北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第四三回):航空防衛力、防空作戦を継続的に遂行する後方支援体制

2016-10-31 21:14:47 | 防衛・安全保障
■戦闘機部隊最大限能力発揮
 戦闘基盤としての後方支援能力は増強されなければ航空消耗戦に耐えられない、前回示しましたこの視点について。

 航空自衛隊の現在の戦闘機部隊の水準は、決して総数では小規模ではなく、防空作戦能力を最大限発揮させることができるならば戦闘機は現在の数でも当面は脅威に対抗し得る、という視点を示しましたが、その為には後方支援基盤、特に輸送機の支援が必要です。空輸能力を十分確保し、最大限の戦闘機部隊の能力を持続的に発揮できる体制を確立させなければ、実現できない。

 F-15Jは空虚重量12973kgで最大離陸重量30845kg、F-2支援戦闘機の空虚重量は9527kgで最大離陸重量は22100kg、つまりF-15Jは17872kg、F-2は12573kg、全備重量で離陸し運用する事は必ずしも多くは無いので備考ではありますが、これだけの物資を最大で運用した場合は消費します。また、戦闘機一機は一日2~3ソーティ、つまり2~3回の任務飛行が限界ですが、操縦士を戦闘機一機に対して複数名待機させることで5~7回の運用が可能となるでしょう。

 戦闘機部隊最大限の能力発揮へ、勿論損傷しないという前提ではありますが例えばイスラエル空軍等は戦闘機の数的劣勢をこうした重厚な運用基盤を構築する事で、一日当たりの延べ出撃数を倍増させ、航空優勢を確保した事例があります。単純に戦闘機数を充分確保出来ない状況においても必要な運用基盤を加える事で、この劣勢を挽回できる可能性はあるのですが、勿論条件があるわけです。

 この為には、上記の通り莫大な消耗戦を展開する事となりますので、兵站、戦闘支援、作戦継続、という視点からは空輸能力は極めて重要となります。また、防空戦闘は三日や四日や一週間程度であれば、適宜休息を取り作戦継続が可能となるでしょうが、一ヶ月二ヶ月、また、相手が消耗しきるまで収束しないという人的消耗戦に展開した場合、二十四時間体制の終日勤務を行う事はせいぜい数日間が限度であり、疲労過労により消耗し行ってしまうという危惧、偶発事故や航空機損耗に繋がる可能性も否定できません。

 戦闘を長期的に遂行するべく、教育訓練部隊や予備自衛官も含めた交代要員を本土において招集し戦闘基盤を支援する増援部隊を展開させる必要があり、此処にも輸送機の必要性は高くなります。この具体的施策として、やはり現在の三個輸送航空隊による輸送機三個飛行隊編成は不充分である、と言わざるを得ません。これは勿論、航空自衛隊の空輸能力は航空作戦能力の維持へ必要であるわけなのですが、併せて有事の際には統合機動防衛力として陸上自衛隊の緊急展開を実施する必要があります。

 更に空挺部隊等は基本として航空自衛隊の輸送機による空挺強襲を基本戦術としています。特に陸上自衛隊は、ミサイル防衛を筆頭に様々な新しい任務増大から重装備を全国へ広く配置する事が出来ず、既に重装備を九州の一部と北海道へ集約する施策を採っています、この方便として統合機動防衛力整備というものがあり、この為に空輸能力を割かなければなりません。

 陸上自衛隊を縮小して海空自衛隊へ予算を回す弊害そのものというべき位ですが、北海道と九州へ重装備を集中し本州と九州の一部の防衛力を初動対応部隊のみの規模に抑える分、予算を海空自衛隊に回すのだから有事の際にはその予算を以て調達した輸送機や輸送艦により輸送を求める、という妥協のもとで整備されています。

 この為、輸送機はどれだけあっても十分とは言えない状況であり、可能ならば100機程度、F-2支援戦闘機と同数、無理を承知で戦闘機2に対し輸送機を1、故に140機程度求めたいところです。ただ、現実的ではありませんので、米軍との有事の際の輸送協力などを念頭としたうえで、現在の、小牧基地、入間基地、美保基地、に展開しています三個飛行隊に加えまして、せめてもう一個、必要ではないか、と。

 千歳基地か松島基地若しくは日米共同運用の横田基地に輸送航空隊を配置し輸送機飛行隊を増勢、また可能であれば源氏の輸送航空隊は15機程度を定数としていますが、米空軍横田基地の第374輸送飛行隊の様に輸送機定数を各飛行隊で20機とし、全体で80機程度の輸送機を確保できないかと考えます。一方、C-2輸送機は長大な航続距離を持つので、より幅広い任務へも対応が求められるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

X-2ステルス実験機,岐阜基地航空祭二〇一六初公開!将来戦闘機開発担う最新鋭機登場!

