北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ズムウォルト級駆逐艦ミサイル初実験と躍進のカルロベルガミーニ級フリゲイト

2020-11-30 20:01:00 | インポート
■週報:世界の防衛,最新8論点
 今回は各国水上戦闘艦動向に焦点を当てて。ちなみにズムウォルト級駆逐艦は艦砲二基背負い式の設計思想が日本の第一世代DDHを思いだし好きです。

 アメリカ海軍最新型駆逐艦ズムウォルト級一番艦ズムウォルトが10月20日、初のスタンダードSM-2ミサイルの発射試験に成功したとの事、竣工したのは2016年だ。ズムウォルト級は従来のMk41VLSに代わる垂直発射装置としてMk57VLSを開発、舷側にVLSを配置する事で万一の被弾に際してバイタルパート船体重要部への被害を局限できるという。

 ズムウォルト級は満載排水量14797tという空前の大型駆逐艦であり、徹底したステルス性を採用した事でレーダー反射面積では3000t級のフリゲイトとしか映らず、統合電機推進による徹底したステルス性、有効射程118kmという155mm先進砲による卓越した沿岸攻撃能力、最新鋭のSPY-3レーダーの採用など、画期的な設計の駆逐艦となっていました。

 駆逐艦の概念を超えた強力な駆逐艦ですが、建造費が高騰し当初の30隻建造計画は議会により24隻に縮小、これが更なるコスト高騰を招き7隻に、当然のコスト増を受け3隻に縮小され、建造費は一隻30億ドルに達しています。VLSの初の射撃試験成功も朗報み見えますが、竣工後四年間に渡りミサイルの発射さえ、実施出来ていなかった事を示しています。
■FFGはコンステレーション級
 アメリカ海軍の次期ミサイルフリゲイトFFG計画に動きがありました。

 アメリカ海軍が新しく導入するFFGミサイルフリゲイト計画の一番艦がコンステレーションと命名されるもようです。FFGはアメリカ海軍が当面10隻、最終的に20隻を量産する汎用ミサイルフリゲイトで、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の六割程度の水準であり、これは高速多目的哨戒艦というべき沿海域戦闘艦の打撃力不足を補完する目的があります。

 コンステレーション級、一番艦がコンステレーションであるため、FFGはコンステレーション級ミサイルフリゲイトとなります。このコンステレーションというのはアメリカ独立戦争に参加した最初期のアメリカ海軍艦艇六隻の一つを意味しまして、かつては航空母艦に冠せられた艦名です。FFGは従来海軍功労者の名が冠せられた為、異例といえましょう。

 国際競争入札の結果、イタリア海軍のカルロベルガミーニ級フリゲイト派生型としてフィンカンティエリ社案が採用されました。FFGは満載排水量6200t規模で新型のEASRレーダーとイージスシステム派生のCOMBATSS-21戦闘情報処理装置を搭載し、32セルのVLSにNSM新型ミサイルやスタンダードSM-2を搭載、ヘリコプター運用施設も搭載します。
■フランス防空艦アルザス公試
 アルサスならば小説の”魔弾の王と戦姫”なのですが閑話休題、フランス海軍の防空艦の話題です、日本では防空艦と云えばイージス艦ですがフランスは。

 アルザスが10月5日、初の公試へロリアン造船所を出航しました。アルザスはフランス海軍の最新型防空フリゲイトです。アルザスはアキテーヌ級フリゲイトの一隻ですが、アキテーヌ級は対潜型と防空型が建造されており、対潜型については既に6隻が建造され、輸出もされている一方、防空型は今回公試に漕ぎ着けたアルザスが一番艦となります。

 アキテーヌ級は仏伊共同水上戦闘艦計画FREMMに基づき建造された水上戦闘艦で、共同開発ながら外見は全く異なる点が特色です。基準排水量5200tと満載排水量6100tであり比較的大型、全長は142mです。ヘラクレスレーダーとSETIS戦術情報処理装置による高度な防空能力を有し、射程120kmのアスター30ミサイルを32発VLSに搭載しています。

 アルザスは防空型の一番艦で防空型は二番艦ロレーヌと併せ2隻が整備、前型にあたるホライズン欧州統合防空艦計画により建造されたフォルバン級2隻と共にフランス海軍の艦隊防空中枢艦となります。公試はフランス国内においてCOVID-19感染症第二波の最中に実施され、造船所関係者や海軍関係者等艤装員100名は徹底した対策の下で乗艦しました。
■カルロベルガミーニ級輸出
 カルロベルガミーニ級はアメリカのFFG原型となりましたが開発国イタリアは更にエジプトへの輸出に成功しました。

 エジプト海軍は9月30日、イタリアのFREMMカルロベルガミーニ級フリゲイト2隻の導入に関する契約を12億ドルで成約させたとのこと。エジプト海軍は近年、フランスからミストラル級強襲揚陸艦を導入するなど海軍力を増強しており、カルロベルガミーニ級フリゲイト導入もその一環であろう。なお本型は汎用型と並行して対潜型が存在している。

 カルロベルガミーニ級フリゲイトは満載排水量5950t、フランスと共同開発した欧州汎用フリゲイト計画のイタリア版でEMPAR/SPY-790多機能レーダーを搭載、127mm砲と76mm砲を各1門搭載し、射程30kmのアスター30対空ミサイルをVLSに16発、射程250kmのテセオ艦対艦ミサイル8発を搭載し、NH-90対潜ヘリコプターも1機搭載可能です。
■沿海域戦闘艦モービル公試
 アメリカ海軍の沿海域戦闘艦にかんする話題です。あぶくま型と同程度の排水量ながら画期的な三胴型船体を採用した水上戦闘艦は数が揃ってきました。

 モービルが9月25日、メキシコ湾での初の公試に成功しました。モービルはアメリカ海軍が建造したインディペンデンス級沿海域戦闘艦の13番艦です。インディペンデンス級沿海域戦闘艦の建造は急ピッチで進められており、2020年には4隻が竣工する予定です。インディペンデンス級沿海域戦闘艦の特色は三胴型船体を採用し高速性を重視した点にある。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦は基準排水量2300t、満載排水量3100t、ディーゼルガスタービン併用により8万3400馬力を発揮し40ノットの高速航行が可能です。三胴構造により排水量では小型艦ながら船体最大幅は32mあり、MH-60多用途ヘリコプター2機を搭載可能です。他方、武装は57mm艦砲とSEA-RAM簡易防空システムのみ、軽装です。
■沿海域戦闘艦サンタバーバラ
 沿海域戦闘艦は排水量では護衛艦あぶくま型を若干大型化させた程度ですが速力と多用途任務に重点を置いた高速哨戒艦というもの。

 サンタバーバラ。アメリカ海軍は10月27日、アラバマ州モービルのジェネラルダイナミクス社系列オースタルアメリカ社においてインディペンデンス級沿海域戦闘艦16番艦の起工式を挙行しました。起工式ではアラバマ州において感染拡大が深刻な新型コロナウィルスCOVID-19への配慮から出席者を最小限に抑え感染対策とともに実施されています。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦は三胴船構造を採用した高速水上戦闘艦で満載排水量は3100t、速力は40ノットを発揮します。2000年代の沿岸海域作戦を念頭に重武装よりも速力とセンサー性能を重視した設計ですが2010年代の中国海軍重武装フリゲイトの台頭を受け、近年では艦橋前にハープーンミサイル発射筒を追加しまして、武装を強化しました。
■ドイツ海軍カールスルーエ
 ドイツ海軍コルベットの最新艦起工式の話題です、このブラウンシュバイク級は先ごろ改良型の拠点防空型がイスラエル海軍へ引き渡されましたね。

