北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

御嶽山噴火災害自衛隊災害派遣 3000m級高山部火山災害対処の厳しい実情

2014-09-30 19:25:52 | 防災・災害派遣

◆火山泥流災害発生までにロボット・無人機投入を

 御嶽山火山災害は、火山灰堆積地域は数日内の降雨でラハールの恐れが出ている中、行方不明者捜索と心肺停止孤立者搬送が急務となっています。

Bhimg_1812  本日はCH-47JA輸送ヘリコプターにより800名を山頂付近に展開させる計画でしたが、御嶽山山頂付近での捜索活動、火山性微動の振幅数の急激な増大により噴火の懸念がある事と山頂付近の有毒ガス濃度により火山活動活発化により終日中止となりました、今週末にも御嶽山周辺は降雨が予想され、雨が降ればラハール、火山性泥流が起きますので、分かってはいるものの時間が無い。

Bhimg_1765  御嶽山山頂付近での自衛隊や警察と消防の捜索活動が亜硫酸ガスと硫化水素により停滞していますが、どうにかならないのか、この点について。亜硫酸ガスと硫化水素はガスマスクで防げるのではないか、という視点がありますが、ガスマスクでは現在の御嶽山山頂付近を捜索する事は出来ません、何故か、それは火山灰があるためです。

Bhimg_1089  ガスマスクはフィルターにより空気を濾過して有毒物質を呼吸器に取り入れないための装備ですが、このフィルターに火山灰がつあり目詰まりして酸素も窒素も二酸化炭素も封じてしまうのです。即ち目詰まりして何も通さない、ですからガスマスクでは窒息してしまいますので、空気ボンベを背負って作業することとなります。

Bhimg_0949  自衛隊には空気マスク、として化学科部隊に高濃度ガス汚染地域や低酸素地域での行動に用い、火災現場などの消火活動用にも用いる装備がありますが、これを携行しなければ対応できません。しかし、重量は14.7kgあり継続使用時間は30分、山間部で携行するにはかなりの重量です。

Bhimg_0838 こんな重いものでもヘリコプターで山頂に大量搬送することは可能でしょうが、3000m級の高山部で14.7kgを背負って30分の時間制限の中で作業することは出来ません。山頂付近での捜索活動、有毒ガスが充満する環境下においてじりじりと時間だけが経過する中焦燥感が募るところですが、ロボットの投入は真剣に検討されるべきでしょう。

Bhfile0466 現状で求められるのは福島第一原発事故に投入された米軍用ロボットの派遣です。自衛隊へ緊急供与されているほか、東京電力にも供与されており、今回の災害派遣で89式装甲戦闘車が出動していますが、この89式装甲戦闘車の原隊である普通科教導連隊が駐屯する滝ヶ原駐屯地、道路を挟み向かい側の米海兵隊キャンプ富士にも野戦用ロボットが装備されています。

Bhimg_5538  野戦用ロボット、そして小型無人機、小型無人機であれば自衛隊にも装備されているものが少なからずあり、中には火山灰の中でもある程度ならば飛行可能なものもあります。現状の御嶽山山頂のように人間が入れない状況だからこそ、投入を真剣に検討すべきで、こうした判断は第一線部隊では行えない装備品もありますので、上級司令部や本省の決断が待たれるところ。

Bhimg_7641  野戦用ロボット、アメリカ側に供与を打診してみる選択肢は防衛省で検討されるべきでは、と。東日本大震災福島第一原発事故ではウォリアーとバックボットというロボットが供与されており、ウォリアーは最大800mの距離での遠隔操作が可能な装備で、爆弾処理等の任務に対応するべく90kgまでの物量の輸送や回収が可能、というもの。

Bhimg_7670  ウォリアーの搬送能力について、具体的には米軍は負傷兵などの収容を想定しているとのことですから、行方不明者の捜索を救難を、硫化水素や亜硫酸ガスの濃度が低いところから遠隔操作し対応することが出来るでしょう。捜索は火山活動が沈静化するまで待ちたいところですが、火山灰が堆積すれば降雨時、ラハール、つまり火山性泥流を発生させる可能性が非常に高い。

Bhimg_7665  ラハールで流失してしまえば捜索の難易度が非常に難しくなってしまうため、余り悠長に構えられないと同時に、ラハールが多発すると気象条件によっては捜索隊が立ち入るにもさらに制限が掛かる事を意味します。そこで、バックボットやウォリアーのようなロボットを投入する方法を真剣に検討されるべきです。むしろ、東日本大震災以降に何故全国へ配備されなかったのか、予算上の問題があっても責任が問われると思うところですが。

Bhimg_7466  パックボットは小型ロボットで文字通り背負って輸送でき人力可搬性を有しており爆発物の確認と処理に加え斥候等の任務を有しています。800mの遠隔操作距離の関係上、山頂付近には接近出来ないため、空中からの遠隔操作が必要ですが、共にアタッシュケース大の操作装置から運用可能で、パックボットについては非常に軽量且つ安価で一基当たりは01式軽対戦車誘導弾本体よりも安価です。

Bhimg_5999  この際、米軍に一部を緊急供与を求めると共に、全国の部隊本部や各普通科中隊の本部などに3基程度取得する調達計画を立てておく、今後の災害派遣はもちろん、市街地戦闘など自衛隊の任務にも寄与するでしょう。なによりも災害派遣に威力を発揮するのですが、本来は市街地戦闘用の装備なのですから。

Bhimg_6227  加えて、火山灰のなかで航空機エンジンに影響を与える火山性エアゾル微粒子は、電池式無人機には影響が非常に少なく、一部普通科連隊に装備されている携帯型飛行体を用いて遠隔地からの捜索を行う検討は為されてしかるべきです。少々山間部では風速が心配ですが、実運用と山間部での実用性に問題があるならば改良せねばなりません。

Bhimg_5558  携帯型飛行体は手投げ式発進を行うもので全幅60cmと質量400gという非常に小型、電動プロペラ推進を採用しGPSを利用し位置を把握するため発進から着陸まで全自動自律飛行が可能で、搭載カメラにより毎秒3枚で画像を撮影し伝送出来ます。軽量過ぎるため気流が大きな山間部では運用が難しいですが、行方不明者捜索には寄与することは間違いありません。

