北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

護衛艦さわかぜ、ゆうばり、ゆうべつ除籍 実現しなかった将来装備・後日装備

2010-06-30 22:56:32 | 海上自衛隊 催事

◆はつゆき、はCIWSを後日搭載

 先日、ミサイル護衛艦さわかぜ、護衛艦はつゆき、護衛艦ゆうばり、護衛艦ゆうべつ、が一斉に自衛艦旗を返納し除籍されました。

Img_0996  護衛艦をはじめ、海上自衛隊の艦船には将来装備として特定の装備の搭載を考慮した重心配置や構造物の配慮が行われる事があり、また、本来は就役時から搭載することが望ましいのですが、建造予算が削られるなどして就役後に装備する前提での後日装備を考慮した設計の配慮が為される事があります。

Img_2301  先日除籍されたミサイル護衛艦さわかぜ、も35㍉連装機関砲を二門艦橋後方の両舷に搭載する計画がありました。満載排水量5200㌧、スタンダード艦隊防空ミサイルを搭載する、たちかぜ型の三番艦として1983年に就役した、さわかぜ、ですがスタンダードミサイルには最低射程距離があり、この内側は5インチ単装砲で対応していました。

Img_1631  しかし、更に近接した航空機に対処するべく陸上自衛隊のエリコンL-90高射機関砲を将来的に装備する計画がありました。結局実現には至らず、後部52番砲に近い両舷に20㍉高性能機関砲を搭載する事となりましたが、大柄な連装機関砲が搭載されていれば、艦容はどのように変わったのか、興味も湧いてまいります。

Img_6218  護衛艦ゆうばり、ゆうべつ。海上自衛隊の護衛艦として初めてハープーン対艦ミサイルを搭載した、護衛艦いしかり、を若干大型化した護衛艦として建造された、ゆうばり型の2隻ですが、こちらも去る25日に自衛艦旗を返納し、除籍されました。駆潜艇の後継を目指した小型護衛艦ですが、こちらも後日装備の計画がありました。

Img_7694  満載排水量1750㌧、1983年と1984年に就役した二隻は、76㍉単装砲とハープーン対艦ミサイル、ボフォース対潜ロケット発射器、3連装短魚雷発射管を搭載する打撃力の大きな小型艦ですが、対空装備は76㍉単装砲のみ、近接した航空目標への対処能力に難点が指摘されていました。

Img_8759  このため、上部構造物と一体化した中央船楼の後部に20㍉高性能機関砲CIWS一門を後日装備するべく、設計されていたのですが、とうとう実現せず除籍の日を迎えました。先に除籍された他の護衛艦からCIWSを移す、という選択肢もあっただろうに最後まで実現はしなかった訳です。

Img_2016  もっとも、このように書くと後日装備というものは最終的に装備されない、と誤解されてしまうかもしれませんが、護衛艦はつゆき、は後日装備のCIWSを搭載していますし、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦をはじめ、後日装備とされたものが搭載された事例は多いです。しかし、されなかった事例もこのようにある訳です。

Img_31373  そして、現時点でも幾つか挙げられる訳で、厳しい予算の中で必死にやりくりしている様子が垣間見えるような気がしました次第。もともと必要だからこそ空間を確保したのですが、その分のコスト増にもつながった訳で、設計され要求された能力を完全に発揮するためにも、この種の将来装備や後日装備、というものにはもう少し配慮があってもいいのかな、と感じました。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成22年度自衛隊統合防災指揮所演習 7月7日~9日に市ヶ谷で実施

2010-06-29 23:49:22 | 防衛・安全保障

◆統合防災CPX2010

 宮崎口蹄疫事案で防衛省は災害派遣に900名の追加派遣を検討しているとのことです。本日は災害がお題です。日本は災害が多い国で、一種災害文化と言いますか防災文化が危機管理の基盤を構築してきた、ともいえます。その災害に備える指揮所演習が来月行われるようです。

Img_0833  平成22年度自衛隊統合防災指揮所演習の実施に関する記事で、朝雲新聞社の記事よりの引用です。6/24日付 ニュース トップ : 市ヶ谷などで統合防災CPX 東海地震対処計画を検証 7月7~9日 防衛省・自衛隊は7月7日から9日まで、市ヶ谷駐屯地などで平成22年度自衛隊統合防災指揮所演習を行う。

Img_6843  東海地震発生時の自衛隊の統合運用による指揮所活動を演練し、自衛隊の災害対処能力の維持・向上を図り、東海地震対処計画の検証に役立てるのが目的。  参加部隊等は折木統幕長を統裁官に統幕、内局、陸海空の各幕、情本、情保隊、指揮通信システム隊から約200人をはじめ、陸自は各方面隊、中央即応集団、通信団、警務隊、中央輸送業務隊、中央管制気象隊から約500人、海自は自艦隊、横須賀地方隊、シス通群、補本などから約100人、空自は総隊、支援集団、教育集団、空シス隊、補本などから約90人と、防医大から約10人、静岡県庁から約5人の計約905人が参加する。

Img_3136  演習では防衛省災害対策本部(地震災害警戒本部)と統幕、情本間の調整、連携要領をはじめ、統幕と統合任務部隊との連携、発災直後の状況把握、情報収集の各要領を演練する。記事の引用は以上です。イメージ写真を多数添付しましたが、指揮所演習ですので基本的に九月の実動演習のような部隊の運用は行われません。

Img_6917  先日福島県沖で発生した地震に対しては、負傷者や倒壊家屋等実質的な被害は無かったのですけれども、自衛隊は航空機を展開させ上空からの情報収集に当たるとともに連絡要員を自治体に派遣して素早く連絡体制を確保しました。万一大きな被害があった際にはすぐに対応できるようにするためです。

Img_0036  東海地震に関する危険性が示唆されて大規模震災特別措置法が背呈されたのが1970年代ですが、地学の研究が進むにつれて過去には東海地震が名古屋周辺を襲う東南海地震や大阪湾南部を震源とする南海地震と連動することが確認されました。そして今さらながらですが2005年の伊勢湾展示訓練の日に首都圏を震度五弱の地震が襲った事も思い出しました。

Img_2571  日本は地震国といわれ、火山災害も世界規模の気候変動に影響する火山爆発指数5や6といった巨大噴火を起こした火山が国土に点在しています。そして台風も南西諸島から本土に掛けて毎年繰り返し上陸しますし、降雨量も比較的多いことから洪水や山岳崩壊という災害も比較的多いという実情です。

Img_0282  CPXの意義とは上級司令部が災害時に即応できるようにする事です。第一線では陸上自衛隊の駐屯地は、各駐屯地ごとに都道府県単位で防衛警備及び災害派遣の管区を定めていて、中隊ごとに市町村の対応が設定されています。それだ災害が多い事を示しているとともに、地元自治体との連携を撮れる体制を構築する、という事はそのまま災害以外の分野においても好影響を及ぼす訳です。