 ドイツ海軍がゲパルト級ミサイル艇の後継として整備を進めているK-130型/ブラウンシュバイク級コルベットの八番艦カールスルーエが10月6日、ドイツのヴォルガストピーン造船所にて起工式を迎えたとのことです。ブラウンシュバイク級は2008年より竣工となっており、初期の5隻をバッチ1としており、6番艦ケルン以降をバッチ2としています。

 RBS-15Mk4対艦ミサイルを搭載する初のドイツ艦となるもよう。ブラウンシュバイク級は満載排水量1850tの小型艦で対潜能力を持たない哨戒コルベットではありますが射程180kmのRBS-15Mk3と76mm艦砲及び2基のRAM21連装発射装置や小型無人機2機を搭載しますが、RBS-15Mk4は射程が400kmと大幅に延伸、打撃力が強化されています。
■インド海軍カバラティ竣工
 インド海軍も新鋭コルベットを竣工させました、排水量では護衛艦ゆうばり型というよりもこれはもうフリゲイトの大きさだ。

 インド海軍は10月22日、カモルタ級フリゲイト四番艦カバラティを受領しました。カモルタ級フリゲイトはインド海軍ではコルベットに類別されていますが、満載排水量でみれば本型は3150tと大型水上戦闘艦に分類されます。引渡式典にはマノジムクンドナラヴァン将軍、アトゥールクマールジャイン副提督といったインド軍要人が出席しています。

 カモルタ級フリゲイトは対潜運用を重視した水上戦闘艦で、前型で日本にも親善訪問しているコーラ級が水上打撃を重視したのに対し本型はKa-28対潜ヘリコプター1機と533mm連装魚雷発射管2基、RBU-6000対潜ロケットなどの対潜兵装に加え艦砲や艦対空ミサイルなどを搭載しています。インド海軍では中国原潜部隊のインド洋進出を警戒しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】航空自衛隊60周年小松基地航空祭(5)犬鷲306飛行隊特別塗装機(2014-09-20)

2020-11-29 20:11:05 | 航空自衛隊 装備名鑑
■第306飛行隊機動飛行
 小松基地航空祭は鮮やかな特別塗装のF-15戦闘機による機動飛行が開始されました。

 イエロー犬鷲の第306飛行隊特別塗装機による機動飛行が始まった。小松基地は1965年よりF-104が配備され朝鮮戦争時代のF-86Fから脱却が始まりますが、実際には1975年の第4飛行隊廃止改変までF-86Fは残る、ただ1976年に小松にもF-4EJ時代が到来します。

 イエロー犬鷲イーグルが真正面から750km/hでハイスピードパスする。第303飛行隊としてF-4EJ戦闘機の飛行隊が創設されまして、これが現在の303誕生なのですね。ここで第6航空団、小松は第205飛行隊のF-104戦闘機と二機種態勢として歩みを進めてゆく。

 イエロー犬鷲イーグルは急上昇しエンジンがアフターバーナーもよう。この第306飛行隊は1981年にF-4EJ飛行隊として、これが古くなったF-104戦闘機の第205飛行隊を廃止改編して創設されています。ただ、ここでもまだF-15は入らずF-4戦闘機EJの時代です。

 第306飛行隊イーグルの機動飛行も続く。さてこの戦闘機イーグル、航空自衛隊としては1981年から導入が開始され、新田原基地の第202飛行隊をマザースコードロンとして全国の飛行隊が次々と創設されていました。そして1987年に、小松にもイーグルの流れが。

 第306飛行隊イーグルが急上昇へ。このイーグルは小松基地へは1987年に第303飛行隊が先ずF-4EJからF-15Jへ機種転換を受けまして、しかしF-104を装備する飛行隊からの改編が優先され、そして北方の千歳基地や首都防空の百里基地、小松配備はあとでした。

 イエロー犬鷲イーグルが機動飛行で戻る。この第306飛行隊がF-4EJからいまのF-15Jへ機種転換したのは1997年と、まあ、F-15戦闘機の配備部隊としては最後に改編にされていまして、日本海側といいつつ京阪神地区への経空脅威は低く見積もられていた、と。

 F-15Jイエロー犬鷲イーグルの上面がみえた。一方で航空自衛隊よりも前に在日米軍から民間空港として運用していた小松空港は、1993年に第三の国内線、全日空と日本航空に続いて日本エアシステムが東京路線を整備しまして、空港機能が徐々にですが強化されてゆく。

 第306飛行隊F-15Jイーグルの下面を機動飛行にて。この機動飛行を支える飛行場機能は民間空港の需要も反映されていまして、1994年より小松空港を国際航空貨物の拠点化が進みます。これは1980年代から日本海側に航空か持つ拠点を強化する構想があったゆえ。

 第306飛行隊イーグルが天頂へ急上昇を。この上昇のように小松空港が拡張されたのは、1970年代に注目された東海地震の脅威といわれまして、要するにこの地震の津波被害が及ばないが、京阪神地区と中京地区に近い地域に航空貨物拠点を、という要求が在った。

 イエロー犬鷲イーグルの下面を仰ぐ。実のところこの構想は、かなり先進的といえまして、それは東海地震の被害想定を遙かに越える南海トラフ連動地震という、最大32万人が犠牲となる巨大災害が、あの2011年の東日本大震災以降、現実として認識されたためです。

 イエロー犬鷲イーグルがタッチアンドゴーを。小松であれば北陸本線と、そして貨物は関係ありませんが北陸新幹線は大阪開業となれば東京と大阪を結ぶ巨大な予備交通網を形成しますので、万一ということがあっても、最後のインフラは維持できる、危機管理ですね。

 イエロー犬鷲イーグルを真横から。小松基地のいや空港の方の拡張は、そして同時に小松空港に2700m滑走路が二つ平行して整備されるということとなりまして、一つはアスファルト製で予備というべきものですが、2700m滑走路が二つ整備されているの意味は大きい。

 イエロー犬鷲イーグルの急上昇が響く。2700m滑走路が二本あれば、もちろん物流、これは防衛輸送を考えても意義はあるのですがもう一つ、航空攻撃やミサイル攻撃で滑走路を喪失する脆弱性が一本の時よりもだいぶんと低下します、強靭性、この意味があるという。

 イエロー犬鷲イーグルの急上昇更に角度をあげて。小松基地の重要性ですが、しかし皮肉にもF-15が導入された当時と比較して、脅威のシフトが多様化していまして、日本海の対岸、北朝鮮の脅威というものが冷戦後に巨大化します、まさにソ連崩壊でタガ外れた如く。

 イエロー犬鷲イーグルが再度角度変えて急上昇に。この小松基地の日本海を挟んでの対岸、もっとも日本海は103万平方kmあり、黒海の面積が44万平方kmであの地中海が250万平方kmですのでかなり広大なのですけれども、それでもこの対岸が北朝鮮、という。

 小松空港ターミナルビル背景に着陸のイエロー犬鷲イーグルを。小松に半分ファントムが残っていた1993年に北朝鮮は史上初の弾道ミサイル実験を行い、ノドンが日本海に着弾しました。ここから小松基地は結果、日本に脅威を及ぼす北朝鮮への最前線となっています。

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【土曜詳報】キャンプ富士日米友好祭二〇一六(8)M-27ISR,M-240LMG(2016-05-07)

2020-11-28 20:02:30 | 在日米軍
■キャンプ富士日米友好祭
 キャンプ富士日米友好祭二〇一六はいろいろと巡ってまいりましたがそろそろ陽が傾き始めました。