2016-10-30 23:11:00 | 先端軍事テクノロジー
■X-2(先端技術実証機)初公開
 岐阜基地航空祭へ行ってまいりました。X-2ステルス実験機,岐阜基地航空祭二〇一六にて初公開です。

 岐阜基地航空祭が本日、岐阜県各務原市の航空自衛隊岐阜基地にて開催され、快晴の青空の下、航空自衛隊飛行開発実験団をはじめ各種航空機による飛行展示が行われました。しかし、今年度の岐阜基地航空祭最大の話題は、X-2先端技術実証機、防衛装備庁が開発する将来戦闘機に向けた一歩、最新鋭のステルス実験機が本邦初一般公開となった事でしょう。

 X-2は、F-2支援戦闘機後継戦闘機の国産開発に関する構成要素を集成した実験機で、F-35戦闘機アジア唯一の最終組立施設が置かれる三菱重工小牧南工場にて製造、今年4月22日に初飛行、岐阜基地防衛装備庁施設において試験が実施されている航空機です。小牧基地での地上滑走試験や初飛行では多くの航空愛好家が見上げた機体の初公開となりました。

 航空自衛隊はF-2支援戦闘機の後継機として2018年までに、独自開発か共同開発及び海外製第六世代戦闘機の導入を決定します。尚、現在開発が具現化した第六世代戦闘機はありません。X-2はステルス設計と高運動性の両立、ネットワーク戦闘と広空域航空優勢維持の実現、F-22やF-35に続くポスト第五世代戦闘機を開発するための技術開発を担います。

 技術実証機は、既に防衛装備庁は将来エンジン開発研究やステルス機形状の研究と機動性を高める推力偏向装置開発等、構成要素を様々な分野で進めていますが、個々の分野を如何に進めようとも、戦闘機とは様々な機能を航空機という本体に組み込むシステムですので、X-2はこれまで開発した技術を一つの航空機へ集めた技術開発の結晶といえるもの。

 岐阜基地航空祭でX-2初公開、当初はもう少し先の話と考えていましたが、初飛行から僅か半年少々を経ての一般公開に驚かされました。X-2は今年の航空祭主役となりまして、X-2が展示された格納庫へは、一時、岐阜基地航空祭メイン会場となりました北側エプロン地区を縦断するほどの行列が繋がり、三時間待ちと云われたほどの活況となっています。

飛行開発実験団が展開する岐阜基地は、装備開発及び技術研究へ輸送機から戦闘機に練習機まで多種多様な航空機が配備されていまして、多機種が一堂に会する異機種大編隊が最大の名物となっています、しかし、本年ばかりは主役はX-2,初詣の伏見稲荷大社と並ぶ行列となりました、航空祭開門開場直後でも20分待ちという行列となり、驚きというもの。

X-2は格納庫内での一般公開ですが、誘導路が設置され最前列で2分交替にて確実に視る事が出来るよう配慮されていました、当初は撮影できるかも不安でしたが、岐阜基地HPにて撮影できると掲載されており、最新鋭の機体をしっかりと撮影する事が出来ました。勿論、航空祭の飛行展示も迫力そのもの、秋空一杯に航空機の編隊と機動飛行の軌跡が広がりました。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自衛隊観閲式【平成28年度自衛隊記念日総合予行】中篇:威風堂々の機械化部隊観閲行進

2016-10-29 22:24:10 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■森山東部方面総監へ敬礼
 平成28年度自衛隊記念日自衛隊観閲式総合予行、人員4000名と車両250両及び航空機50機の様子について。

 自衛隊観閲式の行進は続きます。自衛隊記念行事での観閲行進は東日本大震災以降中止となりました霞目飛行場での東北方面隊記念行事の観閲行進や、北海道最大の装甲機動部隊式典だる第7師団東千歳駐屯地祭、富士学校祭や九州最大という西部方面隊創設記念行事等が有名ですが、徒歩部隊の規模を含め、やはり自衛隊記念日観閲式の行進規模は大きい。

 国際派遣部隊は海外派遣に即応部隊で最新鋭の輸送防護車が参加、偵察部隊は87式偵察警戒車が偵察オートバイと共に、普通科部隊は強力な機関砲とミサイルを備えた89式装甲戦闘車や俊敏な96式装備車輪装甲車と機動力溢れる軽装甲機動車を先頭に各種ミサイルや迫撃砲も参加、即応予備自衛官部隊、予備自衛官部隊と災害派遣任務で名を挙げる部隊が。

 施設科部隊は92式地雷原処理車や施設作業者を先頭に架橋車両等も含め行進、通信科部隊からは今回初参加となる新師団通信システム構成車両が、化学科部隊からはNBC偵察車を中心に福島第一原発事故において活躍した車両部隊など、衛生科部隊からは1t半救急車と野外手術システム等の車両が、需品科部隊からは3t半トラック派生の工作車が行進です。

 情報科部隊は無人ヘリコプターシステムや地上監視レーダ装置など、西部方面普通科連隊からは上陸任務へ用いる複合高速艇が車載され参加し、航空自衛隊高射部隊からは弾道ミサイル防衛任務にて脚光を浴びるペトリオットミサイル、高射特科部隊より初参加の最新鋭11式短距離地帯空誘導弾や重厚な87式自走高射機関砲に03式中距離地対空誘導弾など。

 野戦特科部隊の参加は世界最高性能に並ぶ99式自走榴弾砲や全般支援火力に当たるMLRSと島嶼部防衛の切り札であり今回初参加となりました12式地対艦誘導弾システムが参加、戦車部隊は自衛隊観閲式の閉幕を飾る90式戦車と最新鋭10式戦車が参加しまして、本年は観閲行進に74式戦車が参加しない、戦車部隊の世代交代を印象付ける式典となりました。

 10式戦車の観閲行進準備号令を受けて一挙に急加速とともに機動する様子は、戦車とは思えないほどの迫力を今回も見せつけてくれまして、広帯域多用途無線機用アンテナ装備の車両と従来型のアンテナ装備の車両とで第1戦車大隊と富士教導団の車両なのだなあ、という印象もありますが、式典用に磨きあげられ文字通り輝いている様子が印象的でした。

 輸送防護車、今回が初参加となりましたが、宇都宮駐屯地祭や富士総合火力演習にて見る機会に恵まれまして、地雷など車体下部の爆発への脆弱性は低められたものの大柄の車体だということを実感します。ストライカー装甲車については初参加となりまして、先日の日米合同演習に参加した第2歩兵師団の防御力向上改良型車両が転用されたのでしょうか。