Img_9783  また、護衛艦の寄港や体験航海も災害派遣を含めた有事の際の補給や港湾関係者との連携要領の取得が目的の一つになっている訳です。その災害派遣を大まかにどのような体制で立ち上げるか、いかに早く機能させるようにするのか、実際にはどういう問題点が考えられるのか、という事を訓練するのがCPXの目的です。どう頑張ろうとも必ず災害はやってきますので、備えが重要です。

Img_8461  東海地震だけでも東海道新幹線、東名高速道路が破壊されますし、東南海自身が起きれば中央道も不通に、日本の交通中枢は上越新幹線と日本海縦貫線、北陸道と関越道になり、このほか首都直下型地震の危険性も指摘されています。富士か浅間が火山活動を起こせば首都圏の航空輸送に障害が起きますし、火山灰による被害も大きいでしょう。

Img_4026  日本は輸出に依拠して経済が成り立っている国でして、危機管理が甘ければ各国からの投資や輸出入にも大きな影響が出てきます。これは軍事的脅威への対応と同じように災害への対処でも重要性は変わりません。災害が避けられない以上、備えは重要です。もっとも、これは防衛省自衛隊のみならず、個々人の家庭でも言える事なのですけれどもね。

HARUNA

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テニアン移転案 自衛隊訓練をテニアンに移転し在沖米軍訓練本土受入という提案

2010-06-28 22:44:49 | 国際・政治

◆マリアナとの連絡強化と自衛隊の展開能力向上

 社会民主党が連立政権から離脱してしまい難しくなったのですけれども、本日はテニアンに関する話題。コツコツ書いていたら鳩山内閣も飛んでしまい、ちょうど参院選が近いからだれか書くかとマニフェストを俯瞰してもそういうものは無く、掲載する機会を逸していたのですが、まあ、掲載です。

Img_0004  自衛隊の訓練をできる限りテニアンに移転させて日本国内の基地発着数に余裕を持たせて、そこの余裕に米軍の沖縄で行っている戦闘機部隊の訓練を移転させては、という提案。そうすれば沖縄での訓練が本土に移転できますから負担軽減になります。加えてテニアンで訓練を行うことの意義と、実施する上で自衛隊が増強しなければならない装備品なんかについても少し考えてみましょう。

Img_6750_1  テニアンは過疎化と経済的な面で基地を必要としているとのことで、相当高密度の訓練も受け入れることが出来るとのことです。普天間飛行場移設問題は、日米合意で既に示されているように海兵隊の台湾海峡や朝鮮半島での事態に対処するための観点から沖縄より動かすことができない、という厳しい現状があります。一方で、普天間飛行場の訓練移設の問題にしても、訓練は発着訓練も相応に行われてはいるものの、北部訓練場や伊江島補助飛行場などで行われる海兵隊訓練との連動を考えれば単に飛行場さえあればいい、というものでは無かったのです。

Img_9151  しかし、沖縄の基地問題にはアメリカ空軍嘉手納基地から発着する戦闘機の爆音などほかにもこの種類の問題はあるわけで、鳩山首相は訓練の圏外移転を提示しています。海兵隊のヘリコプター部隊を訓練移転させるには演習場に近い飛行場が必要となるので、静岡県の富士演習場付近に、CH53を中型機発着枠で離着陸料を国庫から負担して富士山静岡空港に移転する方式や、鳩山総理のお膝元、帯広周辺の鹿追地区と帯広飛行場で訓練を一時的に、というくらいしか海兵隊と交渉できる余地はありません。

Img_3785  そこでもう一つ問題となったのは沖縄県の海兵隊訓練や空軍の訓練で受け入れられる負担はかなりもう全国に分散している、という現状でした。海兵隊の砲兵部隊による実弾射撃は東富士演習場に移転されていますし、嘉手納基地の発着訓練はかなりの回数が全国の航空自衛隊基地へ日米共同訓練という形で移転しているのですけれども、航空自衛隊基地周辺のも多くの住民がいますので移転するには限界があります。

Img_0588  また海兵隊の砲兵部隊の訓練は東富士演習場に移転されており、九州の日出生台演習場などにも各種訓練が移転され、沖縄の負担軽減に寄与しています。実のところ陸上自衛隊の規模を考えるならば現時点でも演習場は不足気味である中、海兵隊の訓練移転を受け入れているのですから、これ以上の負担を受けるとなりますと、今度は陸上自衛隊の訓練が不足、有事の際に人命に関わることとにもなります。

Img_8068  そこでテニアン、が浮かぶわけです。航空自衛隊や陸上自衛隊の訓練だけでもテニアンへ移転するできないか、という話です。テニアンは日本本土からは確かに距離がありますけれども、米軍を始め演習が行われている島でもあり軍事演習には一定の理解があります。海兵隊に日本国内の演習場を一部使わせる分、自衛隊の演習をテニアンで行い、日米合同演習という形で空軍に日本国内の自衛隊基地を使わせる分、テニアンにおいて本格的な訓練を実施する、ということです。

Img_9541  テニアンにおいて自衛隊が訓練を行う、ということには現在の保有している空中給油機を増勢しなくては戦闘機部隊のテニアン展開を支援することはできませんし、硫黄島を筆頭に小笠原諸島における給油施設を中心とした基地機能の強化を行う必要がでてきます。しかし、これらの地域は昨今中国海軍の行動が顕著である地域であるとともに日本の防衛の真空地帯として自衛隊の配置が疎らな地域でもあります。先日本Weblogで紹介した沖ノ鳥島補助飛行場案の背景、南西諸島と小笠原諸島島しょ部の防衛強化に寄与することになるでしょう。

Img_5884  また、テニアンにおいて陸上自衛隊の訓練を行う、陸上自衛隊の演習部隊を日本全国の港湾施設からテニアンへ海路で移動することが主となります。これを実現するには海上自衛隊の輸送艦部隊を強化しなければ実現しないのですが、輸送艦の増勢は同時に有事における自衛隊の緊急展開能力を向上させることにもなります。輸送艦の増勢には必然的に予算の増額が必要となるのですけれども緊急展開能力の充実は捨てがたい利点といえましょう。

Img_0679  陸上自衛隊は冷戦時代にソ連軍の軍事的圧力をもっとも受けていた北海道に全13個の師団のなかの4個師団を配置して、その4個師団に優先的に装甲車や新型戦車を配備、火砲の自走砲化等を精力的に実施、本州配備の師団よりも火力や機動力、装甲防御力等の面で優遇されていました。現在は小型装甲車やミサイル等の面で本土の師団の砲が優遇されているのですが、北方の脅威が薄まったことで、北海道の部隊が無駄になっているのではないか、という声も聞かれるようになったわけです。

Img_90491  しかしながら、北方の脅威は再び増している状況ですし、日本周辺に機甲戦力を伴う対処能力が必要な脅威が北方以外に不在かと問われれば、南西諸島や九州に健在ですし、ゲリラコマンドー対処が必要な北陸地方を含めた日本海側にも対処能力として機甲部隊は必要です。それならば西部方面隊や中部方面隊に移管すればこうした冷戦型という批判も当たらないのでしょうが、演習場の問題がでてきます。