 10式戦車、戦車教導隊第1中隊所属のもの。富士駐屯地より展開した車両ですね。第三世代戦車が防御力を高め重量が60t70tと肥大化する中に主要部をロボット化することで防御力を高めた上で重量44tまで抑えた、日本戦後戦車開発史における2010年代集大成がこれ。

 LAV-ATを真横から。エマーソン社製ミサイルランチャーは車内に予備のTOWミサイル12発を搭載し、射撃に際してはミサイルランチャーを真上に立たせて誘導します。これにより掩蔽壕や林間を遮蔽として射撃可能。赤外線半指令誘導、命中まで狙う必要はあるが。

 TOW発射装置を正面より。TOWはM-40/106mm無反動砲の後継として開発されたもので、従ってM-220発射機というM-151ケネディジープにそのまま搭載できる簡易な発射架が基本でした、M-996ハンヴィーとしてTOW運用専用車もある。しかし装甲防御を考えると。

 SPCボディアーマー。山を下りて小火器展示へ戻る。こちらは前のMTVボディアーマーが防御力を意識しすぎて着て歩くものという基本を忘れ突起で負傷し装備品を壊し重い、という失敗を経て、防弾プレートを身につける防護衣に原点回帰した戦うための装備です。

 M-27ISR分隊支援火器、ドイツH&K社製HK-416の重銃身型、M-1918BARのように正確な連射で制圧するという想定の元猛烈な段幕を張るMINIMIを補完する分隊支援火器、という発想で2010年に制式化されました。重さ3.6kgですがM-16A4の後継ではない。

 M-240汎用機銃二丁、M-60軽機関銃の後継として1994年より配備開始となった、性格にはM-240G軽機関銃という。M-240はベルギー製FN-MAGとして1958年に設計されNATO標準機銃といえる傑作となりましたが、米軍は車載同軸機銃として採用したのみ。

 M-27ISR三丁。海兵隊の火力は変化に富んでいる、しかし弾倉は共通なのは重要ですね。M-249ではアフガニスタンなど山間部の先頭に置いて身動きが採りにくく、結果、軽量な分隊支援火器を、と開発され、ACOG照準器等を用い正確な30連射を加えるもの。

 M-4A1カービン、重量が2.7kgと軽く1994年に陸軍が3.6kgのM-16A2小銃後継。開発したコルト社は1500ドルで供給していましたが、FNハースタル社であれば900ドルで供給できるとして現在はFN製が米軍に納入、M-249とM-240とふくめて全てFN製という。

 M-240軽機関銃とM-192三脚、M-240は7.62mm口径で1800mにおよぶ射程を有し、2005年にピカニティー社が開発した重量僅か5kgというM-192三脚にあわせますと、拠点防衛に資する装備となります。自衛隊にも7.62mm機銃はまた、必要ではないかとも考えます。

 M-224/60mm迫撃砲、海兵小隊の迫撃砲班に2門が配備される火器で重量21kg、ただ緊急時には二脚を省いて簡易底板とあわせ8.2kg、砲身握把を直接手で保持し緊急射撃が可能という。最大射程は3490mで緊急時には毎分30発を連続射撃、海兵小隊直援火器のひとつ。

 M-777超軽量榴弾砲の低姿勢、かなり低く抑えられています。M-777を開発したBAEはガンポーティーという簡易自走砲を提案していまして、元々これはトラックの荷台に榴弾砲を括り付けた第二次大戦中の野砲機動運用を示すものですが、この応用を提案しました。

 M-777牽引状態。このまま牽引しますと全長が大きくなり射撃準備にも時間を要しますが、BAEはトラック荷台に抱え込むように射撃姿勢のまま搭載し、射撃時に切り離して運用する簡易自走砲を提案しています。もっとも各国になかなか採用されないようですけれども。

 M-777の低姿勢。M-777は面白いのは過去、ストライカー装輪装甲車にかなり無理矢理と砲架部分だけを搭載し自走榴弾砲とする陸軍の研究がありました。こちらも実現しませんでしたが、なにしろ突き抜けて軽量、可能性を多く秘めた装備だけに研究は多いようです。

 御殿場市消防局の消防車両。さてさて、この車輛は撤収するところなのですけれども、アメリカ海兵隊装備を色々と眺める貴重な機会となりましたこのキャンプ富士一般公開もそろそろ終了の時刻となってまいりました、そんな流れの中、当方も撤収する事としました。

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令和二年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.11.28-11.29)

2020-11-27 20:05:52 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 大阪での感染再拡大が過去にない規模で進み京都と兵庫もこれに続くとともに首都圏と中京地区及び北海道の状況が深刻です。

 今週末の自衛隊関連行事は、自衛隊記念日記念行事航空観閲式や日本原駐屯地創設記念行事、明野航空祭などが実施されるのですが、いずれも新型コロナウィルスCOVID-19感染拡大防止の観点から非公開となっています。また航空観閲式については入間基地で実施されますが、祝賀飛行などは実施されず、入間基地近辺で編隊飛行などは見られません。

 COVID-19感染拡大がそのまま終息したならば、自衛隊行事の一般公開も部分的に再会されたのかもしれませんが、現実は夏の一時的収束をそのまま終息まで徹底できず、クラスターの小規模流行を繰り返すとともに現在、徐々に感染経路不明の再拡大が全国規模で拡大し、徐々に制御不能、医療崩壊、この回避が喫緊且つ現実的課題となってきています。

 ファイザー、アストラゼネカのCOVID-19ワクチン、効力の高さが大きな希望として報道されていますが、この二つのワクチンには情報開示されている部分がまだ精査中のものがあり、実のところワクチンにかんして専門家視点からは、第一世代ワクチンは重篤化を防ぐものであり感染を完全に防ぐものではないのではないか、という視点もあるようでして。

 ワクチン接種を受けた人は感染してもまき散らすウィルスの量が減る可能性はあるがウィルスを完全に封じこめられるものではない。ワクチンが目指す集団免疫はR0基本再生産数を抑え社会を感染から守るものであり個々人の感染防止となれば別の話だ。ワクチン普及後に元の生活に戻った場合の感染拡大率は未知数である。昨今はこうした専門家の視点も。

 ワクチンについて、これは重篤化したものはワクチン投与されたものの中にほぼ居なかった、という部分が報じられ、その懸念が示されているものでして、結果的にファイザーとアストラゼネカなどのワクチンは、集団免疫ではなく重篤化を抑え無感症キャリアに抑える、つまり感染拡大を抑えるのではなく死者数を抑えるだけではないか、というもの。

 ワクチンがアメリカとイギリスでの治験の成功により、遠からず日本でも接種可能である、というものは単に出口戦略に一定の見通しがついたものという認識で考えるべきものであり、これを以て最早大規模な感染対策は不要と考えるものでは全くありません。要するに、まだこの“我慢の冬”や“ウィズコロナ”の時代は続くもの、と認識すべきなのですね。

 日本国内での感染拡大は、懸念の水準に。コロナウィルス感染症がもともと呼吸器系統の季節性感染症である事を認識するならば、冬の本格的な感染拡大は現状において非常に危殆すべき状況が近づいているのではないか、と懸念します。こういうのも日本は感染第一波をかなり有効に水際で防いでおり、その後に暖かくなる季節を迎えることができました。

 第一波で欧州や北米と南米の様な人口一千万当たり数千の死者数を出す事無く乗り切った日本としては、社会が感染防止に努力した事は事実ですが、コロナウィルスが猛威を発揮する冬には社会ではなく水際防疫が功を奏した為にソフトランディングできた、この事実を忘れているのではないか、ここ十日間の日本国内感染状況をこのように強く危惧します。