 87式自走高射機関砲の後継は将来的にどのようになるのか、機関砲は瞬発交戦能力が高くミサイル一辺倒への懐疑と共に、北海道へ限られた機甲部隊を集約する方針と共にその限られた戦車を防空掩護する車両の重要性はむしろ高まっています。また、この種の重厚な車両として、89式装甲戦闘車の後継も装軌式装甲車の意義は大きく、関心は尽きません。

 1t半救急車の観閲行進を眺めまして、毎回、救急車両への装甲車両を充当する必要性が戦場生存性などの面から指摘されているのですが、今回ふと考えさせられたのは1t半救急車が観閲行進に当たる前の国債揚力部隊観閲行進へ参加した輸送防護車で、車内容積が大きく一見して戦闘車両の風格を持たない輸送防護車を救急車へ転用できないかと思ったもの。

 OH-1観測ヘリコプターは予防着陸事案があり今回はOH-6観測ヘリコプターの参加となりましたが徐々に除籍が進むOH-6Dを見上げますと、OH-1観測ヘリコプターを少数調達で終了してしまい後継機種が難航している状況、師団飛行隊の重要航空機ですので、冷戦終結後であっても、当初計画通りOH-1を250機調達していればと思わずにはいられない。

 多用途ヘリコプターと対戦車ヘリコプターについては、AH-64D戦闘ヘリコプターの調達が中断したままであり当初計画通りの60機調達を再開する必要性を痛感しますし、空中機動の主力となるUH-60JA多用途ヘリコプターもUH-1Hを全て置き換える構想でしたが頓挫し、UH-1Jの調達を途中で終了させ後継機が開発中、何とも暗雲が漂うような印象です。

 しかし、中央観閲式総合予行を観覧し楽観できると巻いたのは隊員の優れた練度があれば、機材に関しては緊急調達すれば使いこなす事は充分できるだろう、という事でした。陸上防衛力の骨幹は人的資材に在り、防衛力は装備品ならば予算だけ積めば揃えることは容易ですが人材だけは時間と教育訓練の熱意と理解が必要です、その人材は揃っていいました。

 明治神宮外苑にて実施されていた時代では、これら車両はそのまま神宮外苑から朝霞駐屯地まで自走し市街パレードを行っていた訳です、交通状況の問題等はありますが、可能であれば多少困難でも警視庁の支援を受け、都心での中央観閲式を再開する必要性はあるように思います。防衛力の実力と国外からの軍事恫喝から平和主義を守る国家の手段を主権者に示す必要は大きいといえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

平成二十八年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.10.29/30・11.03)

2016-10-28 23:06:27 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
鳥取地震の衝撃から一週間、阪急も緊急停止し驚かされましたが皆様ご壮健でしょうか。九州では鎮西演習の話題、日本列島は晩秋に向け熱くなってきています。

今週末の自衛隊関連行事ですが、航空自衛隊航空祭あり、海上自衛隊航空基地祭あり、陸上自衛隊駐屯地祭あり、盛りだくさんです。この中でも一番の注目行事は岐阜基地航空祭でしょう。航空自衛隊岐阜基地は岐阜県各務原市に所在する飛行開発実験団の基地で、名古屋から程近く、滑走路に並行して名鉄線とJR線の駅が並ぶ、足を運びやすい立地です。

岐阜基地には航空自衛隊第2補給処と飛行開発実験団に第4高射群本部等が展開する基地です。多機種大編隊の飛行が有名ですが、飛行開発実験団では我が国が開発中のステルス戦闘機への技術実証機X-2が現在試験中となっています、今年初飛行を迎えたばかりのX-2ですが地上展示が予定され、アメリカ太平洋空軍F-16特別飛行展示も予定されている。

下総航空基地開庁57周年記念行事、下総航空基地は千葉県北部柏市の海上自衛隊航空基地で航空教育集団司令部が置かれています。厚木航空基地返還までは航空集団司令部も置かれ、海上自衛隊航空部隊の総司令部という位置づけでした。P-3C哨戒機等を運用しており、このほか、ちびP-3Cによるちび潜水艦へのASW機動展示なども興味深い展示の一つ。

姫路駐屯地創設65周年記念行事が陸上自衛隊関連行事としては最大の物でしょう。第3特科隊のFH-70榴弾砲部隊、第3高射特科大隊の81式短距離地対空誘導弾や93式近距離地対空誘導弾、対砲レーダ装置や対空レーダ装置等が展示され、FH-70の中隊効力射が再現される訓練展示、裏の本番といわれる迫真爆笑のレンジャー展示が非常に有名な行事です。

通信学校創設66周年久里浜駐屯地祭、神奈川県横須賀市の久里浜駐屯地には通信及び電波器材などの教育訓練及びシステム開発と新装備研究を実施し、幹部教育及び戦術研究等も担う陸上自衛隊の教育機関です。通信機材は派手では戦車や戦闘ヘリコプターに譲りますが戦車と戦闘ヘリコプターが真価を発揮できるのは通信あってのもの、珍しい装備が多い。

山口駐屯地創設61周年記念行事、第13旅団隷下の第17普通科連隊が駐屯する駐屯地で山陰地方山陽地方西部を防衛警備管区とし、日本海の長大な海岸線を隊区にもち、北朝鮮工作船などの浸透脅威や冷戦時代は隠岐島等への限定侵攻へ対応する重責を担ってきました。旅団普通科連隊ですが、軽装甲機動車や対戦車ミサイルに重迫撃砲等一通り装備がならぶ。