Img_3402  生地演習というかたちで住宅街や農村で戦車の機動訓練だけでも実施できれば、まだ問題は少ないのでしょうけれども、日本ではこれが難しい。西部方面隊では演習場が不足している中で米軍の訓練を受け入れている、中部方面隊管内には大演習場が無く、中演習場も少ない状態、一部は東部方面隊管区の東富士演習場まで展開して演習を行っている状況です。

Img_8564  つまり、北海道の師団や旅団が高い能力を発揮できるのは重装備に見合った広大な演習場に隣接し訓練を行っているからでして、北海道に駐留してこそ、九州や南西諸島、北陸での有事に高い能力をもって対処する能力が維持できるわけです。

Img_4160 ここで、海上自衛隊や航空自衛隊の輸送能力、陸上自衛隊の戦略展開能力が現状では低いため、有事の際には北海道から全国に迅速に展開することが難しい状況を解決する必要がでてくるのですが、テニアンでの陸上自衛隊訓練、という形で部隊を遠隔地に展開させる能力を保持させれば、この問題は幾分か解決させることができます。

Img_0131_1  また、航空自衛隊の訓練もテニアンに極力移動させることで本土基地からの長距離飛行訓練が可能となり、例えば中部日本の基地から南西諸島への展開を想定した訓練を実施することも可能です。訓練を繰り返せば、飛行隊が整備補給機能を含めて長期間展開する場合にはどの程度の空輸能力が必要となるのか、という問題に明確な答えを導き出すことができます。

Img_7281  結果的に、輸送艦や輸送機、空中給油機の必要定数を増加させるものになりますので、自衛隊の展開能力は引き上げられます。そして、必然的に防衛予算の規模についても上方修正が必要となり、沖縄の基地負担軽減にかこつけた一種の軍拡なのでは、という指摘が出てくるでしょう。しかし、どうあっても自衛隊の展開能力の確保は喫緊の課題なのですし、機動力の向上により将来、部隊数や配置などを見直す契機となることも考えられます。こうした観点からも、自衛隊の訓練をテニアンに移転する、ということが可能な規模の能力を保持する考えをもつ意義はあるでしょう。

HARUNA

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中国人民解放軍済南軍区范長龍上将、中部方面総監部の角南俊彦総監を表敬訪問

2010-06-27 23:40:39 | 国際・政治

◆日中軍事交流が目指す信頼の醸成

 6月15日、中国人民解放軍済南軍区の范長龍上将が中部方面総監部を表敬訪問したとのことです。日中間には政治的問題や領土問題が存在することも確かなのですが戦争状態でない両国間、軍人同士が平時から交流を行う事は信頼を醸成する意味で重要です。

Img_0417  中国人民解放軍済南軍区司令員中部方面総監部訪問 ・・・中部方面総監と中国人民解放軍済南軍区司令員との間で、部隊レベルの意見交換を行い、相互理解と信頼関係の増進を図るため、平成22年6月15日(火)、中国人民解放軍済南軍区司令員が中部方面総監部(所在:兵庫県伊丹市)を訪問しました。訪問者 中国人民解放軍 済南軍区司令員 上将 ハン・チョウリュウ 他8名

Img_0353_2 記事には福知山駐屯地の第7普通科連隊が儀仗隊を務め、日中両国旗を背景に懇談の実施、記念品の高官が行われ、総監部において記念撮影が実施、外科手術車や人命救助セットなどを見学する様子の写真が掲載されています。http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/Topix/H22jinnminn/H22jinnminn.html 

Img_0510_2  これは2009年の日中防衛首脳会談に基づくもので、本年、創立50周年を迎える中部方面隊を訪問し、角南俊彦総監との懇談や装備品の見学を行った、とのことです。しかし、聞くところでは装備品を見学する際に置かれている75式自走榴弾砲等について詳しい解説を求めたのですが、詳しい数字はお答えできません、とのことで少々違った空気も流れたのだとか。

Img_2576  それもそのはずです。伊丹駐屯地に置かれている75式自走榴弾砲は、北部方面隊で用途廃止となったものが展示されている展示車両で、答えようにも中部方面隊では運用されていない装備だった訳ですね。冷戦時代、陸上自衛隊では自走榴弾砲や最新型の戦車はソ連に直面していた北部方面隊から優先的に配備され、本土の火砲は基本的に牽引式でした。

Img_0365_1 しかし、山東省を管区とする済南軍区も、冷戦時代は瀋陽軍区や北京軍区に重装備が優先的に配備されて、戦車部隊も北方重視でしたから、ここでお宅と同じです、と話てみれば、お互い苦労しているのだなあ、と一転、和やかな雰囲気になったかもしれません。その後で伊丹から神戸を散策すれば中華街で友好関係を増進できたかもしれません。

Img_2291 相互交流、しかし、日中関係はと言えば決して軍事面でも良好な状態では無いのでは、と問われる向きがあるでしょう。こうした状況において交流を行うのは、と考えられる方がいるかもしれませんが、実は1970年代にNATOとワルシャワ条約機構軍が相互に交流や演習計画を公開して緊張が過度に高まらないように図る信頼醸成措置が採られた事がありました。

Img_2365  早い話がNATO軍の代表団がソ連軍や東欧の基地を表敬訪問したり、ソ連軍や東欧から西欧の基地を表敬訪問して親善を深めたり、演習を視察したり、装備品や部隊配備計画を提示しあったりするもので、1979年にソ連軍がアフガンに侵攻して、1980年から東欧民主化運動が過熱するとソ連軍は友愛80演習等を行い民主化運動に示威行動で対応しましたが、これがNATOに誤解を与えないようにある程度は寄与したものです。

Img_2457  もちろん、日中間の関係を考えれば見せていいものとそうでは無いものはある訳で、特に輸出を前提としない日本の装備は秘、という部分が多く、見せてくれ、中を撮らせてくれ、と頼まれても見せられないものがあります。こうした中で、接待の技術と言いますか、上手く場をまとめる、という方法も必要でしょう。

Img_0381  伊丹駐屯地は、近傍の千僧駐屯地に第3師団司令部も置かれ、第3偵察隊や第36普通科連隊等が駐屯しているのですけれども、戦車部隊は琵琶湖畔の今津駐屯地、ヘリコプター部隊は阪南の八尾駐屯地、特科火砲は遠い姫路駐屯地にありますので、見せることのできる装備が少ない、というのは少々残念でした。

Img_0576  駐屯地も市街地に隣接されているので思い切った展示は出来ませんが、米軍のハンヴィーよりも加速性が遥かに優れているトヨタ製の高機動車を体験試乗で思い切り走らせてみるとか、多分中国では無いだろう戦車の体験試乗装置を取り付けて地元の幼稚園児らとともに体験乗車で民間交流も兼ねてみたりしたら、面白かったかもしれません。

Img_2449  記念行事が行われる時期にこうした交流を行えば、訓練展示の様子などを見せられますし、どういう装備をどういうように使っているのか、日本の専守防衛というものについて理解してもらう事も出来たように思うのですが、こうした交流は相互のもの、日本から中国に行く際にはどういう応対となるのかは未知数ですが、定期的に続けば、幾つかの面で得るものはあるでしょう。