Bhimg_6009  山頂付近の行方不明者と山荘内に取り残された心肺停止孤立者、気象庁によれば週末には台風18号が本土へ接近する可能性が示唆されているため、早急な対応が必要となります、そういうのも火山災害は火山灰が堆積した時点で降雨が生じればラハール災害という次の段階へ展開する為、選択肢を迷わず選定し実行するべきでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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御嶽山噴火災害自衛隊災害派遣 第12旅団、全力で人命救助への捜索救難活動を展開中

2014-09-29 23:25:23 | 防災・災害派遣

◆有毒ガスと火山灰と標高3000mの過酷な環境

 御嶽山火山災害は行方不明者が40名以上、死者12名と心肺停止者24名、今晩新たに5名の心肺停止遭難者が山頂付近で発見されました。

Sdimg_1050 御嶽山火山災害に対して長野県知事からの災害派遣要請に応じ、第12旅団は松本の第13普通科連隊を中心とした災害派遣部隊を編成し、第12ヘリコプター隊、 東部方面航空隊、富士教導団、第13普通科連隊、第12偵察隊、第2普通科連隊、が派遣ないし待機部隊として前進派遣され災害派遣任務に当たっていますが、被災地は有毒ガスと火山灰と標高3000mの過酷な環境です。

Fimg_7734 特に御嶽山火山災害では89式装甲戦闘車が派遣されたことが挙げられます。これは火山弾による多くの死者が出ており、気象庁の警戒情報として火口から4km圏内での以外なども想定されることから、富士教導団普通科教導連隊の89式装甲戦闘車が第12旅団へ臨時編入され、緊急輸送に備えています。

Amimg_1581 災害派遣要請は27日1431時に出され、早速第12ヘリコプター隊より1514時にUH-60多用途ヘリコプターが情報収集へ離陸、1525時には第13普通科連隊のFAST- Force即応派遣部隊が松本駐屯地を出発しました。初動は情報収集が中心となり、1526時に第12ヘリコプター隊よりOH-6Dが、1552時より第12偵察隊の20名が車両10両とともに、1555時には東部方面航空隊の映像伝送機UH-1が離陸しました。

Fsimg_6821_1 噴火当日にも火口付近まで着陸可能な地域を探して接近を試みるUH-60JAやOH-6Dが報道映像に映っていました。災害派遣は人命救助について要請、これは火口部分には誰も近づけないため、自衛隊に緊急の措置として要請されたものですが、1740時に第13普通科連隊より最初の捜索部隊が人員30名と車両15両を以て登山道黒沢口へ向け出発し、以降、救助活動の準備に当たりました。

Img_1356 2120時に第13普通科連隊の捜索部隊増援が人員90名と車両約20両を以て登山道田の原口へ向け出発し、更に旅団普通科連隊の人員規模から交代要員を考えた場合の支援部隊として新潟の新発田駐屯地より第2普通科連隊が人員80名及び車両20両を以て派遣され2315時に松本駐屯地到着しています。

G12img_3686 第12旅団は3年前まで空中機動を重視した関係上、化学防護車2両以外一切の装甲車を持っていませんでした、近年は軽装甲機動車に指揮通信車や偵察警戒車を装備していますが、火山灰の堆積地域で不整地突破が可能な装軌式装甲車を一切有していません。

Gimg_6698 そこで89式装甲戦闘車の派遣が決定し富士教導団より人員約10名が車両5両を伴い登山道田の原口及び黒沢口へ向けて28日0241時より順次駐屯地を出発しています。装甲車は有珠山や普賢岳に十勝岳噴火災害にも出動しており、今回は管理替えで借り上げる形となり対応したもよう。

Img_7300  第12旅団は王滝村役場に前方指揮所を設置し、空中機動部隊を相馬原などの駐屯地から松本駐屯地に前進、第12ヘリコプター隊のCH-47が3機と東部方面航空隊のOH-6の1機が松本駐屯地で待機態勢に当たっており、UH-60JAが前進し任務に当たっているかたち。

Limg_9934 28日より本格化した災害派遣での救出任務はまず0500時に東部方面航空隊のUH-1が1機、映像伝送機として離陸し、以降、情報収集活動実施しており、0530時には第12ヘリコプター隊のUH-60が1機とOH-6が1機が離陸、以降、情報収集活動実施、0829時に
東部方面航空隊のUH-1の1機が離陸し情報収集を実施しています。

Cimg_9840  救出活動は第12ヘリコプター隊のUH-60JA多用途ヘリコプターにより行われました。まず、0651時に第12ヘリコプター隊のUH-60が剣ヶ峰山荘付近で2名をホイスト吊り上げにより救助、1000時に第12ヘリコプター隊のUH-60が離陸し救助活動実施し1017時に剣ヶ峰東側の山小屋覚明堂で4名をホイスト吊り上げにより救助に成功しました。

Img_0290  1030時に第12ヘリコプター隊のUH-60が離陸し救助活動実施し、1040時に剣が峰東側の石室山荘に登山道黒沢口より入山した第13普通科連隊等が到着、空中機動部隊と密接な連携を取りつつ同北東側の二の池本館小屋付近を捜索を開始しました。1120時、第12ヘリコプター隊のUH-60が覚明堂で行方不明者を発見し1名をホイスト吊り上げにより救助しています。

Uhimg_4292  ホイスト吊り上げにより救助は、1318時に覚明堂で4名を、1345時に第12ヘリコプター隊のOH-6×が離陸しその情報に誘導され 、1347時にUH-60が覚明堂で4名を、1417時にUH-60が覚明堂で4名を、1653時にUH-60が剣ヶ峰山荘付近で3名を、1725時にUH-60が剣ヶ峰山荘付近で1名を、それぞれ収容しホイスト吊り上げ等による救助者は23名に上りました。

Gimg_4136 しかし、亜硫酸ガスや硫化水素などの有毒ガスが火口より噴出し、風向きによっては人命を左右する状況となるため28日1400時、派遣部隊は消防レスキューや警察山岳部隊と共に、火山性ガスの影響により活動を一時中断し、王滝登山道を心肺停止者4名を搬送しつつ下山しています。

Simg_6182  現在の災害派遣部隊は、人員270名、車両75両、航空機12機の態勢で継続しており、防衛省発表は本日現時点で28日2300時のものまでですが、本日も捜索救助活動を実施しています。被災地は標高3000m、自衛隊災害派遣史上もっとも標高の高い被災地のひとつでの派遣は継続しています。