富山駐屯地創設54周年記念行事、第382施設中隊が駐屯する富山県唯一の駐屯地です。第4施設団隷下の施設部隊でかつては地区施設隊という位置づけにもあった駐屯地です。施設中隊に駐屯地業務隊と基地通信中隊富山派遣隊や警務隊派遣班併せて100名程の小所帯ながら、金沢駐屯地と並び北陸地方東部の重要な自衛隊拠点で、名物は訓練展示が凄く近い。

入間基地航空祭、木曜日、11月3日の文化の日の名物というべき、中部航空方面隊司令部が置かれる基地で、航空自衛隊最大の来場者を誇る航空祭です。C-1輸送機大編隊が飛行し、西武池袋線西武新宿線にて大量の来場者が通勤電車でピストン輸送される為、来場者は30万名を超えるほど、コミケか入間かと呼ばれるほどの活況を楽しめる航空祭はここだけでしょう。

さて自衛隊関連行事とともに備考的な話題を。観光シーズンを外れていると意外に安く高質なホテルに宿泊できるかもしれない、というか出来ました、スパもあり海に面していて雄大な大自然も一望できるのですが、ビジネスホテルよりも安かった、という。食事も素晴らしく、繁華街からは距離が離れていましたが、夕食のホテルでのレストランでも地元の名物をお得にいただくことが出来、満足です。

実は自衛隊関連行事、千歳基地航空祭や富士総合火力演習の様に観光地の近くでしかも観光シーズンの丁度最盛期に行うところもあるのですけれども、観光シーズンから少し外れた時期に盛大に行われるところがありまして、土曜日に旅客機で出発し日曜日の夜まで、若しくは月曜日に休みを取れればさらにもう一泊、凄く観光地を楽しめたりもするという。

観光地でも観光シーズンを外れているだけで、多少露で雨がちであったりとか、寒すぎたりもするのですが、観光シーズンであっても雨が降る事はあります。自衛隊行事へ遠出する際には、単純に基地や駐屯地に近いだけではなく、意外に面白い場所の近くに一泊し、行事へは早起きして電車で20~30分移動、という選択肢も、面白いかもしれませんね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・11月03日:入間基地航空祭2016…http://www.mod.go.jp/asdf/iruma/
・10月29日:下総航空基地開庁57周年記念行事…http://www.mod.go.jp/msdf/simohusa/
・10月29日:通信学校創設66周年久里浜駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/sigsch/
・10月30日:富山駐屯地創設54周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/butai/sta/toyama/
・10月30日:岐阜基地航空祭2016…http://www.mod.go.jp/asdf/gifu/
・10月30日:姫路駐屯地創設65周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/himeji/home.htm
・10月30日:山口駐屯地創設61周年記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/13b/yamaguti/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築【14】 ポピュリズムと政治システム

2016-10-27 22:05:40 | 国際・政治
■アメリカのソフトパワーに直結
 大統領選投票はいよいよ11月8日に迫りました。まだまだ不確定要素が多く予断を許しません。

 アメリカ大統領選挙において今回問題となっているのはポピュリズムへの逃避が目立ち政策論争を許さない風潮が生じている部分です。ポピュリズム、大衆迎合主義ともいえるものですが、官僚制度が高度に発展している場合では官僚機構により民主的に選挙された政治家を代替する危険、政治家が強い指導力を発揮する場合は政策の一貫性が停滞します。

 大統領選挙においては、共和党候補と民主党候補の双方ではなく一方のみ、必ずしもポピュリズム政治家だけが候補に立ったわけではないのですが、ポピュリズムの難点は、一旦その範疇に入りますと政策討議よりも、細分化したマクロ的な手法が重視される、検証が支持に繋がらない等があり、政治学上の政治システムでの以遠集約が不可能になるのです。

 デイヴィッドイーストンのイーストンモデル、ニクラスルーマンのルーマンシステム理論、共に政治学における政治システム論の入門として親しまれていますが、共に基本的には意見集約と利益分配、この過程が民主主義の支持行動を分析する手法として提示されましたが、ポピュリズムは支持事由が短期的に転換しやすく、マクロ的に支持を集約できません。

 民主制度において、意見集約を経て政策を提示し、これが支持行動に繋がる事で政治に反映、この政治に反映された政策を受けての利益分配という構造、これが入力から出力で時間を要するのですが、ポピュリズムに陥る場合には検証が一種の熱狂的な支持者により意見集約と利益分配という過程から合理性が失われてしまう事を示し、影響は重大でしょう。

 ジョンロールズの正義論、がアメリカの価値観を大きく示しているものと云えますが、規範形成や制度構築という視点から、覇権国に位置付けられるアメリカ、規範形成では国際公序として、自由を基調とした公正を掲げる制度構築は、現在の世界において大きな反発を招いていません。しかし覇権国が一貫性を示さない対外政治を展開した場合どうなるか。

 自由を基調として、これによる競争と共に生じる弊害への難点をそのまま機会均等という位置づけにより補完するという手法、批判は大きいものの、この制度が東西冷戦時代においては、個々人の自由と寛容性等以上に社会全体の利益を優先し社会の一員としてのみ個人の位置づけを強制的な部分も含め許容するという、社会主義の理念に対し提示しました。

 国際公序は現在、ここを基本としているのですが、過当競争への弊害から自由主義に依拠しない制度構築という声は、自由主義の範疇においても存在していまして、また、公正と機会均等を個々人に担保する場合でも対外政策においては反映させない諸国の事例は存在しますので、覇権国の地位が低下等を契機として国際公序の転換が生じないとは言えない。