HARUNA

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F-X問題:F-4後継機選定 来年度予算に次期戦闘機予算計上で最終調整

2010-06-26 23:09:47 | 防衛・安全保障

◆平成23年度防衛予算に調達を盛り込む方向

 航空自衛隊の次期戦闘機に関して、来年度予算に数機の調達費を盛り込む方向で最終調整に入った、と中日新聞が報じました、後継機選定が為されるという事は戦闘機数純減で防空体制に真空地帯を生む事は無い、という意味が大きいのでしょうか、本日はこの話題です。

Img_4501  鳩山内閣が安全保障問題といえば普天間一本という状態になっていたのを最後に菅内閣への交代を経て久々の次期線と気に関する話題を中日新聞からの引用です。次期戦闘機予算計上へ・・・2010年6月26日 朝刊: 次期戦闘機(FX)の選定作業を進めている防衛省は、来年度の防衛費にFX数機の購入費を盛り込む方向で最終調整に入った。

Img_4505  総額1兆円近い「巨大航空商戦」の入り口となる機種選定には、米政府の意向や防衛産業の思惑が複雑に絡む。菅政権にとって「第2の普天間問題」ともいえる難問となりそうだ。候補機種は当初の6機種から、米国のF35(ロッキード・マーチン社)、FA18E/F(ボーイング社)、欧州共同開発のユーロファイター(BAEシステムズ)の3機種に絞り込まれた。

Img_4509  機種選定の基準となる要求性能を公表すれば、選定作業が本格化する。防衛省は要求性能を3機種すべてに該当する「(レーダーに映りにくい)ステルス性を持つ多目的戦闘機」とする方向だ。世界一高価とされた準国産のF2戦闘機(約120億円)を上回る1機150億円前後の超高額機となる見通し。

Img_4511  数年かけて2個飛行隊分(約50機)を導入する。年末の予算案決定までに機種が決まらない場合、予算枠だけ確保して機種決定を先送りする手法も検討されている。引用は以上です。それでは、この記事を元に少し考えを進めてみましょう。http://www.chunichi.co.jp/article/politics/news/CK2010062602000045.html

Img_4522  この問題が複雑化したのは、日本の航空自衛隊がぜひとも必要、としていたステルス戦闘機F-22が、機密性が高い機体という事で導入が出来なくなり、さりとて次の候補が無い、という状況に陥った事です。F-22は平時の任務では増槽を取り付けてレーダー反射面積を大きくしてステルス性がどの程度かわからないようにするほどの航空機です。航空自衛隊の基地にズラリと並べるのは難しかったようですね。

Img_4523  しかし、現在運用しているF-4は幾多の近代化改修を受けて高性能な機体ではあるのですが、基本設計は1950年代、航空自衛隊の導入が決定したのも1960年代で、配備が1970年代の戦闘機です。現在は、F-15戦闘機に隊領空侵犯措置の任務を譲り、対艦ミサイルを搭載して支援戦闘機に使えるようにするなどして頑張っています。しかし、144機が導入されたF-4は順次F-2等他の戦闘機に置き換えが進められたのですが、二個飛行隊分のF-4が残ってしまいました。

Img_4524  これをどうするか、2002年頃から大きな話題となっていました。40~50機なのだからさっさと決定できないのか、と思われるでしょうが、何十年も使うのですし、予備部品の調達や教育訓練体系、機種が増えるのならば予備の機体の装備も真剣に考えなければなりませんし、そろそろF-15Jの後継機も考えなければならない時期ですから、50機を調達した後で、更に調達される事も考えなければなりません。

Img_4525  航空自衛隊の戦闘機数は現時点で270機、と決められているのですが、それに機種によって整備に必要な労力や稼働率の問題、ライセンス生産が行えるのか完成機を輸入するのか、メーカーからのサービスが有事に突如遮断されるようなことは無いのかなど、異なる事はあありますから、広大な日本の領空を270機という限られた戦闘機の数で守る事は出来るのか、将来中国が開発する新型機やロシアのステルス戦闘機に対処できるのかを含めて、考えなければならない事は山のようにある訳です。

Img_4526  記事を読んでいて、機種選定の基準となる要求性能を公表すれば選定作業が本格化する、という部分ですが、現時点までに、そこまで本格化していないのかな、とも読み取れて意外な感じがしました。一方で“多目的戦闘機”という表現が用いられていますので、制空戦闘機、という位置づけでは無く、北朝鮮の弾道ミサイル事案の際に言われる“敵基地攻撃能力”などを意図しているのだな、と。

Img_4527  もっとも気になったのは、予算枠だけを確保して機種決定を先送りする手法、というものです。機種決定、というのは実は有力視されている機種の中で最もステルス性と対地攻撃能力が高いF-35戦闘機ですが、まだ開発中の機体で、国際共同開発という事で技術移転の遅れや開発意図、要求性能の変化により開発費が高騰していて、中々完成して実戦配備される目途が立たないのです。

Img_4512  F-35は開発参加国に優先配備されますから、待っていると2015年どころか2020年近くまで待つことになる可能性もあります。それに国際共同開発ですからライセンス生産が認められる可能性が難しく、開発に参加した各国と個別に交渉する必要があります。タイフーンは欧州機ということで、運用思想や整備補給に関する考え方が今まで装備していた米軍機と違う点があるのですけれども、制空戦闘から対地攻撃まで優れた機体です。

Img_4513  F/A-18Eは海軍の空母艦載機ですが、上記二機種と比べれば安価、というのが利点でしょうか。言い換えれば、ステルス性の高いF-35に固執するか、手堅い選択肢の中で米欧を選択するか、というのが大きな点となるのでしょうか、予算枠だけ、という事はF-35への思い入れの大きさを示すとも受け取れます。他方、後継機という概念が残っているという事は、長い事危惧されていた“財政難によりF-4後継機は選定せず純減”という日本の防空体制に真空地帯を生みだす決定は、菅内閣でも為されなかったとのこと、最低限の安心は出来るようです。なにせ、欧州のように冷戦後は国籍不明の軍用機による対領空侵犯措置が大幅に減る事は無く、先日も爆撃機による東京への接近、いわゆる東京急行があったばかりなのですからね。

Img_4514  記事を細かい部分で読んでみますと、次期戦闘機の選定は二本の航空防衛体制を考えれば非常に大きな問題ではあるのですが、第二の普天間問題、というとまだ取得する機種が決定していない訳で日米の合意を訳のわからない理由で一方的に破棄しようとした普天間問題と比べれば、かなり大袈裟な印象はあります。

Img_4517  また、絞り込みのF-35、F/A-18E,タイフーンという三機種についても、2005年に一時名前が消えたF-15FXですが、その後の動向もある訳で、この点片手落ちかな、と思ったりしました。もっとも、記事としては大きなものではありませんので、このあたり妥当性を見出すことも出来るのですが。