 ファクターXは存在するのか、実際のところこの幻影が不思議な防疫への自信を持たせているように懸念します。ファクターXとは、日本ではそもそもCOVID-19は蔓延したり大量の死者を出さないという特別な要素があるという根拠のない仮説で、例えば先行して弱毒性の亜種が流行したためにすでに集団免疫がある、というような仮説です。根拠はない。

 疑似科学といいますか流言飛語に近いもので、これは感染爆発前にインドでは暖かい気候とカレーが免疫力を高めている為に武漢からの帰国者に感染者が居なかった、という仮説がありましたし、ブラジルでも先のジカ熱をはじめ様々な風土病を抑えた実績から爆発的感染には至らない、というファクターXが考えられたものですが、実際にはどうでしょう。

 ダイヤモンドプリンセス横浜入港とともにCOVID-19が新型肺炎と呼ばれた時点から、当初中国から伝えられていた以上に危険な感染力を実地で突きつけられ、これが水際対策の徹底と現行の日本国憲法施政下では限界までの感染対策を官民一致で対応した点が、第一波の感染爆発を防いだのではないか、と。つまりファクターXではなく感染対策の結果、と。

 ワープスピード作戦。アメリカではワクチン緊急輸送に兵站分野の陸軍大将を指揮官とし、ワクチン量産納入をDデイと位置づけ、軍官民一体の輸送準備が進められています。しかし本邦では医療過疎地域へのワクチン搬入等の具体的準備は発表されておらず、未知数です。この一点に限っても、集団免疫は先の話であり感染対策重要性を示しているようです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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日本造船業は防衛の根幹,LST&LSDを増強せよ【2】低コストで輸送船を量産する日本造船業

2020-11-26 20:01:18 | 防衛・安全保障
■産業力も国力であり防衛力
 日本造船業は防衛の根幹であるという本特集、日本が緊迫度を増す周辺情勢に対応するには国内の工業力を如何に協同するかが重要です。

 自衛隊の輸送艦艇、特に災害派遣から防衛出動まで活用できる装備ですが、その整備に日本国内の強力な造船所網を活用できているだろうか。特に内航船舶を設計する造船能力においてコスト面と性能面で大きな建造能力を有している我が国では、輸送艦艇、とくに設計上の特色から各種揚陸艦の建造能力、その潜在能力は極めてたかいようにも考えるのですね。

 輸送艦艇。設計の特色をみますと、もちろんステルス性能や個艦防護能力などを加えますと、その設計の特殊性は際限なく拡大してゆくのですが、LST戦車揚陸艦などはタンカーの設計を、LSDドック型揚陸艦は浮ドックの設計を、共通性があるのではなく、便利な民生品をそのまま応用するかたちで、物資不足の厳しい第二次世界大戦中に設計されました。

 揚陸艦。災害派遣にも活用できますが、なかなかその任務を海上保安庁や警察が担う訳には参りません。自衛隊の任務は災害派遣ではない、と反論されるかもしれませんが、国がもてる資材のすべてを投入する、これが政治と言うものです。いや、陸続きで揚陸艦など必要ない、と災害派遣専用装備ならば私も首肯はしないのですが、実際はどうでしょうか。

 水陸機動作戦を考えるならば、作戦輸送としても業務輸送としても自衛隊の輸送力は十分ではありません、例えば輸送艦おおすみ型などは満載排水量14000t、3隻あり、その能力は世界水準では比較的高いものなのですが、要求は1990年代のものであり、2020年代の安保環境に考えるならば海上自衛隊の輸送能力は求められる水準には、達していません。

 タンカーに似ている。LST型輸送艦、みうら型輸送艦、あつみ型輸送艦、のと型輸送艦の写真を見まして友人がふと発した一言です。形状は艦橋が船体後部に配置され船体中部と前部は巨大な車両甲板と平甲板の形状をとっていますが、実はその通り、タンカーの設計が応用されています。実際、最初のLST戦車揚陸艦はタンカーを設計変更したものでした。

 LCT戦車揚陸艇、1940年にイギリスは戦車を従来の貨物船にてクレーンを用いて埠頭に揚陸させる方式に変えて、船舶から直接海岸に上陸させる舟艇を開発します、が、小さすぎた。着想は画期的でしたがたとえばドーバー海峡を超えるには波浪が高ければ転覆するおそれがあり実用的ではなかった、そこで航洋性高い船底の平らなタンカーが注目されます。

 バチャクエロ級揚陸艦。世界初のLSTは1941年にイギリス海軍が戦車を強行輸送する艦艇として浅喫水構造のタンカーをもとに、油槽区画を改造転用し車両甲板とし、車両排気の通風筒や観音開式揚陸ランプを追加した構造としました。バチャクエロ級は3隻がとりあえず建造されましたが、この1941年のイギリスの造船能力余裕はなく、アメリカへ。

 LST-1級。第二次世界大戦中のアメリカで1152隻も量産された戦車揚陸艦で、戦後には自衛隊にも供与され、おおすみ、しもきた、しれとこ、はやとも、4隻が活躍しています。予備艦扱いも含め驚く無かれ2020年代まで、なにしろ1940年代の設計と製造、海軍にて活躍しています傑作揚陸艦は、このバチャクエロ級のアメリカ建造仕様というべきものです。

 ボクサー級戦車揚陸艦。バチャクエロ級をアメリカで設計し、バチャクエロ級は速力が10ノットしかありませんでしたので、いかにも低速すぎるとしてイギリスの要請でエンジンを強化し17ノットまで発揮させたものです。しかし平底設計で艦首に強度限界のある観音開扉を設置し17ノット性能を盛り込む設計は量産が難しく、建造も1944年へ遅れました。

 LST-1は満載排水量4050t、基準排水量1650tで全長は100mなのですけれども車両甲板は全長88mと幅は9.1mありまして、ビーチング運用の際には車両を500t、埠頭接岸時には車両など2100t、輸送可能です。タンカーの設計を応用したことは実はこの揚陸艦の浅海域での運用以外にもうひとつ、火災対策という部分で有用でした、可燃物を搭載している。

 タンカーは重油や軽油や原油にナフサやガソリンなどを輸送しまして、程度の差はあれすべて危険物です。しかし、落ち着いてかんがえますと揚陸艦に搭載する戦車もトラックもすべてガソリンや軽油を搭載しているのですね、すべて可燃物です。このため、タンカーの消火装置や防火構造もそのまま応用できるものでして、実際LSTの生存性はかなり高い。

 日本の造船能力ならば、内航船の設計で全長100m程度のものを量産する能力はありますし、なにより少子高齢化を受けコスト面以外に省力化の設計技術にも長けています。海上自衛隊に人員が不足するならば陸上自衛隊が方面輸送隊として一個小隊規模の人員で各1隻を運用してもよい、日本の造船技術規模ならばかなりの数を安価に揃えられましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】手力雄神社(岐阜各務原)各務原総鎮守は織田信長と岐阜基地所縁の社殿

2020-11-25 20:18:50 | 旅行記
■龍神信仰と木曽川治水の祈念
 岐阜基地を含む各務ヶ原総鎮守の神社が基地撮影地の航空公園から徒歩一時間半当たりのところに在ります。

 手力神社。岐阜県各務原市那加手力町に鎮座しています織田信長ゆかりの社殿です。その歴史については詳細は定かではありませんが、奈良時代の6世紀末期頃に当地当時の中里を支配していた村国氏と各務氏といった豪族により造営された社がその始まりという。