 アメリカのポピュリズムへの傾倒、ポピュリズムは我が国野党はじめ大衆迎合主義に陥った場合議論が通じず場当たり的な政策に終始する事となりますが、それ以上にアメリカが持つソフトパワーそのものと、国際公序におけるアメリカの位置づけを変化させるものです。また、場当たり的な政策はアメリカ第一主義という表題とは別個に競争力そのものへ影響し、経済力さえ減退させかねない可能性がある事を理解すべきです。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

防衛省平成二九年度予算概算要求の検証【8】 統合機動防衛力、迅速な展開・対処能力の向上

2016-10-26 21:28:51 | 北大路機関特別企画
■迅速な展開・対処能力の向上
 防衛省平成二九年度予算概算要求の検証、第八回は迅速な展開・対処能力の向上について、これは基盤的防衛力整備から統合機動防衛力整備への転換の重要事業です。

 自衛隊将来装備の目玉としまして、航空装備ではMV-22可動翼機の調達がF-35A戦闘機と並び示されています、実際にはMV-22よりもEC-225やEC-725のような航空機の数を揃え、少数の精鋭航空機よりは多数の幅広い能力構築が望まれるのですが、現在南西諸島へ突き付けられた脅威へ一定以上水準の装備を揃えなければ対処出来ないとの判断でしょう。

 迅速な展開・対処能力の向上、来年度予算概算要求における重要施策は現在の防衛計画の大綱に明示されています島嶼部防衛能力の確立で、この為には有事の際に本土部隊を脅威正面へ迅速展開させる緊急展開能力、更に展開可能な装備体系を構築し展開した上での対処能力を整備しなければなりません、この為展開装備と対処装備の要求が行われています。

 CH-47JA輸送ヘリコプター6機の取得に456億円、V-22ティルトローター機4機の取得に393億円、それぞれ計上されています。多用途ヘリコプターの新型機を開発中であり、観測ヘリコプターの減勢や対戦車ヘリコプターの戦闘ヘリコプター大隊事業が停滞している為、航空機調達に非常に大きな課題を抱えている中ではありますが調達計画の画定です。

 航空機整備事業は島嶼部防衛を主眼に迅速かつ大規模な輸送展開能力を確保するとしまして、輸送ヘリコプターCH-47JAを整備し、輸送ヘリコプターの輸送能力を巡航速度や航続距離等の観点から補完強化する可動翼航空機の導入計画を進展させ水陸両用作戦における部隊の展開能力を強化するとしまして、更に補用品関連経費へ392億円が要求されました。

 緊急展開能力強化は航空自衛隊輸送機も陸上自衛隊航空部隊に加えて実施されます、C-2輸送機3機の取得に667億円が要求されました、これは現有のC-1輸送機減勢を踏まえ実施されました調達計画で、航続距離や搭載重量等を大幅に強化した新型機を導入する事で、大規模な展開能力を確保します。ただ、この整備計画は当初計画より大幅に遅れています。

 16式機動戦闘車33両の取得へ237億円が要求されました。上記までの航空装備品調達計画は展開能力の整備ですが、16式機動戦闘車の調達については対処能力の整備という事となるのでしょう、ただ、16式機動戦闘車の調達と共に本土に配備されている74式戦車が廃止され、徐々に本土防衛力から戦車戦力が廃止されてゆきます、評価は何とも言えません。

 この事業は機動運用を基本とする作戦基本部隊としての機動師団及び機動旅団等に航空機等での輸送に適した16式機動戦闘車を整備し作戦基本部隊の機動展開能力を強化する、としています。16式機動戦闘車は105mm砲を搭載した装輪機動砲で、緊急展開能力に優れると共に戦車の撃破能力は有していますが、機動砲であるので戦車戦闘には適していない。

 防衛省では16式機動戦闘車を機動連隊へ配備する計画で、機動連隊には装甲化普通科中隊と軽装甲機動車中隊に16式機動戦闘車中隊と重迫撃砲中隊を持つ、一方機動師団や機動旅団は全て機動連隊により編成されるのではなく、機動連隊一個を基幹とし戦車や火砲による支援を受けない純粋な軽歩兵部隊としての普通科連隊を混成し運用する計画とのことで、普通科連隊の能力と機動連隊の能力格差は非常におおきくなります。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日比関係強化へ!フィリピンドゥテルテ大統領来日、経済防衛協力強化へ安倍総理と首脳会談

2016-10-25 23:15:22 | 国際・政治
■日比首脳会談明日開催
 フィリピンのドゥテルテ大統領、日本へ初来日しました。ドゥテルテ大統領は安倍総理と日比関係の強化について安全保障協力等を中心に会談する事となっています。

 ドゥテルテ大統領、発言が大きく転換しており、外交戦略が見えてきません、大統領選では中国に不法占拠されたミスチーフ環礁武力奪還を示しましたが、その後は中国との協力重視を発言、麻薬取締を背景にアメリカとの関係が悪化すると米比関係の撤廃を主張しその後撤回しましたが更に一転し中ロとの軍事協力強化、中国の経済援助で韓国から大量の武器調達の方針を示すなど。

 米比関係の悪化、行き過ぎた麻薬戦争での処刑と人道問題に関してアメリカからの懸念に対し、内政干渉であるとして繰り返しうち汚い罵詈雑言と人格否定や差別用語を並べ、アメリカとの関係を断つ方針を示していましたが、一転してアメリカとの軍事同盟維持の指針を示しました。大きな豹変といわざるをえませんが、これは中国との緊張関係や、実質長期的にフィリピンを支援する同盟国はアメリカしかいない、という現実に漸く目を向けた結果なのでしょうか。