Img_4519  ステルス性を持つ、というと一応F/A-18E/Fやタイフーンも低視認性という程度のレーダーに映りにくい工夫はしているのですが、レベルは航空自衛隊が運用しているF-2とあまり変わらないレベルですので、ステルス性をもつ、といわれても、・・・、まあ、F/A-18EはF-15Eよりはレーダーに映らないのですけれども、ね。また、F-2を世界一高価、と言われてもユニットコストでは導入当時でもそこまでは高くないのですよね、開発費も可能な限り抑えられましたし、ドルレートの関係でF-15も導入当時は相当高い値段を提示されていたのですし、まあ、気になる点は皆無ではないのですが記事が出ていました。

HARUNA

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近接航空支援?岐阜基地上空でみせたF-2とT-4の機動飛行

2010-06-25 23:24:17 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆梅雨の晴れ空に飛ぶ機体

 久しぶりに何とか時間をあけまして、昨日、岐阜基地に行ってきました。あまり時間は無いのですけれども、滑走路エンド付近での着陸機の撮影です。

Img_4403  岐阜基地は何が飛んでいるか、というのは運次第、時間も午後、航空祭で言えば終わりの時間帯にしか行くことが出来なかったのですが、何か飛んでいてくれればそれでいいや、という軽い気持ちでの撮影です、いや正直に書くとP-3Cの川崎重工岐阜工場での定期整備の着陸を撮りたいな、と思っていたのですけれどもね。

Img_4478  幸い、T-400練習機やC-1FTBに続いて、F-4,F-15と降りてきました。軽い気持ちで18-200mmズームだけを使う事を考えていたのですが、しばらくするとF-2とT-4がやってきました。偶然、と言いますか、400mmも持っていたので切り替えて高高度を行くそちらをフレームに収めます。

Img_4535  岐阜基地なのでF-2がやってくるのは当たり前なのですが、これが驚く事に、高高度に上昇して、続いて上空で反転して急降下する、という飛行を始めました。上昇して反転して急降下、同じものを先月みました、岩国航空基地の日米友好祭で行われたF/A-18Dによる近接航空支援の展示です。

Img_4557  F-2の近接航空支援展示、といっても岐阜基地航空祭で見られるほど低空に下りてくる事も無く、もちろん岩国で実施されたものよりも高度は高いのですから、あまり音は大きくないのですし、気づかない人は気付かないのでしょうけれども、気付いた当方としては、少々驚いて上空を行くF-2の撮影を続けます。

Img_4558  それを3回か4回ほど立て続けに行いました。燃料が余っていて、ということでしょうか、それとも滑走路上に別の機体がいてホールドが掛かっている、という状況なのでしょうか。過去に別の機種で脚の動作が悪いということで、機動飛行を行って振動を加えることで脚を出した、というものを見た事がありまして、事情を知らない私は、何をやっているのだろう、と驚いた事があるのですが、そういう関係ではなさそうです。

Img_4561  しかし、F-2、同じような機動飛行でも静かですね。こちらは上空を飛び去って、岐阜基地の滑走路上空を上昇する様子。400mm望遠で撮影したものをトリミングして掲載していますので、写真を見る限りでは距離が近そうに見えて、実はかなり高度を取っていたりします。200mmでは無理でしたね。

Img_4560  F-2とともにT-4も同じような機動飛行を行っていました。T-4はF-2のような支援戦闘機では無く練習機ですのでT-4が同じような機動飛行を行う、という事は、逆にいえばF-2の機動飛行は近接航空支援の練習、という訳ではない事でもあるのですが、上昇して上空で反転して急降下、基地上空で切り返して再び上昇。

Img_4545  航空祭、岐阜基地航空祭はもっと先なのですが、どこかにリモートで参加する航空祭に向けての準備かな、とも思ったんですけれども、リモートで参加と言えば思い浮かぶのは静浜基地ですが、今年は静浜基地航空祭は基地工事の関係で実施しないとのことですし、来月の百里基地航空祭の練習、という訳でもなさそうですね。

Img_4563  幾度か繰り返した機動飛行の後でF-2が脚を出して着陸態勢に入りました。それにしても、航空祭でもないのに青空を背景にして普段は絶対地上からは見えない機体の上部を何度か繰り返してくれた急激な旋回のお陰で見ることが出来ました。これは、ちょっと、いやかなり嬉しかったですね。

Img_4572  F-2は着陸態勢に入ります。タッチ&ゴーを繰り返すかと思ったらばそのまま着陸しました。とすると機動飛行は滑走路上の事情があったのかな、実戦部隊に配備されているF-2の海洋迷彩とは違って、飛行開発実験団の試作機塗装を維持したまま、各種評価試験に臨んでいるのが岐阜基地飛行開発実験団のF-2支援戦闘機です。

Img_4599  そしてC-1FTBが着陸態勢に入ります、タッチ&ゴーを繰り返していてその後着陸したと思っていたのですが、飛んでいたのですね。帰りの名鉄各務原線は普通電車が一時間に二本、急行も二本運行されているのだけれども、撮影場所から間近の二十軒駅は普通電車しか停車しないので、時計を見てしばし待ってみましたのち、帰路に就きました。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報4

2010-06-24 22:19:36 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 防衛省発表によれば、本日Tu-95爆撃機二機による東京急行と22日にウダロイⅠ級駆逐艦を中心に3隻のロシア艦船が対馬海峡を北上したとのこと。日本周辺は騒がしいですね、そんななかで今週末の行事の紹介です。

Img_8998  日米安全保障条約改定50周年記念の行事として日米記念寄港、今週末に行われる行事で最も注目の行事はこれでしょうか。26日土曜日と27日日曜にに東京港晴海埠頭とお台場において行われ、海上自衛隊からは護衛艦ひゅうが、アメリカ海軍からは指揮艦ブルーリッジが東京港へ入港します。

Img_0989_1  ひゅうが、ブルーリッジが入港し、満艦飾と電灯艦飾を行います。艦内の一般公開は行われないので、満艦飾と電灯艦飾を埠頭から眺めるだけなのですが、27日にはお台場の船の科学館において海上自衛隊、アメリカ海軍より音楽隊が参加しての合同演奏会が予定されています。

Img_8062  陸上自衛隊関連行事では、最も大規模な行事は土曜日に行われる第1特科団創立58周年記念・北千歳駐屯地祭でしょうか。第1特科団は、北部方面隊直轄の特科部隊で、203㍉自走榴弾砲、MLRS、88式地対艦誘導弾など強力な火力を装備していて、上陸前の敵船団を地対艦誘導弾で、上陸直後を海岸線でMLRSのロケット弾で叩き、その後は203㍉重砲で全般支援を行います。

Img_9707  北千歳の第1特科群に、203㍉自走榴弾砲を運用する第101、102、103特科大隊とMLRSを運用する第129,133特科大隊が配置。上富良野の第4特科群に203㍉を運用する第104、120特科大隊とMLRSを運用する第131特科大隊が駐屯、地対艦ミサイル連隊は、第一が北千歳、第二が美唄、第三が上富良野に駐屯しています。各国でいう軍団砲兵、砲兵旅団にあたり、その装備は極めて強力です。