 龍神信仰がある。手力神社は木曽川河畔にありますが、過去一度も水害被害に見舞われていないといいます。ここが大河を龍神と見立てた信仰に繋がっているとの事でして、昨今は巨大水害が日本に世界に多い中、当方も参拝に治水安寧を心から祈りました次第です。

 手力雄神社、正しくはこう称しまして、各務原市那加地区の産土神である真幣明神が祀られています。不思議な事に手力雄神社はこの各務原市と同じ名前の社殿が岐阜市にも鎮座していまして更に不思議な事に共に龍神信仰を掲げているという。そちらも行ってみたい。

 各務氏。別に某大学の名物事務員さんではありません、内輪ネタですね。さて各務氏、考えてみますと各務原地名はこの豪族に由来するものと納得できまして、村国氏と各務氏、鎌倉時代からは此処に土岐氏、薄田氏と佐良木氏が家来として神社に崇敬寄せたと伝わる。

 総鎮守。手力神社は各務原一帯の総鎮守と位置づけられています。そして岐阜基地一帯も安土桃山時代の頃には社領とされていたのですね。基地を探訪した際には寺社仏閣観光を、と常々書いていますが、実はこの手力神社へ参拝したのは今回初めてでした。その理由は。

 岐阜基地航空祭、初めて行ったのは、いや連れて行ってもらったというのが正しいか、ブルーインパルスがまだT-2練習機の時代でした。その頃からの岐阜基地ですが、手力神社参拝が30年近く後になったのは、基地撮影位置から6kmも離れている為、要するに遠い。

 織田信長所縁の社殿。織田信長と社殿のかかわりは不思議なものでした。永禄10年の西暦1567年、尾張より美濃国へ侵攻を開始した織田信長の軍勢は木曽川をいとも容易く渡河し、一挙に斎藤氏の居城稲葉山城へと迫ります。その道中にこの手力雄神社が鎮座しています。

 武威を以て威光を示すのだ、社伝によれば織田信長は恭順しない周辺村落を次々に焼き討ちし、社殿を素通りして稲葉山城に機動力こそが勝敗を決するとばかりに急ぎますが、突如濃霧が立ち込めて左右前後は勿論上下もわからなくなり、落馬してしまうのですね。

 神罰ではないかと恐れた信長は、一旦進軍を停止させ戦勝祈願を此処で行います。桶狭間の戦いが永禄3年の西暦1560 年ですから、こんなところで行軍を停止しては今度は自分が今川義元の二の舞となりかねませんが、それでも神罰を恐れた、ということでしょうか。

 各務野原近里全て合せ千三百町歩を社領として、織田信長は美濃平定ののちに寄進します。そしてこの崇敬は江戸時代にこの地域が幕府天領となりますと旗本の所領等が広がりますが、その頃にも崇敬と寄進は続きまして、今日の比較的大きな社殿となっているようです。

 龍神信仰と落馬は関係あるのか、と問われますと木曽川に堤防築堤が始まったのが江戸時代の1650年代からといいますので、この地域は常に木曽川の空気の流れとともに洪水による地形の変化が続いていた訳でして、川霧も発生しやすかったのでしょうか定かではない。

 勝利祈願の社殿。織田信長の弓掛けの桜など、落馬したとはいえ織田信長が寄進した神社でもあり、勝利祈願の神社としても有名という。第二次世界大戦では旧社領の岐阜基地周辺の各務原中心部は絨毯爆撃を受けましたが、幸い当社は戦災を免れ、今日に至ります。

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【防衛情報】次世代旅客機の始動とF-35巡る新展開,ラファール-タイフーン-グリペンの激闘

2020-11-24 20:20:35 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は航空に焦点を合せまして見てゆきましょう。画期的な新世代旅客機の話題と各国で進む次期戦闘機選定などに最新情報です。

 オランダのデルフト工科大学研究チームが開発する低燃費旅客機フライングVがスケールモデルの初飛行に成功したとのこと。フライングVは三角形のデルタ翼胴体に客席を配置する一種の全翼航空機のひとつ。ただ、B-2爆撃機のような全翼航空機は胴体と主翼が一体化した構造だがフライングVは燃料タンクから客室までを主翼に一体化させている。

 スケールモデルは全長3mと重量22.5kgで当然無人機、この実験はドイツ国内の空軍基地で実施され、実験にはKLMオランダ航空も支援にあたった。飛行実験は9月までに成功裏に完了したとの事だが、低速領域においてダッチロールが発生しやすく、現実的に旅客機とするにはまだまだ課題は多いとのこと。全翼機は90年代に各国が研究し実現していない。
■エアバスのゼロエミッション機
 軍用機の中でも人員輸送機や貨物輸送機に空中給油機などは旅客機を原型としているものが多く将来この種の航空機がどのように発展してゆくかは関心事でしょう。

 エアバス社は9月21日、商用旅客機初のゼロエミッション温室効果ガス排出ゼロの旅客機ZEROe計画を発表しました。エアバス社のフォーリーCEOはこの具体的計画として2035年までに実用化する方針を示しています。旅客機は長距離旅客輸送における利便性の高い交通手段である一方、一人あたりの温室効果ガス排出量が鉄道の50倍となっています。

 ZEROe計画では三機種の開発が見込まれており、水素動力を採用しターボファンエンジン方式とターボプロップ型の旅客機、そして画期的な全翼機が示されています。ターボファン型の機種は航続距離3700kmと乗客120名から200名を想定、ターボプロップ型は乗客100名と航続距離1800km、全翼機方は乗客200名規模のものを構想しているとのこと。

 水素動力は過去のヒンデンブルク号事故を思い出しますが安全技術が確立、新型コロナウィルスCOVID-19感染拡大に伴う感染防止の観点から移動が抑制され、全世界の旅客航空会社は空前の不況状態にあり、老朽機から駐機を断念し解体が前倒しとなっています。こうした中で遠くない将来に旅客機の世代交代が前倒しされる事を見込んでいるのでしょう。
■F35参加!フィンランドF-X
 次期戦闘機選定は世界各国で進むところではありますが長く活躍した名機の後継程時間がかかる模様です。

 アメリカ政府は10月10日、フィンランド空軍次期戦闘機選定へのF/A-18E/F戦闘攻撃機とF-35戦闘機の輸出に関する承認を実施した。現在フィンランドでは旧式化が進むF/A-18C/D、フィンランド空軍名称F-18戦闘機の後継機を選定中だ。フィンランド空軍次期戦闘機選定はタイフーン、ラファール、グリペン、スーパーホーネットが対象である。

 F-35は唐突に候補に加わった構図である。フィンランド政府はF-35の候補追加に先立ち、2021年度戦闘機関連予算を20億ドルから58億ドルに大幅増額させており、F-35戦闘機が採用された場合は64機とエンジン66基など関連資材を含め125億ドル規模の契約になると考えられている。F/A-18F選定の場合は147億ドルで64機、内14機がEA型となる。
■スイスF-X可否へ国民投票
 スイスでは次期戦闘機の機種は兎も角として直接民主制の国ゆえにその必要性そのものの国民投票が行われたという。

 スイス政府は9月27日、F-5E戦闘機後継として空軍が導入する次期戦闘機にかんする64億スイスフランの支出について国民投票を実施し了承を得ました。64億スイスフランは60億ドル、この巨費を投じて40機の戦闘機を導入する近代化構想については2016年に野党が疑義を提示しており、4年間の準備期間を受けて国民投票で民意を問うたかたちです。