 アメリカとの関係を決別する、フィリピンのトランプ大統領と呼ばれたドゥテルテ大統領が中国を訪問中に述べた発言は、外交的衝撃を以て世界へ影響を及ぼしました。対米姿勢を二転三転させている事からフィリピンの外交姿勢が非常に不明確となりつつあります、麻薬戦争での人権問題を契機としてアメリカ政府とフィリピン大統領の関係が急速に冷却化、アメリカ政府とフィリピン大統領の関係悪化という背景があります。

 フィリピン政府が対米重視を強調している為、大統領と政府の方針に矛盾が生じ、外交の責任者が誰なのかわからない状況となっているためで、今回新たに中国との関係を重視し、南シナ海での中国との対立により急速な軍事力強化を求められるフィリピンは、対抗する中国から軍事援助を受け、中国の軍事圧力に対抗する訳のわからない状況となりつつあります、ドゥテルテ大統領は先日アメリカとの関係材膳を宣言したばかりの事でした。

 ドゥテルテ大統領はフィリピン帰国後、米国との関係絶たないと釈明、中国との歴史的首脳会談を終えて共同声明にアメリカとの決別を宣言した翌朝にアメリカとの関係を断つつもりはない、としました。いったい何を言いたいのか、本国へ戻った瞬間に断絶という話は言葉のあや、と言いまして、これでは一貫性ある政策を推進できません。最悪の場合は、外交文書を首脳会談の際に締結し、その御帰国後に反故にする、として国際関係を維持できなくなり、無用な経済制裁や報復関税と軍事圧力を受け孤立化が進む、という事でしょう。

 フィリピン大統領のは右舷には、南シナ海問題に関する国際仲裁裁判所勧告的意見に基づくミスチーフ環礁不法占拠問題を一時棚上げする発言が含まれました。南シナ海の要衝フィリピンの発言は、さっそく中国の軍事行動を構成に強める影響を及ぼしました。中国国防省は米国の南シナ海への艦船派遣に抗議し、自国独特の解釈の下での中国国際法秩序を広げる姿勢に転じました。不法占拠し人工島を建設した上でその周辺海域を領有宣言している周辺海域においての第三国艦船航行に対し違法性を主張しました。

 これはアメリカの航行の自由作戦に対し主張されている中国独自の国際法解釈に基づくもので、国際仲裁裁判による違法性の指摘を完全に無視し、南シナ海全域を領有化する試みの一環ですが、今後アメリカが大統領選を経てどのようにこの地域への関与を転換させるのか。一方でフィリピン政府は中国と南シナ海問題における多国間交渉の方針を放棄し中国フィリピンの二国間での解決を提案、その上でフィリピン政府は日本へこの問題に関する関与を要請してきました、今一つ不可解な要請ですが、この背景など、日比首脳会談により具体的な方向性が見えるのでしょう、大きな関心事です。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プーチン大統領唯一の空母をシリアに派遣する理由【前篇】 イギリス戦闘機三沢到着話題の裏で

2016-10-24 22:12:06 | 国際・政治
■ロシア空母ドーバー海峡出現
プーチン大統領唯一の空母をシリアに派遣する理由、ロイターコラムとして興味深い記事が掲載されていました。

イギリス空軍のEF-2000タイフーン戦闘機が航空自衛隊との共同訓練を行うべく三沢基地へ到着、特徴的な新世代戦闘機タイフーンの日本展開に大きな注目が集まっていますが、同じころ、タイフーンを派遣した英本土ではドーバー海峡にロシア海軍空母が原子力ミサイル巡洋艦などを伴い出現しました、空母アドミラルクズネツォフ、護衛艦ひゅうが型の三倍という大型艦です。

ロシア海軍が空母アドミラルクズネツォフをシリア沖へ派遣しました。シリア内戦へのロシア海軍の空母派遣は今回で八回目を数える事となりましたが、この意図について、ロイターコラムにおいて海軍力の再整備と、欧州地域への軍事的示威行動である、との分析が示されていました。アドミラルクズネツォフは現在ロシア海軍唯一の空母となっています。

加えてソ連時代に唯一建造されたCTOL空母、陸上から運用する戦闘機と同規模の航空機を運用可能な空母です、が、シリア空爆へはシリア領内とイラン領内へ基地を有していますので必ずしも空母を派遣する必要がない、との分析が示されています、実際、バックファイア爆撃機など多数を展開させ経空脅威の無い現状、空母からの攻撃は必要ないのです。

アドミラルクズネツォフは満載排水量59000tの通常動力型空母で、艦首にスキージャンプ台を設置、Su-33戦闘機や最新鋭のMiG-29艦載型など24機を搭載すると共に、ヘリコプター多数の運用能力を持ち、艦隊打撃力の中枢、P-700巡航ミサイル12発を搭載、オスカー級巡航ミサイル原潜やキーロフ級原子力巡洋艦、スラヴァ級ミサイル巡洋艦と同じもの。

このP-700は超音速巡航ミサイルでミサイル本体がMiG-19戦闘機と同規模のもの、ミサイルは相互に情報共有し編隊飛行を実施、ミサイル指揮官の統制下コンピュータにより目標へ編隊攻撃を加える極めて強力なミサイルです、蒸気カタパルトの技術が充分でないためスキージャンプ台方式を採用し艦載機運用に制限がある為、ミサイルの重要度が大きい。