Img_9854  島松駐屯地祭、こちらは27日日曜日に行われます。島松駐屯地は恵庭市にあり、北海道補給処と北部方面後方支援隊、第1高射特科群の一部中隊が駐屯している駐屯地で、補給処と方面後方支援隊が駐屯していることからわかるように、北部方面隊の後方支援における拠点機能を持つ駐屯地です。

Img_9959  高射中隊が置かれていますので、ホークミサイルや装備されていれば03式中距離地対空誘導弾が観閲行進や装備品展示に出されるでしょう。北千歳駐屯地と島松駐屯地は距離的にも近いですから、土曜日、日曜日を連続で足を運ぶという事も出来るでしょう。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

6月26日・27日:日米安保改定50周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/msdf/
6月26日:第1特科団創設58周年記念・北千歳駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/1ab/
6月27日:島松駐屯地創立58周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/index.html

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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ミサイル護衛艦さわかぜ6月25日除籍、1983年に就役した最後の護衛艦隊直轄艦

2010-06-23 22:08:34 | 海上自衛隊 催事

◆佐世保で最初に乗った護衛艦

 ミサイル護衛艦さわかぜ、意外に思われるかもしれませんが、私が初めて見学した護衛艦は、ミサイル護衛艦さわかぜ、です。そして初めて見た海上自衛隊の基地は大村航空基地、初めて見学した基地は佐世保基地です。

Img_6661_1  さわかぜ、に乗ってみえた方もこの記事を読まれたりしているのでしょうか、許す事ならば今一度さわかぜ、を見学したいのですが、どうやら叶わず終わるようです。明後日25日、ミサイル護衛艦さわかぜ、は自衛艦旗を返納、1983年から27年の現役時代を終え護衛艦籍より除籍されます。個人的に別れを惜しみたいのですが、一方で今月だけでかなりの護衛艦が除籍されます。そして代替艦は建造されません。さわかぜ、以外にも今月末には、はつゆき、ゆうばり、ゆうべつ、と4隻が除籍され、代替艦が建造されませんでしたので、実に一割近く、海上自衛隊の護衛艦数は少なからず減退します。

Img_2069  ミサイル護衛艦さわかぜ、は護衛艦隊直轄艦として横須賀基地船越地区の自衛艦隊司令部前に停泊している事が多いのですが、当方が大昔見学したときは佐世保基地の第62護衛隊に所属していました。護衛艦あさぎり、が沖留で、こんごう、は長崎で修理中。桟橋までは、米軍基地の中を通過して、自衛隊の護衛艦を見学するのに米軍地区を通らなければならない事に非常な衝撃を受けたのですが、127㍉砲がいかつい強襲揚陸艦ベローウッドを間近に見て衝撃を受けたのも、その時なのですが、思えば、ひゅうが型を含め、あれから海上自衛隊は大きくなったものです。

Img_2086  ベローウッド程ではないにしろ、確かあの時は、おおすみ型も建造中、アメリカと対等な関係を目指すためにはもっと日本も防衛力を高めなければならないのでは、航空母艦を独自に持たなければ、と、思ったりもしました。まあ、当時読んでいた鳴海章氏の“原子力空母信濃”シリーズに少なからず影響を受けている訳ではあるのですけれどもね。そういえば、佐世保に行ったときは、まだ、ヘリコプター搭載護衛艦はるな、の母港が舞鶴では無く佐世保の時代、第3護衛隊群旗艦でしたけれども、くらま、と並んでいた時代ですね。

Img_5382  さわかぜ、は、たちかぜ型ミサイル護衛艦の三番艦として1983年に就役した護衛艦で、満載排水量5200㌧、航空機に対処する射程の大きいスタンダードSM-1ミサイルを運用する護衛艦として建造されました。今ではイージス艦が就役して旧式、という印象を持たれる方が多いかもしれませんが、順次戦闘システム等を近代化しているので、防空艦としての性能は高い水準にあるようです。艦後部に搭載されたMk13ミサイル発射機には40発のミサイルが搭載されていて、さわかぜ、はスタンダードSM-1艦対空ミサイルか、ハープーン対艦ミサイルを運用することが出来ます。

Img_5444  さわかぜ、は、後部マック、マックとは煙突とマストを一体化した構造物の事なのですが、その頂点に取り付けられた三次元レーダーで発見した目標情報から艦内の戦闘システムを通じて最も脅威度の高い目標を選定、Mk13からミサイルを発射します。マックの後部に取り付けられた二基のイルミネーターが命中まで誘導して、撃破します。イルミネータが二基なので、同時に二つの目標しか誘導対処できない、と誤解されているのですが、実はもっと複数の目標に対処できます、数はお教えできませんが、と佐世保基地で教えてもらいましたのを今思い出しました。

Img_72691  さわかぜ、ですが、実は海上自衛隊が最後に建造した蒸気タービン推進方式の護衛艦であったりします。かつては護衛艦と言えば蒸気タービン推進方式が主流でした。ガスタービン艦は、加速性や機関始動の早さなどで利点がある一方、航空機と同じようなジェットエンジンを搭載していますから非常に軽量で多くの空気と排気を必要とします。一見利点にみえるのですが、艦の心臓部に軽量なエンジンを搭載するとトップヘビーになってしまいますし、排気が多いという事はファンネルが大型化してしまい、ステルス性の面で影響が出てしまいますし、風圧面積も大きくなり操艦にも影響が出てきます。

Img_7238  蒸気タービン推進方式でもう一つ利点は、推進力を創出する過程で海水を焚いて多くの蒸気とともに真水が生成できますから、ガスタービン艦と比べて入浴や生活用水の面で多く使えるのが利点です、と佐世保で教えてもらいました。水に独特の風味が付いてしまうという声もあったのですが、ガスタービン艦は真水の生成に専用の濾過装置が必要な一方、蒸気タービン艦は進むだけで真水を生成できる、ということは利点なのかもしれません。なお、海水を循環させる関係か、ガスタービン艦は定期整備が四年に一度でいいのに対して、蒸気タービン艦は三年毎に重整備が必要、というのが運用コストでは難点といえるやもしれません。

Img_2344  さわかぜ除籍は、もうひとつ、海上自衛隊史の転換点となるかもしれません。さわかぜ、は直轄艦ですが、旗艦ではありません。護衛艦あきづき、以来、むらくも、たちかぜ、と護衛艦隊は旗艦を隷下に有してきましたが、たちかぜ、を最後に機関、という位置づけは無くなり、直轄艦というかたちとなりました。護衛艦隊司令部は必要に応じて展開し、必要が無い場合は特定艦艇を旗艦とするのではなく、陸上に、という意味な訳です。現在のように通信技術の発展した時代においては洋上に艦隊司令部を置く、という意味合いは薄れたのですが、指揮先頭という伝統のみ維持されていました。