 F-5E戦闘機のほか、次期戦闘機は選定長期化によりF/A-18C戦闘機の後継も担う事となり、現在、F-35A,F/A-18E/F,ラファール、ユーロファイターが選定中で2022年までに決定し2025年より導入を開始します。スイス空軍は戦闘機稼働率の観点から緊急発進などの防空は平日に限定している苦肉の策を講じており、40機の新戦闘機導入の必要性があります。
■オランダ発表F35落雷注意
 F-35戦闘機について気になる情報がありました、落雷の影響があるということで墜落には至らなかったのは幸いですが。

 オランダ空軍レーワルデン基地所属のF-35ライトニングが飛行中に落雷で損傷する事案が発生しました。これは9月18日にオランダ空軍が発表したもので、オランダ空軍のF-35Aが飛行中に落雷を受け、その後基地に帰投すると燃料タンク内の圧縮装置OBIGGS主管系統の一部に破損が認められたという。オランダ空軍におけるF-35運用は開始されたばかり。

 F-35を製造するロッキード社はオランダ空軍の発表を受け、同様の問題は各国F-35の間で既に過去4件起きていると発表しました。これを受けての対処法として、F-35を飛行させる場合は雷雨や雷雲を可能な限り避けると共に、地上でも発雷が危惧される状況では極力シェルターに格納、露天駐機はエプロン地区付近に避雷針を置く安全策を提示しています。
■中国J-20圧勝の軍新聞広報
 F-15戦闘機が将来立ち向かわねばならない航空情報ではありますがプロパガンダを含めて少し慎重に見てゆきたい報道が。

 中国空軍は西安基地新聞として14日、最新のJ-20戦闘機について異機種対戦闘機訓練において1:17の戦果を挙げたとして最新鋭戦闘機の実力を誇示しました。J-20は2019年より部隊配備が開始された新型機で、今回演習の内容が発表されたのは9月ですが、1:17の戦果を挙げた空戦訓練は1月に実施されたものといい、発表まで九カ月を経ていました。

 J-20戦闘機の圧倒的高性能を九カ月を経て誇示するのは、先月より運用を開始したインド空軍のフランス製ラファール戦闘機配備を受けてのものとみられ、西安基地新聞では重ねてラファールの様な第四世代戦闘機、正確には4.5世代機ですが、J-20のような新世代戦闘機には対抗できない、として中国空軍の優位性を広く部内外に示す目的が考えられます。
■ギリシャがラファール導入
 ギリシャ空軍ミラージュ2000に続く次期戦闘機選定に関する話題が入りました。

 ギリシャのミソキタス首相は九月、旧式化が進むミラージュ戦闘機の代替にフランスから最新鋭のラファール戦闘機18機を導入すると発表した。ギリシャ空軍は1985年に第一次契約として40機のミラージュ2000を導入、続いて2000年に改良型のミラージュ2000-5を15機導入している。一部報道によれば18機のラファール内6機は無償供与ともされる。

 ラファールの導入とともにダッソーアビエーションとギリシャ政府の契約には旧式化が進むミラージュ2000の内10機について、ミラージュ2000-5相当への改修も含まれているとされる。ミラージュ2000の近代化改修は前より検討が進められていたがラファールの導入はトルコギリシャ摩擦に伴う地域安定化へ急遽、フランスが供与を決定したものである。
■クロアチアF-XにJAS39提案
 MiG-21戦闘機後継機を探すクロアチアにスウェーデンが一世代前のJAS-39を提案したもよう。

 スウェーデン政府は9月9日、クロアチア政府が進める次期戦闘機計画についてJAS-39C/Dグリペン戦闘機12機を提案しました。クロアチア空軍は2010年代に戦闘機として旧ソ連製MiG-21戦闘機24機を運用していますが2020年代に入ると共に老朽化と部品枯渇からMiG-21は12機まで減少、内4機は練習型で戦闘機実質8機となっています。

 スウェーデン政府はJAS-39の提案に併せクロアチア防衛産業近代化への包括協力を契約一部に含めており、またJAS-39は東欧地域ではチェコ空軍とハンガリー空軍に採用されている事から東欧地域全体での相互運用性を利点として提示しています。JAS-39はこの他フィンランド空軍やスイス空軍へも提案、また現在南アフリカやタイ空軍にて運用中です。
■タイフーンに新型レーダー
 新世代のレーダーは防衛装備庁も開発していますが、イギリスではタイフーン戦闘機の将来レーダーに新しい性能を盛り込むようです。

 イギリスのジェレミークイン国防大臣は9月3比の記者会見で現在開発が進むユーロファイタータイフーン戦闘機用のECRS-Mk2-MFA多機能アレイレーダーは現在問題となっている無人機への対処能力を持つことを明らかにしました。ECRS-Mk2-MFA多機能アレイレーダーはBAEとレオナルド社により3億1700万ポンドを投じ開発進められています。

 ECRS-Mk2-MFAはAESA方式を採用、民生型無人機を悪用したテロ等に対し同時多数を識別追尾し自動応答により無人機番号を確認すると共に電子攻撃を加え誘導乃至撃墜する能力を有し、これは昨年までに問題となった環境活動家無人機によるとされる旅客機反対への主要空港旅客機発着妨害等をタイフーン戦闘機は電子的に阻止出来る事を意味します。
■ロシアTu-160超長距離飛行
 Tu-160,日本周辺空域へ進出する頻度は低いのですが非常に速度が大きく緊急発進が大変だという。

 ロシア航空宇宙軍は9月19日、ツポレフTu-160超音速爆撃機による長距離飛行訓練を実施、滞空時間25時間と連続飛行距離20000kmを達成したと発表した。この長時間長距離飛行には三度の空中給油により実現している。Tu-160超音速爆撃機は1987年より導入開始となった戦略爆撃機で、ロシア航空宇宙軍には35機が量産、配備されている。

 Tu-160超音速爆撃機は全長54mで最大離陸重量275tという巨人機だ。最大兵装搭載能力は40tで可変翼を用いた超音速侵攻を任務としており、形状はアメリカのB-1ランサーを参考としているともいわれる。航続距離は14000kmであり、今回は空中給油により達成した形だ。乗員は4名、今回の25時間に渡る飛行でどう交代したかは発表されていない。
■グローバルアイがUAEに納入
 E-3やE-767のような早期警戒管制機を欲しくとも導入できない諸国ではコミューター機派生の手頃な早期警戒機が躍進しています。

 スウェーデンのサーブ社は10月、グローバルアイ早期警戒機をUAEアラブ首長国連邦に納入した。グローバルアイの納入は2020年4月の初号機に続く2号機、エリアイ空中警戒監視レーダーシステムをカナダのボンバルディア社製グローバル6000旅客機に搭載したもので、アラブ首長国連邦では近年増大する無人機長距離攻撃へこの種の装備を必要としていた。

 エリアイ空中警戒監視レーダーシステムはサーブマイクロウェーブシステムズ社が開発したレーダーシステムで小型旅客機などに搭載を想定したカヌー型AESAレーダーアンテナと制御装置を基本とする。Sバンドレーダーにより最大440km、戦闘機規模の目標でも330kmで探知しミサイル等も小型目標も150kmで探知、中小国には理想的装備である。

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【G3X撮影速報】イージス艦まや神戸初入港,最新鋭艦摩耶山麓摩耶埠頭接岸(2020-11-23)

2020-11-23 20:00:17 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■まや,DDG-179-MAYA
 神戸港に摩耶が帰ってきました、先代の強力無比な重巡洋艦摩耶から今度の摩耶は今年就役最新鋭の護衛艦で頼もしいイージス艦まや、として。

 まや。最新鋭イージス艦まや、が本日摩耶山を見上げる神戸港摩耶埠頭に初入港しました。まや、今年三月に竣工したばかりのミサイル護衛艦まや型の一番艦です。まや、摩耶山、摩耶埠頭、ここまでくると神戸一円で、あとないのは山陽本線摩耶駅くらいでしょうか。

 三摩耶、ここまで摩耶が揃うのはそうそうありません。そして本年はご承知の通り、自衛隊関連行事がCOVID-19の影響を受けほぼ全面中止という最中にあって、東京首都圏の京浜地区は最大の感染警戒地域となっており、なかなか横須賀へ撮影へ行けませんでした。

 神戸へ最新鋭イージス艦入港、この少し前に九州と呉基地へ護衛艦まや入港の話題が盛り上がっていましたので、神戸港入港情報を友人が調べてくれましてここに、護衛艦まや、巡視船まや、が挙げられていまして。巡視船も気になりましたが、行こう、神戸へ、と。

 イージス艦まや、はターターDシステムを搭載するミサイル護衛艦はたかぜ型の旧式化にあわせ建造された護衛艦で、はたかぜ型二番艦しまかぜ後継として、まや型二番艦はぐろ、建造が、まや建造とおなじ横浜IHIにて今まさに艤装工事がすすめられているところです。

 あたご型ミサイル護衛艦の拡大改良型という位置づけの本艦は基準排水量8200t、満載排水量10250tといい、全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦以外では最大の護衛艦となっています。また竣工時から弾道ミサイル防衛対応能力を有する初のミサイル護衛艦でもある。

 スタンダードSM-3ブロック2AのICBM大陸間弾道弾迎撃試験成功、これはつい先日の11月16日に日米が発表、日米共同開発の弾道ミサイル迎撃能力は開始された1990年代末には到底不可能と呼ばれた戦略核兵器恫喝にも核兵器を用いず抑止できるようなりました。

 核兵器の恫喝には核武装か否全面降伏かという極論しか無かった時代に新しい風を差し込んだ朗報ですが、まや型はミサイル防衛以外の能力も相応に高く、スタンダードSM-6を搭載予定であるため、目標高度次第で370km以遠の航空機や巡航ミサイルを迎撃可能です。

 あしがら。あたご型2番艦竣工が2008年ですので12年ぶりのイージス艦竣工です。これにあわせ、海上自衛隊では新しいイージス艦に電気推進方式の採用を決断することとなり、この結果、基準排水量で前型あたご型護衛艦よりも大型化した、という背景があります。

 神戸港。神戸といえば摩耶山ですが、この摩耶とは釈迦のご母堂から名前をいただいた、サンスクリット語が語原でもあります。そして旧海軍には高雄型巡洋艦に摩耶、重巡摩耶が配備され太平洋戦争では死闘を繰り広げましたが、その摩耶は神戸にて建造されました。

 摩耶と神戸。実はサンスクリット語が語原の山は日本には幾つもありまして、中でも有名なのは京都の鞍馬山、ヒンズー教のクラマーが日本にて信仰が密教ととけ込み鞍馬となっています。そしておもしろいのは、くらま、クラマー、日本でもインドでも軍艦となった。

 鞍馬。巡洋戦艦鞍馬とヘリコプター搭載護衛艦くらま、この二代続く艦艇は鞍馬山が語原ですが、くらま除籍の年にインドで竣工した航空母艦ヴィクラマーディーチャは、語原のクラマーが同じ神様という。するとそのうちインドでも空母マヤーはありえるのかも。

 くまの。実は今回撮影にご同道させていただきました方々の中には先日岡山玉野にて進水式を迎えた護衛艦くまの進水式を撮影されていた方が複数いまして、30FFMとして建造されました文字通り最新鋭の護衛艦と目の前の最新艦とを比べますとなるほど、という声も。

 こんごう。海上自衛隊のイージス艦は現在7隻が運用され1隻が建造中ですが、基本設計は1993年に竣工した初のイージス艦こんごう型をそれぞれ拡大改良しているもので、一から設計できた久々の護衛艦である30FFMと比較しますと、こんごう艦容の印象が強くでています。

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【日曜特集】中部方面隊創隊五〇周年記念祭【4】機甲科-普通科-特科行進(2010-10-17)

2020-11-22 20:11:48 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■機械化部隊の観閲行進
 観閲行進は重厚な分列行進曲下での徒歩行進が完了すると共に軽快な音楽と共に機械化部隊の観閲行進へ。

 軽装甲機動車、後方には偵察小隊のオートバイが、旧斥候小隊だ。斥候小隊は斥候が敵の有無を計る事にありますが軽装甲機動車が配備され多少の威力偵察が可能となり、3個偵察小隊編成となっています、一部師団には空中機動にあたる第4偵察小隊も編成されている。

 87式偵察警戒車、偵察隊には5両が装備されており威力偵察を担う。ただ、強そうに見えるが機関砲搭載の小型装甲車、この装備で敵の前衛部隊を突破し主陣地の陣容を解明するには無理なようにも。たとえばフランス軍はAMX-10RCを一個連隊72両集中投入する。

 87式偵察警戒車は後継車両として開発中止となった軽装甲機動車派生の軽偵察車がりましたが、現段階では16式機動戦闘車派生の装輪装甲戦闘車を原型とし、後部人員区画の半分を偵察ポールマストに置換え偵察戦闘車とする構想があるという。車体は大型化する事に。

 偵察オートバイが式典会場を周回走行してゆきます。伊丹駐屯地では徒歩部隊と車両部隊の約半数は観閲台前を行進しますとそのまま会場の外に出てしまいますが、一部の車両はこのように一般スタンド席前を行進します、しかしこの来場者、1万5000名に上るという。

 第14普通科連隊の観閲行進、海田英昭連隊長が連隊旗とともに入場へ。連隊は本部管理中隊、4個普通科中隊、重迫撃砲中隊、対戦車中隊から成る。ただ対戦車中隊は79式対舟艇対戦車誘導弾12セット装備する強力部隊ですがこの先2014年師団改編の際に廃止される。

 第10師団隷下の第14普通科連隊は金沢駐屯地に駐屯し北陸を管区とする。一個普通科連隊で福井県と石川県に富山県を担当するため、別名"北陸方面隊"ともいう。鯖江駐屯地と富山駐屯地はありますが旧地区施設隊の第4施設団隷下の施設中隊しか駐屯していません。

 軽装甲機動車、第14普通科連隊第2中隊の車両で2の字だけは真新しい。軽装甲機動車は小松製作所が量産し実に2000両以上が陸上自衛隊と航空自衛隊へ配備されています、量産で2700万円まで製造費用を抑えたことで多数を量産できた軽い車両だが傑作装備の一つ。

 軽装甲機動車、第14普通科連隊第4中隊の車両でここに集中配備されています。軽装甲機動車は一個小銃班を2両に分散させ機動を強化し機銃班と対戦車班を分け運用します、しかし普通科連隊全中隊に軽装甲機動車は配備されず、基本的に一個中隊に集中配備される。

 軽装甲機動車は設計としては成功していますが、実際に運用に供しますと転覆限界の低さから簡単に横転する、一個班に2両を配備する為に運転士と車長が二人づつ必要となり、長距離機動の際に休憩できる人員が限られてしまう、など、成程厳しい声も多い現実が。

 第8普通科連隊の観閲行進、豊留廣志連隊長が連隊旗とともに入場する。師団普通科連隊よりも小型の編成です、が、訓練と装備を共通化させるために、師団も旅団型編成の普通科連隊を採用、旅団は3個普通科連隊、師団は5個普通科連隊の編成を採用してはどうか。

 第13旅団隷下の第8普通科連隊は日本海側の米子駐屯地に駐屯しています。C-2輸送機配備の美保基地の近くでして、第13旅団はこのほか、第17普通科連隊が防府北基地、第46普通科連隊が岩国基地、隷下連隊が全て飛行場近くに駐屯し潜在的に航空展開能力が高い。

 高機動車、第8普通科連隊の第1中隊と第2中隊から小隊規模で行進へ。高機動車は1992年から大量配備が開始されたもので120mmRT重迫撃砲導入と同時に牽引車として用いつつ普通科の中型トラックを置き換える装備として導入、高機動車一両で一個小銃班を運ぶ。

 高機動車、普通科部隊用に三菱重工が機動装甲車という一個小銃班を輸送する装輪装甲車を研究中です。16式機動戦闘車車体を応用の設計で実用化されれば量産効果も期待でき、MRAP耐爆車両としての運用を想定するという。安価に設計できれば、大量配備できるか。

 第8普通科連隊は第2中隊と第3中隊も代表を観閲行進へ参加させました。高機動車は1/4tトレーラを牽引することも可能でして、まず、策源地や集結地に展開し1/4tトレーラを切り離し天幕などを展帳、その上で高機動車により小銃班は行進進入点へ向かう運用をとる。

 トヨタ自動車製高機動車への現場の信頼は厚い。実際整備性の高さや装甲こそないものの、不整地突破能力が高く錯綜地域ではまず発見されず機動力を展開できる、とは現場の声。なお、PKO任務用に装甲と防弾ガラスを装着しましたPKO型というものも存在します。

 第10特科連隊の観閲行進、岡本浩連隊長ではなく第3大隊長が指揮官で式典へ参加することとなりました。師団特科連隊もどこまで維持できるのか、東北方面隊は2020年3月に第6特科連隊と第9特科連隊が統合され東北方面特科連隊となりました、手放して大丈夫か。

 第3大隊長のアップ、当時第10特科連隊は5個大隊12個中隊の編成という。こののちの第10師団改編により第4大隊と第5大隊が廃止され、特科火砲は12個中隊60門から6個中隊30門へ激減、将来的には中部方面特科連隊へ統合、各師団10門程度が割り当てに。

 第10特科連隊第3大隊第5中隊のFH-70榴弾砲、中隊には5門配備される。特科大隊は10門の火砲を装備しますが、第5大隊だけは全般支援大隊ということで4個中隊20門を装備する、105mm砲と155mm砲の時代には第5大隊だけが155mm榴弾砲を装備した。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】米華防衛協力,ハープーン沿岸防衛システムATACMSとSLAM-ER,MQ-9B等供与

2020-11-21 20:00:02 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 アメリカ大統領選挙はバイデン新大統領誕生で確実となりましたが、新政権は中国の軍事力による現状変更と向き合わねばなりません、これは日本の問題でもある。

 アメリカのトランプ政権はアメリカ大統領選挙投票前の数週間のうちに、台湾への防衛装備品供与を、極めて短期間のうちに行われたものとしては異例の水準で実施しました。台湾への武器供与は中国政府の反発を招く事は必至ですが、自然衰弱のように武器の旧式化が進む台湾はどこかで新装備調達に踏切らねば、強大化する中国に呑みこまれてしまう。

 台湾への防衛装備品供与が実現した背景には、世界が新型コロナウィルスCOVID-19の流行禍に苦しめられる最中、漁夫の利を得る様に中国軍が台湾へ軍事圧力を掛けている切迫した状況下で、軍事均衡を維持するうえで必要という、ぎりぎりの軍事均衡を保つための選択肢だったのかもしれません。しかし以下に示すアメリカの武器輸出は、意外な規模だ。

 台湾は澎湖諸島へホークミサイル部隊展開を再開したもようです。蔡英文総統の視察写真などから、ホークミサイル部隊展開、これは少なくとも9月下旬頃から再開されていた。MIN-23ホーク地対空ミサイルはアメリカ製戦術防空ミサイルで射程は50km程度、旧式ではありますがミサイル本体の冗長性が高く最新鋭の電子機器への換装が行われています。

 澎湖諸島は台湾海峡上の台湾領域です。ホークミサイルを澎湖諸島へ展開する背景には今年に入り中国大陸からの国籍不明機の接近が4000回を越えるという、過去例のない規模により中国軍の軍事圧力が高まっている為で、中国軍の防空制圧能力は現段階では限定的といい、ホークミサイルは中国軍の奇襲的な接近に対して確たる対処能力を求められます。

 こうした中でアメリカ政府は10月21日、台湾に空対地ミサイルなど18億ドル相当の防衛装備品を売却する方針を示しました。供与される装備品はHIMARS装輪式高機動ロケットシステムATACMSロケットとSLAM-ERが135発、これはハープーンミサイルにトマホークミサイル用主翼等を取り付け射程を250km以遠に延伸した等が含まれています。

 台湾海峡においての防衛を強化するかまえ。台湾はここ数年、アメリカからの装備調達を強化しています。こういうのも2010年代以降中国の政治圧力が特に厳しくなったことより多くの国からの防衛装備品供与を受けられない厳しい状況となっていますが、国産装備開発には限界もあり、2025年までにアメリカなどからの装備調達にて一定の近代化を見込む。

 アメリカ国務省は10月26日、台湾へのハープーン沿岸防衛システム及びミサイル400発を24億ドルにて売却認可する方針を明らかにしました。ハープーンSLAMを適用した最新型のハープーンシステムで射程は250km以上に上ると見られています。ハープーン沿岸防衛システムは四連装発射装置を車両化したもので着上陸阻止の重要な装備といえます。

 ハープーンミサイルの地上発射型が400発配備されるならば、台湾有事が現実のものとなった際には台湾に接近する中国水陸両用戦部隊はミサイルの津波に曝される事となりますし、ATACMSは大型暖冬により中国沿岸部の兵力集積地に大きな圧力を発揮させられましょう。SLAM-ERは台湾の旧式化するF-16Aを最新鋭の戦闘攻撃機に若返らせるものだ。

 実のところ、ATACMSロケットとSLAM-ERに続く調達発表であり修正かと情報に混乱しましたが新規調達となっています。ただ、中国側の反発は必至、米中摩擦激化が懸念です。特にSLAM-ERは射程が大きく、台湾としては中国の台湾島侵攻が現実のものとなった際、策源地攻撃に喉から手が出るほど必要とする装備ですが、供与実現したのは意外でした。

 アメリカ政府は11月3日、台湾へMQ-9B無人攻撃機4機を含む6億ドル規模の防衛装備品供与を決定し議会に通知しました。台湾外交部は今回のMQ-9B供与について声明を発表し、能力と自信を持たせるもの、と強調しました。台湾はトランプ政権時代、過去にアメリカが中国反発を恐れ回避していた台湾への武器供与を再開し今回で10回目となります。

 MQ-9B無人機はMQ-9を改良したものでスカイガーディアンの愛称で知られています。最大の特色は航空過密空域での運用を期したもので欧州無人機飛行規制に対応した改修が施されており、2018年には大西洋横断飛行に成功しました。MQ-9の派生にはこの他、民間型で武装架を有さないガーディアンがあり、こちらは日本でも海上保安庁が試験中です。

 トランプ政権の決断、しかし、大統領選挙ではバイデン候補が選挙人306人を確保し次期大統領となります。バイデン政権は人権問題と国際協調により中国への圧力を高める事となるでしょうが、一方で現実的軍事緊張へ如何に臨むかは未知数で、これら装備品が着実に台湾へ引き渡されるか、同等の抑止力をアメリカが前方展開させるか、注視しましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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