ロシア空母は旧式化しつつあります、1985年に進水式を迎え1990年に就役、ソ連海軍では二番艦の建造も進めていましたがソ連崩壊とその後に続く経済崩壊により実現せず、二番艦は中国へスクラップとして売却されてしまいました。しかし、能力的にはアメリカ空母よりも上限があるものの、その示威能力の多寡さを誇示する事に大きな意味があります。

シリア沖への今回のアドミラルクズネツォフ展開ですが、併せて、イギリス沖でのヘリコプター発着訓練を行う可能性が示されていまして、北海に進出したアドミラルクズネツォフはそのままドーバー海峡を通行し、ドーバー海峡はイギリスから対岸のフランスが見えます、自動的にイギリス沿岸部からもロシア空母の威容が望見できることとなりました。

非常に稀有な状況といえるものですが、併せてロシア艦複数がイベリア半島をイギリスへ北上中で、これによりイギリス海軍の見える範囲内において通常訓練としょうする訓練を実施する事でイギリス海軍の関心を惹起させ、その上でこの情報がイギリス国内や、イギリスメディアから世界へ報道させることによりその存在感を世界へ示す可能性もあります。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自衛隊観閲式【平成28年度自衛隊記念日総合予行】前篇:人員4000名・車両250両・航空機50機

2016-10-23 22:32:23 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■平成28年度自衛隊観閲式
 本日、朝霞訓練場にて安倍内閣総理大臣を観閲官として、自衛隊観閲式が挙行されましたが、今回はその総合予行の様子をお伝えしましょう。

 平成28年度自衛隊記念日行事、自衛隊観閲式が東部方面総監部の置かれる埼玉県朝霞駐屯地朝霞訓練場において実施されました。自衛隊観閲式は中央観閲式として陸上自衛隊自衛隊記念日行事という位置づけにありましたが橋本内閣時代の1995年より陸海空自衛隊の持ち回り行事となり、中央観閲式も観艦式や航空観閲式と三年に一度の開催となりました。

 中央観閲式はNHKニュースを通じその様子が全国に報じられると共にWeb中継なども行われていますが、なかなか観る機会がありません。今回は御縁あって総合予行の方へお誘い頂き、二つ返事で馳せ参じました次第です。黎明とともに早朝の東京駅へ前進し更に東武東上線にて朝霞駅まで進出、その後、車両にて朝霞駐屯地まで前進、会場へ到達です。

 観閲式、それは国民の代表たる国家指導者が国軍を掌握し且つ高い練度を保持している事について、観閲を通じ示すと共に、防衛力とその国家方針が一致する事を世界へ広く示す国威発揚の重要な式典です。観閲式総合予行では観閲官に森山東部方面総監が当たりましたが、本日の観閲式では安倍総理大臣が観閲官を務め、式典参加部隊の敬礼を受けました。

 明治神宮外苑において、かつて自衛隊中央観閲隙は行われていまして、都心の神宮外苑から朝霞駐屯地まで式典参加車両が戻る様子を市街パレードとして広く国民に示していましたが、交通量増大などから田中内閣時代に朝霞訓練場を式典会場として、国民から自衛隊中央観閲式は遠く離れてしまいました、防衛の現状を示す手段は重要だ思うのですが、ね。

 式典へは、総合予行では観閲部隊指揮官に第1師団の師団長西陸将が当たると共に航空観閲部隊指揮案を第1ヘリコプター団長の田尻陸将補が当たり、参加部隊数27個部隊、式典参加部隊は陸海空及び共同機関より実に4000名、観閲行進への参加規模は陸上自衛隊を中心に航空自衛隊など280両、観閲飛行では陸海空自衛隊と航空機約50機となっています。

 会場は観閲台が設置され、観閲行進を行う中央通を中心にその左右にスタンド席、更に立ち席などが配置され式典を視る事が出来ます、式典会場には式典参加部隊に加え、観閲行進へ参加する車両が戦車装甲車に火砲と各種ミサイル、通信機材から施設機材までが一通り並び、広大な会場でも一杯、首都圏にこれだけの戦闘車両が並ぶことは中々ありません。

 式次第は、観閲官臨場として総合予行では東部方面総監と本番では内閣総理大臣が式典会場観閲台へ臨場、儀仗隊栄誉礼として第302保安中隊が総合予行では東部方面総監と本番では内閣総理大臣に対し栄誉礼を行います、開式の辞としましてここから自衛隊観閲式が開始されます、栄誉礼、国旗掲揚、と式典は続きまして、巡閲が観閲官により行われます。

 観閲官訓示は巡閲に続いて総合予行では東部方面総監と本番では内閣総理大臣が実施しました、観閲行進徒歩部隊が観閲行進準備の号令と共に開始されます、観閲飛行の大編隊は徒歩行進に続いて実施され朝霞訓練場からは高圧電線越しに大編隊が飛行する、観閲行進車両部隊による実施が続く、国旗降下が行われ観閲式はこうして完了、閉式の辞となる。

 徒歩部隊観閲行進は、自衛隊行事における徒歩行進として最大規模といえ、陸海空合同音楽隊、観閲部隊本部部隊、防衛大学校学生隊、防衛医科大学校学生隊、自衛隊高等工科学校生徒隊、普通科部隊、空挺部隊、海上自衛隊部隊、航空自衛隊部隊、女性自衛官部隊、と実施されます。防衛大学校学生隊は三年生が毎年自衛隊記念日行事へ参加するとのこと。