Img_2306  今週末は日米安全保障条約締結50周年を記念し、晴海埠頭において米海軍第七艦隊旗艦ブルーリッジと海上自衛隊からは護衛艦ひゅうが、が電灯艦飾を実施します。ひゅうが、は第1護衛隊群所属ですが、護衛艦隊は、さわかぜ除籍をもって直轄艦を持ちませんので、ひゅうが、が参加する、というかたちになるわけです(もっとも、むらくも、たちかぜ、が現役の時代から、ブルーリッジの姉妹艦は、しらね、でしたが)。たちかぜ、除籍を以て、護衛艦隊旗艦は無くなり直轄艦のみが維持されていたので、旗艦、という位置づけは無くなったのですけれども、護衛艦隊司令官の艦が無くなる、というのは一つの転換点となるのではないでしょうか。

Img_2298  無論、ひゅうが型が就役して以来、多目的空間の容積では従来型の護衛艦を転用して対応できるものではなく、たちかぜ、では後部52番砲を撤去して司令部設備を設けたのですが、通信能力その他を加えて、指揮系統を担うには不十分、という面があったのは否めません。しかし、艦隊司令官が座乗する護衛艦が、これまではあったのに、今後は無くなる、場合によっては群司令と同乗する可能性も出てくる、という一点は、転換点になるのではないでしょうか。初めて乗った護衛艦の除籍、という一点とともに最後の直轄艦の除籍、式典に参加することはできませんが、しみじみと感じています次第。

HARUNA

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環太平洋合同演習2010 14カ国より2万名、航空機100機以上、艦艇約40隻が参加

2010-06-22 22:45:22 | 国際・政治

◆信頼醸成の観点から問われる日本の参加規模

 明日6月23日から8月1日まで、ハワイ周辺海域において環太平洋合同演習、リムパック2010が実施されます。海上自衛隊の参加部隊としては5月10日に記事として本ブログに掲載したのですが、護衛艦2隻、潜水艦1隻、航空機3機が参加します。

Img_7360  海上自衛隊では、現在沖縄県周辺海域で実施中の日米豪共同訓練や、パシフィックパートナーシップ2010への友愛ボート派遣、海賊対処任務への護衛艦及び航空機の派遣と重なった形でのリムパック参加ですが、護衛艦2隻、潜水艦1隻、航空機3機、というのは過去のリムパック参加規模と比べ、最初の参加となった1980年の、ひえい、あまつかぜ、P-2J8機と並び少ない規模での参加です。

Img_7808  今回のリムパック2010は、参加国がアメリカを筆頭にオーストラリア、カナダ、チリ、コロンビア、フランス、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、オランダ、ペルー、シンガポール、タイの14カ国となっていて、参加予定部隊は艦艇34隻、潜水艦5隻、航空機100機以上、人員約20000名、と発表されています。航空機や人員の参加数分かるように航空母艦も参加するようです。

Img_9865  リムパックは参加各国の協同交戦能力の向上を目指して実施されるものですが、1980年から参加している海上自衛隊は、今回で参加は16回を数える事となりました。この中で海上自衛隊は、対潜戦、対水上戦、対空戦などの各種戦術訓練を行うとともに米海軍の演習支援設備の協力のもとでミサイルの実弾射撃訓練なども実施する事となっています。

Img_9787  海上自衛隊は護衛艦の近代化が本格化した1986年から2000年まで、リムパックには原則として一個護衛隊群の護衛艦8隻と補給艦、潜水艦と航空機8機の参加という参加国第二位の規模で参加してきたのですが、近年、インド洋給油支援や海賊対処任務、弾道ミサイル防衛など実任務が増え、加えて燃料費などの訓練費用が削減され、参加規模は毎回縮小し、今回は艦艇では護衛艦あたご、ありあけ、潜水艦もちしお、のみの参加となりました。

Img_9668  リムパックは、集団的自衛権の問題から海上自衛隊としてすべての面で参加できる訳ではないのですが、現行法の範囲内で自衛隊の行動が有事の際にどの程度まで可能なのか、という点を考える機会ともなりますし、何よりも各国海軍との平時の協力関係を構築することは信頼を醸成し、意図しない誤解からの対立を回避する重要な機会となります。

Img_6260  また、海上自衛隊は、大型水上戦闘艦の保有数や固定翼哨戒機、回転翼哨戒機の保有数で米海軍には及びませんが、ロシア海軍と比肩、中国やイギリス、フランス海軍を凌駕して世界トップクラス、掃海艇や潜水艦の保有数でも世界有数の規模を誇ります。こうした中で、装備を揃えている以上、最大限の訓練を実施することでその能力を高水準で維持させる必要があります。

Img_9105  専守防衛でアメリカ以外とは同盟関係を結ばない現状からは、前述の信頼醸成の話なのですが日本の海上自衛隊の装備や訓練水準、そして海洋の自由が共有財産であるという事で確認しあう事で誤解をされないようするという事も重要です。こういう視点からも、訓練経費の面や、ローテーションでの困難を超えてでも、もう少し大規模な部隊の派遣、ということは出来ないものかな、と考えます。

HARUNA

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スーダンPKOへの輸送ヘリコプター派遣は困難 防衛省が表明

2010-06-21 23:51:50 | 国際・政治

◆CH-47部隊のアフリカ派遣は困難

 陸上自衛隊はスーダンPKOに要員を数名派遣していますが、続いて実施が検討されていた輸送ヘリコプターの派遣について、現地調査を行った結果、困難であるとの結論が出されました。

Img_1377  過去には自衛隊PKO派遣について、外務省を中心に派遣を強く望む声に押され、果たして大丈夫なのか、という状況で投入された事もありました。PKO派遣は90年代初頭に、日本が国連安保理常任理事国に入るために必須事項、と考えられていたことから、国益全体を考え、無理を通せざるを得ない事もあったのですが、今回は防衛省の判断はどう政治に反映されるのでしょうか、日経新聞からの引用です。

Img_6113  スーダンPKO,ヘリ部隊派遣は困難 防衛省 2010/6/18 1824 防衛省はスーダン南部で展開中の国連平和維持活動(PKO)スーダン派遣団(UNMIS)への陸上自衛隊ヘリコプター部隊の派遣について、費用や治安情勢から困難との検討結果を外務省などに伝えた。来年1月に予定される南部の分離独立を問う住民投票で、投票箱などを輸送する可能性を検討していた。防衛省の意見を踏まえ、政府として派遣の是非を判断する。http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E3EAE2E3948DE3EAE2E4E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL

Img_3857  アフリカ中部、エジプトの南側にあるスーダンは1955年から北部のアラブ系イスラム教徒と南部の黒人のキリスト教徒との間で内戦を続けていて、1972年に停戦合意が一度は成り立ったのですが1983年から再燃、分離独立を認めるか一国を維持するかで争われています。今回投票の是非が問われるのは南部の独立なのですが、西部でも内戦状態が起きていて、騎馬で武装した民兵との間での戦闘や民族浄化が行われました。

Img_4628  ダルフール紛争と呼ばれるこちらも既に200万の犠牲者が出ており、スーダンの不安定化要素の一つとして挙げられています。では、何故日本がアフリカの紛争に介入するのか、という位置づけを見てみましょう。ダルフール紛争においてスーダン政府が武装勢力による民族浄化を止めず一部では容認する動きがあったという事で世界的な非難を招き、人権抑圧国家としてスーダンは認識されるようになりました。

Img_9748  基本的に日本を含む欧米諸国は人権抑圧国家との交易を行いませんので、スーダンとの投資や輸出入の関係は非常肉薄です。しかし、スーダンは多くの石油埋蔵量を誇り、レアメタル鉱山を国土に有する天然資源豊かな国です。人権抑圧国家とうはこうしたモノの取引は出来ない、という欧米をしり目に、ここで中国が天然資源を獲得する外交政策を実施しています。

Img_6507 逆に治安が安定化すれば欧米が参入してくるので、治安回復を中国が望んでいないとも取れる行動を過去に行い、こちらも非難を招いたのですが、非難される以上に得るものが大きい、という事でこの政策は続けられています。それならば、欧米も取引できるように、スーダンを人権抑圧国家から普通の国家へ、という事が一つ背景にある訳です。直接的にダルフールへ介入することは出来ないのですが、長い南北の内戦を解決する一助となれば、という姿勢がある訳ですね。

Img_0887  南部は独立するべきか否か、これを図るには選挙しかありませんが、独立に反対して半世紀以上内戦を続けてきたスーダン政府が選挙を行えば、結果は見えていますので国連主導の選挙監視団を編成して、国際社会が見守るもとで選挙を行おう、という流れが現在の状況です。しかし、スーダンは広く道路状況も完全ではありません。万一投票箱が一つでも襲撃されて奪取されては大変、という事で投票箱をヘリコプターで空輸するので自衛隊の支援を受けられないか、という流れになった訳です。

Img_6341  陸上自衛隊にはヘリコプターが多数配備されています。なにせ、日本列島をヨーロッパにスライドしてみますと、周りは陸軍国ばかり、そこに稚内がスイスのベルン、南西諸島南端がだいたい大西洋アフリカ沖のカナリア諸島に来るぐらいという広大なそして山が多い領土を、それこそ15万前後の陸上自衛隊員で守らなくてはなりませんので、ヘリコプターでの機動力をある程度重視した編成を採ってきました。

Img_9982  陸上自衛隊ですが、偵察と観測が主任務で数人が乗れるOH-6Dやこちらは偵察が主任務ですがOH-1といった観測ヘリコプターがだいたい180機、十数人が乗れて移動や物資輸送、機関銃を搭載して掃討にも使えるUH-1J/HやUH-60JAといった多用途ヘリコプターがだいたい150機、戦車を攻撃して阻止したり地上部隊の火力支援も行えるAH-1SやAH-64Dといった対戦車/戦闘ヘリコプターがほぼ100機、そして数十人が乗れて装甲車や砲の空輸が可能なCH-47J/JA輸送ヘリコプターがだいたい50機、配備されています。

Img_0084  このなかでローターが二つ搭載されている大型のCH-47J/JAは取得費用、運用費用共に高く、日本のように50機も運用している国は非常に限られています。韓国は54万もの陸軍をもつ陸軍国ですが、その韓国でも十数機、アメリカとイギリスと、幾つかの国は日本と同じか、米軍のように日本以上に持っていますが、アメリカはアフガン作戦でヘリが不足して防衛省にヘリを貸してくれ、とお願いしたほどに不足している状況。イギリスも同様です。

Img_0055  こうしたなかで、CH-47JAはもともとアメリカのボーイング社の機体なのですが、日本では川崎重工がライセンス生産を行っていて、日本で予備部品を調達できますし、機体の構造も熟知していますので、整備から補給、運用まで高い稼働率で行う事が出来ます。イギリスなんかでは輸入した機体が中々イギリス軍の運用規格と合致しない部分があり、一部が倉庫に保管されたりしていますが日本のCH-47J/JAはこうした心配はいりません。それが50機、これをPKO支援に充ててほしい、と国連から要望があり、調査を行った訳です。

Img_0891  防衛省はその可能性について調査を行ったのですが、第一にスーダンまでの距離が大きすぎ、CH-47JAを運用する体制をバックアップするだけの輸送能力が、基本的に日本列島周辺を任務範囲として部隊を編成してきた自衛隊には充分ではない、という一点と治安面での問題から、ヘリコプターの派遣は不可能である、という結論に至ったようです。

Img_9954  派遣するというのならば、一機だけという訳にはいかないでしょう。ヘリコプターというと、自由に飛べて何処までも行くことが出来、滑走路が無くとも着陸できる、という印象はあるのですが、これを組織的に運用しようとしますと、燃料から予備部品までの補給が膨大なものとなります。そしてスーダンの国土は広大ですから、一か所だけに整備や補給の拠点を置けばいい、というものではなく、整備に必要な機材や車両を輸送するのはままならない、と考えられた訳です。

Img_7269  任務を行うのが紅海に面したスーダン北部なら海上自衛隊の輸送艦やヘリコプター搭載護衛艦からヘリコプターを運用することが出来たでしょうし、現在試験中のXC-2輸送機のような、遠くまで最大38㌧という多くのものを輸送できる機体が50機程度あれば、また話は違ったのでしょうが、頑張って20㌧ちょっとを輸送できるC-130H輸送機が十数機、現状ではヘリコプター部隊を支えるだけの物資を空輸するのは不可能です。民間チャーター機を借り上げるという面では費用面で不可能となります。

Img_6475  そして治安の問題があります。スーダン陸軍は生起湯その他との交易で中国から多くの兵器を購入していて、中には99式戦車をライセンス生産したものまで装備しています。万一の事があれば、それこそ陸上自衛隊も相応の装備を以て臨まなければ大きな損害を被ることも考えられます。

Img_0659  飛行場の警備、という程度でしたらば現在、海賊対処任務として海上自衛隊のP-3C哨戒機がジプチ共和国に展開していて、警備に陸上自衛隊の中央即応連隊も参加しているのですけれども、半世紀以上続いた内戦の原因を取り除くための独立の是非を問う、歴史の転換点となる選挙ですので、情勢が突如悪化した場合の事も考えねばなりません。

Img_6240  派遣したヘリコプターに何らかのトラブルが生じて不時着するような状況があった際に、救出できるような体制を構築しなければなりませんし、投票箱を輸送中に襲撃を受けた場合にはどのようにして対処するのか、という事も現行法でどういう位置づけで行われるのか、という事は未知数です。

Img_6699  専守防衛を国是として編成された自衛隊、当然アフリカの紛争地にヘリコプター部隊を派遣する、という事には、対応した編成ではありません。中央即応集団として国際任務を念頭に置いた部隊を編成はしましたが、自衛隊の多くの部隊の編成を見る限り、は専守防衛を達成するための集団である訳です。

Img_7498  今回の検討も多数の民間貨物機をチャーターして空輸能力の不足を補い、戦闘ヘリコプターや装甲車など最大限の装備を携行させ、実施すれば不可能ではなかったのでしょうが、現状では困難だ、と防衛省から見解が出された訳です。もちろん、特別に予算を組み、実施すればやってやれない事も無いのでしょうが、専守防衛の日本では現状ではスーダンは遠く、危険、と判断された訳で、政治はこれにどう応じるのか、注視してゆきたいです。

HARUNA

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