北大路機関:はるな

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自衛隊最新装備『基地防空用地対空誘導弾』!本日、浜松基地航空祭にて初撮影

2014-09-28 23:52:19 | 先端軍事テクノロジー

◆PowerShotG-16撮影速報

 自衛隊最新装備、基地防空用地対空誘導弾を本日撮影することが出来ました。

Aimg_3477 基地防空用地対空誘導弾は航空自衛隊が基地防空用として運用している81式短距離地対空誘導弾の後継として導入を開始したもので、ミサイル本体が同型で細部が異なる陸上自衛隊の11式短距離地対空誘導弾の姉妹装備といえる最新の誘導弾です。

Aimg_3461  千歳基地の基地防空教導隊より配備が開始されましたが、浜松基地には今年六月、第二術科学校へ装備が開始され、本日の浜松基地航空祭が基地防空用地対空誘導弾初の地上展示となり、基地防空用地対空誘導弾配備されている千歳基地では今年の航空祭で展示されなかったため、本邦初の一般公開となっています。

Aimg_3456 基地防空用地対空誘導弾はアクティヴレーダーホーミング方式を採用しており、81式短SAMのレーダー誘導型の射程と同等とすればその射程は15km程度、ということになります。81式短SAMには赤外線誘導型とレーダー誘導型がありましたが、基地防空用地対空誘導弾と11式短SAMに赤外線誘導型は現在のところありません。

Aimg_3481  その最大の特色は従来の短SAMが対航空機戦闘に重点をおいていたのに対し、航空機からのスタンドオフ兵装が一般化し射程外から精密誘導弾により攻撃されるという現状に鑑み、超音速小型空対地ミサイルや巡航ミサイルに対しても迎撃能力を付与した点が挙げられるでしょう。

Aimg_3631 システムは、四連装発射装置2両とレーダーを搭載した射撃指揮装置1両により構成され、同時多目標対処が可能です。航空団基地防空隊には4セットが配備されているとのことで、これは師団高射特科大隊の短SAM中隊の装備数と同数にあたります。陸上自衛隊の11式は3t半トラックにより機動していますが、航空自衛隊は高機動車により機動している。

Aimg_3632  この点について質問をしてみますと、術科学校の方の解釈としまして、野戦運用での不整地突破能力と路外機動性を重視するのか、あくまで航空基地やレーダーサイトを防空するため、機動性よりは秘匿性などを重視するかにより運用車体が異なっているのではないか、ということでした。

Aimg_3637 ミサイルの本体を収めたコンテナはかなり大型となっていますが、その装填はクレーンにより実施され、コンテナ式ミサイル装填方式を採用するため、長期間の射撃体勢継続が可能であるため即応性が向上したほか、再装填での人力作業部分を自動化したため、次弾装填能力等を含めた総合的な能力は大きく向上しているとのこと。

Aimg_3633  今後全国の基地防空隊へ配備されてゆきます。高射教導隊本部が置かれている浜松基地ですが隷下の基地防空教導隊は千歳基地に置かれているため、見れないと思いきや今回展示されているものを撮影出来、速報としました次第です。航空祭は快晴、遙か北では御嶽山が噴火中ですが、航空祭は多くの来場者でにぎわっていました。

北大路機関:はるな

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御嶽山が爆発的噴火、岐阜長野県境の山頂火口付近登山者など孤立者多数で自衛隊派遣

2014-09-27 23:33:21 | 防災・災害派遣

◆観測史上最大噴火に政府対策本部設置

 本日正午ごろ、岐阜県長野県県境にある標高3067mの御嶽山剣ヶ峰山頂付近において爆発的な噴火が確認されました。

Bhimg_9741 御嶽山を旅客機機内から撮影したもの。中部国際空港と北海道などを結ぶ航空航路上に御嶽山配置し、近傍に同じく火山である乗鞍岳なども俯瞰することが出来ます。今回の噴火は1153時頃、突如として山頂付近が噴火し、大規模噴火の兆候となる前駆噴火現象を経ずして大きな噴火となったため、山頂付近には百数十名の登山者が居たため、このうち十数名が重傷を負うなど被害が生じました。なお、前駆噴火は観測されなかったものの、特異ではない範囲内で噴火数十分前までに火山性地震が増大したと気象庁が発表しています。

Bhimg_9742 御嶽山について。御嶽山は木曽御嶽神社の御神体として崇敬を集めています。今回の噴火は山頂付近の登山者が噴火最初の爆発を撮影し、世界を驚かせました。御嶽山は山麓より御岳ロープウェーが運行されており、一定の経験があるならば比較的容易に日帰り登山も可能な3000m級山岳として知られており、特に本日は週末土曜日であったこともあり、紅葉時期とも併せ登山客が多かったとのことでした。反面、御嶽山付近は林業が盛んで、土曜日で林業従事者への人的被害は一部抑えられた、といえるかもしれません。

Bimg_9455  噴火の直接被害について。山頂付近の爆発的噴火と共に、山頂付近長野県警や岐阜県警が集計した情報によれば10名以上が意識不明の重体、40名以上が重傷を負っており、このほか山頂付近に数名、7名程度が火山灰に埋没しているとされ、救助を急いでいます。加えて孤立者は現在一部の山小屋に41名が孤立しているとNHKにより報じられました。噴火当初は火山弾や灰神楽から逃れるため多くの方が山小屋に避難しましたが230名が下山した、とのこと。

Bhimg_3153  被害全般について。交通や降灰による被害が出始めています。NHKによれば、今晩に入り山梨県甲府市に火山灰の降灰が確認されており、今後首都圏などに火山灰による被害が生じる可能性が指摘されています。また、交通への被害としましてJR東海高山線などは平常運航され、現在のところ問題はありませんが、旅客機の航空航路などに火山性エアゾルを中心とした火山灰の広がりが懸念され、羽田空港発着の航空便一部について数十分から一時間程度の遅れが出ています。

Bhimg_1418 政府の対応について。安倍晋三首相は外湯から帰国した本日、御嶽山の噴火を受け、被災者の救助に総力を挙げるとともに、登山者や住民の安全確保に万全を期すことなどを指示しています。また、長野県の阿部守一知事は長野県の防衛警備及び災害派遣を担当する第12旅団の赤松雅史陸将補へ災害派遣要請を出し、陸上自衛隊による災害派遣が開始、山頂付近での航空偵察などを筆頭に自衛隊の行動が始まっているほか、長野県警などへの中央からの支援も開始されました。

Img_2603  自衛隊の災害派遣ですが第12旅団は空中機動を重視した旅団編成であるため、走行車両などに限界があります。今後、火山灰などが堆積し、避難誘導などに装軌式装甲車が必要となった場合、北部方面隊等から73式装甲車が管理替えにより配属される可能性があるほか、観測支援などで装甲ドーザや施設作業車などが第12旅団長隷下に配属される可能性があり、噴火が大規模となった場合、御嶽山周辺の第12旅団と第10師団に第1師団を加えた統合任務部隊が編制されるかもしれません。

Nimg_8985_1 航空機と火山灰の関係について。航空機は火山灰の中を飛行する事は出来ません、そして噴煙は火山灰の一種ではあるものの視覚では認識しにくい火山性エアゾルが航空機の運航を阻害します。火山性エアゾルは肉眼では見えにくいもののエンジンに取り込まれるとタービン部分の高熱で溶岩に戻り排気口の部分で冷気に曝され凝結、エンジンを閉塞し破壊します。加えてピトー管に詰まり速度計を破壊、ガラスに高速で衝突し研磨させ視界を奪い、レドームも研磨しアンテナなどを破壊します。見えないため回避が難しく、この為飛行できないのです。

Bhimg_9743 被害の予想について。御嶽山は約80万年前に中部火山帯の噴火活動により誕生し、最大3500mほどの火山となっていましたが、爆発的噴火により山頂部が吹き飛ばされ、現在の標高となりました。その後5万年ほど前の大噴火を最後に小康状態が続いていたため、死火山に類別されたのですが1979年に突如噴火し、この事例を契機に死火山という概念が再定義されることとなっています。1979年10月28日からの噴火は火山灰が遠く北関東の前橋市まで到達、広範囲に火山灰被害を及ぼしました。

Bhimg_3391 火砕流について。今回も既に小規模なものが観測されていて、噴煙柱崩落型という吹き上がった火山ガスを含む火山排出物がそのまま重力によって下にたたきつけ広がるという方式と思われるものが国土交通省監視機材により観測されました。特にその速度が時速100kmを越え、広範囲に展開する為警戒を要するものです。窓の無い頑丈な建物に避難すれば、高温ガスである火砕サージを避ける事が出来ますが、火砕流本体と遭遇した場合埋没して蒸し焼きになる可能性があり、想定避難地域からの迅速な退避こそが唯一の対処となります。

Nimg_1766  火山弾について。本日の噴火では既に火山弾が山小屋の屋根などを破壊するなど被害が生じ始めています。気象庁によれば現在の規模の噴火により最大4kmを火山弾が飛ぶ可能性が指摘され、警戒を呼びかけています。ただ、小型の火山弾はより遠くに飛びますので、周辺地域の方々は極力外に出ないように、また犬小屋などの愛犬も併せて屋内に退避させることが望ましいでしょう。微弱な火山性ガスを飼い犬が先んじて検知して飼い主を避難させた事例があり、愛犬を人命と同列に大事にしなければなりません。

Db_img_9736  ラハールについて。火山灰は短時間で硬化し火山アスファルトへと変質し、これにより山間部の保水力が一挙に失われることとなり都市部の傾斜地アスファルト舗装道路が降雨時に一挙に流れるように、山間部で突如土石流が発生します。警戒を要するのは、少量の降雨でも大規模なラハールへ展開する点で、特に九月は台風被害が集中する時期であることから警戒が必要です。そして下流まで影響がある事を忘れてはなりません。また、昨年の伊豆大島ラハール被害のように長期を経ても発生する為、長い警戒が必要でしょう。

Bimg_5624 最大規模の噴火が発生した場合について。岐阜基地航空祭予行のブルーインパルスと御嶽山、木曽川水系の上流にある御嶽山は高い標高と相まって中京地区の主要都市から望見出来ます。特に名古屋市や岐阜市の平野部は山間部の山岳崩壊による土石流により成立した沖積平野ですので、最大規模の噴火が仮に発生した場合に、中京圏への土石流被害は想定され、岐阜基地の各務原市丘陵地帯は御嶽山の火山性堆積物により構成、5万年前の大規模噴火による火山性土石流所謂ラハールは小牧基地近くの犬山市でも確認されています。

Bimg_9572  現在のところ、火山噴火予知連絡会などからそもそも御嶽山がどの程度のマグマを蓄積しているかについて資料が無いため分からない、としていますので最大規模の噴火が起こるという過去の事例は地学的出来事の羅列に過ぎません。しかし、単なる可能性として、ですが、今回の噴火が前駆噴火であり、数日から数週間を置いて山体崩壊、1888年の福島県磐梯山のような山そのものが爆発により吹き飛ぶ破局噴火が生じ、数十km以内が火山弾と火砕流による大打撃を被る、という想定は必要か不要か、を検証する必要は、あるでしょう。

Bhimg_6441 御嶽山は1979年の噴火まで死火山と思われていたものの突如噴火し活火山となったように分からない事が多々あります。北関東まで気象庁は火山灰情報を出しているため、呼吸器系等への防護から家屋などの保全まで、また今後の噴火状況によっては御岳周辺だけではなく木曽川水系でのラハール被害も想定されますので、正直なところ、このまま収まる可能性もあれば、最大規模の破局噴火につながる事も想定しなければなりません。最新の情報とともに、火口周辺4kmの火山弾対策、200km以内の火山灰対策、万全を期す必要があります。

北大路機関:はるな

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平成二十六年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.09.27・09.28)

2014-09-26 23:35:33 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 台風接近下ですが、なんとか週末の直撃は避けられそう、今週の行事紹介です。

Himg_31850  浜松基地フェスタはままつ2014、航空自衛隊創設式典がおこなわれ、航空自衛隊発祥の基地です。東海道新幹線浜松駅から5kmの距離にあり、京阪神や首都圏からの日帰りが可能な航空祭として多くの来場者が足をはこぶ一大航空祭として知られているところ。

Himg_3228  航空教育集団司令部とT-4練習機を運用する第1航空団、航空自衛隊第1術科学校、航空自衛隊第2術科学校、航空戦術教導団高射教導群、警戒航空隊司令部及び飛行警戒管制隊などが展開しています。E-767機動飛行やT-4の大編隊等が名物として知られるところ。

Simg_0047  東北方面隊創設記念仙台駐屯地祭、東北方面全域の防衛警備及び災害派遣を担当する東北方面隊は隷下に第9師団と第6師団を置き、重要地域である青函地域の防衛を筆頭に着上陸へ備えています。東日本大震災の年までは東北方面航空隊の駐屯する霞目飛行場地区において盛大に行事が行われていましたが、2012年からは仙台駐屯地にて行われていますのでご注意ください。

G12img_4725  下総航空基地開設55周年記念行事、海上自衛隊の教育航空集団司令部が置かれると共に、厚木航空基地が米海軍より返還されるまでは航空集団司令部が置かれていた海上自衛隊航空の一大拠点で、今年はP-1哨戒機の展示が行われる、とのこと。

Img_6595  このほかの主要行事ですが、第5施設団創設記念小郡駐屯地祭、としまして西部方面隊直轄の施設部隊行事行事や、需品学校創設記念松戸駐屯地祭として個人装備等の展示が行われるほか、第2高射特科群の中SAM部隊の展示、このあたりも注目の行事です。

Aimg_9773 立川防災航空祭、東部方面航空隊が駐屯する飛行場ですが、方面航空隊の行事に留まらず首都圏の公官庁の航空部隊が参加する防災航空祭としての行事が行われることで有名な立川駐屯地祭です。中部方面後方支援隊創設記念桂駐屯地祭、京都市の駐屯地で、補給処などの施設ですが車両点検展示など一風変わった展示が行われ有名です。

Img_9725_1 竹松駐屯地祭、大村線沿線の駐屯地で第7高射特科群が駐屯している駐屯地です。ホークミサイルを運用しており、発射器を並べ訓練展示では防空戦闘の概要を展示します。富山駐屯地祭、第382施設中隊が駐屯していまして、うどん無料喫食展示が行われるほか第14普通科連隊の支援などを受け行事を行います。

Uimg_7684 秋田分屯基地開庁記念行事、秋田救難隊が展開する航空自衛隊の分屯基地で、UH-60JやU-125等が展開しています。分屯基地は基地によっては五年に一度しか開庁記念行事を開放しないことがありますので、この機会に是非どうぞ。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

 

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ソマリア沖派遣海賊対処水上部隊第18次派遣部隊護衛艦いなづま、あまぎり、呉へ帰国

2014-09-25 23:12:43 | 海上自衛隊 催事

◆現在第19次派遣隊が海賊対処任務中

 ソマリア沖派遣海賊対処水上部隊第18次派遣部隊が先日無事帰国しました。

Img_7540  第8護衛隊を中心として編成されソマリア沖へ派遣されていました艦長可知俊一郎2佐指揮の護衛艦いなづま、艦長松田光央2佐指揮の護衛艦うみぎり、より編成される派遣海賊対処水上部隊第18次派遣部隊が9月20日、任務を完遂し呉基地へ帰港しました。

Aaimg_5246 派遣部隊は今回の派遣に際しソマリア沖での2009年3月からの海賊対処任務開始以来、通算3500隻目という大台に当たる護衛任務を無事完遂しており、派遣部隊は哨戒任務担当艦と船団護衛任務担当艦に分かれ、今現在も海賊対処任務を遂行中です。

Img_6683 ソマリア沖派遣海賊対処行動水上部隊は現在第19次派遣隊が護衛艦たかなみ、おおなみ、をもって任務に当たっています。海賊対処任務は船団護衛対象船舶への被害が目下皆無であり、護衛任務は確実に完遂されるとともに、艦艇の哨戒任務によりその被害は着実に鎮静化しています。

Eimg_0568 艦艇部隊は南西諸島方面における哨戒任務を中心に我が国周辺海域での警戒任務を継続しつつ、諸外国との訓練などを継続すると共に海上自衛隊としての練度向上を図るべく訓練計画を進めつつ、ソマリア沖へ艦隊を派遣中で、負担は非常に大きく限界を前後している状況ですが、日本と世界の海洋安全への期待へ応え続けています。

北大路機関:はるな

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舞鶴基地沖を航行する自衛隊水陸両用車両、ユニバーサル造船製の自衛隊装備

2014-09-24 23:24:42 | 先端軍事テクノロジー

◆新型水陸両用車ではなく94式水際地雷敷設車
 先日舞鶴基地へ行った際に航空基地周辺の海域を自衛隊の水陸両用車が試験を実施していました。
Maimg_1608  舞鶴の水陸両用車、所用があり舞鶴へ足を運んだ際に約束の時間まで時間に余裕を以て展開し、その間にちょっと前島埠頭へ立ち寄って舞鶴基地は北吸桟橋に停泊する護衛艦を撮影しよう、とカメラを構えた際に、反対方向に船のようなものが動いていることに行づき、よく見たら水陸両用車だった、ということ。
Maimg_1528  白波を蹴立てて海上を行く水陸両用車両は明らかに塗装が自衛隊車両であるOD塗装で、自衛隊の新型水陸両用装甲車か、と驚いたところ。しかし手元には18-200mmのレンズを備えたEOS-7Dのみしかなく、流石に普段から300mmレンズは持ち歩かないとはいえ、勿体無いことをしたというべきでしょう。
Maimg_1485  実は、“舞鶴 自衛隊装甲車”、“舞鶴 水陸両用車”、“舞鶴 水陸両用装甲車”、という用語での検索が相当数あり、撮影しましたのは先々月なのですが、その後もこの車両が展開していたことが考えられます。なお、何故掲載が遅れたかと言いますと、こちらは機会を逸していたため、忘れていたわけでは、多分違う、ですよ。
Maimg_1535  防衛用水陸両用車両、2009年10月22日に防衛省より“防衛用水陸両用車両技術に関する調査研究”の入札が行われ、三菱重工とユニバーサル造船が入札に応じ、ユニバーサル造船が10万5000円で入札、三菱重工が380万円で入札を提示、防衛省は実績などから検討した結果、ユニバーサル造船が落札しました。
Maimg_1585  そのユニバーサル造船舞鶴工場が舞鶴航空基地に隣接しています。ユニバーサル造船は子会社のユニバーサル特機94式水際地雷敷設車を陸上自衛隊へ納入しており、今回も車体形状の特色から94式水際地雷敷設車であることが分かり、新造車両というよりは定期整備の車両なのかもしれません。
Maimg_1607  それにしてもこの車両、意外と軽快に水上を航行していまして、速度も早め、白波が大きい点を除けば水陸両用車にはみえず、知らない人が見れば完全に舟としか思わないのかもしれません。海上自衛隊の方に聞いてみますと、ちょくちょく航行していますよ、とのこと。
Maimg_1619  しかしながら、防衛省が求めていた車両は防御力を有し着上陸任務を展開する際の第一波を構成し、海浜における重装備揚陸に向けた海岸堡の確保に必要な戦闘部隊を上陸させる戦闘車両であったのですが、着上陸は可能であるものの車高や生存性で対応できるものでは無かったといわれています。
Maimg_1634  ユニバーサル造船は94式水際地雷敷設車を原型とし装甲防御力を付与すると共にRWS遠隔操作式銃塔等を搭載する程度であったとのこと。結果的に防衛省はアメリカからAAV-7水陸両用強襲車を導入するのか、国産案を進めるのかが検討される重要な機会であったものの、これを機にAAV-7導入へ転換しました。
Maimg_1643  国産案は一方、ジェーンディフェンスウィークリー誌が今年4月7日に、三菱重工広報担当者の話として三菱重工が独自に水陸両用装甲車の研究試作を実施していることが報じられ、いちおうAAV-7と同等の運用を可能として自衛隊が想定する規模の車両を研究している、といわれているところ。
Maimg_1686  舞鶴の水陸両用車、防衛用水陸両用車両技術に関する調査研究は試作車両や実証車両の製造までを含んでいるものではありませんので、この車両は94式水際地雷敷設車の定期整備の様子と考えられます。一方で、水陸両用車の姿は、こうした話があったことを思い出させてくれる様子でした。

北大路機関:はるな

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特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑬・・・技術開発、ネットワーク型戦闘対応Ⅱ

2014-09-23 23:42:48 | 防衛・安全保障

◆戦域情報優位は戦域戦闘優位へ直結

 特集、平成27年度防衛予算概算要求概要の特集記事は、技術開発、ネットワーク型戦闘対応について引き続き。

Fs_img_4160  指揮統制・情報通信体制の整備が目指すもの、陸上自衛隊全般の情報通信指揮統制能力の向上と共に米軍との情報連携が行われるよう技術開発を盛り込んだ概算要求は、当然陸海空自衛隊部内での情報共有もこれまで進められたものに加えやはりより大きく前進することと成ります。

Limg_1001  情報優位は戦域優位、この視点は我々が戦史などを俯瞰する際にあらかじめ戦域情報や彼我勢力図等を共有知識として得たうえで、そのための必要な戦術や兵站情報を検討するため、見過ごされがちですが、実際の千医事情報は当事者の間で決して十分得られていない、ということが世界戦史上多々あったのです。これを戦場の霧、と表現することもある。

Iimg_0078  具体的には“指揮・統制・通信機能の整備・陸上自衛隊へのリンク機能導入に係る調査・研究(0.4億円)陸・海・空自衛隊のリアルタイムによる目標情報等の共有を実現するため、主に陸上自衛隊地対艦誘導弾システムへのリンク機能導入に係る調査・研究費を計上”、と示されていましたが。

Gfimg_2445  これは具体的な事例として地対艦ミサイルに関する情報を共有するものとして提示されていました。12式地対艦誘導弾システムなどは導入が開始されましたが現在は標定装置を陸上から索敵させるか、電子隊による海上電子情報を集約し標定するほかありませんでした。

88img_1324  ここに陸海空自衛隊間のデータリンク能力を付与することで遠距離目標への対処能力を高めることが盛り込まれる、ということ。 地対艦誘導弾システムは沿岸からの照準や電子隊による標定に寄っても確かに確保できる運用能力を持っているのですが、此処が強化される。

Nimg_2500  現代戦は敵の正確な位置さえ正確に捕捉できればその時点で結果が来ます、問題は探知の精度と評価の精度、航空自衛隊戦闘機や海上自衛隊哨戒機に海上自衛隊水上戦闘艦艇や潜水艦からの情報を得たほうが確実に目標を補足しているため位置情報の精度も高いことは理解できるでしょう。

Himg_8244  この部分をデータリンクにより実現するのですが、併せて航空自衛隊支援戦闘機や海上自衛隊哨戒機に護衛艦やミサイル艇と潜水艦も対艦誘導弾の運搬手段であるため、この攻撃に陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊が加わることで完全な飽和攻撃を行うことが可能となります。

Gimg_8996  更に“米軍委託教育による人材育成(0.8億円)リンク機能を運用する隊員を育成するための人材育成費を計上”、と平成27年度防衛予算概算要求概要には盛り込まれていますが、三軍統合運用という、この分野での米軍の先進的な要素を米軍から学ぶことがしめされた、というわけです。

Img_2041  装備面の具体的施策として地対艦ミサイルがあげられていますが、日米情報共有の面から併せますともう一つおおきな意味を有することに行づかれるでしょう、即ちこれは目標脅威情報、特に海上目標についても日米が情報を共有することとなり、米軍の索敵情報に依拠した運用が可能となる。

Img_0025  具体的には海上自衛隊は米海軍とのデータリンクを既にリンク16など既存のデータリンク能力により整備しています、この情報を陸海空で共有することになるため、米軍の監視情報を元に陸上自衛隊が地対艦ミサイルを運用出来る事を意味し、その大きな射程を充分に行かせることになるわけです。

Hbimg_1063  他方、脱線は承知で現在の集団的自衛権論争は特に直接の銃撃や砲撃などを交えた戦闘での自衛権にばかり注目されており、情報面の連携をどの程度盛り込むのかの議論がなされていません、この点についてですが現代戦闘での情報の重要性は改めて指摘するまでも無い。

Simg_6523  即ち、具体的運用の段階まで賛否の議論を国会等がその必要性を認識せず推移しているように感じ、違和感を覚えます。このほか情報優位への取り組みには例えば施策に“宇宙空間における対応、各種人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙空間の安定的利用の確保のための取組を実施する。”、という部分が盛り込まれていることなども無視できません。

Simg_1208  他方で、情報優位に関する運用は、上記の技術開発と共に平成27年度防衛予算概算要求概要に盛り込まれた幾つかの施策により強化されます、特に装備面での工場に頼る部分があり、上記部分は多分にソフトウェアに依拠するものとすればハードウェアでの向上部分がある、ということ。

Himg_3152  特に“新たな早期警戒(管制)機の取得【機種選定中】南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視能力の強化のため、新たな早期警戒管制機又は早期警戒機を取得”や“滞空型無人機の取得【機種選定中】広域における常続監視能力の強化のため、滞空型無人機を取得”、などの施策も大きく寄与するでしょう。

北大路機関:はるな

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特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑫・・・技術開発、ネットワーク型戦闘対応Ⅰ

2014-09-22 23:24:05 | 防衛・安全保障

◆陸上自衛隊の能力向上へ火力の効率化

 現代先頭は情報優位の戦域空間優位への直結性が従来に増して重要となっており、十数年前の情報RMAという話題性は当然の共同交戦能力として求められています。

Bimg_0814  陸上自衛隊では第2師団及び第6師団への基幹連隊指揮統制システムの導入と試験運用により、その能力の定着化を模索していますが、実のところこの運用試験さえ既に開始されてより五年以上を経ているため技術的に場米軍と比較し一世代前の情報共有能力を進めているにすぎません。

Mimg_2283  無論、その域に達していない諸国の陸軍他世界の主流なのですから陸上自衛隊はNATO水準い負けない程度に前進を期しているのですが、その一方で、そもそも情報RMAの概念は野戦特科部隊の情報共有能力の概念を全部隊に普及させた程度のもので特別な概念ではない、という認識は必要でしょう。

Fimg_6404  特科、即ち見えない目標に関する位置情報と脅威情報を全部隊で共有し対処するという間接照準射撃の必要不可欠な要素をそのまま近接戦闘部隊や機甲部隊に適用し、脅威情報と戦闘情報を全部隊で共用しようとしたものに過ぎないともいえ、情報RMAと聞き身構える必要は別にありません。

Img_4397  この点で比較的早い時期に特科情報システムを構築し特科部隊の能力向上を進めてきた陸上自衛隊は、情報RMAが志向した情報優位に案する概念と特科職種という戦闘職種の基盤的な部分において既に盤石なものとしており、情報の伝達手段を音声やテレタイプからデジタルデータに移行するのみです。

Img_5610  そして既に普及している装備体系には野戦特科のみならず、高射特科職種における師団対空戦闘情報システムなどの概念も、こうしたデータリンクの概念に当たり、こうした下地を元に、そのまま普通科や機甲科へ普及させることで全体の能力を一挙に共同交戦能力を前提とした水準に押し上げる事が可能です。

Gimg_2663  平成27年度防衛予算概算要求概要では、“指揮統制・情報通信体制の整備”としまして、現在の数類型される野戦通信体系を包括的に指揮統制する一体化を構想し、通信体系を簡略化することで全体の脆弱性を払拭し、併せて各部隊同士の戦闘情報を共有、いつどこにどういう支援が必要か、という情報の一本化を目指します。

Img_3705  このほか陸海空の情報通信の統合なども自由度を高める施策が取り入れられますが、その具体的政策に“野外指揮・通信システム一体化(20億円)。陸上自衛隊の指揮統制システムをソフトウェア化し、野外通信システムに搭載することで、第一線部隊まで戦闘に必要なデータの共有を可能とする。

Dimg_0299  此処に加え、日米間で秘匿データの交換を可能とする研究を実施”、としてもりこまれました。システムの一体化とは、通信の基盤と指揮の基盤の一体化で、これは意見式は通信合っての基盤ではないかとの疑問にもつながるのですが、指揮命令系統を通信によって維持するという部分を通信そのものが指揮系統となる、いわば通信部隊の指揮系統への包含が進めtられる事となります。

Gimg_1387  野外通信システムは、野戦用交換装置と広帯域多目的無線機により推進する方式へ現在各師団及び旅団への装備行進が進められていますが、野外指揮システムは、通信系統とは別個にサーバ装置を設定し、指揮命令系統は携帯端末とGPS端末により、命令伝達をメールにより発し、戦域気象状況や地理情報及び彼我勢力情報と統合しています。

Fsimg_7004  ここに広帯域多目無線機と通信交換装置へ情報通信能力を付与しサーバ装置機能を付与させることにより野外指揮通信システムへと発展させる研究が行われる、次世代夜戦デジタルネットワークというべき研究ですが、これが平成27年度防衛予算概算要求概要に盛り込まれました。

Gimg_3638  中枢となる部分は各種情報をソフトウェア化し、各指揮官情報端末に配置することでサーバ機能と共に一箇所での情報処理を求める現行の方式から各指揮官での連携が可能となり、一か所の情報処理中枢の物理的破壊を以て麻痺する現在の脆弱性を払拭することにつながるでしょう。

Iimg_4236  日米情報共有、こちらも野外指揮・通信システム一体化という技術開発面で非常に重要な要素と成り、野外指揮・通信システム一体化事業により指揮統制に関するデータ共有が現在の音声通信や指揮官同士の直接交信に懐疑という部分を省きリアルタイムでの情報連携が可能となります。

Cimg_4127  具体的には誤解を恐れずに示すならば同じデジタルマップ上の彼我勢力情報と戦域戦闘情報及び補給情報などを共有するもので、自衛隊が得た脅威情報や戦闘情報を米軍が、米軍が得た脅威情報や戦闘情報を自衛隊が、それぞれゲーム画面を連想させるモニター上にて共有することとなります。

Cimg_06170  上級指揮官同士は日米共同指揮所訓練ヤマサクラなどで幾度も繰り返されていますが、第一線部隊同士のリアルタイムでの情報連携はまだまだで、日米間で秘匿データの交換を可能とする研究を実施、この施策により自衛隊の情報連携能力は高まると共に別の問題と波及効果が期待できることに気付くところ。

Aimg_0792  米軍からの大量の情報に耐える通信基盤を図らずも構成する必要に見舞われるため、自ずと情報通信指揮統制能力は米軍並みの水準に底上げする機会を得るわけでもあるのです。もちろん、対応できなければ非常に悲惨で、1990年代にNATOも対応をきしましたがデータリンクを接続するたびに回線が破綻し、当初は苦労した、と伝えられています。

北大路機関:はるな

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第10師団創設52周年記念&守山駐屯地祭 (2014-09-21) PowerShotG-16撮影速報

2014-09-21 23:30:14 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆師団改編後初の師団祭

 本日、名古屋市の第10師団司令部が置かれる守山駐屯地祭へ行ってまいりました。

Dbdimg_2942 第10師団は東海北陸地方の防衛警備及び災害派遣を担当する即応近代化師団で、第14普通科連隊、第33普通科連隊、第35普通科連隊、第10特科連隊、第10戦車大隊、第10高射特科大隊、第10施設大隊、第10後方支援連隊等を基幹として任務に当たっています。

Ddbimg_2935  東海北陸地方は政令指定都市名古屋を中心とする中京都市圏を抱えると共に若狭湾原発集中地域という戦略上の要衝を抱えると共に北陸地方の日本海沿岸の長大な海岸線を警備管区に持ち、加えて管区内に大演習場はもちろん中演習場が無い訓練場の難点を抱えつつ精鋭を求められる、という厳しいところ。

Dbimg_2948 加えて警備管区は戦後最大の台風被害を叩きつけた伊勢湾台風という過去の災害の経験を持ち、木曽三川という水害の脅威を受ける地域であると共に、近い将来発生が懸念される東海地震の警戒地域ともなっており、大規模災害という有事へも警戒を高めねばならない。

Dbdimg_2956 この重責を担う第10師団は第10混成団を元に1962年の陸上自衛隊師団制度導入とともに師団へ改編、2002年の師団改編により第49普通科連隊が創設され、特科火砲や戦車定数などが増勢、各普通科連隊にも対戦車中隊が新編され軽装甲機動車等の配備も開始、その火力及び戦闘能力を大きく向上させました。

Dbdimg_2975 2014年、新年度と共に第10師団は近代化改編を受けました。この改編にともない第49普通科連隊は中部方面混成団へ管理替えとなり、第10師団は4個普通科連隊基幹の編成から3個普通科連隊基幹編成へと縮小されるとともに、戦車大隊や特科連隊の中隊数や大隊数も縮小されています。

Dbdimg_2980 戦車大隊は4個中隊約50両を基幹とする編成から2個中隊30両に縮小改編を受け、特科連隊も全般にあたる第5大隊を廃止し普通科連隊の管理替えと共に第4大隊も廃止、火砲定数は60門から30門へと大きく削減、普通科連隊からは対戦車中隊が廃止され、重MATが全廃されています。

Dbdimg_2983 一方で、師団要員の即応予備自衛官基幹編成部隊を方面混成団へ管理替えするか現役要員へ配置転換し、これにより即応予備自衛官部隊の充足を待って対応する体制から師団を現役要員のみで対応することとなったため、有事の際の即応性が根本的に向上することとなったため、単なる縮小とは言い切れません。

Dbdimg_2990 しかしながら、戦車大の縮小により各普通科連隊が有事の際に編成する連隊戦闘団へ、各1個戦車中隊を配置する体制が1個戦車小隊を配置する編成となり、師団の全般支援火力であった火砲20門の特科第5大隊も廃止、この縮小を置き換える程度の装甲車両などの増勢が行われたかったことは問題といえるでしょう。

Dbdimg_2994 師団の即応性は向上しましたが、74式戦車が10式戦車へ、FH-70榴弾砲が自走榴弾砲たる火力戦闘車へ、軽装甲機動車に続き将来装輪装甲車が普通科連隊の高機動車化中隊を置き換え、対戦車中隊には中距離多目的誘導弾が、高射特科大隊の近接戦闘車と共に機動打撃を展開、という一昔の展望は難しいもよう。

Dbdimg_2995 新装備としては、今年度より07式機動支援橋が配備を受け、今回の駐屯地行事の目玉となったのですが、近年に中距離多目的誘導弾と74式戦車を置き換える機動戦闘車か場合によっては暫定的に10式戦車の配備が考えられ、遠くない将来に火力戦闘車が配備されることとなるでしょう。

Dbdimg_2999 記念式典ですが、今年度は観閲行進の撮影位置を観閲台右に定め観閲行進を撮影しました。少々撮影角度が限られていますが、今回の記事に使用したG-16で無難な広角を撮影し、EOS-7D及び300mm望遠を装着しましたEOS-50Dを以て観閲台近くの観閲行進の様子を撮影しました。

Dbimg_3017  撮影方法は、EOS-7DとEOS-50Dを装備しつつG-16を簡易三脚に配置し、膝上の高さから一眼レフを操作する片手でレリーズを同時操作し、異なる写真のアングルを同時に撮影する、という毎回の奇妙奇天烈な撮影方法を今回も踏襲しています。

Dbdimg_3005 観閲行進は交通誘導要員のかたの背後から撮影する形となり撮影角度に少々の工夫を凝らして撮影することに。観閲行進に続く訓練展示は、幸いいつもお世話になっている方からスタンド席に余裕があるとのお話を頂き、そちらから撮影することが出来ました。

Dbimg_3004  思えば守山駐屯地祭はこのWeblog北大路機関が運営開始となった2005年から一年も欠かさず足を運ぶことが出来ている数少ない行事で、今年11月30日にOCNブログ人サービス運営終了に伴い新ブログへ移転するこのWeblog北大路機関を考えますと、ふと感慨深い気持ちにもなりましたしだい。

Dbdimg_3025 訓練展示模擬戦は野戦方式を主として展開しまして、名古屋市内の駐屯地ですが74式戦車が各車数回の主砲空包射撃を展示、FH-70榴弾砲はもちろん小銃に機関銃の長い射撃とともに迫撃砲の射撃展示などが工夫されており、その迫力は多くの観衆には圧巻で凄いのひとこと。

Dbdimg_3030 本日は当初若干の悪天候が週間予報にて報じられていたものの写真の通り快晴に恵まれ、昨年は諸般の事情で展開されなかった一般スタンド席も本年は設置、昨年ほどの無茶苦茶な混雑も無く、改編成ったのち初の政令指定都市の即応近代化師団司令部行事を関心を以てみることができました。

北大路機関:はるな

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