 航空部隊は、観閲飛行部隊指揮官機、観測ヘリコプター編隊、多用途ヘリコプター編隊、対戦車ヘリコプター編隊、多用途ヘリコプター編隊、戦闘ヘリコプター編隊、輸送ヘリコプター編隊、連絡偵察機編隊、哨戒機、訓練支援機、輸送機編隊、支援戦闘機編隊、戦闘機編隊、と行われます。本番では加えて新型輸送機や在日米軍可動翼機も参加しました。

 航空部隊の参加機種もCH-47輸送ヘリコプターにOH-6D観測ヘリコプターとUH-60JA多用途ヘリコプターにUH-1J多用途ヘリコプター、AH-1S対戦車ヘリコプターとAH-64D戦闘ヘリコプター、LR-2連絡偵察機とP-3C哨戒機にU-36A訓練支援機やC-130H輸送機、F-2戦闘機とF-15戦闘機、総合予行の参加機種だけでも実にこれだけ多種多様の陣容です。

 車両部隊行進は、国際派遣部隊、偵察部隊、普通科部隊、即応予備自衛官部隊、予備自衛官部隊、施設科部隊、通信科部隊、化学科部隊、衛生科部隊、需品科部隊、情報科部隊、西部方面普通科連隊、航空自衛隊高射部隊、高射特科部隊、野戦特科部隊、戦車部隊、が参加しました。更に本番では米軍よりストライカー装甲車部隊も総理の観閲を受けました。

 前回の中央観閲式は物凄い荒天行事となりまして、折角頂いた観覧券でしたが、カメラのレンズが濡れてしまい、充分な迫力の様子をお知らせできなかったのは少々残念でした、が、今年度自衛隊観閲式は晴天に恵まれ、式典総合予行の模様を待機車両から装備品展示まで撮影、なんでも第1師団の師団長西陸将は御天気運が強い方という事、納得しました。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陸上防衛作戦部隊論(第五九回):航空機動旅団、機動戦闘車機動砲大隊編成の課題

2016-10-22 20:38:01 | 防衛・安全保障
■機動戦闘車機動砲大隊編成
 機動砲大隊、大隊を基幹とする中隊や小隊編成など、運用という視点から求められる部隊の在り方、その規模はどのように在るべきなのでしょうか。

 機動大隊の規模について、先ず考える前提としまして、戦闘基幹部隊である普通科中隊を増強した中隊戦闘群と普通科連隊との機動砲の関係性について考えなければなりません。航空機動旅団の普通科連隊は三単位編成、装甲機動旅団隷下の普通科連隊と数の上では同じ三単位編成を基本としており、その上で各普通科連隊の編成は三個普通科中隊と一個軽装甲機動車中隊という編成という現在の編成の応用を提示しました。

 ここから必要に応じ中隊戦闘群、普通科中隊を基本として軽装甲機動車小隊を付与させ、騎兵運用、機動力を活かした対戦車火力の形成からスカウト任務として情報収集に車載機銃を用いての遊撃戦闘に用いるとしました。この中隊戦闘群はゆえに三単位編成の普通科連隊を構成する事となりまして、この普通科連隊が三個という三単位編成を構成しますので、旅団全体での中隊戦闘群は九個体制、ということになります。

 この為、各中隊戦闘群へ機動戦闘車を配備する場合、この九の倍数を装備する必要が出てきますが、九個小隊という編成とすれば規模がどうしても大きな水準となります。それでは小隊以下の機動戦闘車分遣隊というような形で編成する事が可能か、という視点、仮に二両で分遣隊を編成した場合は、例えば戦闘序列を構成し戦闘加入した場合、近接戦闘部隊の宿命として必ず消耗損耗故障からは離れられませんし、一両だけで構成した場合は補給や重整備等で短時間でも戦闘から離脱する場合に近接戦闘火力が大きく減退となる可能性が否定できません。

 その上でもう一つ、重整備は定期整備などを含みますので、編成には必ず予備車両というものを考えなければなりません。一案としては縮小小隊として3両編成、腹案として分遣隊の2両編成、というもの。最初からは部隊4両編成小隊ですが、これを実施しますと機動砲大隊は最低限、大隊本部車両などを省いた状況でも36両となってしまいます。機動戦闘車の整備数は200両が想定されている、こう報道などがありました。

 ここで航空機動旅団が36両編成の機動砲大隊を編成しますと五個航空機動旅団、各方面隊に広域師団を配置するのだから五個という事になりますが、これだけで180両となってしまいます。しかし、機動戦闘車は水陸機動部隊や空挺部隊にも必要な装備であり、航空機動旅団所要のみで配備数を200両全て独占する事は合理的ではありません。それでは、3両編成小隊を配置した場合ですが、27両、となります。

 五個航空機動旅団を整備する前提ですので全体の所要は135両、これならば、空挺団へ機動砲大隊を配置した場合でも162両、水陸機動部隊所要を含めたとして機動砲大隊を配置した場合でも199両、となります。2両編成の場合所要は18両、本部車両を含めて20両というところでしょうか、どちらかと云えば旅団戦車中隊の規模に近い水準ですが、これならば編成完結の時点で機動戦闘車の総数にはかなり余裕が生まれます。

 ただ前述したように一両が戦闘で損耗した場合に予備車両が必要となりますので、予備の分遣隊を編成する必要が生じ、合理的ではありません、最小限度の数量とは一見合理性に見えて余裕のない編制であることを意味し、簡単に破綻してしまう。こうした視点から、航空機動旅団機動砲大隊は27両編成の大隊編成を採用し、二個中隊を基幹とする。理想であれば30両編成とし、各中隊に本部車両を省いた15両編成、小隊ごとに分散し一個小隊を呼びとして損耗に備える編成が理想ですが、現実的には27両が収斂すべき大隊規模でしょう。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする