチャージャー部分をインドが生産しています。

 アージュン戦車は1974年からセンチュリオン戦車の後継戦車として開発を開始したものの技術不足から遅々そして進まずT-72戦車やT-90戦車などを繋ぎとして導入し、2010年に漸く試作車が完成、T-90S戦車との競合試験に勝利し採用が決定しました。なおこのアージュンとは神話マハーバーラタに登場する戦士アルジュナにちなんだもの。
■レオパルト1A5
 戦車は数が必要なのだという厳しい現実を欧州が冷戦後の判断のツケを支払う最中に本邦では74式戦車が退役しました。

 ギリシャ陸軍はレオパルト1A5戦車の近代化改修を検討しているとのこと。ギリシャ陸軍は既にレオパルト2戦車を導入しているものの第二線級となっているレオパルト1についても能力向上は必要な選択肢として重視しています。レオパルト2の組み立てやリンクス装甲戦闘車計画などに参加しているギリシャのEODH社案が示されました。

 EODH社によれば、LEP改修として特に砲塔の対戦車火器や自爆用無人機などからの防御力強化型を提案しており、砲塔部分の全周にわたる追加式中空装甲と上部には金属製の屋根を追加、また車体側面と車体正面装甲についても追加装甲を装着し、またデータリンク能力についても大幅に強化し、主砲は105mmだがミサイルを運用するというもの。

 戦闘重量はこれらの改修により46tにまで増大する為、エンジンを現在の860hp水準から1000hpまで強化するとともに懸架装置も強化し、機動性を確保する案です。ギリシャ軍は1983年より104両のレオパルト1を採用、冷戦後はオランダから中古車両170両を取得するなど中古レオパルト1を集め続け、現在も500両以上が現役となっています。
■パトリアAMV
 日本の選択は正しかったのかとパトリアAMVについてドイツのボクサー装甲車の話題と共によくかんがえるところなのです。

 スロバキアはパトリアAMV装輪装甲車のライセンス生産を開始します。これはフィンランドのパトリア社とともに進める技術移転の一環であり、スロバキアの防衛企業CSMインダストリー社が受け皿となりスロバキア軍向けパトリアAMV装輪装甲車の国内生産体制を確立するためのもの。技術移転契約そのものは2022年に結ばれました。

 BOV装甲車計画としてスロバキア軍は次期装輪装甲車にパトリアAMVを選定、スロバキア軍は76両のパトリアAMV装輪装甲車を導入します。またその際に独自の装備として30mm機関砲を備えたスロバキアのトゥーラ社製砲塔GTS-30/A機関砲塔を搭載することとなり、この為にスロバキア国内での生産でパトリア社と合意しました。
■PULSロケット
 MLRSもHIMARSも生産が手一杯ということでイスラエルからロケット砲を導入するのですが一方で日本ではMLRSを廃棄して解体しているのですよね。

 オランダ陸軍はPULSロケットシステムの第一陣の2両を受領しました。PULSロケットシステムはイスラエルのエルビットシステムズ社製でアメリカのM-142HIMARS高機動ロケットシステムと同様にコンテナ式ロケット弾薬を運用する装甲トラック式の機動砲兵システムで、オランダはロシアウクライナ戦争を受け導入を決定しました。

 PULSロケットシステムが採用された背景には、HIMARSを製造するロッキードマーティン社がフルレート生産を行うものの納入時期が相当先となり、喫緊の歩兵火力不足を補うべくイスラエル製が採用されたもの。計画では20両を導入し、第13軽歩兵旅団と第43機械化旅団に2個小隊編成8両から成るロケット歩兵中隊を置く構想です。

 ロシアウクライナ戦争を受けての緊急調達であるため、車体部分はチェコのタトラ社製タトラ815-7軍用六輪型トラックに搭載されていますが、この装備は非装甲でありオランダ軍の整備補給体系には無い装備であり、先ず車体と共に導入した後、発射装置だけを概ね2026年以降、スカニア社製グリファス装甲トラックに載せ替える計画があります。
■最新ハリマウ中戦車
 首都防衛には戦車というのは日本と同じ。

 インドネシア陸軍は遷都を前に最新ハリマウ中戦車をボルネオ島に配備しました。インドネシア陸軍は長らくフランス製AMX-13軽戦車を運用していましたが、ドイツ軍余剰のレオパルト2主力戦車導入により主力戦車の重要性を認識し、トルコとの防衛協力を受けトルコのカプラン中戦車をもとにハリマウ中戦車を開発することとなりました。

 ハリマウ中戦車、今回ボルネオ島に配備されたのは陸軍第13騎兵大隊で、ハリマウ中戦車9両が配備されたとのこと。この背景には2024年8月17日に首都を現在のジャカルタからボルネオ島の新都市ヌサンタラに遷都することが間近となった為、ボルネオ島の防衛力を国産戦車により強化したいという国威発揚も背景にあるのかもしれません。
■パトリアNEMO
 自衛隊がパトリアAMVを採用した際にこちらも採用するのではないかと期待していましたが先に米軍が試験を開始したという。

 アメリカ陸軍はパトリアNEMO搭載AMPV自走迫撃砲型試作車を受領しました。1960年代から多数が納入された軽装甲だが使いやすいM-113装甲車の後継装備としてアメリカ陸軍はブラッドレイ装甲戦闘車の車体部分を利用した重装甲のAMPV多目的装甲車両を受領していますが、自走迫撃砲は従来型の戦闘室に迫撃砲を置いたものでした。

 今回イギリスのBAEシステムズ社は改良型の自走迫撃砲型をアメリカ軍へ納入したとされ、発表されたものはExMEP外部ミッションパッケージ方式によりパトリアNEMO自動迫撃砲システムを搭載したもの。パトリアNEMOはパトリアAMV装甲車などに搭載し、自動装てん方式で、且つ行進間射撃能力を持つ世界初の間接照準可能な砲兵装備です。
■国産開発のバッテリー
 国産技術を育てる世界の潮流の一つ。

 タイ陸軍は国産開発のバッテリーの海外製戦車搭載試験を開始しました。タイ陸軍には中国より導入したVT-4主力戦車と、1990年代にアメリカより導入したスティングレイ軽戦車が配備されています。タイの工業力では残念ながら主力戦車は勿論軽戦車さえ国産化する能力はありませんが、先ずは関連技術、バッテリーを国産開発したとのこと。

 ARDO国防研究開発局とコンケン大学は共同し独自のリチウムイオン電池仕様バッテリーを開発し戦車用に改良、これは2022年のOPS-MHESI科学技術研究イノベーション振興事業の一環として行われています。従来の車体には鉛式蓄電池が採用されていましたが、今回の搭載により同じバッテリー区画でもより大容量の電力供給が期待されています。
■新型NASAMS
 AMRAAMに一本化するという施策は日本では考えられないような一見リスクが有りそうには見えるのですが量産効果と備蓄を考えると選択肢なのでしょうか。

 ノルウェー国防省は新型NASAMS地対空ミサイル試験を成功させたとのこと。これはアメリカのレイセオン社が新しく開発した射程延伸型のAMRAAM-ER空対空ミサイルをNASAMSの地上発射システムに適合させる試験で、NASAMSを開発したノルウェーのコングスベルクディフェンスアンドエアロスペース社が主導しています。

 NASAMS、もともとAMRAAM空対空ミサイルを地上発射型とするものですが、これにはそのまま発射器に詰め込んだだけでは発射できず、コングスベルクディフェンスアンドエアロスペース社がが開発した10インチコントロールアクチュエーターシステムと統合する必要がありました。発射試験では正常にプログラム飛行を行ったとのこと。

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【防衛情報】E-7早期警戒機米空軍仕様機難航とベルギー空軍はエアバスA-400M輸送機納入完了

2024-05-21 20:00:54 | インポート
■防衛フォーラム
 ボーイング社の品質管理はボーイング737や777に787等で問題視されているところですがアメリカ軍の独自仕様の難しさも火砲や装甲車等の面でよく理解されています。

 アメリカ空軍はE-7早期警戒機の空軍仕様機に難渋しているという難しい話題です。具体的にはフランクケンドール空軍長官がコロラド州デンバーで開かれた空軍協会航空戦シンポジウムにおいて、E-7早期警戒機のボーイング社との価格合意がまとまらず複雑化している、と2月13日に記者会見において述べています。現在試作機待ちの段階だ。

 E-7早期警戒機、アメリカ空軍は老朽化が進むE-3早期警戒管制機の後継として2032年までにE-7早期警戒機を26機導入する計画です、現在試作機2機を発注している段階で初号機は2027年引き渡しの見込み、試作機引き渡しに先立ち2025年に生産契約を結ぶという。E-7は既に採用実績がありますが、米軍仕様へ12億ドルの開発費が計上された。

 ボーイング社は当初、オーストラリアやイギリスなどに採用されているE-7ウェッジテールをそのままアメリカ空軍が採用するものと考えていましたが、アメリカ空軍は米軍衛星通信や軍用GPSとサイバーセキュリティなどの保護用兼適合を要求しており、この為の設計変更がボーイング社の想定をはるかに超える量であり、開発費が不足したもよう。
■E-7早期警戒機
 ボーイング社の読みの甘さ。

 アメリカ空軍のE-7早期警戒機へのボーイング社の取り組みについて。ボーイング社が同じアメリカの同盟国であり英語圏の国であるイギリスやオーストラリアのE-7と同型機を導入できると楽観視していたボーイング社について、アメリカ空軍調達技術兵站担当次官のアンドリューハンター氏はボーイング社との議論は困難を極めたという。

 空軍は現在、ボーイング社が交渉に慎重であるとともに、ボーイング社の提示要件のどの部分が必要不可欠であり、どの部分を省略できるかについての議論を行っているものの、現状では詳細を示せないとしています。この点について、過去の事例から提案書よりも特定段階の技術情報調査に重点が置かれていることが、原因としてみているという。

 ボーイング社は提案書全体を理解せず一部を理解して提示している、という可能性をアンドリューハンター氏は示唆しました。ただ、オーストラリアやイギリスと、アメリカ空軍とは衛星通信環境や宇宙作戦の根本基盤が異なるものであり、外国仕様をそのまま米軍の作戦中枢機にそのまま採用できる考え方は一般論として無理があるでしょう。
■アメリカミサイル防衛庁
 日本も宇宙航空自衛隊と改称するにはこうした人工衛星の迅速な打ち上げ体制を確立してゆく必要があるように思うのですね。

 アメリカミサイル防衛庁と宇宙開発庁は弾道ミサイル監視強化のための衛星6基を打ち上げました。これは2月14日にスペースX社製ファルコン9ロケットにより打ち上げられています。ロケットにはミサイル防衛庁の2基と宇宙開発庁の4基が搭載されていて、正常に軌道上に投入されたとのこと。衛星は宇宙軍とも協力する。

 HBTSS極超音速弾道追跡宇宙センサープログラムの一環として投入され、LEO地球低軌道上に展開しました。これまで弾道ミサイルを検知する早期警戒衛星はGEO静止衛星軌道上に展開しており、極超音速滑空弾などに対する警戒能力の限界が指摘されていました。宇宙軍はこの分野の監視技術へ160億ドルを2028年度までに支出します。
■宇宙軍一任期8年間
 日本の自衛隊もこうした方が長く勤められるのかと考えるのですが。

 アメリカ宇宙軍は軍の一任期を8年間とする検討を進めています。通常アメリカ陸海空軍及び海兵隊では一任期を4年間としています、しかし宇宙軍は現役期間を8年間とし離職を防止する試みを行う背景には宇宙軍の教育訓練期間の長さが関係します。高度な教育、プログラムなどの教育でも通常は4年間で訓練と任務をこなせるものですが。

 宇宙軍は、8年間という重みは理解しているとの事で、これは例えば20歳の若者が軍務に志願し、陸海空軍であれば20歳代前半で退役し大学入学など次のキャリアを人生設計に盛り込むことができるが、20歳代で入営した場合に宇宙軍では退役が30歳代前後になり、これは宇宙軍志願者の多寡に影響を及ぼす可能性は理解しているとのこと。

 宇宙軍の場合は大学教育の延長線上や専門学校での経験などは宇宙作戦に応用できる分野は限られるため、宇宙軍に入隊してからの教育期間が長くなるため、既存の4年間の任期では不足するとのこと。ただ、条件として陸海空軍では退役後に即応予備軍などの任官を求められますが、宇宙軍は予備役制度を取らず退役できる制度を検討中という。
■A-400M輸送機
 C-2輸送機をもう少し売り込めれば。

 ベルギー空軍はエアバスA-400M輸送機納入完了式を挙行しました。ベルギーのメルスブルック基地で行われた式典にはベルギーのデドンデル国防相とルクセンブルクのバックス国防相、OCCAR-EA 欧州統合軍備協力機構のサッカー所長、エアバスA-400プログラムマネージャーのブルゴー氏、基地司令のビークスマン大佐などが出席しました。

 A-400M輸送機は最終組み立て工場のあるスペインのセビリアから到着、ベルギー空軍はルクセンブルク空軍と共同で8機のA-400M輸送機導入を発表していて、ベルギー空軍の7機とルクセンブルク空軍の1機を導入する計画を推進し、両国の輸送機はメルスブルック基地に所在する第15輸送航空団へ集中配備されることとなっています。

 ルクセンブルクとベルギーが一つの部隊で同型の輸送機を運用する、これは日本の自衛隊運用を見慣れていますと特異に感じられるものですが、欧州の相国であるルクセンブルクは、一人当たりGDPでは世界最高水準ではあるものの人口が少なく、この為にNATOの一員として集団安全保障体制に国軍を一体化させ、費用と能力を分担しています。
■XA-103エンジン
 戦闘機はやはりエンジンが中核部品というところは不変のようですしなにより次世代医はレーザー砲などよりエネルギーを必要とする事となります。

 アメリカのプラントアンドホイットニー社はXA-103エンジン地上試験計画を発表しました、これはプラントアンドホイットニー社の軍用エンジン事業部長ジルアルバーテッリ氏が次世代エンジン開発について述べたもので、XA-103エンジンは2020年代後半にも地上試験を開始するべく、全般設計をまもなく完了する、と表明したものです。

 XA-103エンジンはF-22戦闘機後継機となるNGAD次世代戦闘機用に開発されているもので、燃焼効率と熱管理システムなどが現在開発され運用中のエンジンと比較し飛躍的に向上するとしています。XA-103エンジン、もう一つ特筆されたものは戦闘機用エンジンとしては史上初めて、完全デジタル管理によりペーパーレス設計されたこと。

 NGAD次世代戦闘機について、その概要は今のところ示されていませんがF-22戦闘機の退役計画だけは進んでおり、第五世代戦闘機であるF-22を置き換えるNGADは第六世代となる、一方でそのエンジン地上試験の開始が2020年代ということになれば、自動的に如何に急いだとしてもその戦力化は2030年代という時間がかかることとなります。
■AB-212救難ヘリコプター
 永らくお疲れ様でした的な話題です。

 イタリア空軍はAB-212救難ヘリコプターの退役式典を行いました。式典は2月22日、グラッツァニーゼにおいて挙行、イタリア空軍での実に40年間にわたる運用に終止符を打った形です。AB-212はアメリカのベル社が開発したベル212ヘリコプターをイタリアのアグスタ社がライセンス生産したもので、UH-1ヘリコプターを双発化したもの。

 AB-212の運用は1979年に射撃場管理用に3機を導入したものを皮切りに運用効率の高さが確認され、1984年に32機が発注されました、機体はビジャフランカ基地の第603飛行隊、グロッセート基地第604飛行隊、グラッツァニーゼ基地第609飛行隊など7個飛行隊に配備され、戦闘救難用にMG-42/59機銃2丁や機体自衛装置などを備えていた。

 2000年代にはいりイタリア空軍ではこれらの機体の老朽化を受け2005年に大規模延命改修を実施し、その際に機体の一部を装甲化しています。空軍はISAFアフガニスタン国際治安支援部隊などにもAB-212を派遣していますが、後継機としてアグスタウェストランド社製HH-101の配備が進んだことで、遂に2024年、運用を終了しました。
■F-16block70戦闘機
 F-16が2020年代の防空システムにどの程度対抗できるのかは非常に残念な事ではあるのですがまもなく実戦の洗礼を受ける事となるのかもしれません。

 スロバキア空軍はF-16block70戦闘機の初号機を受領しました。ロッキードマーティン社は現在F-35戦闘機をフルレート生産中となっていて、F-16戦闘機の生産設備をグリーンビル工場に移設した後、製造の遅れが伝えられていましたが、このほど最初の2機をグリーンビル工場においてスロバキア空軍へ引き渡すこととなりました。

 F-16block70戦闘機は従来のF-16C戦闘機と比較し、AESAレーダーのAPG-83採用等と性能が格段に向上しており、スロバキア空軍は独自の防空能力を強化するうえで重要な一歩となります。スロバキア空軍はこの2機を要員訓練用や整備訓練用としてアメリカ本土において運用能力を完熟させたのちに2024年中ごろにスロバキアへ搬入する。

 スロバキア空軍は14機のF-16を導入する計画で2025年までに順次引き渡されるとのこと。第四世代戦闘機であるF-16ではありますが、block70は運用時間が従来型の二倍に当たる1万2000時間まで延長されていて、もともとF-16はソフトウェアアップデートにより能力を拡張する理念の機体であるため、長期の活躍が機体されています。
■C-130J-30輸送機
 C-130Jはかなり取得費用が高くはなっているのですが継続的なアップデートを行っています、さて本邦のC-130H後継はどうなるのか。

 ノルウェー空軍は改良型C-130J-30輸送機初号機を受領しました。これは2012年までにノルウェーが導入したC-130J-30を近代化改修した際にロッキードマーティン社が最近完成させたblock8.1アップグレードキットを採用したもので、ノルウェー空軍はblock8.1アップグレードキット搭載C-130J-30輸送機4機を導入する計画となっています。

 JUG,スーパーハーキュリースジョイントユーザーグループというロッキードマーティン社を中心としたC-130J輸送機のblockアップデートプログラムがあり、アメリカ空軍やアメリカ海兵隊とオーストラリアやドイツとフランスにニュージーランドと共にノルウェーはそのJUG加盟国となっています。輸送機はガーデモエン基地第335飛行隊のもの。

 block8.1アップグレードキットとは、航法装置の強化により地球規模の輸送任務に対応するとともに民間GPSとの連携性能、また旅客機よりも低速で飛行高度も限定される戦術輸送機に在って飛行計画を目的地まで短時間で作成し管理当局に提出する飛行管理システムを有し、また機体自衛装置の能力向上を迅速に可能とする能力も追加されました。

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【防衛情報】EA-37B電子戦航空機の能力向上,サーブ社将来戦闘機概念研究と電子戦型ユーロファイター

2024-05-13 20:22:03 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は空軍関連の話題ですが次世代戦闘機開発と旧式戦闘機置換えと戦闘機の話題が多数ありました。

 タイ空軍はF-16戦闘機後継機計画を構想しています。これは2月29日に発表された空軍将来構想文書によるもので、タイ空軍シンポジウムとして3月4日より行われる年次計画に2037年までの防衛計画の展望が示されました。この中にタイ空軍は現在のF-16戦闘機は2030年代の航空優勢確保に十分な能力を発揮できないと認識を示している。

 パンパクディーパタナクル空軍司令官の署名入りで発表された文書には、F-16戦闘機後継の必要性と共にタイ空軍では喫緊の防空上の課題として、対無人機システムの導入や中距離防空システムの導入も差し迫った懸念事項の筆頭事例として挙げました。このなかでF-16戦闘機など航空機は平均機齢が24年となっており、老朽化の問題も指摘された。

 F-16戦闘機、タイ空軍では1987年よりF-16戦闘機の導入が開始されコラート基地の第102戦闘飛行隊に14機が配備されています、これらの機体はこのままでは2028年より退役が始まります。空軍ではスウェーデンのサーブ社製JAS-39グリペンと、アメリカのロッキードマーティン社製F-16block70を次期戦闘機の候補として示しています。
■EA-37B電子戦航空機の能力向上
 日本ではC-2の派生型を開発しP-3C派生型についてはP-1派生型で置換える構想のある電子作戦航空機です。

 アメリカ空軍はEA-37B電子戦航空機の能力向上についてBAE社と契約を結びました。EA-37Bは愛称がコンパスコール、空軍が永らく運用してきましたC-130輸送機は製のEC-130電子戦機の後継として採用したガルフストリーム社製ビジネスジェット派生型の電子戦航空機で、C-130よりも小柄で高い巡航速度と長大な航続距離を有します。

 ベースラインⅣミッションシステムの搭載、今回能力向上の対象となるのは長距離電磁攻撃能力といい、7号機から10号機までの4機が搭載対象となります。この背景には敵指揮中枢への通信や戦闘システムの監視や攻撃と偵察を任務とするEA-37Bコンパスコールについて、監視任務などへの妨害行動への対抗手段付与が主眼とされています。
■CV-22オスプレイ
 自衛隊も運用再開だ。

 アメリカ空軍は墜落事故を受けてのCV-22オスプレイの飛行禁止を解除しました。飛行禁止は2023年11月29日に日本で発生したCV-22墜落事故を受けてのもので、空軍特殊作戦司令部要員など8名が殉職しています。空軍は3月1日に週明けにも運用禁止を解除する方針であると発言、これをAP通信が報道しました。停止期間は三か月に及ぶ。

 CV-22の墜落事故について、何故事故に至ったのかは不明であるが何故墜落したのかは判明した、として原因にヒューマンエラーの存在を示唆しています。オスプレイはアメリカ空軍とアメリカ海兵隊とともに陸上自衛隊が運用しています。事故要因の説明を受けたオースティン国防長官はメーカーの事故防止措置計画を支持し飛行再開に至りました。
■レンジホークス
 日本では時間がかかった為に導入開始間もない装備ではあるグローバルホークですがアメリカでは便利に退役後使われているもよう。

 アメリカのノースロップグラマン社は余剰となるRQ-4無人機を極超音速機試験支援用に改修します。RQ-4といえばグローバルホーク無人偵察機であり、40時間近い滞空時間と旅客機巡航高度よりも高い高度をゆっくりと滞空する無人航空機ですが、これは別にグローバルホークそのものを極超音速航空機へ改造するというわけではありません。

 レンジホークスといい、アメリカ空軍から余剰となるRQ-4を試験の計測用に改修し2025年までにアメリカ国防省試験資源管理センターへ納入するというもの。極超音速機や極超音速兵器の評価試験には従来、船舶などが用いられていましたが、高速で飛行する試験機と試験空域までは船舶では時間がかかりすぎ、無人機を計測機にするというもの。

 レンジホークスはその一例ですが、空軍は退役したRQ-4グローバルホークを27機装備しており、既にこのうちの3機はカリフォルニア州エドワース空軍基地アームストロング飛行研究センターに3機が配備され、NASAアルテミス計画に基づく月面探査計画の試験機評価支援などに活用されています。退役機を無駄にしないアメリカらしい試みです。
■サーブ社へ将来戦闘機概念研究
 次世代戦闘機開発が本格化しているのは世界の趨勢ですが日本の方のGCAPもX-2の知見などを活かせるのでしょうか。

 スウェーデン国防省はサーブ社へ将来戦闘機概念研究を発注しました。サーブ社は現在もJAS-39グリペン戦闘機を製造しており、近年ではブラジルへ改良型のグリペンE戦闘機をF-39戦闘機として納入しており、またスウェーデン空軍でもグリペンEは採用され配備は進み、そして既存型であるJAS-39C/Dの能力向上改修も進められています。

 将来戦闘機概念研究は、まず期間としては2024年から2025年までを想定し、更にスウェーデンのNATO加盟に併せ、NATOがもとめる北欧地域の防衛などとの関係性という従来の重武装中立政策下では見られなかった概念、そして有人機と無人機の協同といういわゆるMUM運用、サーブ社のグローバルアイなど早期警戒機との連接が研究される。
■KF-21ボラメ
 第4.9世代戦闘機ではあるものの日本がX-2で実験機どまりであった為にあの活力は見習いたいものなのです。

 韓国のKF-21ボラメ戦闘機は初の空中給油試験を成功させました。給油試験はソウル南東296kmの泗川基地を起点に実施、試験へはKF-21ボラメ戦闘機の試作五号機と韓国空軍のKC-330空中給油輸送機が参加しDAPA韓国国防調達計画局が試験を実施しました。この空中給油によりKF-21は戦闘行動半径が50%拡大すると期待されています。

 KF-21戦闘機は2026年に開発完了を予定、量産計画は2028年までに40機、2032年までに120機を導入する計画で、第五世代戦闘機ではないが第四世代戦闘機を圧倒出来、第4.5世代戦闘機にステルス性を付与した戦闘機という位置づけで、韓国政府が開発費の80%を負担し、また国際共同開発としてインドネシアが20%の費用を負担しています。
■アグニⅤ
 普段使いしないでほしいミサイルの話題だ。

 インド国防省は新型のMIRV多弾頭型アグニミサイルの初試験を実施しました。アグニⅤとして開発がすすめられたミサイルは3月11日、初の発射実験に臨みその試験を成功させています。MIRV方式としてミサイル一発には10基から12基の核弾頭を搭載可能で、各核弾頭は400㎏程度を見込んでおり、一発で複数目標を攻撃可能となります。

 アグニⅤは慣性航法装置とリングレーザージャイロにより誘導され、MINGSマイクロ慣性航法システムという新しい航法システムを補完的に搭載、こちらはGPS電波などを誘導の補完に用います。射程はインド国防省の主張では8000㎞とされていますが、ミサイルの規模などをもとに推測される射程では5000㎞から7000㎞であると考えられます。
■LGM-35Aセンチネル
 核兵器反対を叫ぶのは自由ですし廃止できる具体的手段が有るならばそうするべきですが大量の費用を投じて抑止力を維持しなければ一旦開いてしまったパンドラの箱を人類滅亡以外で閉じるには時間がかかるのです。

 アメリカ空軍はLGM-35Aセンチネル大陸間弾道弾の固体ロケットモーター試験を実施しました。テネシー州のアーノルド空軍基地に置かれた開発複合拠点での実施された試験ではステージ3ロケットモーター試験が実施されまして、密閉試験施設において行われた燃焼試験は正常にロケットモーターが機能し所定の評価を収めたとのことです。

 LGM-35Aセンチネル大陸間弾道弾はGBSD地上配備型戦略核抑止力として、現在配備されているミニットマン3大陸間弾道弾の後継と成ります。主契約企業はノースロップグラマン社で2020年に133億ドルの開発契約を結びましたが、開発は予定よりも時間を要しており、またインフレなどの開発費不足という影響も出ている装備開発です。
■T-7Aレッドホーク
 T-38はファントムよりも設計が古いのですが未だ当面使わなければならず一方で別の航空機をアメリカと日本で共同開発するという。

 アメリカ空軍はT-7Aレッドホーク練習機開発がさらに一年遅延すると発表しました。サーブ社のJAS-39戦闘機基本設計を基に開発された練習機ですが、空軍の操縦士資格見直しによる大型の操縦士に対応する射出座席開発と適合化などに問題が生じていたこの数年間、更に今度は飛行プログラム開発がその開発計画を遅延している構図とのこと。

 T-7Aレッドホークは当初遅延して2027年にIOC初度作戦能力獲得を目指していましたが、今回の遅延によりこれも2028年にずれ込むもよう。現時点ではアメリカ空軍は1950年代に設計されたT-38練習機を使用し続けており、基本設計は兎も角としてどの機体も深刻な、危険とさえいえる老朽化を妥協して練習機として運用している状況です。
■ACP自律連携型プラットフォーム
 イギリスはマーリン早期警戒機やコメット哨戒機など大失敗を繰り返している感じですが。

 イギリス空軍はACP自律連携型プラットフォーム戦略を研究中です。防衛用無人航空機戦略の一環として進められるこの計画では、過去の軍事作戦などから無人航空機が今後十年以内に到達できる能力を見極めるとともに、同盟国の無人機い導入概況や無人機との連携能力、イギリス産業界やパートナー国の無人機技術能力なども見極めるという。

 ACP自律連携型プラットフォーム戦略では費用対効果も踏まえたうえで、勿論陸海空軍の無人機計画とも連接し検討を進めるとのこと。特に重視されるのは低コストという点で、有人航空機の拡張性を更に広める視座に立っての無人航空機、そして人的リスクの低減という視座にも立ち、無人航空機運用の在り方を研究しているとのこと。
■パトリア社F-35部品
 サプライチェーン構築という。

 フィンランドのパトリア社はF-35部品製造に参画するためのロッキードマーティン社との間で覚書を締結しました。具体的にはF-35戦闘機の車輪部分格納扉を製造することになり、今後はロッキードマーティン社からの技術移転手続き交渉が始まる、これによりパトリア社もF-35戦闘機の多国間国際分業生産に参画することへ大きく前進しました。

 F-35戦闘機は現在、技術的問題は生じていますが各国が導入できる第五世代戦闘機としての唯一ともいえる選択肢となっている一方、下請け生産を担う予定であったトルコの除名により多国間国際分業体制に限界が生じており、この為にロッキードマーティン社はF-35部品製造に参画可能であるパートナー企業を慎重に選定している段階です。
■電子戦型ユーロファイター
 電子妨害機開発はいっけん大変なように見えて戦闘機を確保出来ればありもので済ます事は出来ない訳でもない。

 ドイツ空軍は電子戦型ユーロファイター用にアレキシス電子戦センサーを採用します。アレキシス電子戦センサーはスウェーデンの防衛企業サーブ社が開発したもので、ユーロファイター戦闘機への搭載は翼端部分にセンサーアレイアンテナを装着する一体型のもので、ユーロファイター戦闘機の機動性を損なわず電子戦機能を追加可能だ。

 アレキシス電子戦センサーの搭載におり、例えば電子妨害や脅威レーダー波照射を受けた際には発信源を検出し、その位置標定はもちろん識別も可能となります、その上で対抗電子戦や積極的な電子妨害なども可能とする装置です。実用性としては既にスウェーデン空軍がJAS-39グリペン戦闘機へ搭載事例があり実績のある装備といえるでしょう。

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【防衛情報】アメリカ海兵隊ハリアー活躍とオランダ海軍防空フリゲイト,イギリストライデントⅡD5ミサイル実験失敗

2024-04-29 20:24:44 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題を集めましたが懐かしのといわれる海兵隊航空機の活躍の話題から。

 アメリカ海兵隊のハリアーが紅海海上で無人機迎撃に意外な活躍を続けています。ハリアー攻撃機はアメリカ海兵隊でのF-35B戦闘機配備進展により徐々に退役が進んでいますが、イエメンの武装勢力フーシ派による紅海海上での弾道ミサイルや自爆用無人機を用いた商船攻撃が拡大するとともに艦載機として紅海へ進出し防空作戦を展開中です。

 ハリアーは現在、強襲揚陸艦バターンの艦載機が対応しており、ハリアーは7機の無人機を撃墜したとのこと。バターンはワスプ級強襲揚陸艦、この艦はF-35Bの運用にも対応していますが竣工時からハリアーの運用を念頭とした設計を採用している。自爆用無人機はコスト面で10万ドル前後、各国海軍は艦対空ミサイルでの対応を余儀なくされる。

 スタンダードSM-2ミサイルを使用した場合の一発当たりの費用は220万ドルであり、数十発単位で無人機を使用されている現状ではスタンダードミサイルはあまりにそのコストが高くつきますが、ハリアーであれば機関砲や短距離空対空ミサイルによる無人機制圧でも可能、また超音速飛行に対応しない性能が逆に有利に機能するのかもしれません。
■AS-532-ASuW
 ピューマシリーズは固定翼哨戒機なみの武装を搭載できるということで昔から話題です。

 ルーマニア海軍はAS-532-ASuWクーガー対艦戦闘ヘリコプター2機を導入します。エアバス社はヘリコプター部門の前身であるユーロコプター社時代からシュペルピューマヘリコプターシリーズの対艦攻撃型を提案しており、もともと大型のピューマシリーズの機体規模を活かし、強力なエクゾセ空対艦ミサイル2発の搭載を提案してきました。

 AS-532-ASuWクーガー対艦戦闘ヘリコプターについては、ルーマニア自身が1月19日にEU欧州連合へ導入を通知したことで明らかとなりましたが、詳細は示されておらず、ただ、AS-532-ASuWクーガー対艦戦闘ヘリコプター2機の取得費用は1億7907万ドルであると示されています。エアバス社はこの導入について具体的な情報を開示していない。

 エアバスヘリコプターズ社が製造するAS-532-ASuWクーガー対艦戦闘ヘリコプターですが、過去に示されたエクゾセミサイル搭載型であるかは明らかにされていません、ただ、今回の調達はルーマニアの防衛企業IARインダストリアアエロノーティカロマーナ社が対応するとのこと。ルーマニアは黒海沿岸諸国でありロシア黒海艦隊と対峙している。
■ヴィアナドカステロ級
 満載排水量ですと護衛艦いしかり同程度ということか。

 ポルトガル海軍はヴィアナドカステロ級哨戒艦6隻を増強するとのこと。ヴィアナドカステロ級哨戒艦は現在ポルトガル海軍に4隻が装備されている外洋哨戒艦で、NPO2000計画としてポルトガル海軍の大西洋戦略の一環として2011年から2018年にかけて順次、建造されたもの、建造はポルトガルの西海造船所が担当しています。

 ヴィアナドカステロ級哨戒艦は満載排水量1850t、全長は83.1mで全幅12.95m、ディーゼルエレクトリック方式により21ノットで航行可能であり、武装として30mm機関砲と機銃4丁、また中型ヘリコプターの発着用甲板を有しており、乗員は35名で必要に応じ海兵隊員など32名が乗艦可能、必要に応じてパワープロジェクションシップとなる。

 ヴィアナドカステロ級哨戒艦は今回の建造により10隻体制となりますが、ポルトガル海軍によれば今回増強される6隻については後期型という位置づけとなり、前期型の4隻と比較した場合で、ASW対潜戦闘用モジュールシステムの搭載能力やVTOL-UAV垂直離着陸型無人航空機の運用能力を付与しISR情報収集能力等を付与する計画とのことです。
■デゼーヴェンプロヴィンシェン級
 デゼーヴェンプロヴィンシェン級の後継艦にかんするもの。

 オランダ海軍は防空フリゲイト4隻を建造する計画とのこと。これはオランダのクリストフファンデルマート国防相が3月1日に議会に提出した書簡により示されたもので、その費用として4隻で35億ユーロ以上の費用を見込んでいるとのこと。建造はオランダのダーメン社が担当し兵装システムについてはフランスのタレス社を想定し交渉する。

 デゼーヴェンプロヴィンシェン級フリゲイト、オランダ海軍には現在4隻の防空フリゲイトが配備されていますが、デゼーヴェンプロヴィンシェンの就役は2002年で相応に老朽化が進んでおり、4番艦エヴァーツェンも竣工は2005年、このため2030年代半ばには老朽化により退役の時期を迎えることとなります。新型艦はこの4隻を置き換えを期す。

 新型防空フリゲイトは極超音速兵器など新しい脅威に対応する性能を目指すとのこと。デゼーヴェンプロヴィンシェン級フリゲイトは満載排水量6200t、そしてオランダ海軍にフリゲイトは同級4隻のほか、カレルドールマン級フリゲイトの1993年就役であるヴァンアムステルが現役、乗員不足で保管中のファンスパイクを含めても6隻となっています。
■AW-159をガンシップ化
 重要な一歩です。

 フィリピン海軍はAW-159哨戒ヘリコプターをガンシップ化しました。長らく潜水艦を探知する手段がなかったフィリピン海軍はこのところの水上戦闘艦整備と共に対潜能力を高めており、併せて導入したのがAW-159ワイルドキャット哨戒ヘリコプターです。そしてTIAC海軍技術検査受入委員会はその武装化の試験をこのほどおこないました。

 AW-159哨戒ヘリコプターに新しく搭載されたのは航空機搭載用の12.7mm重機関銃でドアガンとして搭載し、巡航飛行時は機外に装着される方式のもの。ホセリサール級フリゲイトの艦載機として2機が配備されるAW-159は哨戒ヘリとしては母艦の捕捉した目標へ魚雷を運搬する航空機ですが、グレーゾーン事態に対応すべく機銃を搭載しました。
■マサチューセッツ
 先日横須賀に来ました攻撃型原潜も戦艦の名前を冠していましたが。

 アメリカ海軍の新しい攻撃型原潜マサチューセッツが進水式を挙行しました。ハンティントンインガルスインダストリー社のニューポートニュース造船所において行われた進水式ではドックから進水ではなく建造ドックから浮きドックに船体を移したうえで浮きドックを進水させタグボートにより潜水艦桟橋に移動させる方式が用いられました。

 マサチューセッツは2004年に竣工したヴァージニア級攻撃型原潜の25番艦であり、ヴァージニア級攻撃型原潜のblockⅣに区分される潜水艦です。そしてマサチューセッツはアメリカではじめてバーチャル起工式を行った潜水艦です。こういうのも起工式は2020年12月19日、COVID-19感染拡大により起工式を開けず、この程無事進水式を迎えた。
■FREMMフリゲイト
 いつか日本でも見たいものだ。

 イタリア議会はフリゲイト2隻と戦車132両などに関する国防省装備取得計画を承認しました。これは議会国防委員会が2月21日に提出した計画案で、ロシアウクライナ戦争を受けての緊急国防計画の一環だ。戦車はドイツ製レオパルト2、建造される2隻のフリゲイトはカルロベルガミーニ級として知られるFREMMフリゲイトの改良型です。

 カルロベルガミーニ級フリゲイトはイタリア海軍が10隻を計画している新型艦で、既に8隻が就役しています。今回の増強により保有数は12隻となり、また、建造期間が延長されるため、エジプトに採用の実績がある輸出型の更なる建造も期待されています。カルロベルガミーニ級2隻の建造費は20億ユーロ、米貨換算で22億ドルにたっします。
■ユーリティ1700
 日本ならば意外とはやく量産してしまいそうな印象がある水準の。

 アメリカ海軍は関連労働者解雇を理由にスウィフトシップ社との契約を停止しました。スウィフトシップ社は海軍のユーリティ1700機動揚陸艇計画における主契約企業となっていますが、同社は2024年1月以降短期間でユーリティ1700機動揚陸艇計画関連工員を少なくとも100名解雇しており、海軍が契約不履行に繋がるとして警告していたもの。

 ユーリティ1700機動揚陸艇計画は新型のLCU建造を目指すもので2018年に競合他社の案を差し置き海軍に選定されたもの。既に設計費用と一番艇建造費として1800万ドルの契約を、続いて2019年に2隻の建造費2670万ドル、2020年には5隻で5010万ドルの契約をむすび、スウィフトシップ社は最大で32隻が建造される計画となっていました。

 スウィフトシップ社は建造能力はあるとして海軍との間で和解プロセスの開始を望んでいますが、元々2023年に竣工予定であった最初の2隻は未だ建造中だ。他方でアメリカ国内のインフレは厳しく、同じく海軍のLCUを建造するオースタルUSA社は2023年にスウィフトシップ社と同規模のLCU建造契約を3隻で9150万ドルにて結んでいます。
■トライデントⅡD5
 アメリカのコロンビア級戦略ミサイル原潜の建造費が二兆円を超えるようですが維持の難しさをイギリスの話題から。

 イギリス海軍はトライデントⅡD5潜水艦発射弾道ミサイル実験に失敗しました。これは1月30日に戦略ミサイル原潜ヴァンガードがアメリカ本土フロリダ州沖において実施したもので、イギリス国防省は詳細を発表していませんがイギリスのサン紙は発射管からは圧縮ガスにより発射されたものの第一段ブースターが不作動であったと報じた。

 ヴァンガードから発射したトライデントⅡはそのまま潜水艦付近に落下、海面付近で破損したとのことですが、ヴァンガード艦内には2016年以来の潜水艦発射弾道弾試験視察に第一海軍卿ベンキー提督やジェームズカートリッジ国防調達担当閣僚が乗艦していたとのことで、ヴァンガードも今回の発射試験へ7年間の調整をしていた後の失敗という。

 トライデントⅡミサイルそのものの不具合化といえばそうではなく、同じミサイルを2023年9月にアメリカ戦略ミサイル原潜ルイジアナがサンディエゴ沖で発射試験を行った際には正常に飛行しています。他方で、ヴァンガード級戦略ミサイル原潜は前回の2016年にもミサイルが正常に飛行しない試験失敗を起こしており、二回連続の失敗です。
■セントオールバーンズ
 海軍力を支えるのは造船業だ。

 イギリス海軍は23型フリゲイトセントオールバーンズの定期整備完了を前倒ししました。これはバブコック社により定期整備を行っていたセントオールバーンズについて、予定を3か月間前倒しし艦隊に再就役できたとのこと。セントオールバーンズは16隻が建造された23型フリゲイトの最終艦として2003年に竣工しています。

 シーウルフミサイルの廃止とより射程の長いシーセプターミサイル搭載、ソナーシステムの後身とディーゼルエンジン4基全てと推進モーターの交換や戦闘システム近代化などが行われました。セントオールバーンズの定期整備は2019年よりデボンポートのハブコック社施設において開始され、作業時間は延べ120万時間ということでした。

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【防衛情報】ユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプターとカエサルMk2自走榴弾砲,A2CS陸軍装甲戦闘システム計画

2024-04-22 20:01:02 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は時間の関係で項目ごとではなく第二北大路機関からの単純なインポート記事です。

 ドイツ連邦軍はユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプター退役を前倒しするとのこと。経済性の問題からドイツ連邦軍は過去に優先度の高い装備品取得にユーロコプタータイガー運用費を削減し転用した結果、部品不足と整備費用不足により稼働率が運用国中最低水準まで低下し、運用基盤再建にも多額の費用が掛かるとして退役を決定しました。

 計画では2038年までに退役させる方針ではありましたが、まず現在保有している55機を2028年までに33機まで削減させ、2032年に運用を終了すると、退役計画を5年間前倒しした構図です。ドイツ軍が運用するタイガーはKHT型、これは旧UHT型といい対戦車ミサイルとロケット弾は搭載するものの、機関砲を搭載しない型式となっています。

 ドイツ軍が退役を決定した背景には、KHT型について今後運用を継続するにはスペインやフランスのようにMk2plusに改修が必要となるため、費用面での限界という背景があります。ユーロコプタータイガー運用終了はオーストラリアに次いで二か国目、オーストラリアでは先進的なAH-64Eへ置き換えますがドイツはH145Mで妥協します。■

 イタリア陸軍は50億ユーロ規模のA2CS陸軍装甲戦闘システム計画を数か月以内に開始します。イタリア陸軍は装甲戦闘車としてイタリア国産のダルド装甲戦闘車を運用していますが、この車両は2000年代に配備が開始されたものの設計は1988年完成のアルミ合金車体設計のものが予算不足により量産が2000年以降となっていた事情があります。

 ダルド装甲戦闘車は設計から改修に限界があるとともに延命措置にも限界があり、また当初計画を大幅に下回ったことで必要な定数を確保できず部隊そのものを縮小することで糊口を凌いでいました。この為イタリア軍ではダルド装甲戦闘車とともにさらに老朽化が進む古い車両などを1000両規模の新型装甲車で置き換える検討を進めてきました。

 A2CS陸軍装甲戦闘システム計画として進められるこの計画は、ロシアウクライナ戦争の長期化という緊張を受けて加速し、数か月以内に協力企業、イタリアのレオナルドやイヴェコ、独仏多国籍企業KNDS,ドイツのラインメタル社などといった防衛大手から協力企業を選定するとして、イタリア国防省は2024年前半に計画を本格化する構えです。■

 インド陸軍は旧式化したFH-77榴弾砲の後継装備を検討中のもよう。FH-77はスウェーデンのボフォース社が開発した39口径の牽引式榴弾砲で、3発の弾庫を備えた半自動装填装置を採用し最初の12秒間で3発の効力射を行うことが可能という装備です。インド軍はこの後継装備について、インド陸軍砲兵の主力とし得る想定で計画を進めている。

 FH-77榴弾砲後継装備は、インド軍の想定では牽引時の重量が15t以下で砲身は52口径、現在装備されている155mm砲弾を40㎞以上まで到達させる性能とともに砲身命数は1500発の射撃か20年間の運用に耐える事、そしてインド企業が設計に参加し主要部分を含め少なくとも50%の構成部品をインド国内で生産し供給できるもの、とされている。

 インド国内の防衛産業ではバーラトフォージ社のバーラト52型野砲が重量13tとなっており、またタタグループも18tの先進牽引砲を試作しています。このほか、インド国有兵器工廠では既存のダヌーシュ榴弾砲を45口径型とした14tの牽引砲を試作しており、この技術的要素の上で52口径砲を開発し射程を42㎞に延伸させる改良型を計画中です。■

 アメリカ陸軍は600基のコヨーテ2C無人機迎撃機を調達します。これは契約は2月9日に発表されています。コヨーテ2Cとは、アメリカのRTX社が開発した無人機迎撃用地対空ミサイルシステムで、調達費用は600基が7500万ドルとのこと。コヨーテシステムは小型の対空レーダ装置や追尾装置と防空システムなどを一体化した自己完結型のもの。

 コヨーテ2Cそのものは地対空ミサイルそのものであり、目標付近まで進出し信管を作動させ迎撃するもの、システムとしてはJLTV統合軽量戦術車両などに搭載しコヨーテ2C以外にもJLTVに車載する機関砲などを併用し無人航空機を迎撃します。今回契約された600基は最初の契約であり、アメリカ陸軍は今後数千基を揃えミサイル防衛を強化する。■

 インドネシアのPT-SSE社は装甲車開発にフランスのテレリス社と協力を発表しました。テレリス社は装甲車の車体部分を下請け協力している企業であり、またサイバースペースを利用したデジタル車両共同開発システムなどを手掛け、これは具体的に言えば、遠隔地にある開発拠点同士をつないだ分業体制の技術でも知られている企業です。

 CELERIS四輪駆動軽装甲車、テレリス社は最近独自に装甲ジープ型の装輪装甲車を開発しており、今回の協力ではCELERIS四輪駆動軽装甲車をPT-SEE社に提供し、これをもとに装甲車両を開発するとのこと。インドネシアは最近、トルコとの協力で開発するハリマウ中戦車の量産開始遅延など防衛産業の基礎工業力限界を痛感しています。■

 オランダ陸軍はヘルファイアミサイルを取得します、ミサイルはAH-64Eアパッチガーディアン用とともにMQ-9リーパー無人航空機用の弾薬という位置づけで、このほどアメリカ国務省の対外供与認可を受けました。空中発射型のAGM-114R2ミサイル、取得数は386発とのことで関連機材を含めた取得費用は1億5000万ドル規模となる見通し。

 AH-64Eアパッチガーディアンについては1995年に導入したオランダ軍アパッチの継続的な近代化改修が行われ、現在アパッチロングボウからの改修完了機が順次オランダへ再配備されています。またMQ-9はMQ-9blockⅤを4機、2023年に導入しており、追加の4機取得も計画、前線用2基と本国用2基の管制システムなども配備されています。■

 フランス国防省はカエサルMk2自走榴弾砲109両の追加調達を決定しDGA軍事調達総局はKNDS社とネクスター社との間で契約を結びました。今回導入されるカエサルMk2自走榴弾砲によりフランス陸軍はAUF-1自走榴弾砲を置き換える構想で、これによりフランス軍は装軌式自走榴弾砲を全廃し装輪自走榴弾砲へ統合することとなります。

 カエサルMk2自走榴弾砲は六輪式のそうりんじそうほうで現在各国て提供されているMAN社製の八輪私事装輪自走砲とも、また現在フランス軍に装備されている六輪式のウニモグトラックを用いたものとも異なる装備となり、ウニモグトラックを用いたカエサルMk1自走榴弾砲についてもフランス軍は順次カエサルMk2自走榴弾砲により置き換えます。

 カエサルMk2自走榴弾砲を量産する背景には、この車体部分に用いられているのがスコーピオンプログラムとして進められる車体部分や戦闘システム統合化の一環として進められており、既存のカエサルMk1自走榴弾砲と比較して機動力や装甲防御力で大きな前進があるとのこと。計画では最初の車両は2026年にフランス軍へ納入される予定です。■

 ラトビアのアトラス社はGPSに依存しないTETHER無人航空機システムを試験中です。これは厳しい電子戦環境においては無人機が通常依存するGPS電波などが妨害により使用不可能となる懸念があり、衛星通信システムなども妨害されるため、無人機運用が不能になり、実際ロシアウクライナ戦争においてはそうした状況が度々確認されています。

 アトラス社は2023年内にもウクライナにおいて既に試験飛行を実施し、試験では10㎞以内の距離において70mの高度で滞空実験を実施したとのこと。電子攻撃はロシア軍が実施するものはロシア軍自身の通信も無効化するため、継続的に展開されるものではありませんが、電子攻撃装置を発見し野砲により破壊する戦術が開発されています。

 TETHER無人航空機システムは、こうした電子攻撃が加えられた場合にも無人機による情報優位を担保するとともに、ロシア軍電子戦兵器の位置を捕捉し砲撃により破壊する用途に重要な性能を発揮できるでしょう。なお、GPSに依存しない装備として、固定翼のトルコ製バイラクタルTB-2も指令ビーム方式を用いるため、電子戦下で有用です。■

 スペイン陸軍はチェンタウロ戦車駆逐車の近代化改修計画を発表しました。先ず改修試作車の開発に二度に分け各々530万ユーロと330万ユーロの開発契約は結ばれています。スペイン陸軍はイタリアで開発されたチェンタウロ戦車駆逐車の機動力と火力に注目し、VRCC-105装甲偵察車として84両を調達し、3個連隊に分散配備しています。

 チェンタウロ戦車駆逐車はスペイン軍のバビア第4連隊とルシタニア第8連隊にエスパーニャ連隊に配備、これらの3個連隊はスペイン空軍の緊急展開任務と連携するべくカバレリア兵営に駐屯しています。チェンタウロのスペイン軍での評価は比較的高く、スペイン軍全体の近代化計画と歩調を合わせられる水準まで能力向上することが狙い。

 チェンタウロ戦車駆逐車、近代化計画は砲身サーマルスリーブの交換、ROVIS戦闘情報システムへの対応改修、機銃をMG-42/59からMG-3機銃に換装し最大3丁まで増備すること、車体周辺部分に中空装甲区画を広げ、発煙弾発射装置の改良などが計画されています。なお、イタリアでは120mm砲搭載のチェンタウロ2が開発されました。■

 アメリカ陸軍はM-1150工兵戦闘車改良でピアソンエンジニアリング社と契約を結びしました。契約規模は1121万ドル、M-1150はアサルトブリーチャーの愛称で知られ、M-1エイブラムス戦車の車体を利用した戦闘工兵車、車体全体の戦闘工兵車への改修はゼネラルダイナミクスランドシステムズ社が担当、ピアソンエンジニアリング社は下請け。

 ピアソンエンジニアリング社はイギリス企業で除雷鍬や地雷処理装置などを担当しています。アメリカ陸軍はM-1150はアサルトブリーチャーを187両調達する計画で、しかし、2023年のロシアウクライナ戦争ウクライナ夏季反転攻勢において戦闘工兵車両の能力と数に関する重要な戦訓が得られ、現状装備数が全く足りていない事が判明しています。

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【防衛情報】S-106グローバルアイ早期警戒機とT-7Aレッドホーク,KF-21ボラメにCCA無人僚機

2024-04-15 20:23:45 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は各国の空軍関連の情報を手元にある写真と無理矢理都合をつけて無理が在ってもそのまま纏めました。

 スウェーデン空軍が導入するS-106グローバルアイ早期警戒機初号機がスウェーデンに到着しました、防衛力強化のために2022年6月に導入契約を結んだもので、監視指揮航空機として2機が73億スウェーデンクローネ、米貨換算で7億1000万ドルの契約となっていまして、オプション条項として更に2機の追加も可能となっています。

 S-106グローバルアイ早期警戒機は原型機がカナダのボンバルディアグローバル6000型ビジネスジェットで、現在スウェーデン空軍にはサーブ340派生のサーブ340AEW&Cアーガス早期警戒機が4機運用されていますが、この後継機となります。アーガスとグローバルアイを比較した場合、航続距離と滞空高度が能力向上しているとのこと。

 グローバルアイに搭載されるレーダーはサーブ社が開発したエリアイER空中警戒装置とイタリアのレオナルド社が開発したシースプレー7500E海洋監視レーダーで、早期警戒機と洋上哨戒機として機能、航空機については最大450㎞で、艦船に対しては550㎞の距離で探知が可能であるとともに最大11時間にわたる任務飛行が可能となっています。
■ギリシャ空軍導入F-35
 F-35運用国がまたひとつ。

 ギリシャ空軍が導入するF-35戦闘機86億ドルの輸出がアメリカ国務省の認可をうけました。ギリシャ空軍にはミラージュ2000戦闘機やF-4ファントム戦闘機など後者については日本でさえ退役しているほどの老朽機が現役で残っており、その後継機として最大40機の第五世代戦闘機F-35戦闘機の導入をアメリカ政府に打診していました。

 F-35戦闘機について、アメリカ国務省が認可した86億ドルの輸出についての内容はCTOL型のF-35A戦闘機の40機と戦闘機用に予備を含めた42基のプラットアンドホイットニーF-135-PW-100エンジン、チャフフレアディスペンサーから支援機器や試験支援費用、そして搭乗員用にAN/PYQ-10携帯暗号端末まで含まれています。

 F-4E戦闘機の老朽化はギリシャ空軍でも2000年代初めに問題化していて、ギリス亜空軍は2009年にF-35戦闘機導入を検討しましたが、ギリシャ債務危機、15機から20機程度のF-35を検討するも続くギリシャ経済危機により2017年に戦闘機計画が棚上げ、2021年に制式に戦闘機計画が再開、2027年に導入をアメリカに打診していました。
■JASSM-ER
 自衛隊はF-15から運用するミサイルだ。

 オランダ空軍はJASSM-ER巡航ミサイルを導入します。AGM-158B射程延伸型統合スタンドオフミサイルJASSM-ER,オランダ政府はこの射程の長いミサイル120発と関連装備の導入を計画し、このほどその有償供与がアメリカ国務省により認可される事となりました。関連機材には模擬弾15発や訓練ミサイルと試験機器及び擬製弾薬などを含む。

 JASSM-ERはロッキードマーティン社製、ミサイル本体はステルス形状を採用し450㎏の貫通型弾頭を搭載、原型のJASSMは射程を370㎞としていましたが、ウィリアムズ F107-WR-105ターボファンエンジンの採用により射程は925㎞に延伸しています。このミサイルは2023年に航空自衛隊も50発を1億0400万ドルで有償供与が決定したもの。

 F-35戦闘機を導入するオランダ空軍にとり従来のF-16戦闘機と比較し非常に大きな打撃力が付与されることとなります。オランダ空軍は現在52機のF-35戦闘機導入計画を推進中で、特に主開発国以外としては2番目にF-35戦闘機の配備を開始したオランダ空軍にはこの能力を最大限発射する長射程の巡航ミサイル導入は大きな意味があるでしょう。
■APY-9レーダー
 自衛隊は前線の空中警戒管制にE-2を充てて後方の全般防空作戦にE-767をあてているという個性的な運用をおこなう。

 ロッキードマーティンは75基目のAPY-9レーダーを納入しました。これはE-2D早期警戒機を製造するノースロップグラマン社の協力企業であるロッキードマーティン社がE-2D早期警戒機用APY-9レーダーの製造状況を発表したもので、計画ではAPY-9レーダーは製造が2020年代後半で終了し2040年代まで維持サービスが行われるという。

 アメリカ海軍は86機を、またロッキードマーティン社によれば航空自衛隊は18機、フランス海軍は3機を導入するとしており、既に航空自衛隊ではE-2Dの運用が開始されています。ロッキードマーティン社の発表を信じるならば自衛隊は保有するE-2CすべてをE-2Dに置き換え、且つ増強するのですが、維持が2040年代に終了する御は残念です。
■スカイガーディアン
 MQ-9は早期警戒機としても派生型が提案される。

 インド軍が導入を希望するMQ-9無人機の有償供与がアメリカ国務省により承認されました。インド政府はMQ-9Bスカイガーディアン無人機31機と関連資材の導入を希望しており、その取得費用は39億9000万ドル相当となります。関連資材にはAGM-114Rヘルファイアミサイル170発やGBU-39B-LSDB小型精密誘導爆弾310発などを含む。

 MQ-9をインド軍は広大な印度洋の警戒監視任務に充当する構想であり、ミサイルに加えて搭載するAN/SSQ-36ソノブイの調達も要請していることから無人機によりソノブイを散布しP-8哨戒機と連接させる対潜哨戒任務なども用途に含めているとされます。MQ-9は高度15000mを40時間にわたり滞空可能という優れた性能の無人航空機です。
■T-5A新造機
 いっそ日本が欲しくなる様な。

 中華民国台湾空軍は春節前にT-5A新造機受領を発表しました。T-5Aは愛称が勇鷹、台湾のAIDC航空宇宙産業開発総公司が独自開発したもので、中国の年末に当たる1月末までに通算27号機を納入したと発表、現在の計画では22億ドルを投じてT-5A 練習機66機を導入する計画であり、間もなくその所要数の半数を受領する段階を迎えます。

 T-5A 練習機は同じく台湾製のAT-3練習機と複座型として高等練習機と軽戦闘機を兼用しているF-5E/Fタイガー戦闘機の後継機に位置付けられています。高等練習機として設計されたT-5A 練習機は台湾国産戦闘機のF-CK-1経国戦闘機の設計を踏襲し、機体に複合素材を採用しレーダーもAESA方式を採用、有事の際には戦闘機として運用可能です。
■KF-21ボラメ
 F-2戦闘機以来停滞している日本の戦闘機産業から見ますと手堅い戦闘機を設計し輸出という選択肢を思い切って国が全力で圧す様子はちょっとうらやましい。さてGCAPはどうなるのか。

 韓国国防省はKF-21ボラメ戦闘機の量産を開始を決定しました。計画では国防相予算1億7860万ドルを投じて最初の40機を製造する計画という。KF-21戦闘機は韓国がインドネシアと共に独自開発した戦闘機で、その開発には韓国が過去にFA-50軽戦闘機を開発した際と同様にアメリカのロッキードマーティン社が技術協力しています。

 KF-21,韓国空軍では旧式化したF-5タイガー軽戦闘機と老朽化が進むF-4ファントム戦闘機の後継機と位置付けています。KF-21戦闘機は既に2022年に初飛行を終えており、試作機6機が現在各種試験を実施中です、特に搭載するAESAレーダーの評価試験などが本格化する見通して試験は2028年まで継続されるという。量産の決定について。

 開発と製造計画には8兆8000億ウォンが必要となっていて、その開発には費用として韓国国防省が60%とKAI韓国航空工業が20%を負担、そして残る20%をインドネシア政府が負担する計画でしたが2017年を最後にインドネシアの費用負担が停滞しており、今回具体的製造計画を示す事でインドネシア側に拠出を促す目的があると考えられています。
■T-7Aレッドホーク
 現在使っているT-38練習機は自衛隊のT-4はもちろん退役したT-2練習機よりも古い航空機となっているのですがそれは。

 アメリカ空軍が導入するT-7Aレッドホーク練習機が部品不良により納入が遅延する、2月2日にボーイング社が発表しました。計画が大幅に遅延しているT-7A練習機は量産試作機が漸く納入を開始した段階ですが、今回の部品不良により次の量産試作機納入が数か月遅延するとしています。計画では量産試作4号機が昨年末に納入予定でした。

 T-7Aレッドホーク練習機は、スウェーデンのサーブ社製JAS-39戦闘機の基本設計を基に完全なデジタル設計方式を用い低リスクで高品質な第五世代戦闘機F-35要員用練習機を完成させる計画であり、洗練された外見と当初のJAS-39設計応用といううたい文句は低リスクを期待させていましたが、実態は大幅な遅延に次ぐ遅延の連続となっています。

 量産試作4号機は大幅に遅れ新しい予定では2024年2月中に、そして1月納入予定であった量産試作5号機は3月から4月に納入されるであろうとのボーイング社の見解が示されています。当初計画では2034年までにT-7A練習機を351機導入する予定ですが、それまでは1950年代のT-38練習機を老朽化のまま、運用し続けなければなりません。
■T-7A練習機胴体
 日本のT-XもきになるところですがT-7Aはボーイングの問題により順調に遅れが拡大していて現状のままで大丈夫なのかという。

 スウェーデンのサーブ社はT-7A練習機胴体生産に1億0100万ドル規模の契約を結びました。T-7Aレッドホーク練習機はアメリカ空軍の次期高等練習機、1950年代に設計されたT-38コンバットタロン練習機を置き換える機体ですが、その設計は形状こそ大きく異なるもののサーブ社のJAS-39グリペン戦闘機の設計を取り入れて完成しています。

 JAS-39戦闘機はスウェーデン国内において製造されていますが、サーブ社はこのT-7A練習機計画に併せ、アメリカ本土のインディアナ州に現地生産施設を設置、T-7A練習機の胴体部分製造へ参画を決定しています。今回の1億0100万ドル規模の契約はあくまで限られた先行量産部分の契約となりますが、T-7Aは多数の量産が予定されています。

 1億0100万ドル規模の契約は2023年第4四半期に結ばれたもので、この時点では先行量産機が2機、エドワーズ空軍基地へ到着していた段階です。しかしながら、安全装置や飛行制御プログラムなどサーブ社が関与しない部分においてT-7A練習機は不具合が続発しており、製造数もボーイング社の楽観要素がありましたが、計画自体は前進中です。
■CCA無人僚機
 オーストラリアが進めた賭けのような新技術が実ったといえるのかもしれませんね。

 アメリカ空軍はCCA無人僚機の導入計画を前進させるもよう。具体的には2025会計年度においてCCA契約を締結するべく、計画参加企業を二社乃至三社程度まで選定する方針を2月13日、フランクケンダール空軍長官が空軍協会で開かれた検討会の場において表明しました。背景には予算不足が挙げられるとのこと。空軍は1000機取得を目指す。

 CCA無人僚機にはロッキードマーティン、ボーイング、ノースロップグラマン、ゼネラルアトミクス、アンドゥリル、以上の五社が参加を表明しています。またケンダール長官は、計画は戦略的国際パートナーの参加という可能性を示しており、ロイヤルウイングマンとして開発したMQ-28を完成させたオーストラリアの参加を示しているのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
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【防衛情報】コヨーテ対無人機システムにARV先進偵察車とM-109A7自走榴弾砲,ゾラワル軽戦車

2024-04-08 20:12:14 | インポート
■防衛フォーラム
 近代化改修を繰り返して性能を維持するのか思い切って新型にするのか、自衛隊とイギリス軍の違いというものを感じるところなのですけれども。

 イギリス陸軍が開発するチャレンジャー3主力戦車はモジュラー装甲を採用します、これはRBSLラインメタルBAEシステムズランド社が新しくイギリス陸軍と結んだ契約によるもので、DSTLイギリス国防科学技術研究所が設計した新型のモジュラー装甲を搭載するものとしています。原型のチャレンジャー2は複合装甲を採用していました。

 複合装甲を世界に先駆け開発したのはイギリスで、モジュラー装甲の概要は発表されていませんが、イギリス陸軍はチャレンジャー3主力戦車を将来創設する装甲旅団戦闘団へ集中配備する方針で、防御力を重視した結果とのこと。なお、チャレンジャー3はこのほかにイスラエルのラファエル社製トロフィアクティヴ防護装置を搭載する計画です。
■JLTV統合軽量戦術車
 ハンヴィー後継車両のはずなのですが87式偵察警戒車並の重さという重量級の車両になっていますので軽量戦術車輛とは、と考えてしまうのだ。

 リトアニア軍はJLTV統合軽量戦術車両第一段階導入を完了させました。軽量ではあるが機関銃や野砲弾曳火射撃に対する高い防御力を有するJLTVはバルト三国としてロシアの軍事圧力を受けつつ国家資産に限界のあるリトアニアには重要な選択肢で、2019年にリトアニア国防省はアメリカ政府との間で二段階に分け200両の調達を決定します。

 JLTV統合軽量戦術車両第一段階は先ず100両を取得するもの年、2021年から最初の50両の納入が開始、続いて2023年より50両の納入が開始されました。計画ではこの最後の車両納入は2024年までにとなっていましたが、ロシアウクライナ戦争を受け調達の緊急度が増し、2023年末に最後の2両を納入、2023年内に導入を完了したかたちです。
■コヨーテ対無人機システム
 自衛隊の93式近距離地対空誘導弾システムのようなものでも間に合う気がしますがアベンジャーのようなデータリンクを念頭としていないシステムではこうした装備が必要になるということなのでしょうか。

 アメリカ陸軍はコヨーテ対無人機システムの導入計画を正式発表しました。コヨーテは火器管制装置により各種無人航空機を監視し、発射装置から発射されると無人航空機などに対して有効な打撃を与えるという地対空ミサイルシステムの一種となっています。この調達は2025年会計年度から2029会計年度にわたって行われるという。

 コヨーテ対無人機システムの導入数は、固定式発射装置252基と移動式発射装置52基、固定式Kuバンドレーダ装置118基と移動式Kuバンドレーダ装置33機を取得する計画で、ミサイルそのものの調達数は6700発を見込んでいるとのこと。一発当たりに費用は10万ドルでスタンダードSM-2ミサイルの220万ドルと比較し非常に抑えられている。

 M-LIDS移動式低速度無人機撃破システムを一例に挙げますと、JLTV統合軽量戦術車両に搭載された2両のコヨーテシステムと30mm機関砲を備えたXM-914遠隔操作式銃塔を搭載した車両により成り、またJLTVのほかにはストライカー装輪装甲車へ搭載する検討も進められていて、安価な無人機へは安価なミサイルと機関砲で対処する方針です。
■レオパルト2A7HU
 自衛隊も戦車をもっと考えるべきではと。

 ハンガリー陸軍はレオパルト2A7HU戦車をさらに増強しました、ハンガリー国防省が発表したところによれば1月10日、3両のレオパルト2A7HU戦車が第1装甲旅団へ配備したと発表しました。ハンガリー陸軍はドイツ製装備への切り替えを急いでおり、レオパルト2A7HU戦車だけで44両を5億ユーロで取得する契約を2018年に結びました。

 レオパルト2A7HU戦車44両のほか、PzH-2000自走榴弾砲24両とレグアン戦車橋4両にワイゼント2装甲工兵車両、そして予備部品や関連装備などを含めた装備調達は15億ユーロ規模に上り、NATOやEU欧州連合のなかではウクライナ支援に否定的で親ロシア政策を継続するハンガリーではありますが、装備面では国防力強化を進めています。
■ジョンコックリル社
 日本の場合は買収と云われると産業基盤ごと持って行かれるのではないかという不安を感じるのですが欧州はその心配を信頼で克服したのでしょうか。

 ベルギーの防衛大手ジョンコックリル社はフランスの装甲車メーカーアルクス社の買収計画を進めています。アルクス社はVAB装甲車などの製造で知られるサヴィエン社とルノートラックディフェンス社の後身でルノーグループ傘下にありましたが2001年にルノーはルノートラックディフェンス社をスウェーデンのボルボグループに売却しました。

 ジョンコックリル社は砲塔システムなどを含め防衛分野の企業となっていますが産業機械製造やエネルギー関連産業の大手企業です。アルクス社は現在、フランス陸軍のスコーピオン装甲車計画においてジャガー装甲偵察車やグリフォン多目的装甲車などを製造、グリフォンはベルギー陸軍も導入予定で、買収はその際の防衛産業協力の一環とのこと。
■RBS-70NG
 RBS-70というのは携帯可能で単発式なのですけれどもスティンガーよりも大きい分だけ初期の81式なみの射程を誇っているという不思議なもの。

 リトアニア陸軍はJLTVを自走地対空ミサイル車両へ改良します。オシュコシ社がアメリカ陸軍などに供給するJLTV統合軽量戦術車両は優れた四輪式装輪装甲車で、リトアニア軍もこの車両を導入、派生型として30mm機関砲遠隔操作式銃塔RWSを搭載したものも開発されているJLTVですが、リトアニア軍はこの改修でサーブ社と連携します。

 JLTVへ搭載されるのはサーブ社の可搬式地対空ミサイルRBS-70NG、これはMANDPS個人用携帯地対空ミサイルとしては最大型のもので三脚式発射架を用いて運用、ただ大きい分射程も8㎞とこの種のミサイルとしては長く有効射高も6000mに達します、リトアニア軍はRBS-70NGの三連装発射装置と照準器をJLTVに搭載する計画です。
■AW-149とAW-169
 UH-2はいかがと聞きたくなる。

 北マケドニア軍はレオナルド社製多用途ヘリコプター8機を導入します。次期多用途ヘリコプターはエアバス社やロッキードマーティン社とベル社の候補を退け、レオナルド社製ヘリコプターのAW-149とAW-169がこのほど選定されたとのこと。計画ではAW-149を4機とAW-169を4機導入する見込みでイタリア政府と政府間合意を結びました。

 AW-149は12名の兵員を輸送する多用途ヘリコプターでAW-169は二回り小型で兵員8名を輸送する多用途ヘリコプターです。北マケドニア軍のヘリコプターは現在旧ソ連製のMi-17やMi-24といった機体で構成されており、これらをNATO水準の航空機に置き換える事となります。計画では正式調印を経て24か月から36か月で納入される見通し。
■コブラⅡ軽装甲車
 軽装甲機動車も車体を伸ばすとかオープントップ型とかの派生型を開発していればと思うのですが受容と云いますか国内市場がねえ。

 モロッコ陸軍はトルコ製コブラⅡ軽装甲機動車を導入するもよう。トルコのオトカ社が2023年12月に発表したところによれば、モロッコ政府はコブラⅡ軽装甲機動車200両を1億3600万ドルにて取得する契約を結んだとの事で、納入は2024年末までに開始されるという。コブラⅡは輸出市場で成功したコブラ軽装甲機動車の車体延伸型です。

 コブラ軽装甲機動車は1997年にオトカ社がトルコ陸軍に採用された装甲車で、もともとはプライベートベンチャー方式で開発、車体部分はアメリカのハンヴィー高機動車と御恥AMゼネラル社製車体を採用していますが、全面を防弾鋼板の傾斜装甲として再設計し車体も若干高めIED簡易爆発物などから爆風を逸れさせるよう防御力を強化した装備です。
■ゾラワル軽戦車
 89式装甲戦闘車の後継となる共通戦術車輛の車体部分にこの16式機動戦闘車の砲塔を搭載しましたならばアメリカ陸軍が歩兵旅団戦闘団に配備する軽戦車というような用途に用いられたのではないかと思うのだ。

 インド陸軍は新型軽戦車ゾラワルの評価試験を本格化させる方針です。既に試作車両はインド国防省実験施設までの100㎞程度の自走試験を実施し、ある程度の機動力を確保していることは証明されているといい、2024年4月以降本格的な評価試験が開始されるとのこと。ゾラワル軽戦車は山間部や砂漠地帯などでの運用を想定した新型軽戦車です。

 ゾラワル軽戦車は元々2023年内に納入の計画でしたが、エンジンがドイツ製でありドイツからの供給が遅れたことで引き渡しが2024年1月まで遅れた経緯があります。現在の計画では59両のゾラワル軽戦車を導入する計画ですが、併せて別の軽戦車開発計画があり、こちらは259両を調達する計画とされていて、ゾラワルは暫定計画だとわかります。

 インド軍が山間部で運用可能である軽戦車を開発する背景には、中国人民解放軍が旧式の62式軽戦車に代えて先進的な15式軽戦車のチベット地域への配備を進めており、対抗手段がない現状が問題視されているため。インド軍はロシア製スプルート空挺対戦車砲を軽戦車として運用する検討も為されましたが実現せず、国産開発を決心しました。
■M-109A7自走榴弾砲
 一生M-109以外の自走砲を使わないつもりなのかと75式や99式をみていました身の上からは一寸思ってしまうのだ。

 アメリカ陸軍はBAEシステムズ社とM-109A7自走榴弾砲など4億1800万ドル規模の契約を結びました。これは2023年に結ばれた契約のオプション条項行使に当たるとされています。具体的には装備の納入納期を2025年まで延長するもので、M-109A7自走榴弾砲とM-992A3弾薬運搬車の製造期間延長も含めた包括的な契約となっています。

 M-109A7自走榴弾砲とM-992A3弾薬運搬車については最初の契約が2017年に締結されており、追加契約やオプション条項追加などアメリカ陸軍の機甲旅団戦闘団における砲兵近代化の主柱として機能しており、今回の追加によりM-109A7自走榴弾砲とM-992A3弾薬運搬車に関する契約総額は25億ドル規模となりました。

 1960年代に開発されたM-109は砲身延長や火器管制装置の近代化などにより性能を第一線に耐えられる水準としていますが、現在の155mm砲は52口径が主流となりつつあるなかで39口径という砲身は改良されず、車体部分をM-2ブラッドレイ装甲戦闘車の水準に切り替えています。改良には限界があるとされる一方、将来砲の完成は未だ未知数だ。
■ARV先進偵察車
 偵察車輛を海の向こうと戦う想定のもとで従来の延長線上に考えていてよいのかという本質的な疑問を突き付けている。

 アメリカ海兵隊向けのARV先進偵察車両試験が正常に完了した、開発を担当するジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が発表しました。LAV-25軽装甲車の後継車両として開発されているARV先進偵察車両は2023年内いっぱい、NATCネバダ自動車試験センター、ネバダ州のアバディーン陸軍試験場などにおいて試験が実施されていました。

 このほどARV先進偵察車両はカリフォルニア州のキャンプペンドルトンにおいて海兵隊の試験を完了したとのこと。現在インド太平洋地域の安全保障環境は大きく変容しており、純粋な威力偵察車両であるLAV-25ではマルチドメイン戦場においてその能力が発揮できず、無人航空機や無人水上艇と厳しい電子戦環境への対処能力が求められています。

 ARVは、無人装備の連接性と共に沿岸部のみならず外洋における航行能力、次世代の水上推進システムや水中安全システムなども盛り込まれており、これらの評価試験なども行われています。なお海兵隊の将来偵察車両にはジェネラルダイナミクスランドディフェンスシステムズ社のほか、テキストロン社のコットンマウスも候補となっています。
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【防衛情報】ECRS-Mk2レーダー地上試験,B-21レイダー戦略爆撃機インフレ影響とフランスラファール戦闘機42機追加調達

2024-03-25 20:22:04 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は空軍関連ですがやはり無理してでも昨年ラファールを撮影しておととしユーロファイターを撮りに行っておけばと思う話題が満載だ。

 フランス航空宇宙軍はミラージュ2000D戦闘機用タリオスポッドの試験を成功させました。タリオス、TALIOSとは標準型長距離識別電子光学システムの略称でタレス社製、2022年の契約では21基で1億ユーロという、比較的高価なシステムであるという点です。フランス国防省はタリオスポッドについて現段階で67基を発注しているとのこと。

 タリオスポッドは現在使用しているダモクレスポッドの後継装備で高解像度の電子光学センサーと赤外線センサーを統合化し昼夜問わず目標識別や目標捕捉と追尾を行うもの、データリンク能力を持ち映像を司令部などへ自動送信することも可能という。既に30基がラファールに搭載されていますが、ミラージュへの搭載は今回が初との事でした。
■防衛フォーラム
時間はかかりましたが漸くF-2と同じAESA方式の時代へ。

 イギリス空軍のユーロファイタータイフーン用ECRS-Mk2レーダー試作機が完成したとのこと。ECRSとはヨーロピアンコモンレーダーシステムの略称で、先進的なAESA方式の戦闘機用レーダーとしてイタリア企業のイギリス法人たるレオナルドUK社が中心となり開発し、BAEシステムズ社がユーロファイターへのシステム統合化を進めています。

 ECRS-Mk2レーダー試作機は既に地上試験がランカシャー州ワートンにあるBAEシステムズ社の地上試験施設において評価試験を完了し、今後はイギリス空軍の評価試験機ユーロファイターBS-116号機に搭載される計画で、イギリスのウォートンに置かれているタイフーン戦闘機最終組み立て工場において搭載作業が開始されているという。

 ユーロファイター戦闘機にECRS-Mk2レーダーを搭載するのは、脅威圏外からの目標標定能力を高めるとともに、この新型レーダーそのものが電子妨害能力を有している点が特色で、脅威大将の射程圏外から一方的に強力な電子妨害を加えることも想定しているという。BAE社はこのレーダー開発と生産により1300名の雇用が維持される事も協調しています。
■防衛フォーラム
 地味に射程が伸びているのが羨ましい。

 ドイツ空軍は改良型ブライムストーンミサイルを調達します。ブライムストーンミサイルはMBDA社製、元々、トーネード攻撃機搭載用に開発された射程20㎞の対戦車ミサイルですが、改良型はユーロファイタータイフーン戦闘機搭載用に射程60㎞まで延伸しておりドイツ空軍はこの改良型の調達により対艦戦闘能力の強化も想定しているとのこと。

 ブライムストーンミサイルの特筆すべき点は撃ちっ放し式ミサイルであるとともに同時多数の目標にミリ波レーダーにより生活に誘導、弾道は6.2kgとミサイルとしては小型の部類に含まれますが、複合装甲や爆発反応装甲を車体上部から押しつぶす方式のタンデム弾頭方式を採用しています。今回のドイツ空軍調達数は274発、2024年内に納入されます。
■防衛フォーラム
 数年分を一気に調達という。

 ドイツ空軍はラインメタル社にハイスペクトルIRフレアー47万発を発注しました。Birdieシリーズという既に実用化されているラインメタル社の製品が調達されるとの事で、IR-Birdie-118-BSとIR-Birdie-218-BSという二種類のIRフレアーが発注されました。なおこのBirdie とはBispectral Infrared Decoy Enhanced Efficiencyの略称を示すもの。

 IR-Birdie-118-BSとIR-Birdie-218-BSは共に射出されつと航空機の排熱を模した赤外線放出を行い空対空ミサイルに囮効果を示し、戦闘機と輸送機にヘリコプターなどの赤外線放出特性の相違に想定して型式が分けられています。47万発の調達について、契約期間は2023年12月から2029年12月までとされており、契約金額は5000万ユーロ弱です。
■防衛フォーラム
 スカンクワークスの新作だ。F-16とF-35で有名なロッキードマーティンですが先進的な航空研究では全米でも最も進んでいるといえる。

 アメリカのロッキードマーティン社は新たに開発されたX-59実験機を公開しました。X-59は超音速機につきものであったソニックブームを緩和する技術実証が目的とされています。ソニックブーム、衝撃波は中高度以下では平時には家屋や工場のガラスを破損させる問題を引き起こしますが、同時に音響ステルス性という面でも問題があります。

 X-59の発表はカリフォルニア州パームデールにおいて実施され、この機体の開発はこれまでも様々な先進的航空機を開発してきました実績を持つロッキードマーティンスカンクワークスとともに、NASAアメリカ航空宇宙局も開発に参加しており、数十年単位でのソニックブーム低減研究の一環、軍用機とともに商用超音速旅客機開発に寄与します。
■防衛フォーラム
 F-2もこんな感じで維持生産していれば戦闘機製造基盤を失う事も無かったのですけれどもねえ。

 フランス空軍は新たにラファール戦闘機42機を追加調達します。ダッソーアビエーション社によればフランス空軍が2023年12月にラファール戦闘機の追加発注を行ったとのことで、この契約によりダッソーアビエーション社は2023年から2033年まで、既存の受注分もあわせ、ラファール戦闘機に生産継続が可能になったとしています。

 ラファール戦闘機は現在量産されている最新型がラファールF4.1となっていますが、今回の受注は改良型のトランシェ5、ラファールF5になるとされ、ダッソーアビエーション社のエリックトラピエ社長の発言を借りれば、フランス空軍が2030年代においても優位を確保することに繋がるとしています。なお、ラファールは第4.5世代機という。

 ダッソーアビエーション社とともにラファールの生産には400の企業がラファールプログラムに参加していて、今回の決定は今後10年間、少なくとも製造が延長される事を意味していて、特にラファールはこの数年間、輸出市場においても堅調な受注を確保しており、フランスの次世代戦闘機開発まで戦闘機産業を維持させる点でも重要な調達です。
■防衛フォーラム
日本の練習機も今後どうなるかというところですが。

 中華民国台湾はAIDC航空宇宙産業開発総公司のT-34C練習機後継機機開発をさらに前進させます。台湾空軍は現在初等練習機と中等練習機初度練習機としてアメリカのビーチクラフト社製T-34Cターボメンター初等練習機を運用していますが、導入から40年が迫る中、T-34C練習機は相応に老朽化し後継機の船艇が必要となってきました。

 AIDC航空宇宙産業開発総公司は、単発機としてこの後継機を開発中、このたび設計がほぼ完了し第一段階を完了させたと発表しました。計画では新型練習機は2028年までに試作機を完成させ2031年には量産を開始するといい、計画には214億台湾ドルが投じられ45機を量産する計画です。台湾での航空産業は決して大きな規模ではありません。

 T-34Cターボメンター初等練習機後継機について、214億台湾ドルは米貨換算では6億9030万ドルとなっていますが、同時にこれらの機体を独自開発せず輸入した場合の費用は186億台湾ドルと国産開発よりも抑えられるとしていますが、40年間運用した場合の維持費は国産機が520億台湾ドルで、輸入飢餓520億台湾ドル、総合的に判断されました。
■防衛フォーラム
 やはりミサイルというのは最低でもこの程度の射程が必要という事で周辺国に配慮しても配慮が通じなかった本邦と見比べてしまう。

 フランス政府はウクライナへスカルプEGミサイル40発を供与します。これは1月16日にフランスのマクロン大統領が自ら発表したもので、スカルプEGに加えて相当数の爆弾を供与するとしています。スカルプ、SCALPとはイギリスやドイツが既に供与しているストームシャドウミサイルのフランス名称で、輸出仕様の射程は250㎞というもの。

 ウクライナへの装備供与は、欧米の支援疲れという揶揄が通っていますが、最大の支援国であったアメリカが2023年12月を最後に議会共和党の反対によりウクライナ支援が停滞しているという状況が響いています。ただ、欧州は供与できる装備の備蓄が払底しつつある状況が支援の停滞となっている状況で、スカルプEGの供与は支援の熱意を示す。

 スカルプEGは空中発射長距離巡航ミサイルで、発射後は高度20m程度を1000km/hと亜音速で飛行、GPS誘導と赤外線画像誘導や慣性航法誘導などを併用するもので、ストームシャドウの場合は2023年、同一カ所に短時間で連続命中させること方法を用いクリミア半島のロシア黒海艦隊司令部地下司令部を破壊する事にも成功しています。
■防衛フォーラム
 大型機の目視点検を無人機で行わせようというこころみ。

 アメリカ空軍はニアアースオートノミー社によるC-5輸送機の無人機整備試験を実施中です。無人機整備試験とは、大型航空機の運用において整備員の負担となる機体各所の目視検査をドローンにより代行するというもので、同社は2023年にもハワイのヒッカム基地においてC-17輸送機の目視検査をドローンにより行う試験を実施しました。

 ドローンは格納庫内に整備対象となる航空機とともに運用され、高解像度カメラを搭載したものが機体形状プログラムに則り必要な区画を順番に撮影、撮影した画像は自動損傷検出ソフトを通じて機体に異常が無いかを検証するとのこと。この利点は目視では個人の判断に頼るものの、画像情報の場合は再検証可能で遠隔地からも検証可能という。

 C-5輸送機の無人機整備試験が行われたのはデラウェア州のドーバー空軍基地で、C-5輸送機はC-17輸送機をも遥かに上回る大型の戦略輸送機、その分機体は胴体から主翼までも巨大であり、目視による検査は大量の人員を必要としていました。この試験が良好な成果を示した場合、アメリカ空軍の省力化と即応性の向上が期待されています。
■防衛フォーラム
 これは空対空用途にも使えるという事で関心のある航空機なのですけれども価格高騰がさっそく顕著化しているもよう。

 アメリカ空軍が導入するB-21爆撃機が16億ドルものインフレの影響を受けている、これはノースロップグラマン社が2023年最終四半期に発表したB-21レイダー計画に関する決算会見において、マクロ経済の混乱と生産コスト上昇が生じ、初期生産段階に移行する際に生産分だけで1億4300万ドル、全体で16億ドルが必要となったという。

 B-21レイダー戦略爆撃機は2020年代半ばより量産を開始し少なくとも100機程度を導入するとしています、もともとはB-2戦略爆撃機の後継機でありB-1戦略爆撃機の後継機を担うとされていたものの、ステルス性の高さから大量の空対空ミサイルを運用し制空権を担う、F-22戦闘機の任務の一部を代替するなど空軍では最優先の開発計画です。

 16億ドルの追加費用が必要になったものの、この決算会見においてノースロップ社のキャシーウォーデンCEOはB-21プログラムそのものは順調に推移しており2022年の初公開以来、飛行準備試験段階を経て実戦配備に向け遅延は無いとしています。しかし一方で現在のままでは生産開始により損失が発生する懸念を投資家に示しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】AUKUS原子力訓練,45型防空駆逐艦の能力向上改修と中型揚陸艦RFI提案要請書,イスタンブール級フリゲイト

2024-03-18 20:02:54 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題を集めてみました。造船技術の各国普及と共に全通飛行甲板型艦艇の拡散や水上戦闘艦とミサイル関連技術の拡散などが新しい趨勢となっています。

 オーストラリア海軍は127mm艦砲の近代化改修を行うもようです。これはオーストラリア海軍が保有するアンザック級フリゲイトについて、オーストラリア国防省とBAEシステムズ社が現在運用しているMk45-Mod2-127mm艦砲のCCS共通制御システム追加搭載について契約に至ったとのこと。Mk45-Mod2はMk45-Mod4相当に改修されます。

 Mk45-Mod2のMk45-Mod4水準への改修について、BAE社は127㎜艦砲システムの寿命延伸には最適であるとし、特に開発中の射程延伸精密誘導砲弾や超高速発射体などの改良型砲弾に対応させることで陳腐化を防ぐ目的があり、外見からの端的な発展として砲身が現在の54口径から62口径の長砲身へ換装される事で識別が容易となっています。

 アンザック級はオーストラリア海軍が哨戒任務を念頭にドイツの輸出用フリゲイトMEKO-200フリゲイトの設計を応用し1996年から2006年にかけ8隻を取得しました。満載排水量3600tとコンパクトにまとめているのが特色ですが、近年でもCEAFAR多機能レーダーの搭載など、その能力向上が精力的に進められている水上戦闘艦です。
■輕型巡防艦対潜型
 台湾の新型艦、大きさは本邦あぶくま型護衛艦より若干大きくしかし護衛艦はつゆき型には及ばないという規模の模様ですね。

 中華民国伊台湾海軍は新型の輕型巡防艦対潜型の起工式を行いました。もともと濟陽級ことノックス級フリゲイトなどの後継艦を目指す震海計画が進められていた台湾ですが、中国海軍の大型水上戦闘艦増強が異常な速さで進んでいた為に先ずは数を揃える必要が生じ、満載排水量3000t程度の比較的小型の艦を建造することとなりました。

 輕型巡防艦は先行して2023年11月に防空型が建造開始、海剣二型艦対空ミサイル16発と雄風二型艦対艦ミサイル8発を搭載する、射程30㎞の艦対空ミサイル16発ということになりますから、防空というよりは僚艦防空能力を持つ水上戦闘艦として建造されています。そして今回起工式を迎えたのは対潜型で、先ず試作艦として完成させるもよう。

 輕型巡防艦対潜型は曳航型ソナーシステムと対艦ミサイルなどを搭載するという。満載排水量は3100tで基準排水量2500t、76mm艦砲に加えミサイルとそしてS-70クラスの哨戒ヘリコプターを搭載可能、乗員は85名を予定しています。濟陽級巡防艦は現在6隻運用中ですが、台湾では輕型巡防艦防空型6隻と輕型巡防艦対潜型6隻で置き換えます。
■AUKUS原子力訓練
 オーストラリア原潜導入へ向けとりあえず最初の三名と。

 オーストラリア海軍から初のAUKUS原子力訓練修了者が誕生しました。通常動力潜水艦導入計画を原子力潜水艦導入計画に切り替えたオーストラリア海軍は、ラロトンガ条約などの関係で国内に原子力専門家がほとんどいないために原子力要員養成を一から臨んでいて、NPTUアメリカ国原子力訓練部隊プログラムへ要員を派遣していました。

 NPTUアメリカ国原子力訓練部隊プログラムを修了したのはヘイドン中佐とクライン中佐とホール中佐の3名で、アメリカでも最も厳しい訓練の一つと位置付けられる課程を修了したとのこと。もともとNPTUは原子力事業者が電力学校での知識と理論を実際の発電所の運転と監視能力に応用する教育課程の潜水艦原子炉運用へ応用させる課程です。
■アマトカミサイル
 インドネシアも装備国産化に注力していますが貴重な外貨を削って外国からの兵器にゾンしたくはないという点は理解できる。

 インドネシアのPTリパブリックディフェンシンド社はアマトカ艦対艦ミサイルライセンス生産を開始します。これはインドネシア海軍が水上戦闘艦搭載用にPTリパブリックディフェンシンド社とのあいだで45発のアマトカ艦対艦ミサイル製造契約を結んだもので、アマトカ艦対艦ミサイルはもともとはトルコのアセルサン社が開発したもの。

 アマトカ艦対艦ミサイルはトルコ海軍がハープーン艦対艦ミサイルの後継装備を国産化する試みで開発されたもので、射程220㎞、亜音速で飛行しハープーンミサイルの225㎏に匹敵する220㎏の弾頭重量を有するとされています。既に2021年からトルコ海軍には配備されていますが、インドネシアにライセンス生産が許可されることとなりました。
■長射程型のブラモス
 元々は航空機搭載用という。

 インド海軍は長射程型のブラモス超音速ミサイル発射実験に成功しました。これはインド海軍が1月24日に実施したもので海上から遠距離の地上目標を攻撃したもので、実験されたブラモスの射程は900㎞型であったとのこと。映像から試験に使用されたものはラージプート型ミサイル駆逐艦で、試験は二日間にわたり試験空域を設定しました。

 ブラモスミサイルはロシアの技術供与を受け開発されたもので、P-800オニクス超音速対艦ミサイルの技術が応用されています。ブラモスはインドのブラマプトラとロシアのモスクワから名称を冠したもの、もともとはSu-30戦闘機からの空対地ミサイルとして開発されていましたが、艦載型や地対艦ミサイル型など様々な派生型が開発されています。

 ロシアとともに共同開発されたミサイルは射程が800㎞となっていて、今回試験されたものは少なくとも100㎞の射程延伸に成功した事となります。しかしインド国防相は空対地型や艦載型と地対艦型のブラモスシリーズを射程1500㎞まで延伸する次世代型を開発しており、今回の射程延伸型も全体から見れば試験の一環と言えるかもしれません。
■中型揚陸艦
 アメリカも島嶼部防衛強化へ大わらわだ。

 アメリカ海軍は中型揚陸艦に関するRFI提案要請書を発表しました。海軍作戦参謀長で海軍遠征戦部長であるマーカスアニバレ海軍少将は新型揚陸艦について、海軍と海兵隊水陸両用部隊にとり最優先事項と位置付けていて、2024年1月に発表された提案要請書では、海軍は2025年建造開始で2029年竣工、最大6隻の揚陸艦を建造する構想です。

 RFI提出期限は2024年5月4日となっています。海軍がこの揚陸艦を重視する中において、その最大の背景は中国を念頭とした海兵沿岸連隊をどのように移動させるかという点で、もちろんKC-130J空中給油輸送機も活用するが海上輸送の重要性も高いとしています。こうした観点から揚陸艦は3000浬から5000浬の航行能力が求められる。
■補給艦デリヤ
 艦艇が大型化すると補給艦も大きくなるのは日本も同じ。

 トルコ海軍は新補給艦デリヤを竣工させました。1月19日にヤロバに所在するセフィーネ造船所において行われた竣工式では、エルドアン大統領を筆頭に国防大臣と参謀総長らが出席、新しい補給艦の竣工を祝いました。そうそうたる竣工式となりました背景には、補給艦デリヤが、トルコでは強襲揚陸艦アナドルに続く第二の巨艦であるゆえ。

 補給艦デリヤは満載排水量26115t、その能力としては燃料を10000tと真水750tを搭載し、貨物については270立方mを積載可能、その全長は199mに達します。LM2500ガスタービンエンジンとディーゼルエンジンの併用により速力は24ノットと補給艦としては高速、トルコ海軍の戦力投射能力を高める事がきたいされています。
■SSV戦略海上輸送船
 大きくはないが小さくも無い。

 フィリピン海軍向け124m型ドック型揚陸艦建造が開始されました。インドネシアのPT-PAL社において、ドック型揚陸艦の建造が開始され、これはSSV戦略海上輸送船として位置づけられています。近代的な海軍を持たなかったフィリピン海軍は現在、中国脅威を背景にホライゾン計画として海軍力の整備を進めており、その要諦のひとつ。

 SSV戦略海上輸送船、今回建造が開始されたのは3番艦にあたり、インドネシアのスラバヤにおいて進められています。建造費は55億6600万ペソ、ただ、2番艦までと比較し新しい揚陸艦は輸送艦能力と共に76mm艦砲1基と30mm機関砲2基を備え、格納庫に10t級ヘリコプターを搭載可能という点で、より多用途任務を想定している新型艦だ。
■イスタンブール級
 おおきさてきに韓国初の大型水上戦闘艦であるクワンデドゲワン級を少し小さくした感じ。

 トルコ海軍は新フリゲイトイスタンブールを竣工させました。MILGEM国家水上戦闘艦計画に基づいて建造されたイスタンブール級フリゲイトの1番艦で、トルコ北西部のヤロヴァ県に所在するセフィーネ造船所において執り行われた竣工式典にはトルコのエルドアン大統領を筆頭にトルコ政界や産業界の要人が並びました。

 MILGEM国家水上戦闘艦計画とは、もともとトルコ海軍艦艇は長らく海外技術への依存が高く、トルコ初の近代的戦艦であるヤウズ級戦艦から西ドイツによる現在主力のヤウズ級フリゲイトまで一貫していました。今回のMILGEM国家水上戦闘艦計画ではトルコ国内で80%を製造し220社のトルコ企業、下請けに更に80社が参画し建造しています。

 イスタンブール級フリゲイトは全長113.2mで全幅14.4m、満載排水量は3100tでガスタービンディーゼル併用方式を採用、武装は76mm艦砲とアトマカ対艦ミサイル16発にSAPAN艦対空ミサイルをVLSに16発、35mm双連機銃に25mm近接防空火器と短魚雷及びヘリコプターを搭載していて、現在4番艦までの建造が予定されています。
■45型防空駆逐艦
 45型は性能というよりも長期航海を想定したばつぐんの居住環境を自衛隊も見習うべきと思う。

 イギリス海軍は45型防空駆逐艦の防空能力を向上させるとのこと。これはイギリス国防省の正式発表とともに欧州ミサイル製造大手MBDA社が発表したイギリス海軍との契約に際し示されたもの。具体的には紅海において多発する商船攻撃に併せイギリス海軍が運用しているシーバイパー戦域防空システムに関する契約です。

 シーバイパーはアスター30艦対空ミサイルなどを制御し艦隊防空を担うシステムですが、今回の契約ではシーバイパーシステムの運用支援機関が5年間延長され、またアスター30艦対空ミサイルがアスター30block1へと能力向上、そして45型防空駆逐艦に搭載されているサンプソン多機能レーダーの能力向上改修などが行われるという。

 45型防空駆逐艦の能力向上改修には4億5000万ポンドがとうじられることとなり、また次世代改修として弾道ミサイル迎撃能力を有するアスター30block1NTミサイルの運用能力付与に関する拡張性を確保するのも狙いとのこと。イギリス国防省によれば一連の45型防空駆逐艦の能力向上改修は2032年までに全艦の改修を完了するもよう。

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【防衛情報】イタリアFH70改良とイギリスエイジャックス,ドイツスカイレンジャー30防空システム

2024-03-04 20:14:15 | インポート
■防衛フォーラム
 今回は陸軍関連の情報です。ロシアウクライナ戦争の長期化を受けロシアとの全面対決を年とぷに置かざるを得なくなった欧州は重戦力の再編成や戦訓反映に注力しています。

 イタリア陸軍はFH-70榴弾砲の近代化改修についてレオナルドUK社などと契約を結びました。イタリア陸軍は2022年初めの段階でドイツ製PzH-2000自走榴弾砲とそのライセンス生産型70両とFH-70榴弾砲90門を装備していましたが、何れも一部がロシアウクライナ戦争勃発を受けウクライナへ軍事支援として供与されています。

 イタリア軍はFH-70を5個砲兵連隊に装備、各砲兵連隊は18両を定数としている。FH-70の近代化改修はレオナルドUK社とアリスSRL社との間で契約が交わされ、その規模は2180万ユーロとなっています。イタリア軍のFH-70近代化改修は2020年より開始されており、LINAPS射撃統制装置の追加搭載と自走用のエンジン換装を行っています。

 FH-70は世界で1007門が生産されました。FH-70榴弾砲の近代化改修について、その背景にはやはりロシアウクライナ戦争において供与されたFH-70榴弾砲がかなりの威力を発揮するとともに、大量の155mm砲弾が消費されており有効性を最大限発揮するには射撃統制装置の改良による命中精度の向上などを突き付けられたことが挙げられます。
■防衛フォーラム
 異常振動はどうなったのか。

 イギリスのエイジャックス装甲偵察車は評価試験をさらに前進させたとのこと。イギリス陸軍の軽装甲偵察車両群を一気に置き換える野心的なエイジャックス装甲偵察車について、もともとはリスクが少ないスペインオーストリア共同開発のASCOD装甲戦闘車を原型とした開発を行ったものの、異常振動など大幅な遅延に見舞われていました。

 エイジャックス装甲偵察車プログラムのクリスボウブリック氏によれば、2023年12月の段階で、2023年7月以降、その計画には大きな進捗があり、長時間乗車した場合は精神に異常をきたすとまで言われた車内の異常振動問題が一定程度解決されたことを示唆しました。2020年の段階では特殊なヘッドセットにより騒音を軽減する方針でしたが。

 エイジャックス装甲戦闘車は2024年にはスウェーデンでの射撃試験が行われる計画で、これはエイジャックスがイギリス国外の射撃場に派遣されるのは初の実例とのこと。大幅に遅れているエイジャックスですがイギリス軍はエイジャックスとその派生型となるアポロやアトラスなどをわで589両調達予定となっています。
■防衛フォーラム
 ピラーニャのライバルとされていた車両です。

 チェコのタトラ社は新型のパンドゥールⅡ―EVO装輪装甲車の開発計画を推進中です。パンドゥール装輪装甲車はもともと、オーストリアのステアーダイムラープフ社が1980年代に試作し1996年にオーストリア軍が正式採用した六輪式の箱型装輪装甲車でしたが、改良型のパンドゥールⅡ装輪装甲車は8輪型となり機関砲塔などを搭載しました。

 パンドゥールⅡ―EVO装輪装甲車をもともとのオーストリアではなくチェコが開発することとなった背景には、この原型であるパンドゥールⅡ装輪装甲車を採用したのがチェコ軍であり、こちらは30mm口径のMk44ブッシュマスター機関砲を備えたイスラエルラファエル社製RCWS-30機関砲を備え、非常に有力な装輪装甲車として評価が高かった。

 チェコ軍ではこれらを107両導入しましたが、徐々に老朽化が進んでいるとし、後継車両を開発することとなりました。パンドゥールⅡ―EVOとして原型の名称を採用こそしていますが開発されるイメージ図は車内容積を増大させるとともに車高や車体形状が大型化し、機関砲についても背負い式のRWSではなく30mm砲塔型を目指しているもよう。
■防衛フォーラム
 中型合成旅団用でしょうか。

 中国人民解放軍は625E型短距離防空システムを公開しました。これは2023年12月28日に中国SNS上において人民海保軍訓練映像として発表されたもので、この映像自体は人民解放軍第77集団軍の演習映像となっています。防空システムは八輪式装輪装甲車に機関砲塔とレーダー、そしてミサイル発射装置付砲塔を載せたものとなっていました。

 625E型短距離防空システムに搭載されている機関砲は25mmガトリングガンとされていますが、アメリカのGBU-25のような3銃身ではなく6銃身型とみられ、過去に公開された95式自走高射機関砲よりも銃身が増大、また別の画像ではミサイル発射装置装着部にFB-10地対空ミサイル発射筒を4連装、左右に合計8発搭載しているものが。

 FB-10は射程10㎞、機関砲射程は2.5㎞という。625E型短距離防空システムで特筆すべきは車体部分で、従来の准民解放軍装輪装甲車は08式装輪装甲戦闘車を基本としたものとなっていましたが、車体部分が大型化され第二車輪と第三車輪の側面に乗降扉が、車体もかさ上げされており11式装輪突撃砲の派生型車両か、若しくは新型の可能性がある。
■防衛フォーラム
 軽戦車型だけではなかった。

 フィリピン陸軍は建国記念日に新型ASCODを公開しました。2023年12月21日のフィリピン建国記念日において建国88周年を祝うとともに新型の25㎜機関砲塔を搭載したASCOD装甲指揮車を公開しています。フィリピン陸軍はオーストリアスペイン共同開発のASCOD装甲戦闘車にエルビット社製105mm砲塔を搭載した軽戦車を配備中で。

 ASCOD装甲指揮車はその大隊本部車両として調達されたもの。軽戦車型については既にフィリピン第1戦車大隊として編成完結していまして、エルビット社製105㎜砲塔は同国が各国へ提示していましたサブラ軽戦車砲塔を採用したもので戦闘重量は30t、アメリカのM-10ブッカー戦車駆逐車よりは軽量に収められているフィリピン初の軽戦車です。

 ASCOD装甲指揮車はイスラエル製UT25砲塔を搭載、こちらは二軸砲安定装置を搭載し行進間射撃が可能であり、砲塔型ではありますが砲システムそのものはRWS遠隔操作銃塔方式を採用しています。通信能力については、車内が公開されていないために不明な部分がありますが、RWS方式を用い車内に砲塔基部は無く容積が十分確保されています。
■防衛フォーラム
 日本は迎撃ばかりを考えてきましたが反撃能力が無ければという選択肢を隣国の勧告は示しています。

 韓国国防省は新型のKTSSM-1韓国戦術地対地ミサイル実験の成功を発表しました。ライトニングプロジェクトとして進められていますこの計画、発射試験はソウルから110㎞南西にある泰安郡国防開発庁試験場において実施されまして有効に機能したとの事です。このミサイルは韓国版HIMARSなどからの運用が可能で2019年より開発された。

 KTSSM-1韓国戦術地対地ミサイルの射程は120㎞でアメリカのATACMS陸軍戦術ミサイル韓国版を目指し、ATACMSよりも安価でありながらGPS誘導により誤差2mでの命中精度を有しているとのことです。韓国軍はATACMSを採用していますが、数の不足が問題であり、特にクラスター弾頭を備えた長距離ロケットは対砲兵戦力として重要です。

 KTSSM-1韓国戦術地対地ミサイルが開発された背景には韓国の離島への北朝鮮軍砲撃事案等、7000門以上という大量の火砲を有している北朝鮮軍の砲兵を制圧するにはこの種のクラスター弾頭しかないとされ、独自開発が進められてきました。改良型の長射程型も開発中とのことですが、当面はこのミサイルを2025年までに200発を配備する計画です。
■防衛フォーラム
 ヴィルカスとは狼のこと。

 リトアニア軍はボクサー装甲車調達計画を完了しました。納入予定の89両と試作車2両の完納です。リトアニア軍ではヴィルカス装甲戦闘車と呼称されるボクサー装輪装甲車は、バルト三国の一員としてロシア軍の軍事圧力を受けつつも小国であるゆえに近代的な戦車部隊を保有できないリトアニア軍にとり重要な装甲戦力となっています。

 ヴィルカス装輪装甲車は、2020年までに納入された車両の一部に問題が生じ、この回復についてメーカーとリトアニア国防省との間でかなりのやり取りがあったとの事ですが2022年にはこの問題は解消、30mm機関砲の遠隔操作砲塔RWSを搭載した装甲車はNATOリトアニア戦闘団との訓練においても活用されており、増強も検討中とのことです。
■防衛フォーラム
 まさか機関砲の時代が戻るとは。

 ドイツのラインメタル社はスカイレンジャー30防空システムの評価試験を実施しました。スカイレンジャー30はラインメタル30mm機関砲と索敵照準装置とデータリンクシステムを一体化した砲塔システムより構成され、ボクサー装輪装甲車などのモジュラー式装甲車やトラックなどにも搭載、低空目標や無人機、巡航ミサイルなどを迎撃するもの。

 スカイレンジャー30の評価試験は2023年12月にスイス国内のオクセンボーデン射撃場において実施、今回開発されているものが先行試作されているものにたいしてスカイレンジャー30A1となるもよう。同種の機関砲としてエリコン35mm機関砲があり、スカイレンジャー30の射程は30mmであるため3㎞となりますが毎分1200発の連射が可能です。

 30mm砲弾は砲塔に即応弾として252発を搭載、一発当たり160個のタングステン弾片を内蔵していて、一発当たりの重量は1.25gとわずかなものですがAHEAD弾薬方式で目標付近において信管を作動し致命的な弾片で目標を包み込みます。AHEAD弾薬は35mmと30mmのものがロシアウクライナ戦争において数発で無人機を無力化しています。
■防衛フォーラム
 ゴトランド島の防衛が強化される。具体的には戦車射撃場の無い離島に戦車を配備した場合でも訓練環境を維持するための手段はあるという点が重要だ。

 スウェーデン国防省はKNDS社より新型戦車シミュレータを受領します。今回導入されるのはStridsvagn122戦車用のもので、ドイツ軍のレオパルト2A5に相当する。陸軍戦闘学校と戦車部隊のTBTA砲塔乗員訓練施設に配備されるもの。供給されるものは、車体全体を訓練するシミュレータと砲塔部分だけの訓練を行うシミュレータとのこと。

 今回のシミュレータ導入は注目すべき点はゴトランド島のスウェーデン軍分屯地にも配備される点で、バルト海中央部の要衝であるとともに冷戦後、2022年ロシアウクライナ戦争勃発までは駐留部隊のいなかったゴトランド島にも戦車小隊や機械化歩兵小隊などが分駐しており、シミュレータ配備はこの分屯が恒久的であることを示しています。

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