北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新明和US-2救難飛行艇、インド海軍新飛行艇へベリエフBe-200退け採用

2015-02-28 23:44:25 | 防衛・安全保障
◆US-2救難飛行艇輸出へ
 インド国防省が26日に発表したところによれば、インド海軍が新しく導入する飛行艇に海上自衛隊が運用する救難飛行艇US-2が導入する方針が固まった、とのこと。

 インド軍の装備調達は、二転三転し、いったん決定した命題についても変更することが時としてあるため一概に決定と記す事は出来ないのですが、インド海軍は海上自衛隊が運用する新明和US-2と、ロシアのベリエフBe-200を比較検討し、荒天海域での離発着能力の面でUS-2が優れており、結果的にUS-2が選定されたとのことで、機種は決定していなかったものの飛行艇導入の砲身あ固まっており、これを以てUS-2が実際に輸出される可能性がほぼ決定したといえるでしょう。

 US-2は、3mから最大5m前後の波浪海面でも離水280m着水310mで運用した実績が多く、荒天時に運用される飛行艇としては世界最高性能を有しています、これは我が国周辺では波浪時の遭難事故が少なくなく、この際に運用できる性能が求められたためなのですが、ロシアのベリエフBe-200はジェット飛行艇として進出速度の大きさが特色ですが滑走距離が離水1000m及び着水1300mと長く、1.2m以下の波浪時の運用が前提、しかも離着水速度が非常に早いため波浪海域では転覆の危険性が高まり、洋上での運用能力ではUS-2が優れています。

 US-2の難点は取得費用が非常に高い点で、インドではライセンス生産を希望しています。人件費の安さから取得費用が提言する可能性はあるのですが、治具調達費用は高く全体としてどうなるかは未定です。他方インド海軍は十数機の調達を計画しているとされ、新明和工業が生産した場合、自衛隊向けの機体を含め毎年1機の製造が限界、新工場を建設するか、2年で3機の生産程度ならば考えられるようですが、大量生産には完納後というリスクがあり、この点の調整が今後の課題になってくるでしょう。防衛装備品の輸出としては現時点で史上空前の規模となりそうで、今後とも注視したい命題です。

北大路機関:はるな
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平成二十六年度三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.03.01)

2015-02-27 22:57:18 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 年度末、寒波から花粉の時期へ移りゆく中皆様如何お過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事ですが、その前に一つ、航空関係の不具合や調整等で当面航空部隊関連行事へ影響が考えられる事故が二件発生しておりますので、特に航空部隊関連行事などお出かけの際は飛行展示などに影響が出る可能性があります点、どうかご留意ください。

 北徳島分屯地創設記念行事、第14旅団隷下の第14飛行隊が駐屯する分屯地です。飛行訓練展示と音楽隊演奏等が予定されていまして、四国は遠い印象がありますが、南海なんば駅から特急サザンを利用しまして南海フェリーを利用すれば、意外に早く行くことが出来ます。

 海上自衛隊週末基地一般公開は、舞鶴基地が土曜日と日曜日に北吸桟橋からの護衛艦見学が可能、佐世保基地倉島桟橋一般公開は先週に続き今週も一時中止とのこと、呉基地日曜日の一般公開は訓練支援艦くろべ一般公開が予定されています。基地HPなどで時間などに注意してください。
◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
・3月1日: 北徳島分屯地創設記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/14b/index.html
◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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第151連合任務部隊(CTF-151)司令官へ第4護衛隊群司令伊藤弘海将補派遣

2015-02-26 23:00:17 | 国際・政治
◆第151連合任務部隊
 防衛省は第151連合任務部隊(CTF-151)司令官として第4護衛隊群司令の伊藤弘海将補を派遣すると発表しました。

 第151連合任務部隊は、2009年に創設されたソマリア沖海賊対処任務へ哨戒任務や船団護衛任務を実施する有志連合部隊の司令部機構で、アメリカ、カナダ、デンマーク、フランス、オランダ、パキスタン、イギリス、オーストラリア、日本、韓国等が艦艇を派遣しています。

 第4護衛隊群は、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、護衛艦さざなみ、さみだれ、いなづま、きりさめ、すずつき、ミサイル護衛艦きりしま、はたかぜ、を以て2個護衛隊で編成される機動運用部隊で、海上自衛隊は常時二隻の護衛艦をソマリア沖に展開させていますが、第四護衛隊群もこれまでソマリア沖海賊対処任務へ何度も護衛艦を派遣してきています。

 司令部はこれまで司令官の所属する海軍が旗艦を供していますので、護衛艦が旗艦に充てられ、自衛官10名とイギリス、オランダ、トルコ、オーストラリア及びニュージーランドからの司令部要員10名が護衛艦に常駐し司令部機能を果たす事となるでしょう。形式上ではありますが、第151連合任務部隊を海上自衛官が指揮を執る事となり、責任は重大です。

北大路機関:はるな
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榛名防衛備忘録:将来自衛隊の海外任務(第一回)・・・冷戦期の一国平和主義を超えて

2015-02-25 23:05:47 | 国際・政治
◆国際公序に反する一国平和主義
 本年は終戦70年の区切りとなる年ですが、終戦後大日本帝国憲法を改正し制定された日本国憲法は平和主義を念頭としたものとなりました。

 唐突ですが、一国平和主義、我が国では良い響きとして受け取られているものですけれども、一方、一国主義、という単語は例えばイラク戦争期のアメリカの施策として我が国内世論にて強く批判されてきました、国際協調や国際公序に沿うべき、という意味からです。

 しかし、翻せば我が国の一国平和主義も、周辺国との間で中立条約を結ぶでもなく、国土の防衛に責任を持っているかと言われるならば自国領域の島嶼部、竹島などへの侵攻を軍事的に強い行動をとらず占有を任せるなどしましたし、国際協調へ軍事力の参画を長く忌避してきた我が国の姿勢も、やはり一国主義であったといえるでしょう。

 さて平和主義、平和は日本国憲法の身に明示されているものでは無く、例えば我が国も加盟する国際の平和と安全が国連の最大任務として国連憲章の大前提となっているように国際公序の最大の悲願であり、その実現と維持はほとんど唯一無二の理想として広く人類に共感を得られるものです。

 しかし、日本国憲法の最大の相違は平和を手段として、更に軍事的手段を憲法上放棄、実質的に放置したことにあり、重武装を以て中立条約を周辺国と締結し自国領域を他国へ利用させない永世中立国を目指すのでもなく、諸国間の合意を得ない一方的な一国平和主義を目指しています。

 その定義は徹頭徹尾定かではなく、曖昧模糊としており、議論としては軍事力の義務を国連警察軍駐留に任せ軍事負担を周辺国に任せるという討議は一応は学識者の間にて為されたものですが、現実性を持ったことはありませんでした。結局憲法上問題の無い軍事機構を創設したうえで、自由主義を掲げる友好国同士の例外的な同盟条約を以て防衛力を整備するという選択肢を選択しました。

 祈念する平和主義、というべき政策は国際の平和と安全への貢献も関与も経済的政治的なものにとどめ、軍事的な危機へは予防外交の一旦、国際法上では武力行使に当たる概念を日本国憲法上禁じられた武力行使に含まれないと解釈し参画するものの、この他にはなにも、というところ。

 特に軍事力を通じた国際の平和と安全への参画は1990年代の国連平和維持活動への参加まで、ほぼ完全に封じ、例外的に自由主義圏の一国、同盟国であるアメリカへの基地提供を行うと共に国内の自衛隊基地を国連軍指定基地として供するのみに留めています。

 一方で万一防衛政策が破綻した際には、祈念する平和主義として国土戦を前提とした専守防衛政策を掲げてきましたので、最初に戦場となるのは国土であり国民の財産生活文化が根付く場所を戦場として抗戦する施策を国民全体が支持していたのは、現在も続く視点、不思議という他ありません。

 国土を戦場として戦う勇気というものは、それがいかに危険かはサイパン島や沖縄に樺太千島の歴史を少し見るだけでかわるものですから、これが勇気によるところなのか無知によるところなのか単なるモラトリアムとして決断を回避してきたのかは、敢えて触れませんが今考えれば凄いことでありました。

 一方で国際平和維持活動への参画が1990年代にはじまった際には、その背景として既に生起している諸国での武力紛争による悲劇を放置するというそれまでの政策、諸国民の戦禍に呑まれる塗炭の苦しみを平和主義という名の下で無視し、関心を以ても関与を回避し続けました。

 一部が不戦の題目を公共の場で叫び自己陶酔に耽ることで国際の平和と安全への諸国間の努力へ参画した錯覚に陥り、諸国の紛争の拡大へは打つべき手を無視し続け、拡大により数字のみ羅列され膨大化し続ける災禍へも一国平和主義の名の下無視し続けています。

 更に自国領域へ突き付けられる軍事脅威の増大を黙々と訓練をし続ける防衛力を担う同胞を一部は顧み多くは知ろうとせず極一部は罵声を以て品位の限界を示しました、ただ、政策面からは建前と本音を分ける我が国の伝統、その是非は置き、可能な範囲内での防衛力整備は厳しい現実と向き合う努力の最たるものとは言えましたが。

 この状況下において本土侵攻や限定戦争の災禍に見舞われず今に至るのは献身的な防衛への努力と政治の難しい調整と均衡が重なった産物ではあるのですが、何かの偶然が、危機は具現化することはりませんでしたので我が国の戦後史に直接影を落とす事はありませんが常に存在しています。

 1950年代の朝鮮戦争に台湾海峡での1960年代の過熱が激化すれば波及する可能性もあり、や1970年代の日中接近と中ソ対立が連関すれば限定戦争へ転換する可能性、また1980年代の新冷戦が我が国へ波及した可能性も高く、必然の結果などではなく僥倖というべきものかもしれません。

 しかし、この状況を歴史的なマルタ会談での米ソ協調路線転換までを平和裏に乗り切り、その後の国際公序への参画を我が国は求められたわけです。具体的には参画せず平和が破綻した状況の国々へ、地域紛争の多くが最貧国に生じた、経済的問題の末に発生した状況下が多くありましたが、彼らの自己解決を求める事への批判があった、と。

 故に経済的に余裕がある、経済大国である我が国であるからこそ、三角が求めらr多訳で、結果的に平和主義は国際公序に叶うものであるが、一国平和主義は国際公序に反する一国主義と解せられたわけです。こうして、我が国は国際貢献へ転換したわけですが、今回からこの在り方と将来について、考えてゆこうと思います。

北大路機関:はるな
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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第十回・・・大規模正面戦闘想定を超えて

2015-02-24 22:29:10 | 防衛・安全保障
◆装甲車は何故必要なのか
 1月27日に作成しました記事を長々と掲載してきましたが、一応の最終回とします。

 今回示しました野戦築城の発展型としての装甲車の重要性と陣地の発展は、師団規模の戦闘を念頭としたもの であり、治安作戦等が主体となる対テロ戦争は念頭としていません、掩蔽陣地へ戦車が突入するという第二次大戦型戦闘の発展形である、大規模紛争を念頭としたものであり、先に記したようにMRAP耐爆車両のようなものとは応用しません。

 しかし、この技術が一般化する頃には東西冷戦が終結しており、師団規模の機械化部隊同士の激突や師団規模の防御陣地への機甲師団の攻撃、という状況は生起しにくくなっています。実際、機甲師団同士の戦車戦は湾岸戦争やイラク戦争、ユーゴスラビア紛争の嵐作戦等限られており、滅多に生起しません。
 
 2010年代に入り、可能性としては東欧地域においてロシア軍の強硬手段へNATOが確たる対応を行うならば、機甲師団同士が牽制するという状況は軍事的に有り得るものの、これよりは非正規戦や治安作戦、テロとの戦い、と呼称される戦闘様式が大勢を占めるように転換しているのは御承知の通り。

 皮肉な話ですが、この転換が装甲車両に拠らない伝統的な掩蔽陣地の価値を再認識させることとなります。即ち、治安作戦や対テロ作戦では多くの場合、正規軍と武装勢力という構図となり、正規軍は機械化部隊を有していますが、武装勢力は装甲車などの重装備を運用出来ません、これを支える航空部隊との三次元戦闘が出来ないためです。

 南レバノン戦争やガザ侵攻等、機甲旅団が投入される地域紛争では、一方が機甲部隊を有していてももう一方は機甲部隊を有していません。すると、市街地の建築物を管制地雷と地下トンネルで結ぶ掩蔽陣地とし、機甲部隊の打撃力を相殺し限られた装備で抗戦する様式が確立します。

 他方、イラク治安作戦やアフガニスタン治安作戦では、陣地という概念は個人用掩体を中心とした待ち伏せ攻撃が基本となります。これは武装勢力の基盤が大きくない地域、時間を掛けた陣地港如くでは住民に通報されてしまい待ち伏せが成り立たない、という点もあるのでしょう。

 もっとも、この種の戦闘では市街地を掩蔽陣地のように運用する場合、反撃により還付無き状況まで破壊、戦闘により荒廃することになるのですから、住民は戦闘により成功不成功を問わず確実に家屋という財産を失う状況を強いられる、そんな状況では流石に支持を集める事は出来ないでしょうが、ね。

 更に治安作戦では攪乱射撃というべき、大規模基地への迫撃砲射撃や車両による自爆攻撃が行われ、武装勢力は遊撃戦を多用するため、警備拠点を複数設置する必要が生じ、この中の小規模な警備拠点へ大規模攻撃が加えられるなどの状況が生起するため、治安部隊も陣地に立て籠もり防戦する必要が生じました。

 しかし、これも装甲車を陣地が不要とする状況下と言えばむしろ逆の状況であり、掩蔽陣地を含めた永久陣地を構築しようとも、治安作戦では、例えば数百kmの要塞線を構築して敵の行動を完全に遮断する大胆な運用を除けば代替とはなり得ません、あくまで車両の整備と補給の拠点でありこの拠点を攻撃している構図だからです。

 装甲車は、機甲師団などに対する防御と運動戦の中枢としての機械化歩兵主力という用途は、考えられるものの蓋然性は低くなり、逆に武装勢力の待ち伏せ攻撃からの第一撃を生存しての反撃等、治安作戦へ対処する用途が広くなりました。更に治安作戦は防御範囲が攻撃我側が自由に設定できる状況を生んでいる、ともいえるところ。

 この状況は、治安作戦の巡回任務は巡回区域を全て陣地防御すれば警戒すべき状況は発生し得ないのではありますが、それだけの広範囲を陣地防御する事は出来なくなる事を意味しているのであり、師団規模の正面戦闘以外の面での、つまり新しい時代での機動防御の一形態、攻勢要素も大きいですが、含んでいるとも言えるでしょう。

 以上の通り、陸上戦闘の隊形は運動戦が基本となったため、車両化が不可欠となりました、そして車両化しただけでは脆弱性が生じるため、可能な範囲内での防御力が付与されています、更に陣地防御の概念と機動防御の概念において全車に対する対抗手段は着実に発展しているため、降車の方も対抗手段が構築されながら、まだ発展の要素があり、結果、陸上戦闘において防御の面で装甲車は無くてはならない位置づけを有しているわけです。

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BMD特別訓練、2月24日より27日まで横須賀基地・佐世保基地にて実施

2015-02-23 23:26:37 | 防衛・安全保障
◆BMDの日米連携強化期し
 海上自衛隊は明日24日より27日までBMD特別訓練を実施するとのこと。

 BMD特別訓練とは弾道ミサイル攻撃を念頭とした即応態勢と情報連携などの円滑な推進を期し弾道ミサイル対処に関する戦術技量の向上及び日米のミサイル防衛部隊及び司令部等部隊間における連携要領をシミュレーションにより演練するもので、今回は第五回目の訓練となります。

 訓練統裁官は日本側が自衛艦隊司令官鮒田英一海将、アメリカ側が第七艦隊司令官ロバートLトーマス海軍中将で、参加部隊は自衛艦隊司令部とミサイル護衛艦ちょうかい、みょうこう、米海軍からも第七艦隊所属艦艇が参加し、横須賀基地と佐世保基地へ停泊したままデータリンクにより結び訓練を行います。

 弾道ミサイル防衛は、弾道ミサイルを衛星などの情報により発射を感知しますと、まずイージス艦が強力なSPY-1レーダーにより飛翔体位置情報を索敵しミサイルを捕捉、即座に射程1000km以上のSM-3迎撃ミサイルを発射しなければなりません、SM-3は宇宙空間においてミサイル弾道上に滞空しミサイルがSM-3弾頭に衝突することで運動エネルギーが弾頭を破壊します。

 イージス艦のSM-3が撃ち漏らした目標は、我が国土へ降下を開始しますが、最後の盾となるのが陸上に配置されるペトリオットPAC-3ミサイルで、射程は15km程度と非常に限られ、人口密集地や重要設備のみを防空する事しかできませんが、弾頭に直撃し機能不能とすることで、落下するには変わりませんが命中して爆発し被害を出す事だけは回避する、というもの。

 特に我が国へ発射される弾道ミサイルは成層圏への弾道ミサイル上昇を早期警戒衛星などが感知してから我が国土へ落着するまでの時間的余裕は十数分しかありません、これが亜音速の巡航ミサイルであれば同程度の射程であっても一時間以上時間的猶予があるのですが、弾道ミサイルはこの時間がありません。

 この時間的に限られる状況下で確実に情報を連携し、ミサイルが飛行する区域に遊弋するイージス艦が即座に迎撃態勢を採れるよう、速度を向上させることがイージス艦が参加するBMD特別訓練の意義に他なりません。特に弾道ミサイルは、核兵器の運搬手段として重要視されているため、核兵器を保有しない我が国が核武装以外の選択肢として持ち得るのが、核兵器を発射されたとしても迎撃できる能力の整備でした。

 この整備には非常な予算を要し、維持も多くの予算を要しています。この能力を最大限維持し、万一の際に国土が弾道ミサイルによる破壊から回避できるよう日米の連携を期することがこのBMD特別訓練の意義です。停泊しシュミュレーションにより実施されることから、艦隊行動や射撃の迫力はありませんが、それ以上に重要な訓練といえるでしょう。

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オーストラリア海軍次期潜水艦選定、日独仏各社へ入札参加要請

2015-02-22 23:40:03 | 防衛・安全保障
◆豪州新潜水艦へ総額500億豪ドル
 報道などによればオーストラリア政府は新潜水艦選定へ入札参加要請を行いました。

 オーストラリア政府は新潜水艦選定へ、日本、ドイツ、フランスへ要請した旨を20日アンドリュース国防大臣が発表、これにより昨今識者より多くの注目を集めた我が国からの潜水艦輸出はいよいよ現実味を帯びてきました。一方でアボット首相は新潜水艦選定に現在のコリンズ級潜水艦を設計したスウェーデンを今回の次期潜水艦選定の対象外とする声明を出しています。

 新潜水艦選定は総額500億豪ドルで邦貨換算では4兆6400億円に達する巨大契約であり、現時点ではオーストラリア海軍は広大な太平洋とオーストラリア周辺海域の哨戒任務を想定していることから、4000t級の潜水艦を求める声があり、個々から選択肢が限られてくるところ。

 オーストラリアと同じように広大な海域の警戒任務に当たり静粛性の高さが環太平洋合同演習などで知られる海上自衛隊そうりゅう型潜水艦に優位があり、ドイツは現在生産中の212型潜水艦を二倍へ拡大する216型潜水艦、フランスもスコルペヌ級潜水艦を倍程度に拡大する新型を提示するもよう。

 オーストラリア政府はノックダウン生産に近い形で自国内潜水艦建造基盤の必要な部分、具体的には造船業に関する雇用維持を行った上で最新鋭の潜水艦導入を希望しており、日本の提示すると考えられる潜水艦そうりゅう型はすでに実績があり、一方遠くない時期に新型潜水艦の設計が始まるため、供与できる部分は多いと言えるかもしれません

 一方で技術流出を心配する声も多いのですが戦争システムなどについては豪州海軍は海外製をそのまま取得することは考えにくく自国仕様に合わせたものを搭載しますので漏えいの心配はありませんし、設計技術を流失させる懸念ですが潜水艦の建造の専門性を考えれば有り得ません、実際にオーストラリアはコリンズ級の建造を通じても建造技術を得られていません。

 フランスとドイツは新設計でありフランスは原子力潜水艦ではこの規模の潜水艦の設計経験がありますが通常動力潜水艦では1930年代の試験的な潜水艦程度しか実績が無く、ドイツは通常動力を含め3000t級や4000t級の潜水艦建造実績はありません、この為此処に優位性を見出す事も出来るでしょう、が、その分リスクを豪州と共有し挑戦する可能性はある。

 実現すれば我が国防衛産業が国内上の身に依存したことで防衛費に防衛産業の維持、国産技術と高い稼働率に依存するという形でNATOのような共通運用基盤など集団安全保障に軍事力を依存しない方式を構築してきた我が国が、その基盤を防衛費の上限と防衛任務の拡大に伴う費用負担の難しさから限界が見えてきたところへ、一つの解決策と成り得るものでして、今後の進展を見守りたいところです。
 
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冬の日本海、白銀の舞鶴基地とヘリコプター搭載護衛艦しらね52番砲砲身撤去

2015-02-21 22:55:08 | 海上自衛隊 催事
◆DDH-143しらね
 先週、所用あって舞鶴基地へ足を運びましたが、その際の写真を。

 ヘリコプター搭載護衛艦しらね、雪景色という舞鶴らしい一枚のなかで。しらね型護衛艦一番艦として永らく横須賀基地を母港としてきましたが、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦はるな除籍を受け舞鶴基地へ転籍、第三護衛隊群の中枢として日本海の守りを引き受けてきました。

 先週舞鶴基地にて撮影した写真を見ますと、はるな型護衛艦、しらね型護衛艦の象徴である二門の5インチ単装砲のなかで、51番砲と後ろの52番砲を比較しますと、52番砲の砲身が撤去されていることに気づかされます、そう、しらね、は除籍が近づいているということに他なりません。

 ましゅう型補給艦ましゅう、基準排水量13500tの大型補給艦ですが、しらね、は基準排水量5200t、しかし横浜にて現在19500tのヘリコプター搭載護衛艦いずも、が建造中で間もなく引渡とされます、しらね、は、いずも就役を待って自衛艦旗を返納し除籍される、ということになるのでしょう。

 北海道小樽行フェリーが運航される前島埠頭から北吸桟橋の艦艇を一望します、ましゅう、しらね、あさぎり、が停泊中でした。この日は非常に悪天候であり、その関係から日本海の冬景色という印象をそのままに示すような素晴らしい雪景色なのですが、撮影位置までの移動は大変でした。

 多用途支援艦ひうち、この日はイージス艦の出航が行われた、と、恐らくイージス艦妙高、と思われますが、足を運ばれていた他の方にお聞きしまして、雪景色とイージス艦の出入港は見事だったろうなあ、と感慨深く風景を思いつつ、曳船の動きはなく、流石に寒かったので早々に撤収しました。

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平成二十六年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.02.21・22)

2015-02-20 23:50:50 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 風立ちぬ、地上波初放送を鑑賞していましたらば、新品の富士山麓が半分になっていた今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。

 今週末の自衛隊関連行事ですが、土曜日日曜日とミサイル艇しらたか一般公開と護衛艦きりさめ一般公開が行われまして、この他基地一般公開のみ、この時期は致し方ないですが自衛隊関連行事が限られまして少々さびしいと思わせるところではありますが、まあ毎年のことではあるところ。

 ミサイル艇しらたか一般公開、土曜日と日曜日に宮崎県の福島港にて一般公開が行われまして福島港といいましても福島ですのでご注意ください。護衛艦きりさめ一般公開は日程が土曜日と日曜日におこなわれ開催場所は長崎市の出島岸壁、市電からすぐのところにて、行われます。

 このほか、舞鶴基地や呉基地に佐世保基地など一般公開が計画されています。この点についていは各地方総監部のHPをご覧ください。
◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

・2月21日22日:長崎県長崎港護衛艦きりさめ一般公開・・・http://www.mod.go.jp/msdf/formal/info/event/index.htm
・2月21日22日:宮崎県福島港ミサイル艇しらたか一般公開・・・http://www.mod.go.jp/msdf/formal/info/event/index.htm

◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第九回・・・陣地攻撃装備の発達と情報優位

2015-02-19 23:08:14 | 日記
◆優位性故の対策発達
 装甲車による防御について、かつて陣地防御が優位だったからこその対策発達が、その転換を強いているといえるかもしれません。

 もう一つ、第一線歩兵は航空攻撃の脅威にさらされ、砲兵火力の精度は年々向上し特に1980年代からは機銃陣地などの火力拠点制圧へは対戦車ミサイルが運用されるようになり、前線火力は秘匿が特に需要となってゆきます。

 個人用掩体を標的とするようになっているほか、1980年代からは機銃陣地などの防塁へ対戦車ミサイルに拠る精密攻撃が行われるようになっています。1990年代後半にはテルミット化合物を用いたサーモバリック弾が歩兵に携行され、位置情報は無人機が暴露するようになりました。

 サーモバリック弾は歩兵用ロケットはもちろん小銃擲弾からも投射できる可搬性の高さと共に航空機より投射されるナパーム弾と同等の被害を及ぼすようになったため、可搬可能である第一線火力はより高まったわけです。これでは露出陣地の脆弱性は大きくなり、装甲車両を装備するか掩蔽陣地の急速構築へ技術革新を待たねばなりません。

もっとも、この装備は元々が洞窟陣地や市街地を防御拠点とした遊撃戦への対抗手段として構築されたものであるため、この種の装備が開発されたからこそ運動戦の必要性が生じたのではなく、陣地戦闘がこれまで有効であったからこそ、これを無力化するための用法が構築されたため、ともいえるところです。

 無人機は上記条件に加えて、掩蔽陣地のような陣地構築を行わなければ暴露した野戦陣地は容易に発見されるようになります。この無人機は滞空型で高高度から戦場監視を行うものがありますが、携帯式で人力投射により射出するものも広く配備されており、常に移動しなければ固定陣地では発見即弾巣、袋叩きとなるでしょう。

 陣地は暴露すれば非常に厳しい状況に追いやられるため秘匿が重要と記しましたが、無人機はこの秘匿の度合いをより高いものへと追いやっています。このため、迅速に構築できるならば地下化される掩蔽陣地などの優位性が高まるのですが、陣地変換等の制約はこの構築の時間的余裕を狭めました。

 情報優位が戦域優位につながるとの発想を元に発見した目標情報を迅速に共有化し部隊間により火力を投射し相互を補完する、という現代戦では、位置が容易に無人機が暴露し、陣地攻撃用の装備が発達、航空偵察と航空攻撃の機能が第一線歩兵の無人機や陣地攻撃兵器により代用も可能となったわけです。

 こうした意味から、装甲車両により機械化することは城壁や野戦築城の延長線上として意味があると共に、陳腐化した従来の防御戦闘隊形を無理に維持する場合、築城速度などの装甲車両とは別の技術革新を伴わない限り、人命や装備などへ非常に大きな損耗という代償を支払わされることとなります。このため、装甲車両の広範な装備は大きな意味があるのです。

北大路機関:はるな
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