北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

第四代統合幕僚長に岩崎茂空将 東日本大震災対処の折木統幕長から本日交代

2012-01-31 22:44:01 | 防衛・安全保障

◆航空自衛隊出身では初の統幕長

本日、統合幕僚長が東日本大震災災害派遣を支えた折木良一陸将から新しく航空自衛隊の岩崎茂空将へ交代しました、第四代統幕長は岩崎空将です。

Img_8457_1第四代統合幕僚長岩崎茂空将は、防衛大学校19期出身で1975年に航空自衛隊入隊、航空機搭乗員へと進み第201飛行隊長、第7航空団飛行群司令、第2航空団司令、航空総隊防衛部長、航空幕僚副長、航空総隊司令官を経て本日統合幕僚長へ着任です。

Img_8185_1指揮官としての経験について、田母神航空幕僚長更迭に際しては航空幕僚副長として臨時に航空幕僚長の職務を代行し、航空総隊司令官として航空自衛隊の戦闘部隊を統括し指揮する重責を担い、本日初の航空自衛隊出身の統幕長となりました。

Img_8465統幕長は、陸海空自衛隊の隊員の服務を監督すると共に全自衛隊における最高の専門職として防衛大臣を補佐、加えて内閣総理大臣と防衛大臣による自衛隊への命令に対し執行を司る全自衛隊の責任者として、自衛官の代表という重責をおっています。

Img_2230戦闘機パイロットという経歴を持つ岩崎統幕長には、新戦闘機の取得遅延や増大する海外任務への対応、危険性が指摘されている大規模地震災害への自衛隊としての準備と南西諸島への即応体制、弾道ミサイル脅威からの防衛基盤強化と様々な難題を柔軟かつ確実にこなしてほしいですね。

Img_8433岩崎航空幕僚長の統合幕僚長昇任に伴い新航空幕僚長には片岡晴彦空将が着任、MiG25亡命事件の年に防衛大学校から航空自衛隊へ入隊、研究開発特技であり、中部航空方面隊司令官と航空教育集団司令官、航空総隊司令官を務めたのちに本日第三十二代航空幕僚長へ着任となりました。

Img_7067指揮官としては航空総隊司令官着任中に東日本大震災が発生、統合任務部隊空災部隊指揮官を務めており、未曽有の大災害へ航空自衛隊の責任者として部隊の運用を通じ救援と復旧に尽力しました。航空自衛隊は国土防衛に際し対領空侵犯措置任務という最初の責務に当たっており、精強な部隊の維持と稼働率の向上に責任は重大です。

北大路機関:はるな

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JFEとIHI,傘下のユニバーサル造船・アイ・エイチ・アイマリンユナイテッド経営統合で合意

2012-01-30 22:44:28 | 防衛・安全保障

◆新会社発足は今年十月、国際競争への対応目指す

JFE,IHIの参加に或る造船会社が経営効率化と規模の拡大による経営安定化をめざし合併することが本日発表されました。

Img_9973本日夕方に合併への合意が発表された造船業界再編、合併するのは、JFEグループの傘下に或るユニバーサル造船、IHI傘下に或るアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドの二社で、両社ともに海上自衛隊の自衛艦を建造する造船会社として知られている会社です。

Img_7186新しい会社は、その船舶建造量について、我が国最大の建造規模を誇る今治造船に準じる日本第二位の造船会社となり、世界でも第七位の規模を誇るとのこと。日本の造船業界において、これほどの大規模な再編は2002年のNKKと日立造船が合併し誕生したユニバーサル造船設立以来でしょう。

Img_9020JFE,IHIの二社は、四年ほど前から経営統合についての協議を行ってきましたが経営戦略や生産体制などの面での合意に至ることが出来ず、一度は協議が解消されています。しかしながら歴史的な円高などを背景に経営規模の拡大が急務となった関係で、今年十月の合併を発表した次第です。

Img_6533新会社は、造船部門において競合する中国と韓国の安価な船舶に対して、燃費や運航コスト、維持費や整備頻度、そして輸送能力に積降能力といった面で付加価値の高い船舶の開発を進め対抗する方針のようで、両社の技術的蓄積をさらに高めることが期待されますね。

Img_8846 他方で、商船は別として水上戦闘艦など大型艦の建造は数十年間に渡り記録が明示されます。そのうえで、海上自衛隊の護衛艦建造、自衛艦建造などを見てゆきますと、各社が多くの変遷とともに再編を行っていることで、どの会社がどの艦を、と一瞬戸惑うこともあり、慣れ親しんだ社名が合併により変わっていってしまうものは、少し寂しい気もしますね。

北大路機関:はるな

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三菱電機防衛装備品入札停止、防衛装備品経費過大請求疑惑

2012-01-29 23:42:10 | 防衛・安全保障

◆事実関係の精査進展を冷静に見守りたい

 弾道ミサイル防衛関連に地対空誘導弾や特科情報装置などの防衛装備品を納入する三菱電機が防衛省より防衛装備品の入札を停止となりました。

Img_9855 事実関係が明確ではないので、現段階では暫定的な視点しかもたないのですが、三菱電機が防衛省に納入する03式中距離地対空誘導弾について、防衛省が抜き打ち検査を行ったところ、防衛関連事業部に勤務していない職員の勤務が記載されており、装備品の経費を水増ししているのではないか、という疑惑が浮上したとのことです。防衛装備品は調達時に上限が明示されており、経費や原料費を咥えて上限の範囲内で生産、上限を下回った場合にはその分を国へ返還する、という構図が現在の防衛装備調達システムになっています。

Img_9725_1 今回の問題となっている方式は、生産に関係ない部署の要因が参加しているように、防衛省が帳簿と勤務状況の相違点を派遣したことにあります。防衛産業のみならず他の業種においても、事業部を超えて開発に参加する、という話は実際に耳にしますので、当初は防衛省の過剰監査により水増し請求となってしまったのではないか、とも考えたのですが、疑惑をもたれている三菱電機鎌倉製作所の従業員によれば人件費などの集計システムへ不正入力するよう指示を受けていた、と防衛省へ回答し、やはり水増しと考えざるを得ません。

Img_9959 防衛省が明示した範囲内で生産が完了している、ということならば一見問題視の在り方にも考え方が見えてくるのですけれども、背景には防衛産業の採算性の低さと公共性に事業評価の摩擦という特異な状況を考えるべきでしょう。即ち経費過大請求は、防衛産業の生産ラインへの費用上乗せが難しく、生産ライン維持費や製造が何年間続くのかも不明確という日本型防衛装備調達方式では採算性を維持するうえで厳密な経費だけでは難しく、加えて日本以外の海外装備品の調達には監査が届きにくいという問題もあるのですが、制度上水増しはやはり問題でしょう。

Img_9752_1 再発防止措置が採られるまでは入札への参加を禁止する、という防衛省の措置ではあるのですが、再発防止措置というのはどういったものとなるのでしょうか。防衛装備品は特殊なものであり海外の装備品の価格等は政治的要素にも左右されるので、難しい実情があります。ただ、制度上問題であるならば解決策は考えられねばなりません。特に防衛装備品の適正調達を目指してありとあらゆる装備を競争入札方式としているのが現状なのですが、これにより開発能力のない企業が仕様書の範囲内であれば開発できるとして応募し落札、結果、防衛省の要求は満たしていても仕様書以外の性能が不十分で実用に供さない装備が出され、継続開発となる事例、打ち切りとなる事例も起きています。

Img_6556 それならば、と技術力がある企業が無理を承知で落札しているが企業は営利を一応は考えなければならない、という話もあります。このように、防衛産業は一種企業の社会貢献的な面で行われているもので、採算性は非常に低く技術的波及効果も現代では非常に低いものです。撤退したい、という声も少なくはないのですが、国側がお願いしているという立場。こうした一方で生産ライン維持をはじめ企業から持ち出しの部分もあることから、国としては強く出れば撤退されるという難点、海外装備品はリスクが大きく国も無理を利かせることが出来ないというところがあります。

Img_6381 再発防止措置を徹底し、防衛省と企業との情報連携と生産や管理、設計と開発についての協同を進めると行きたいところですが、防衛省から人員を派遣すれば天下りや癒着と誤認されることにもなり、難しいです。ともあれ、水増しを行わなければ事業評価の観点から撤退しなければならない状況があるならば請求に上乗せではなく入札の時点で主張するべきです。ただ、結論付けるにはあまりに情報が不足していますので、もう少し状況を見守ってみましょう。

北大路機関:はるな

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普天間問題田中防衛大臣失言、沖縄初視察時とNHK討論番組における失言

2012-01-28 17:47:43 | 国際・政治

◆首相に軽視される防衛大臣故の帰結

 田中防衛大臣の普天間発言、ホルムズ海峡危機とフォークランド問題、そして米国防費削減の問題を扱った関係で少々遅れましたが、今回少し考えてみましょう。

Img_1345 田中防衛大臣ですが、義父の田中角栄総理が足元をすくわれたのがロッキード事件、ロッキードは最近も不毛地帯がドラマとしてリメイクされたように関心が集まっているところで、ロッキード社製F-35が次期戦闘機に採用されたというロッキード絡みであれば避けたい時期に防衛大臣を引き受けたのはある意味凄いというべきか、と先日気づきました。もしかしたらば、田中家とロッキード事件の一件を忘れていたのか、ロッキード社製F-35の採用を忘れていたのか、それとも全てを包含したうえで防衛大臣を、と考えたのか。

Img_1696 さて、上記の一例を以て素人か勇断者か、ということを結論付けることは難しいのですが、普天間についてです。田中防衛大臣が普天間関連について失言として報じられたのは、失言は主なものは二つ、勘違いひとつ。最たるものが1月23日の新防衛大臣沖縄初視察に際して普天間基地を俯瞰することができる嘉数高台公園から普天間基地を視察した際に基地と隣接する小学校の位置を確認したうえで、”頭上にヘリコプターが下りてくるがそんなに多いわけではないのでしょう”、とした発言したこと。

Img_1146もう一つは1月15日のNHK討論番組において、名護市辺野古における普天間基地代替基地の建設について、年内着工を目指す、とした発言を来ない、これが会場の埋め立てにおいて必要とされる沖縄県の埋め立て認可や地元自治体との調整を蔑ろにしている、とした発言。そしてもう一つは沖縄には毎年旅行に行くとしたうえで沖縄の一部として硫黄島を挙げてしまった点です。硫黄島は鹿児島県奄美諸島かと思いきや沖縄本島隣の伊江島へ家族旅行に行っている、という意味だったようで今違いですが、最初の二つは完全に失言です。

Img_4181 今回の問題ですが、首相が一川防衛大臣の更迭に対して問責決議案が出されるまでの国会での討論や譲歩という面で、問責決議が可決された後での防衛大臣への重用度合の低さを示してしまったことがあります。これは田中防衛大臣就任の際にも記載しましたが、防衛大臣は首相から守られない、軽視されている、という実情から、特に野党自民党は総選挙に与党民主党を追い込み与党自民党を快復することが国益と考えていますので、叩かれる部分は叩かれる、議会制民主主義における日本の避けられぬというところですが、ここが忘れられていました。

Img_4213首相から軽視される防衛大臣という地位だからこそ野党に叩かれやすくなる。やはり一川大臣が問責決議となる前に首相は問責決議を回避するべく譲歩するべきでした。内政的に傷を回避したつもりでしょうが、世界からどう見られるかを忘れており、おしして一時しのぎは帰ってきました、循環するのです。田中大臣の発言は、事実関係や認識の相違、言葉の祖語といった発言の背景もあり、基地と住宅街の距離を比較した場合や、着工を急がなければ普天間が完全に固定化される、現状でもされている、ということはあるのですが、やはり手続きというものは政治において重要なところを占めています。こうしたかたちで、少し長い前置きとなりましたが、田中防衛大臣の発言の個々の部分を見てゆきましょう。

Img_1530まず、飛行頻度についてですが、これは日々と時間帯により違うということは言えます。距離も北大路機関でも過去に記載しましたが、実質問題として普天間基地は確かに住宅街からは近いのですが小牧基地に岐阜基地や入間基地、浜松基地に厚木基地と横田基地など、幾度も当方が足を運んでいる基地と比べれば住宅街や市街地との距離は際立って近いわけではありません、勿論日本一住宅街と基地が離れているのかと問われれば舞鶴航空基地や小松基地に千歳基地と比べれば違ってくるのですがね。

Img_1227 この場合ですが、普天間周辺の住民の方は第一に日本全国における基地の状態を把握しているわけではない、ということ。比較できるのは那覇基地と嘉手納基地くらいでしょう。防衛大臣は普天間の素人、と住民から批判されていましたが、普天間周辺の方が岐阜基地や入間基地の玄人である可能性は非常に低い、ということを認識するべきでした。もちろん、普天間問題には米軍基地だからこそ反対だという意見、軍事に反対というイデオロギー、そして歪な産業構造という問題があるので、このあたりが、配慮を必要とするところなのですが。

Img_4193 名護市の着工については、これは失言ととられる部分を含めて発言したことが大きな問題点でした。民主党の野党時代もこうした部分の失言を突いていたのですがら、発言というものは本当に慎重に行わなければならない、という典型例であると思います。もとは、と言えば一旦自民党が苦難の末沖縄と南西諸島を行脚し踏破して、自治体住民米軍国務省とを調整に調整を重ねた薄氷の上に通した唯一の解決策を前回の総選挙における公約として割ってしまったのが端緒ですけれども、時間は戻せません。伊江島と硫黄島は、これは単なる勘違い。

Img_4232 普天間問題は、慎重に慎重を期さねばなりません、何しろ複雑ですし、世界規模の米軍再編交渉に際して日本側が提示した用件は厚木基地の空母艦載機岩国移転と普天間基地の名護市移設だけだった、それだけ調整に努力を要した問題だったのですが、難しい側面がある。その重責を担う防衛大臣ですが、一川防衛大臣を簡単に切ってしまった野田総理の思慮の浅さが、今回の問題を引き起こしてしまった、ということになります。もちろん、田中大臣も避けるべき発言があるのでしょうが、地位を危うくしている背景に首相は政争で防衛相を護らない、この一点が招いた当然の帰結、こう結論付けるほかありません。

北大路機関:はるな

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アメリカ国防費削減、予算均衡法に基づく緊縮財政により国防費五年間で4900億ドル削減

2012-01-27 23:11:16 | 国際・政治

◆地上軍10万削減、F-35とRQ-4の調達縮小

 パネッタ国防長官により提示されたアメリカ軍の削減計画は、思いのほか我が国にも影響は及ぶところとなるかもしれません。

Img_8722アメリカ公共放送PBSにアシュトンカーター国防副長官が出演し、今回の計画についての説明を行いました。口述筆記ですが、紹介してみましょう。アメリカ軍は兵力や海兵隊を縮小し、次世代の兵器導入を待たなければならない、と26日に国防費の大幅削減を発表しました。今後五年間で4900億ドルの予算削減を議会から求められ、厳しいがこれが現実であるとパネッタ国防長官は発言しました。

Img_02722017年までに陸軍は47万人へ、2010年は57万でした。欧州の二個旅団と海兵隊の縮小、F-35の100機の生産縮小が行われるようで、一方で一部の予算は充実されるとのことレンプシー統幕長は、バランスのとれたもの、としています。 しかし、共和党の大統領選ロムニー候補はこの政策を批判、ギンブリッジ候補も財政問題と国防予算は別の問題であるべき、と発言しています。

Img_1788ただ、予算が削減されなければ来年度に議会において5000億ドルの削減が突きつけられることになるとのことです。 陸軍縮小は、イラクとアフガニスタンでの国内治安安定のための大規模兵力が必要とされましたが、間もなくアフガニスタンでの任務も完了しますし、武装勢力制圧のノウハウは必要になるでしょうが、ローテーション必要となり、今の規模を維持する必要が無くなり、その予算を別のものとする構図ということ。

Img_1977陸軍は緊張と共に増強は可能ですが船舶や航空機、最新装備の更新は時間が必要になります。この部分に選択的に増強するというもの。無人航空機は維持増強したいところであるのだけれども、コストパフォーマンスが悪いことから、別の偵察機、無人機とは能力は劣るものの有効な装備で代替する、というものです。


Img_2014統合攻撃戦闘機、これをカットしたのは全面生産を開始するまでに至っておらず、加えて技術開発を行わなければならない部分が残っているための決定であり、いずれは空軍海軍海兵隊用の三機種をそろえることになりますが、まだその時期ではないということで調達を先延ばし、としました。

Img_2087基地閉鎖、前回の提示された基地閉鎖は先延ばしになっていますが、今回も新しく閉鎖する基地という議論を避けることはできません。過剰な基地はどこなのかということを洗い出したうえで削減を行います。軍事能力よりも無駄の削減が国民に求められており、政治的に難しい問題であるのですが避けられない問題との認識です。

Img_2321給与についての検討は給与機の削減ではなく、昇給率を変えるという観点から削減を考えており、医療保険については大半が退役軍人、若くして退役して民間で働いている軍人の医療保険が再検討されるということで、大統領はこの問題の検討をしていますが、現役の軍人とは関係ありません。


Img_2800この一連の政策は、予算均衡法に基づいて、上院下院で決定した法律に基づいて、巨額の予算を削減し、まだ世界には危険があって、このなかで最適な方策を模索しているというわけです。 上記の通りPBS放送においてアシュトンカーター国防副長官は国防費縮減を設営しました。

Img_2831 アメリカの国防費は同時多発テロ以降増大を続け、特にアフガニスタン戦争とイラク戦争、ともに治安作戦の長期化により戦費も増大し、既に国防費は連邦予算において三割以上四割近くを占めるに至っており、文教公共福祉科学振興景気対策といった様々な分野に深刻な影響が及んでいます。歳出において日本の防衛費は国家予算の5%程度なのですが、アメリカの負担の規模とは比較にならないということがわかるでしょう。

Img_8666 さて、この中で具体的にはF-35戦闘機の開発延期と生産開始の延期、そして導入されるF-35も少なくとも100機が縮小されることとなっており、量産効果の低下などが考えられるところが大きなところでしょうか。また、海軍も弾道ミサイル防衛に対応しない水上戦闘艦や巡洋艦の配備を早期退役を軸に調整するとしています。加えて無人偵察機についても今後はより効率的な航空機に置き換えることが具体的施策として示されました。

Img_8706 戦闘機部隊は54個飛行隊へ削減、輸送機も130機を縮小するとしていますので、全体として10%から15%の縮小、緊急展開能力と特殊部隊の強化、そしてサイバー対処部隊の充実による米軍の圧倒的優位は維持されるとのことではあるのですが、削減された部分は同盟国の協力により置き換える、としているところを考えておくべきでしょう。

Img_8767 特にアメリカが削減しているのだから日本も、という論議に陥りそうであり、例えば米軍が攻撃に対処できず基地機能のうじが難しくなった場合には一時的に沖縄から退去しうる、という発言を、米軍基地海外移転の可能性、と好意的に日本側において解釈する事例と似ているのですが、脅威が増大する中でアメリカが負担できなくなったからと言って、日本もどこかの国によりかかり削減する、ということは非常に難しいといわざるを得ません。

Img_8882 今回の縮減計画では、脅威が存在している地域として米軍の抑止力を維持する地域としてイラン問題の解決が過大である中東地域、そして中国の太平洋進出が顕著な太平洋地域、という二つの地域が挙げられています。従って、上記の通りの日本における即座の防衛力強化が我が国の存立を左右する、という状況ではありませんが、アメリカの能力の補完を超えた防衛計画の大綱は考えねばならない時期なのでしょうか。

Img_8956 しかし、痛いのは無人機の見直しとF-35の件です。無人機の見直しは現在防衛相技術研究本部が高高度滞空型無人機として長時間の哨戒飛行を想定した無人機の開発を進めているのですが技術実証さえも模索段階ですので、短期的には米軍の運用する無人機が必要になります。今回の縮小対象、正確には増強の見直しという範疇に現段階ではとどまっているそうですが、この機体がRQ-4といわれています。自衛隊が導入の検討を行った、とも言われる航空機ですので、生産終了前に導入するのであれば急がねばなりません。

Img_9036 そして、F-35が間に合わないのならばそれこそスペックダウンでもよいのでF-22、ともう考えることもできないのですけれども生産縮小が、米軍におけるF-35のポテンシャルを低めるようなこととなれば納入や評価支援への影響がもっと大きくなってしまうのではないか、流石に中止は無いでしょうけれども不安要素ではあります。

Img_9880 しかし、財政再建、日本だけではなくアメリカにおいても重要な課題となっています。アメリカはTPPにより太平洋地域の経済成長を自国の成長に取り入れるべく制度改革を環太平洋地域に進める、という形を目指しているのですが、果たしてどの程度実現性があるのか、拡大したアメリカの抑止力に依存する日本なのですが、中東地域での日本が必要とする石油確保やアフリカ地域での安定化など、周辺以外の地域の安定にも日本へ及ぼすものはありますので、リスクの共有者として日米間にも考えるべき部分は多くあるといえましょう。

北大路機関:はるな

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米海軍SEALS部隊、ソマリア内陸部で海賊拘束のNGO職員救出作戦を実施

2012-01-26 23:46:51 | 防衛・安全保障

◆救出成功、アメリカは絶対に自国民を見捨てない!

 アメリカ国防総省によれば、米軍特殊線部隊はソマリア国内で海賊に拘束されていたアメリカ人女性を含むNGOの職員二名の救出作戦を実施し、これに成功したと発表しました。

Img_3373 今回の任務はC-130輸送機から海賊の根拠地から数km先に空挺展開したSEAL部隊が急行、海賊側が発砲してきたため即座に反撃し、海賊全員に当たる9名を無力化したとの発表で、拘束されていた二名はともにオランダの難民支援を行うNGOに所属していて地雷処理支援活動にあたっていた32歳のアメリカ人女性と60歳のデンマーク人男性、昨年10月25日にソマリア中部のガルヨにおいて海賊に拘束されていましたが、男性の健康状態が悪化し女性も感染症にかかっているとの情報があり、救出作戦に踏み切ったとされています。

Img_0702 ホワイトハウスのカーニー報道官によれば救出作戦の実施においては、デンマーク政府との綿密な連携があったとのことで、救出作戦実施はオバマ大統領の命令により23日2100時に発動。救出された二名のNGOは、そのままSEAL隊員2名とともに現地へ協同したUH-60多用途ヘリコプターによりソマリアからジブチへ搬送され、ジブチの医療施設において必要な治療を受けたとのことで、健康状態は回復、家族にも無事が電話にて知らされたとのことです。また救出作戦に参加した特殊部隊にも死傷者は出なかったとのこと。

Img_3362SEALは米海軍特殊部隊で、合衆国特殊作戦軍USSOCOMに所属しています。このUSSCOMは陸軍特殊作戦コマンド、海軍特殊戦コマンド、空軍特殊戦コマンド、海兵隊特殊作戦コマンドを統合運用する組織で、50000名以上の規模を誇ります。このなかでSEALは二個海軍特殊作戦群に10のSEALチームが置かれている編成。UH-60とアメリカのABCは報じていましたが、MH-60,もしくはそのステルス仕様機である可能性、C-130もMC-130の可能性があります。また、状況把握にかなりの無人機が参加していたことでしょう。

Img_7693 救出された人質が搬送されたジブチは海上自衛隊が海賊対処派遣部隊のP-3C航空部隊を派遣し、その警備に陸上自衛隊も部隊を常駐させている場所として知られています。今回2名の人質が救出されましたが、ソマリア国内では未だに150名以上の人質がおり、その解放に向けて交渉が進められています。内陸部での拘束となれば、位置の画定が難しく、そしてどうしても越境作戦となってしまうため様々な制約がありますが、米軍は今回作戦を成功させました。

Img_7104 オバマ大統領は一般教書演説の直前に作戦成功の報告を受け、パネッタ国防長官を労っています。ソマリアの海賊、アメリカ海軍は海上自衛隊やEU,また中国海軍やインド海軍ほかの国々とともにソマリア沖において海賊対処任務にあたっています。過去には米海軍が占拠された船舶から海賊を無力化した事例も多々あり、そのほかの派遣部隊も洋上での海賊の無力化任務を実施した事例はありますが、陸上で拘束された人質の救出作戦はあまり聞きません。

Img_6660 海上自衛隊は各国が採る哨戒方式ではなく船団護衛方式を採用しており、海賊の検挙制圧よりは海賊行動の抑止にあたっていいるため、実際の海賊制圧任務はまだ行われた記録がありませんが、護衛だけではなく万一の事態に際しては責任ある行動により、自国民の安全は実力行使を含めて責任を持つという姿勢、日本国民が世界での経済活動や社会的貢献を行う時代であるからこそ取り入れてほしいものですね。海外で活躍する日本人がこの種の事件に巻き込まれるたびに自己責任の声が世論として湧き上がる現状ですから。

北大路機関:はるな

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フォークランド諸島問題、イギリスとアルゼンチン対立再燃、しかし武力紛争は非現実的

2012-01-25 23:40:58 | 国際・政治

◆海上自衛隊と比べてイギリス海軍の減勢は著しい

フォークランド諸島周辺において2010年に油田の可能性が指摘され、これを巡りイギリスとアルゼンチンの関係が急激に悪化しています。

Img_8619イギリスとアルゼンチンの関係悪化、イギリスが増強部隊を派遣し、これは1982年のフォークランド紛争以来の険悪化とも報じられているほどです。しかし、即座に戦争になる可能性は低いと考えています何故ならば、冷戦終結後、イギリス海軍を含めイギリス軍全体は、規模が縮小されている海上自衛隊と比較しても驚くほど規模が縮小されているからです。

Img_7414イギリス海軍は、かつてフォークランド紛争に際してはアルゼンチン軍侵攻に際して即座に空母二隻を含む大艦隊を編成し派遣しましたが、実はもう軽空母は固定翼機を搭載していません、ハリアーは全機除籍されてヘリ空母となっています。3隻が建造されたインヴィンシブル級はイラストリアス一隻が残るのみ。

Img_6903イラストリアスは満載排水量20600t、満載排水量19000tの、ひゅうが型2隻を持つ海上自衛隊の方が既に強力な規模を誇っています。クイーンエリザベス級空母2隻が建造中ですが、大型空母で維持できるかが争点となり二番艦売却や艦載機を搭載しないコマンドー空母化も検討されているとのこと。22DDHを建造する海上自衛隊と比較すると、ううむ。

Img_8761水上戦闘艦は、42型ミサイル駆逐艦が最後の2隻エディンバラとヨークが現役、45型ミサイル駆逐艦が3隻でデアリングにドーントレスそしてダイアモンドが就役、ミサイル駆逐艦が合計5隻、フリゲイトは22型フリゲイトが全艦退役して23型フリゲイトが16隻建造されたうち13隻が現役、即ち水上戦闘艦は僅か18隻となっています。確か昨日、佐世保の護衛艦が16隻とか記載した記憶があるのですが。

Img_8843揚陸艦、海上自衛隊は満載排水量14000tの輸送艦おおすみ型3隻と小型輸送艦2隻が基幹ですが、イギリス海軍は、といいますと、満載排水量21758tオーシャン級ヘリコプター揚陸艦1隻、このほかにドック型揚陸艦に18500tのアルビオン級2隻と16160tベイ級4隻があったのですけれども、アルビオンが予備役となり最新のベイ級は中古売却が開始、5隻となっています。海上自衛隊よりは充実しているのですが、なんといますか。

Img_14162潜水艦、原潜に一本化しているので海上自衛隊と比較はできないのですが、戦略ミサイル原潜ヴァンガード級4隻は搭載するトライデントD5SLBMの将来における更新費用に悩まされ極論では廃止論まで一時期飛び出しました。最新鋭のアスチュート級攻撃型原潜は就役がまだ1隻、トラファルガー級攻撃型原潜が7隻のうち現役が5隻、トマホークの運用能力が付与されたようですが、どうやら不具合もあったようでリビアでは苦労したと報じられました。

Img_6619イギリス空軍は、フォークランドへタイフーン戦闘機の分遣隊を派遣しているのですが、制空戦闘機でトーネードF3全機退役、タイフーンはトランシェ1が50機、トランシェ2が90機と140機配備となっているのですが、トランシェ1の50機について大半をアップデートする予算が捻出できず、近代化改修には実機の八割近い費用が掛かるようなのですが、この関係でなんと早期退役が検討中、F-15Jの近代化改修を行っている航空自衛隊とは大違い。トーネード攻撃機はこちらも削減され現在120機が現役、ジュギュアは全機除籍です。

Img_7021空軍が運用するニムロット対潜哨戒機は改良型の開発が中断され製造中の機体は廃棄され、既存の19機は延命か除籍かで論争があり後者が優位、E-3早期警戒管制機6機が運用され、こちらが虎の子です。C-130輸送機は45機とC-17輸送機が4機、航空自衛隊よりも数は多いのですが、・・・、悲しいかな航空自衛隊は専守防衛、対してイギリスが掲げるのは外征軍で、揚陸艦と合わせ、数は大丈夫なのでしょうか。

Img_6812陸軍は、チャレンジャー2戦車が配備されているのですがなんと戦車全廃論が優勢で、これに代えてアスコッド装甲戦闘車と派生型を3000両調達する案が出ているのですが、中々現実化せずに、しかし戦車は維持が厳しいという話が出ているほど。155mm級榴弾砲の数はAS-90自走榴弾砲となっているものの数は200を切っていて、唯一数が揃っているのはWAH-64戦闘ヘリコプター67機、CH-47輸送ヘリコプター33機、まあ、しかし、これが無くなるともう、というところ。

Img_7364何故これで戦争が起きないのか、・・・、それはアルゼンチン軍も疲弊しているといいますか、かなり磨り減っているからです。ミラージュⅢとミラージュイスラエルコピーのダガーにミラージュⅢの廉価版であるミラージュⅤ全部合わせて約30機、それに懐かしいA-4攻撃機が約30機、それに対ゲリラ用のプカラ軽攻撃機が約30機、フォークランド配備のタイフーン2機といい勝負かもしれません。

Img_9272海軍は、いや海軍もかつての巡洋艦や空母の姿はなくドイツ製MEKO級の駆逐艦が4隻に1000t級フリゲイトが9隻、あとは潜水艦が3隻ほど、もう空母はありませんし、そして何よりもう、揚陸艦が皆無で駆逐艦改造の揚陸指揮艦だけが残っているところ。これでは、戦争にはなりませんよね。

Img_6658こうした理由から、アルゼンチン軍にはフォークランド紛争のような規模の上陸作戦は起き得ませんし、起こせません。イギリス軍も、現在ホルムズ海峡に45型駆逐艦を派遣するだけでも簡単に決断できるものではないでしょう。冷戦後の緊張緩和とイギリスの深刻な財政難、日本の周辺にロシアと朝鮮半島に台湾海峡と南西諸島という緊張を抱えている地域とは比較できないのですが、ここまで削減できるほどに周辺情勢が安泰となっているのはある意味羨ましいです。中国が民主化しアメリカと同盟関係が結ばれ、台湾問題と朝鮮半島問題が解決、そして友好国が緩衝地帯となる環境が日本に生まれれば、それくらいできるのでしょうが、あまり現実味はありません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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新護衛艦あきづき配備は佐世保、あまぎり舞鶴より編入で護衛艦16隻体制

2012-01-24 23:50:02 | 海上自衛隊 催事

◆あきづき就役と南西諸島防衛を強化

 長崎新聞によれば護衛艦あきづき、が3月14日頃に自衛艦旗授与式を迎え、佐世保基地へ配備されるとのことです。

Img_2969 あきづき佐世保配備。23日に第二北大路機関にて長崎新聞から引用記事を紹介していましたが、あきづき佐世保配備となるようです。あきづき型は一番艦あきづき、二番艦てるづき、が進水式を終えて艤装工事中で、一番艦は公試を実施中、まもなく就役するとみられ、その配備先が注目されてきました。

Img_0408 佐世保基地は、第二護衛隊群の護衛艦くらま、以下多数の護衛艦が配備されており、護衛艦の数では横須賀基地とともに日本最大の海上自衛隊護衛艦母港としての地位を担っています。特に南西諸島近海での中国海軍の活発な動きは、護衛艦の哨戒によって事態の悪化を阻止せねばなりません。

Img_1515 新型護衛艦はその能力と共に大型化しており、これは必然的に航続距離などの面で長期間の任務に対応することを意味しています。初代秋月は旧海軍の防空駆逐艦、海上自衛隊では二代目となりますが、先代は護衛艦隊旗艦を務めた一隻、就役後の我が国の防衛に貢献することを最大限期待したいですね。

Img_8811 しかし、あきづき型護衛艦は、はつゆき型あさぎり型、むらさめ型たかなみ型と護衛艦隊のワークホースとして建造されてきた汎用護衛艦ではあるのですが、FCS-3という防空能力に長けた多機能レーダーと戦闘情報処理システムによる高度な防空能力を備えています。

Img_8656 海上自衛隊の護衛艦は、艦隊中枢として対潜戦闘と指揮を担うヘリコプター搭載護衛艦、イージスシステムやターターを搭載し艦隊を航空脅威からミサイルにより防空するミサイル護衛艦、そして対空対潜対水上と突出はしなくともが均衡のとれた汎用護衛艦、沿岸警備用の小型護衛艦に区分できました。

Img_2915 あきづき型は、FCS-3の搭載により限定的な艦隊防空が可能で、これを僚艦防空能力としています。ミサイル護衛艦が搭載するスタンダードSM-2ミサイルは最大射程100km、対して汎用護衛艦が搭載する最も射程の長いミサイルはESSMで射程50~60km、やや古い護衛艦が搭載するのはシースパローで射程15~20kmです。

Img_8359 この高度な防空能力は、イージス艦の護衛に使われる、とされてきました。イージス艦は高度な防空能力を有していますが、日本のイージス艦には北朝鮮や中国の弾道ミサイルから日本を防護するミサイル防衛任務が任されており、高い角度を飛翔する弾道ミサイルを警戒するイージス艦の低空に生じるであろう隙に対処する任務があるためです。

Img_1487 弾道ミサイル防衛能力付与は、イージス艦に対しても射程が1000kmを超えるSM-3を搭載しデータリンクや処理性能を改善する改修を必要としました。これまで、こんごう型護衛艦の4隻すべてに対応すべく改修工事が行われてきましたが、来年度予算からは、あたご型護衛艦への改修も開始、海上自衛隊は近い将来6隻の弾道ミサイル防衛対応艦を運用することになるわけです。

Img_5363 佐世保基地には、イージス艦こんごう、ちょうかい、あしがら、が配備されているのですが舞鶴基地にもイージス艦みょうこう、あたご、が配備されており、北朝鮮の弾道ミサイル配備を考え舞鶴に配備されることもあっていいのかな、と考えていたのですが佐世保配備、となっていました。イージス艦は佐世保に三隻、まあ妥当ともいえるでしょう。

Img_7166 ただ、驚いたのは今月二十日に舞鶴基地から護衛艦あまぎり、が佐世保基地へ転籍していた、と同時に報じられていたということです。あまぎり、海賊対処部隊として舞鶴から派遣される際には見送りに行ったものですが、佐世保へ移ることとなったとは。先代の駆逐艦天霧はのちの大統領ケネディ中尉指揮の魚雷艇を真っ二つにしたことでも知られる一隻です。

Img_5929 舞鶴、昨今は南西諸島への脅威が強調されているようですが、日本海での北朝鮮工作船の問題、先日も北朝鮮からの不審な漂流漁船の事案があり、北朝鮮工作員の接近という問題は根本的に解決されてはいません、南西諸島は長大ですが、同じく日本海の海岸線も長大です。

Img_5449 しかも日本海沿岸は島嶼部ではなく本州、北朝鮮工作船の情報は海上警備行動はじめて発令された以前からその存在については指摘されていましたし、地続きであるので上陸されれば奥深くへ浸透されるということが忘れられているのではないでしょうか。

Img_4134 護衛艦16隻体制による南西諸島防衛強化は、日本にとり必要な命題ではあるのですが、北方のロシア海軍の再生の動きや中国海軍の小笠原諸島とグアムの間での活性化、更に日本海の北朝鮮への警戒の重要性とソマリア沖海賊対処任務に昨今はイランのホルムズ海峡封鎖示唆に対しペルシャ湾海上警備行動の必要性が出てきています。

Img_9004 全てにおいて重要、結果は護衛艦そのものが不足、という言葉は短絡的ととられるやもしれませんが、しかしこれを置いて現状の問題を解決する手段もないように思えてしまいます。あきづき型の就役は海上自衛隊にとり大きな一歩となるでしょうが、併せて、あきづき型は先進的な設計を断念しコスト低減を重視した設計を採用しました。

Img_0401しかしそれでも建造費は大きく、続く中型でコスト重視の新型艦が要求されるといわれながら財政難で実現せず、旧式艦の延命が続いています。海外での任務は増大、北方脅威から西方シフトと呼ばれた時代は十年前の話で現在は北方脅威再建と日本海に東シナ海で三方脅威の時代、この状況下での護衛艦の不足は、なんとかならないものでしょうか。

北大路機関:はるな

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ホルムズ海峡危機 原子力空母エイブラハムリンカーンのペルシャ湾展開、イラン政府は静観

2012-01-23 23:34:40 | 国際・政治

◆イランイラク戦争海峡危機では巡視船派遣を検討

 ロイター通信によれば米海軍の原子力空母エイブラハムリンカーンがホルムズ海峡を通峡しペルシャ湾へ展開したとのことです。

Img_4990 イラン政府は今回の通峡について、平時の米海軍の行動であり派遣の拡大に繋がらない、と発表、米i軍への軍事的挑発などは行われずイラン海軍と米海軍の衝突への懸念はひとまず回避されたようです。万一衝突という事態となれば、海上自衛隊もタンカー護衛へ護衛艦などを派遣する必要性に迫られていたでしょう。

Img_1611 日本ですが、過去にもホルムズ海峡危機がありました、1980年代のイランイラク戦争に際してのタンカー攻撃です。これに対して日本はどう対応したのでしょうか。自衛隊派遣という話は検討に終わりましたが、当時の運輸大臣であった橋本龍太郎氏はタンカー被害に対し、日本の生命線を護るために自ら隷下の海上保安庁巡視船部隊を率いてペルシャ湾へ乗り込む、と発言したほど強い判断を行っています。

Img_1980 今回のホルムズ海峡危機において米海軍の航空母艦への動向が注目されたのは、アメリカによるイラン核開発への経済制裁に対し、ホルムズ海峡封鎖による世界石油流通への打撃を試みたイランの軍事行動実施への試金石が、米原子力空母ジョンCステニスがペルシャ湾でのローテーションを終了しホルムズ海峡からアラビア海に出たのち、後続する空母の通峡を妨害する可能性が示されたところに焦点がありました。

Img_5758 イランはホルムズ海峡の封鎖を示唆し、ミサイル艇や潜水艦もしくは航空機によるタンカー攻撃や機雷敷設とロケット弾攻撃という選択肢を持っていたのですが、米海軍の空母部隊による打撃力は凄まじいの一言に尽き、実施されていればイラン海軍は大きな打撃を受けたことでしょう。

Img_7169 航空母艦の打撃力、具体的には空母艦載機には54機から最大72機の空母航空団が展開し、戦闘攻撃機、電子戦機、早期警戒機を有しています。航空自衛隊で言えば九州の西部航空方面隊が要撃飛行隊三個の約60機基幹ですので、九州が動いているようなもの。その周囲を数隻のイージス駆逐艦が警戒し、前方を原潜が哨戒していますので、余程の海軍力と空軍力が無ければ太刀打ちは考えるだけ無駄です。

Img_7142 さて、しかし散発的な攻撃、もとより米海軍の航空母艦が軍事行動を行えば、その規模は大きいと前述したとおり、結果論としてホルムズ海峡は封鎖されることとなります。無論、イランが封鎖する場合と比べ主導権は米海軍にありますので米海軍の軍事行動が終了するまでの間、ということにはなるのですが影響は少なからずあるといわざるを得ません。

Img_8247 イランイラク戦争当時であれば、海上保安庁の巡視船を派遣する、ということが憲法上行える最大の選択肢だったことは確かです。今では信じがたいことですが、マリアナ諸島における日本漁船大量遭難事件に際しての海上自衛隊マリアナ諸島派遣や災害派遣さえも制約があった時代、そんな時代だったわけです。

Img_6148_1 しかし、1990年代に入り湾岸戦争敷設機雷の掃海任務へ海上自衛隊より掃海艇が派遣され、カンボジアPKOへ陸上自衛隊が派遣されたことを皮切りに自衛隊の海外任務は年々増大、2000年代には国連憲章七章措置PKOへの自衛隊派遣、自衛隊イラク派遣、インド洋対テロ海上阻止行動給油支援が行われ、現在は海賊対処とPKOにより自衛隊は遠くアフリカでの長期的活動を行い、ジブチには航空拠点を創設するに至りました。今ならば、ペルシャ湾でのタンカー護衛を要請された場合、日本関連船舶であれば自衛隊法に基づく海上警備行動を行わなう必要性はあるでしょう。

Img_6321 こうした中で、緊張は一時緩和されたものの、まだ危機は去ってはいません、23日にブリュッセルにおいて行われた欧州連合外相理事会において欧州連合加盟国によるイラン原油の輸入禁止措置を決定しました。決定へは欧州連合加盟国であるギリシャがイランへの依存度が高いことから完全禁輸までに六月末と一定の猶予に当たる時間は盛り込まれましたが。

Img_5547 これによりイランは核開発を停止させたことを世界に納得させない限り、経済危機の危険に曝され、対抗措置としてのホルムズ海峡封鎖を掲げ続けねばならなくなりました、そういう意味では今回の危機は、現段階では空母のペルシャ湾入りという状況が短期間の危機回避でしかないことはを認識するべきでしょう。

Img_9849 一方でもう一つの危険としては、中国とイランの関係です。中国はイラン核開発を批判しつつ、石油輸入は継続させる姿勢を示しています。資源輸入により経済成長を支える中国には、この問題は死活的重要性を有する問題ですが、中国の資源外交は、例えば欧米が人権抑圧国家との資源取引を行わないとしていたスーダンに対し、その石油資源の独占的公益関係を結び批判を集めました。

Img_3528 米中間、今回は視点こそ違いますが、資源外交が対外的に及ぼす影響を軽視した故の米中対立という可能性を残してしまっています。思わぬ方向から我が国へ影響する危険性もあることは認識すべきでしょう。ともあれ、ホルムズ海峡の情勢は予断を許さず、注意深く見守ると共に最悪の状況に陥った場合を想定しての準備が望まれます。

Img_2345 海峡が機雷封鎖されれば、掃海艇派遣が求められるでしょうし先日中東において多国間訓練を行ったばかりです。航空母艦が軍事行動を行うとすれば有志連合へ加わる名目から補給艦派遣を求められるかもしれません。タンカーが危険に曝されればソマリア沖海賊対処任務に加えてペルシャ湾海上警備行動を求める声が海運会社や経団連から求められることでしょう。状況悪化を回避するうえで採りうる選択肢を準備し、同時に影響を最小限化する模索は最大限行われるべきと考えます。

北大路機関:はるな

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再考:防衛大綱、戦車定数削減の事業評価が必要ではないか

2012-01-22 23:09:11 | 北大路機関特別企画

◆価格高騰と代替装備は予算縮減に寄与したか?

戦車について、一個連隊戦闘団に配備される戦車は一個中隊、しかし戦車数削減によりそれも難しくなっているのが今日の実情です。

Img_4927こうした中で、戦車は大規模な戦闘に際しては消耗する、という概念が本来は考えられてしかるべきで、正直なところ、損耗予備という概念を考えるならば、師団戦車大隊や旅団戦車隊以外に何らかの予備を備蓄する必要はあると考えるのですが、防衛計画の大綱において戦車定数が削減されている中、教育所要というような抜け道を探さなければ戦車の確保が難しくなっています。イラク戦争や湾岸戦争戦車戦を見れば優位を保った米英軍の戦車損耗は非常に少なかったのですが、第四次中東戦争などのイスラエル軍の記録を見ますと、戦車は消耗するものなのだ、という話を中隊全滅や大隊再編成、という頻繁な出来事と共に教えてくれました。

Img_5315しかし、防衛計画の大綱が改訂されるたびに、戦車部隊の縮小という措置が採られているのですけれども、正直な疑問があります、戦車定数を大きく削減して、どれだけの予算が節減できたのか、という、即ち事業評価が全く行われていないのではないのか、というお話です。ざっと考えて二つの視点から、戦車は減らしたのだけれども戦車調達費以外の防衛費全体ではたして予算は節減できているのか、という疑問があります。二つとは第一に生産数縮減による量産効果低下での価格高騰、そして第二に戦車を置き換える打撃力確保という予算の必要性、これが忘れられているのではないでしょうか。

Img_4261 神話というべきでしょうか日本の兵器は高い、という話。昔は確かに現実問題として自衛隊装備は量産効果が低いため取得費用は諸外国の大量生産されている戦車と比べ高かったのは事実です。しかし、諸外国が冷戦後軒並み戦車生産規模を縮小していまして、結果各国の戦車は価格が高騰、スペイン軍が導入するレオパルド2A6戦車や韓国の最新鋭K-2戦車は、自衛隊の90式戦車や最新鋭の10式戦車の倍以上の取得費用となってしまています。同じ土俵に立ったわけなのですが、戦車生産は防衛産業の協力により成り立っているわけです。

Img_4770 生産数は低下したとしても生産基盤を維持するために、生産ラインに関係する人件費が戦車生産に懸かるすべての企業から必要となるのですし、生産器具や工場の費用も馬鹿にはなりません、単純な話維持費と人件費を年間50億としましょう、戦車生産数を1両にまで削減したとしても50億円+資材費+加工手数料が必要になります。しかし年間生産数を50両としたらば、一両当たりの生産基盤維持費は1億となる計算です、まあ50億というのは何の根拠もない話なのですがね。無論、資材と加工に費用がかかりますので1両よりも10両の方が費用は掛かりますし、50両の生産であれば全体的に更に掛かるのは言うまでもありません、ですが単価を下げることが出来れば、多くを調達することが出来るということ。

Img_5021 ここで先ほど示した二つのうちのもう一つの視点が意味を持ってきます。戦車は削減、しかし戦車の打撃力を補う装備品、防衛計画の大綱では普通科の重視が挙げられているのですが、普通科部隊の装甲戦闘車大量配備といった施策が行われれば必要な費用は戦車部隊で減った分普通科部隊で増大することになります、航空打撃力として戦闘ヘリコプターや支援戦闘機の増勢が必要となった場合にはさらに費用は起きくなります。この背景は、脅威が増大しているため打撃力が必要であり、その手段が戦車か普通科か航空科か、という視点なのですから当然の結論とはいえるでしょう。

Img_5101 そして費用とは別の視点から、冒頭に記しましたが普通科連隊が戦闘団を組んだ場合は配属される戦車は一個中隊、師団普通科連隊は四個中隊と対戦車中隊もしくは五個中隊編成、戦車中隊は三個小隊編成、戦車は一定の数で運用されるのですが、予備戦車が無かったとすれば戦車の運用に躊躇が生じることはないでしょうか、数両が損傷するだけで戦車中隊の小隊編成は再編しなければなりません、予備戦車が潤沢に供給されなければこれも難しくなります。下手に戦車数を削減したことで生じる抑止力の低下や運用への制約、そして量産効果低減と代替打撃力取得による防衛費全体での影響、これら視点から、果たして戦車を削減した政策、防衛計画の大綱での戦車部隊縮減措置は正しかったのか、事業評価が必要になるのではないか、そう考える次第です。

北大路機関:はるな

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