北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦闘機スクランブル発進、平成23年度は425回で前年比39回増加

2012-04-30 23:51:44 | 防衛・安全保障

◆防衛省、平成23年度緊急発進実施状況を発表

 防衛省は昨年度に当たる平成23年度の航空自衛隊対領空侵犯措置任務緊急発進の実施状況を発表しました。 

Img_9151a 対領空侵犯措置任務は、国籍不明機が全国に配置されている防空監視所のレーダーに確認され、我が国領空へ接近した場合、領空から一定の距離を隔てて設定されている防空識別圏を基点とし、領空侵犯を抑止するために発進命令が全国の航空方円隊より発動、全ての戦闘機基地には五分待機の戦闘機が搭乗員と整備員と共に24時間体制で備えており、全国の基地より戦闘機を緊急発進させ、警告を行う任務です。

Img_9632 緊急発進へは航空自衛隊戦闘機には空対空ミサイルや機関砲弾を搭載し、任務に当たっています。写真は訓練展示における模擬弾ですが、対領空侵犯措置任務には実弾が即応して発射できる態勢をとり任務に当たっています。相手は戦闘機であれば超音速飛行が可能でもあり、文字通り寸秒を争う緊張の連続となるもの。

Img_7836 この緊急発進ですが、平成23年度の実施回数は425回、この回数は22年度386回、21年度299回、20年度237回と急増する傾向にあります。緊急発進のピークは東西冷戦が激しい1984年の944回で毎日数回の平均値で戦闘機が緊急発進を行っていました。これはソ連崩壊の1991年まで800回以上という水準で推移していましたが、冷戦時代終結後には150~200回という水準で推移していたのに対し、ここ数年不気味に上昇し続けています。

Img_8645_1 緊急発進の回数は1968年の小笠原返還と1972年の沖縄返還ののち、1970年代半ばから急激に増加へと転じましたが、それ以前の水準で見ますと300回の水準にあり、米空軍から任務の移管を受け対領空侵犯措置任務を開始した1958年から1975年までの間、400回を超えたのは1967年の一年間のみ、その時が425回でした。

Mimg_2498 最も緊迫しているのは那覇基地。航空自衛隊は、北日本においてロシアに向き合う北部航空方面隊の戦闘機四個飛行隊、首都防空を担いつつ日本海側からの侵攻に備える中部航空方面隊の戦闘機四個飛行隊、朝鮮半島情勢を睨みつつ九州全域の防空を担う西部航空方面隊の戦闘機三個飛行隊、そして沖縄南西諸島を一個飛行隊により防空する南西方面航空混成団が任務に当たっていますが、件数は南西方面航空混成団が最大だったのです。

Img_90_00 回数の概要は、北部航空方面隊158件、中部航空方面隊54件、西部航空方面隊47件、南西方面航空混成団166件。平成20年度までは南西方面航空混成団の緊急発進件数は40回程度で中部航空方面隊と同程度の回数であったのですが、平成21年度から一挙に100件を超え、中部航空方面隊と西部航空方面隊の同数に匹敵もしくは凌駕する規模となり、今年、北部航空方面隊の緊急発進回数を凌駕しました。

Img_8460_1 緊急発進回数における各国の内訳は、ロシア機に対するもの247件、中国機に対するもの156件、台湾機に対するもの5件、北朝鮮機に対するもの0件、その他の国籍機に対するもの17件となっています。最大勢力はロシア機に対する緊急発進ですが、中国機に対する緊急発進は156件。ロシア機の全体に占める規模は例年と同程度ながら中国機による割合は急増傾向と言わざるを得ません。

Img_2631 中国機によるもの156件ですが、19年度では43件、20年度31件、21件38年と推移している一方で22年度には96件と急増、こうした上での23年度の中国機への対領空侵犯措置任務が23年度、初めて百件を凌駕し、一挙に156件と増大したわけです。五年前と比べればどれだけ増大したか、ということがこの数字から読み取れるように思います。

Img_1150 特に重要なのは、南西方面航空混成団には一個飛行隊の戦闘機が配備されているのみであり、一個飛行隊で北部航空方面隊四個飛行隊と並ぶ負担を受けているわけです。これも、我が国の防空体制は主として北方からのロシア機の侵攻に備えたもの、現在の南西方面航空混成団が編成された当時では中国空軍に戦闘行動半径として沖縄まで飛行できる機体が皆無であったことに起因しているということを忘れてはなりません。

Img_8859_1 しかし、他の航空方面隊から引き抜くとしても、ロシア機の多きは中国機とは異なり長距離飛行を行い日本海沿岸に沿って京阪神地区近くまで、太平洋沿岸に沿って京浜地区沖合まで進出する事例があることから、首都防空を二個飛行隊に充てることが必要性もあり、日本海方面は朝鮮半島北部の情勢が悪化した場合には緊張を正面から受ける事となってしまうこともあり、ひき抜くことも難しく、当面は機動運用による抑止力に依存するほかないのでしょう。

Img_2129 西部方面航空隊としても、元々この地域の防空は朝鮮半島情勢の激化を想定して重視したものであり、過去の演習想定は1960年代までは朝鮮半島情勢が激化し、九州地区北部への影響が増大することを対処するという視点であったようです。こうしますと、引き抜ける飛行隊は、日本海の北朝鮮への備えを引き抜くか、首都防空を縮小するか、九州南部の防空を北部に統一して展開させるか、どれも難しい。

Img_0402f なお、沖縄方面への接近ですが、日中間の摩擦となっている先島諸島方面への直接の接近は非常に少なく、九州西方空域から南下し沖縄本島近くで大陸へ反転するという経路となっています。これは先島諸島への最短進路をとった場合、台湾空軍の警戒を買うことが背景にあるのでしょう。言い換えれば先島諸島防衛と台湾海峡の安全はそのまま我が国の防衛にかかわっている重大事案ともいえるかもしれません。

Img_83810_1 唯一楽観的な要素は中国機による航空機の進出は主として情報収集機によるもので、接近も防空識別圏ぎりぎりに飛行させるという己で、件数は増大していますが早期警戒機や超音速爆撃機などを進出させ、日本列島を一周させる長距離飛行を行うロシア軍機と比べ、脅威度合では北部航空方面隊と比べた場合、楽観的な要素があります。もっとも、回数が多いということは機体の稼働数に影響が生じてしまうことは忘れてはならないのですが。

Img_1654 こう考えますと、戦闘機数が充分であるのか、また那覇基地一か所だけという南西方面航空混成団の基地ですが、弾道弾射程外である沖縄本島に必要ではないでしょうか。冷戦構造終結後、緊急発進の回数減少に伴い航空自衛隊の戦闘機定数は縮減を続けてきましたが、現状の戦闘機定数で十分な防空態勢を維持できるのか、というところは一層慎重に検討されるべきでしょう。

北大路機関:はるな

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第14旅団創設6周年・善通寺駐屯地創設62周年記念行事(2012.04.29)速報

2012-04-29 22:49:15 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆本日開催 四国旅団の創設記念行事

 先ほど善通寺から戻りました。善通寺駐屯地と善通寺を巡る四国紀行ですが、本日は駐屯地祭の模様をpowershotG-9写真にて紹介します。

Zimg_0122 四国全域を防衛警備管区とする第14旅団は、第2混成団からの旅団改編を経て本日で創設6周年を迎えました。混成団から旅団への改編を経て、混成団時代の人員2000名は2800名まで拡充され、戦車北転事業により廃止された第2混成団戦車隊など機動打撃部隊の再建も完了したところです。

Zimg_0124 主として第52普通科連隊の創設や第14戦車中隊創設による戦車中隊の再編など一連の旅団改編事業を実施してきた第14旅団ですが、このほど第14施設中隊の第14施設隊格上げと高知駐屯地から徳島駐屯地への移駐が完了、この第三次改編とともに旅団改編を完成させました。

Zimg_0159 式典は旅団長永井昌弘陸将補指揮の下、記念式典は部隊巡閲、指揮官訓示、来賓祝辞、観閲行進と行われ、訓練展示では仮設敵の陣地占領と対戦車地雷による障害を第14施設隊が中心となり梱包爆薬により除去、第14特科隊の猛烈な支援下で第14戦車中隊の74式戦車が敵装甲車を排除、第50普通科連隊軽装甲機動車の攻撃前進を行うという迫力の内容でした。

Zimg_0144 第14旅団は東日本大震災に際し人員1500名からなる大部隊を派遣し、災害派遣任務を支えました。同時に善通寺駐屯地は第2混成団創設以前には第2教育団本部が置かれ、その名残というべきでしょうか第110教育大隊が駐屯しているほか、第2教育団を拡大改編し誕生した中部方面混成団隷下の第47普通科連隊一部中隊なども駐屯している駐屯地です。

Zimg_0176 今回の行事、最大の注目は昨年初公開された最新装備07式機動支援橋で、施設学校と第14施設隊にのみ現在配備されている最新装備です。7従来の81式自走架柱橋では水深や流速に加え河床泥土の状態に運用制限があったことから、橋脚を有しない構造により60mの架橋を迅速に行う装備として開発されました。このほか、いろいろと紹介したいのですが写真は整理中につき、取り急ぎこれら写真を掲載しました。

北大路機関:はるな

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五月連休(ゴールデンウィーク)海上自衛隊基地護衛艦・桟橋一般公開情報

2012-04-28 04:33:30 | 北大路機関 広報
◆佐世保基地・呉基地・舞鶴基地一般公開
 ゴールデンウィーク中の海上自衛隊基地一般公開の日程を集めてみました。こういう時だからこそ一般公開に艇に合わせ、足を運ばれてはどうでしょうか。
Gimg_7414 横須賀基地ですが、一般公開は行われませんものの、横須賀軍港めぐり遊覧船が運航されます。米海軍横須賀施設と海上自衛隊横須賀基地の船越地区から吉倉地区までを廻る遊覧船で、京浜急行汐入駅からショッピングモール方面へ行きますと桟橋と移動販売所が見えてきます。
Gimg_8637 佐世保基地は今週いっぱいの大規模訓練を終え、本日より一般公開が実施されます。火曜日と水曜日は非公開なのでご注意ください。本日28日護衛艦あさゆき一般公開、29日護衛艦ありあけ一般公開、30日護衛艦あまぎり一般公開という発表です。
Gimg_9298_1 5月は3日護衛艦ありあけ一般公開、4日護衛艦あまぎり一般公開、5日護衛艦ありあけ一般公開、6日護衛艦あまぎり一般公開とのこと。佐世保基地の一般公開は倉島桟橋で、米海軍の立神桟橋ではありません。佐世保駅からは方向が逆なので注意が必要でしょう。
Gimg_9264_1 午前と午後に一般公開時間が設定されていまして、午前は1000から1200で受け付け終了は1130、午後は1300から1530で受け付け終了は1500まで、倉島桟橋は佐世保駅から徒歩10分、門で手続きを行って桟橋へ向かいます。
Gimg_5290 呉基地は29日から5月6日まで連続で一般公開されます。4月29日護衛艦いなづま、4月30日護衛艦とね、5月1日掃海母艦ぶんご、5月2日訓練支援艦くろべ、5月3日護衛艦いなづま、5月4日護衛艦さざなみ、5月5日護衛艦さざなみ、5月6日掃海母艦ぶんご一般公開という予定が発表されています。
Gimg_9182 呉基地一般公開は、呉駅を出発し地方総監部前からかなり進んだ係船堀桟橋で行われます。一般公開の時間は1000から1100時と1300から1400字に1500から1600時の一日三回、門で手続きを行って桟橋に向かいます。桟橋から公開艦へ、という方式です。
Gimg_8992 ただ、30日の護衛艦とね一般公開は、アレイからすこじまから見える桟橋地区で一般公開されるのでご注意ください。呉と舞鶴は遊覧船が運航される日があります。呉は大和ミュージアムに遊覧船運行情報が出されますので、こちらも合わせてごらんになった方がいいかもしれません。
Gimg_1976 舞鶴基地北吸桟橋一般公開、毎週土曜日と日曜日及び祝日の0900から1500までが一般公開日となっているのですが、4月の予定を見ますと28日と29日は公開日となっていませんでした。四月は30日は桟橋からの見学が可能、五月は1日火曜日が護衛艦一般公開、水曜日は非公開で3日木曜日と4日金曜日に5日土曜日が一般公開日となっています。
Gimg_6372 舞鶴基地海軍記念館は4月28日から5月6日まで連日一般公開が出来るようです。舞鶴航空基地は一般公開時間が1400時から1500時までと短いのですが、28日土曜日と29日日曜日、30日月曜日に一般公開、五月は3日木曜日、4日金曜日、5日土曜日、6日日曜日に一般公開となっていました。このほか、市役所裏から遊覧船が運航されます。
北大路機関:はるな

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平成二十四年度四月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.04.28・29&05.05)

2012-04-27 23:39:38 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 さて皆さん、休暇の予定はお立ちかな?、と北北西に進路をとれ予告編的な出だしですが今週末からGWです。

Gimg_2836 岩国フレンドシップデイ2012、昨年は東日本大震災の関係で中止となった岩国で行われる来場者日本最大のエアショーが今年も5月5日に行われます。海兵航空団、海軍空母航空団、海上自衛隊、航空自衛隊が限界線の展示飛行を実施。来場自由ですが、ぴあ販売の観覧席チケット2000円を購入しますと最前列のスタンド席から迫力の展示を見ることが出来ます。販売は5月3日まで、お急ぎを。

Gimg_7788 明日土曜日はアメリカ海軍厚木飛行場スプリングフェスティバル。飛行展示こそ行われませんが、写真のEA-6に代えてEA-18Gが配備され、初の一般公開。今年は東日本大震災災害派遣展示としてなんとあのCH-46が展示飛行を行うようです。ご注意ですが、入場には本籍地記載運転免許証か旅券もしくは住基ネットカードが絶対必要、これが無いとは入れません。お忘れなく。

Gimg_5851 第14旅団創設6周年記念行事善通寺駐屯地祭。日曜日に行われる今週末最大の自衛隊行事は、この旅団創設記念行事でしょう。四国全域を防衛警備管区にもつ第14旅団は、今日では南紀愛トラフ地震を真正面から突き付けられる四国全県を受け持つ最重要旅団、第14施設中隊の第14施設隊への拡大改編も完了、恐るべき脅威へ立ち向かう旅団の創設記念行事です。

Gimg_2232 和歌山駐屯地創設記念行事、土曜日に行われます。水際障害中隊が駐屯する日本で最も小さな駐屯地の一つですが、水陸両用の94式水際地雷敷設車を装備し、恐らく南海トラフ地震においては津波被害からの初動に最大の活躍を行うこととなるでしょうが、駐屯地が沿岸にあり迅速な退避と災害派遣への転換が和歌山県沿岸部の命運を握ります。土曜日行事なので、これを見て南海フェリーで四国に渡り善通寺、とかやってみるのもいいやも。市街パレードが行われ、94式の巨体を見上げることも興味深いところ。

Gimg_9821 高射学校創設記念、下志津駐屯地祭。千葉県四街道市の高射学校は陸上自衛隊高射特科職種の幹部教育と戦術研究に新装備試験の中枢、87式自走高射間砲や03式中距離地対空誘導弾などの観閲行進と訓練展示模擬戦の展示が注目です。高射教導隊に最新の11式短距離地対空誘導弾が配備されていれば、こちらは今週末注目の最新装備というところでしょうか。

Gimg_9155 多賀城駐屯地創設58周年記念行事。多賀城第22普通科連隊は、東日本大震災において駐屯地が津波被害を受け、駐屯地へ向かう隊員も家族も被害を受け満身創痍となりながら郷土連隊の誇りを原動力として大震災被害の初動を担った、恐らく現在日本で最も磨き上げられた精強部隊の一つです。今年は訓練展示模擬戦を実施するとのことで、巨大地震を前に引くことなく戦い抜いた部隊行事となるのでしょう。

Gimg_8707 信太山駐屯地創設55周年記念行事。阪神大震災において激甚被害地域の増援に当たり最大の被災者救助に寄与したのが第37普通科連隊で、初動を担った管区連隊である伊丹36連隊の情報収集に基づき信太山37連隊が対応した、部隊の統一支援加入に関する理想形を具現しました。同時に大阪府唯一の普通科連隊でもあり、南海トラフ地震では初動に当たります。もうかなり前の話題ではありますが未だ特撮ファンに熱く支持されているガメラⅢでも劇中で活躍し有名な部隊ですね。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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次期輸送機XC-2開発完了は平成26年度,構造補強措置につき開発期間一年延長を決定

2012-04-26 20:02:01 | 先端軍事テクノロジー

◆美保基地部隊配備計画は変更なし

 防衛省が4月25日に発表したところによれば、開発中の次期輸送機XC-2の開発期間を一年間延長したとのことです。

Cimg_6687_1 開発期間延長は現在までに二機が制作され、試験飛行が行われている試作機により、構造上補強が必要な部位が確認され、量産機の製造を前に設計変更などの必要な措置を行う観点から、一年間の延長を行うことになった、という形です。これにより、開発計画の完了は平成26年度になるとのこと。

Cimg_6608_1 XC-2は、航空自衛隊の主力輸送機C-1が開発から四十年を経て、我が国の防衛政策が専守防衛から国際貢献への転換を受け、高い運動性を誇るC-1輸送機も輸送能力、特に搭載量と航続距離の面で能力不十分が認識され、搭載量と航続距離を大きく延伸する新輸送機として国産開発されました。

Cimg_5389 C-2輸送機、新しい輸送機は平成26年末に美保基地へ配備され、C-1輸送機を置きかえることとなっていますが、今回の補強と設計変更措置による量産機納入は一応想定された範囲内となるようで、年度末までには納入は行えるというのが現在の防衛省の発表となっていいます。

Cimg_5381 C-2は少なくとも2050年代までは航空自衛隊の主力輸送機となる機体ですので、試作機は、側面部部などに顕著な補強材追加が見て取れ、この部分だけでもこれだけあらわれているのですから開発期間の一年延期を要しても、他の部分などの補強を含め実任務に十分耐える機体として完成することが望まれるでしょう。

北大路機関:はるな

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海の護り60年 海上自衛隊創設60周年記念式典 明日横須賀基地にて実施

2012-04-25 23:07:02 | 海上自衛隊 催事

◆1952年4月26日横須賀田浦に海上警備隊発足

 海の護り60年。海上自衛隊は明日、創設60周年を迎えることとなり、横須賀基地において記念式典が行われます。

Img_4990 海上自衛隊創設60周年記念行事は、横須賀基地第2術科学校において1000時から1350時まで行われます。執行者は海上幕僚長、部内行事との形で一般非公開行事として行われ、横須賀地方隊HPには掲載されていませんでした。一般公開行事としては秋の自衛隊記念日行事として観艦式が行われることになっています。

Img_6660 式典は、国歌斉唱、黙とう、式辞及び来賓祝辞が行われ、付帯行事として記念撮影、記念植樹式と意見交換会が行われます。海上自衛隊創設50周年記念行事では東京湾において国際観艦式が挙行されましたが、60周年記念行事はこうした規模の行事となっていました。

Img_6612 式典が執り行われる第二術科学校は旧帝国海軍水雷学校跡地、海上自衛隊の前身である海上警備隊は水雷学校跡地において1952年4月26日に発足しています。第2術科学校は、横須賀サマーフェスタにおいて施設が一般公開されることがあり、今年夏の一般公開も期待したいところです。

Img_659_2 草創期の海上自衛隊は、かつて空母機動部隊を太平洋狭しと展開し、巨大戦艦群を決戦兵力としつつ潜水艦駆逐艦による苛烈な海上戦を展開、海軍航空隊も戦闘機を駆使し攻撃と防空に活躍、陸上攻撃機による長距離攻撃など大きな成果を挙げつつ圧潰した帝国海軍の伝統のみを引き継ぎ、米軍供与の小型艦と旧海軍の特務艇などにより誕生しました。

Img_5987 しかし、新生日本の独立と繁栄へ、シーレーン防衛と本土防衛に重点を置く編成をめざし、着実に艦艇と航空機を整備し、それら装備の能力を最大限に引き出すべく要員の養成と戦術の研磨を続け、海洋国家として海を国境とし海洋を通商路とする日本の基盤を維持し続けてきたわけです。

Img_4277 1950年代にはじまった手さぐりまたは遮二無二というべき着実な能力の整備と教育訓練の研鑽は、供与艦と供与航空機を基盤に、日本海軍が欠いていた部分を徹底して組織変革を果たし、如何に進むべきか、いかなる装備を有するべきかを検討と研究に明け暮れました。

Img_7364 特に極東地域は核戦争に直面しうる朝鮮半島、そして脆弱な環太平洋地域の当時対立の防壁を前に、北方からの直接的軍事圧力、西方への間接的軍事圧力を抱えることとなり、第二次世界大戦において必死を以て避けた本土決戦の災厄を如何に防ぐか、現在では想像できぬほどの努力が払われていたこと、想像に難くありません。

Img_6658 1960年代には国産艦が数的充実を果たし、対潜戦闘部隊の基盤を陸上と洋上に復興させ、併せて米海軍からの最新装備の供与と国内での技術開発を併せることで日本の防衛を達成するうえでの戦略戦術の基盤を構築するに至りました。水上戦闘艦は一部がようやく旧海軍の大型駆逐艦の域を超えたのもこのころです。

Img_2183 また、ターターミサイルや無人機ではありましたがヘリコプターの艦上運用の模索が行われ、巨大な北方からの脅威を太平洋の防壁として支えるには決して十分な予算も人員も、一部には理解さえも得られない中で、文字通り懸命な努力が積み重ねられたのもこのころに他なりません。

Img_2910 1970年代には、躍進が待っていました。はるな型、しらね型。我が国固有のヘリコプター搭載護衛艦による大型対潜機の集中運用体系を構築、海上航空部隊の再建が始まると共に併せてミサイル護衛艦の量産が開始され、沿岸基盤の部隊編制は再び遠く大洋を任務地とするシーレーン防衛の延伸基盤が構築されてゆきます。

Img_7054s 艦隊航空艦隊防空に重ね、併せて潜水艦勢力の近代化が進みかつて攻撃の長槍としての任務は極東地域の自由主義陣営勢力圏への防壁として海峡監視にあたる装備となり、沖縄返還と共に快復した日本列島の防備に能力を最大限発揮したことも忘れてはならないでしょう。

Img_7232 1980年代には、ミサイル時代、情報通信能力の向上と共に海上自衛隊の能力は一挙に飛躍を果たしました。これは今日に至る汎用護衛艦体系の源流となる護衛艦はつゆき型量産開始、ハープーンミサイルの実用化が行われ、世界的にも高い能力を有する大型水上戦闘艦が一挙に中枢部隊を構成するに至りました。

Img_7672 もう一つ、1980年代はP-3C哨戒機の装備開始となったもので、情報収集と情報集約とともにデータリンクという概念を一挙に普及させた高性能哨戒機は二機で護衛艦一隻分に匹敵する高価な装備でしたが一挙に数十機を揃え、遠く百機体制を構築、1980年代には海上自衛隊の能力は世界に大きく貢献されるものとなった訳です。

Img_84451 1990年代、画期的艦隊防空能力を有するイージス艦の量産開始とともに八八艦隊完成。東西冷戦が終結しロングピースと表現された緊張下の平和から緊張緩和下の騒乱へ世界が転換する中、護衛艦八隻航空機八機を基幹とする護衛隊群四個の編成という大事業が遂に完成するに至ります。四個護衛隊群体制が確立してより二十年、積年の願いは結実をみたのです。

Img_6672 そして1990年代は平和下の騒乱という激動を背景に、国際貢献の時代へ、我が国は専守防衛列島要塞という概念から、積極的に世界への貢献をめざし、世界の安定を以て我が国の安寧を得るという新しい安全保障観に基づき、防衛政策の転換が行われたということも忘れてはなりません。

Img_9945 2000年代は、新しい国際秩序模索と共にインド洋海上阻止行動給油支援、イラク派遣支援、ソマリア沖海賊対処任務と、海上自衛隊の任務範囲は遠くインド洋アラビア海へと広がり、旧海軍が為し得なかった規模での海上護衛戦を展開、2000年代は海上自衛隊の活動範囲が抜本的に拡大した時期でもあります。

Img_6908 同時に2000年代は1990年代末期の北朝鮮ミサイル危機を契機に世界有数の弾道ミサイル防備網を構築するに至り、加えて中国原潜対処海上警備行動など日本海沿岸と南西諸島への防衛が冷戦時代来の規模で切迫していることを痛感させ、その整備へと転換した時代でもありました。

Img_7195 2010年代。海上自衛隊に撮りこの新しい時代は、2000年代から整備が開始された全通飛行甲板護衛艦が護衛艦ひゅうが、いせ、二隻体制となり、22DDHの建造と共に数年以内に全通飛行甲板護衛艦は四隻体制となり、航空機の能力により多くの能力を発揮できる全通飛行甲板型護衛艦四隻によるパワープロジェクションの時代となることが考えられます。

Timg_9394 そして日本史に刻まれた東日本大震災。我が国は、外敵への備えと共に内憂として巨大地震への備え、そして大震災の災厄を転機とした我が国の産業社会構造の転換による海上交通路への依存度の増大にも直面することとなり、海上自衛隊の任務にもより高いものが求められています。

Img_7569 これに加え、南西諸島に突き付けられた周辺国の軍事的圧力。冷戦終結後の国際秩序は緊張下の平和から緊張緩和下での騒乱へと発展しましたが、再度転換し緊張下での騒乱へと変化しつつあり、極東地域においては大国間の軍事的軋轢が既に冷戦時代に並ぶ規模で展開しているのは、多くの報道から片鱗を読み解くことが出来るでしょう。

Img_7051 こうした脅威へは隣国が航空母艦を以て脅威を及ぼす可能性があり、護衛空母、原子力航空巡洋艦、ヘリコプター巡洋艦、巡洋艦隊、全通飛行甲板巡洋艦、VTOL機搭載護衛艦と検討が進められた抑止力としての大型護衛艦について、今後より現実的に検討されることもあるやもしれません。

Img_8663 我が国は不透明な時代、見知らぬ明日に向けて歩み続けていますが、こうした中、アフリカ沖任務、南西諸島防衛、巨大地震対処と新しい任務への期待を背負いつつ、明日海上自衛隊は創設60周年を迎え、海の護り60年を達成しつつ次の時代へ船出することとなります。

北大路機関:はるな

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ソマリア沖海賊対処任務 第12次派遣水上部隊いかづち・さわぎり、来月アデン湾派遣決定

2012-04-24 23:53:45 | 防衛・安全保障

◆現在第11次派遣隊むらさめ・はるさめ任務中

 防衛省によればソマリア沖海賊対処任務へ第12次派遣海賊対処水上部隊が編成され派遣されるとのこと。

Aimg_2235 第12次派遣海賊対処水上部隊は、横須賀の第1護衛隊群第5護衛隊より編成され、護衛艦いかづち、が横須賀基地より護衛艦さわぎり、が佐世保基地より派遣、二隻を以て部隊を編成すると発表されました。出港予定は5月11日に護衛艦いかづち横須賀基地出港、5月12日に護衛艦さわぎり佐世保基地出港とされ、洋上で合流しアデン湾を目指すことになります。

Aimg_0930_1 指揮官と派遣規模は第5護衛隊司令山崎浩一1佐と司令部要員30名、いかづち艦長鈴木雅博2佐以下乗員180名。さわぎり艦長西澤俊樹2佐以下乗員190名の海上自衛官400名で、任務はこれまでと同じ船団護衛による海賊被害の事前防止。これに加えて海上保安官8名が乗艦し、海賊逮捕時の対応に備えます。

Aimg_7414 現在アデン湾では、護衛艦むらさめ、護衛艦はるさめ、二隻で編成される第11次派遣海賊対処水上部隊がアデン湾における船団護衛任務に就いており、ソマリア沖において第11次派遣部隊と第12次派遣部隊は任務引継ぎを行う予定です。これまでのところ海上自衛隊派遣以来進められている船団護衛任務では、護衛対象船舶への海賊被害は皆無、海賊被害を抑止するという任務は完全に果たせているといえるでしょう。

Aimg_1245 他方、先日来お伝えしている通り我が国周辺海域では中国海軍ロシア海軍合同の過去最大規模の海軍合同演習が実施中で、海上自衛隊もその圧力に対応するべく太平洋に広く訓練を実施中です。現在も海上自衛隊の水上戦闘艦部隊規模は世界的に見て非常に大きな勢力を持していますが、海賊対処任務へ遠くアフリカ沖に向け一個護衛隊から二隻を抽出するということは、その分南西諸島に張り付けられるであろう数隻分を抽出していることでもあり、決して容易なことではありません。

Aimg_9096 海上自衛隊は継続的に常時2隻の護衛艦を展開させ、加えてP-3C哨戒機2~3機をジブチ航空拠点へ展開、洋上哨戒任務に充てています。アデン湾は欧州と日本を結ぶ重要地域であり、近傍にはペルシャ湾の産油地帯からの、原子力発電所停止での電力不足に苦しむ我が国には不可欠のシーレーンが通るため、この地域に海上自衛隊のポテンシャルを堅持することは非常に重要ですが、人員と艦艇が年々削られ、更新が難しい現状では同時に負担も大きいものであること、忘れてはならないことも確かです。

北大路機関:はるな

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中国・ロシア、黄海で過去最大規模の海軍合同演習開始 水上戦闘艦23隻・潜水艦2隻参加

2012-04-23 22:24:56 | 防衛・安全保障

◆日米牽制目指すも海上自衛隊は32隻が実弾訓練

 日経新聞や中日新聞などの報道によれば、中国海軍はロシア海軍と合同で中国山東省青島沖の黄海において合同演習を開始したとのこと。

Cimg_6859 海上自衛隊は現在、沖縄近海と九州周辺海域、紀伊水道と小笠原諸島において大規模な実弾訓練を実施しており、これは一般公開予定の発表時期から考えた場合昨年度から実施が計画されていた訓練になるのですが、同時に中国海軍とロシア海軍の演習も黄海において実施されているようです。

Cimg_7048 新華社通信によれば中露合同演習としては過去最大規模とのことで、中国海軍艦隊とロシア艦隊の写真が無く護衛艦の写真を掲載しますが、中露合同演習は実施期間が発表では22日から27日までとされ、演習の参加規模について中国海軍からは水上戦闘艦16隻と潜水艦2隻、ロシア海軍からは水上戦闘艦など7隻が参加しているとのことです。

Img_6918_1 海上自衛隊は、沖縄周辺海域で18日から28日までの期間に沖縄本島から大東島にかけての三海域で11隻が、24日から25日にかけ下関及び五島列島沖など九州北部海域で6隻が、17日から24日にかけ四国を挟む豊後水道と紀伊水道では7隻が、17日と24日に野島崎沖に5隻と6隻が、今月と来月いっぱいに硫黄島周辺で8隻が訓練中とのこと。

Iimg_0834 最盛期の24日で海上自衛隊実弾訓練実施の情報では、沖縄周辺11隻が遊弋し、そのほかの訓練が下関沖3隻、豊後水道4隻、五島列島沖2隻、野島崎沖5隻、硫黄島沖8隻。訓練期間が長い硫黄島での実施規模に左右されますが24日には最大32隻程度の護衛艦が訓練に当たっている計算になります。

Cimg_5352 報道では中国海軍については中国版イージス艦とされる水上戦闘艦を参加させているとのことで、旅洋Ⅱ型ミサイル駆逐艦所謂蘭州級が参加しているようです。ロシア海軍からはミサイル巡洋艦が参加しているとされ、これは18日0500時、対馬海峡を警戒中の護衛艦はるゆき、が確認した艦隊が参加しているのでしょう。

Cimg_7752 海上自衛隊が確認した艦隊はスラヴァ級ミサイル巡洋艦1隻、ウダロイⅠ型対潜駆逐艦2隻、ゴーリン級航洋曳船1隻の4隻で、上対馬北東130kmを航行、対馬海峡を南下したとのこと。ロシア側から参加している艦船には曳船などの支援船も含まれている可能性があります。後述する補給訓練から、補給艦の参加も含まれている可能性も高いところ。

Cimg_6869 中国国営新華社通信からの引用として報じられているところでは中露合同演習では、艦隊防空訓練、海上補給訓練、対潜戦闘訓練が行われているほか、特殊部隊による訓練も実施されているとされ、スラヴァ級ミサイル巡洋艦と旅洋Ⅱ型ミサイル駆逐艦の水上戦闘を念頭に置いた合同演習は初めてかもしれません。

Cimg_7113 日経新聞では今回の中ロ演習に対し、中ロ関係は極東における朝鮮半島問題とでけん制し合っている関係にあるがアメリカの太平洋戦略への中国の牽制と、ロシア海軍の極東地域での存在感を高める意向の合致による利害一致があるのではないか、と分析をしました。しかし、海上自衛隊が一国でこれを上回る規模での実弾訓練を太平洋において実施している状況では逆に牽制されているというもの。

Cimg_2914 今回の自衛隊による訓練ですが、勿論中ロ訓練との関係は事前通知があるものですのでこれに対する対応も皆無ではないでしょうが、海上自衛隊は2008年の護衛艦隊改編後、特にこの艦隊改編が護衛隊を母港に捉われず稼働艦と練度艦の均衡を図り実施されたものでしたが、続く護衛艦隊改編が関係あると考えます。

Cimg_6637 護衛艦隊護衛隊群の護衛隊、各艦の母港が異なる実情が運用へ支障を来すことが第一線より指摘されているため、護衛隊毎の母港共通化を進めており、先日の護衛艦あまぎり移籍などもその一環とされているのですが、移籍後の訓練という視点があることも忘れてはなりません。

Img_1359 中国海軍の伸長は近年続く新型艦の量産など高いものがあり、ロシア海軍も水上戦闘艦など海軍のソ連崩壊後以来の経済難脱却と共に近代化再開となっていますが、現状では艦艇の稼働率は海上自衛隊と比較した場合、比較的低い水準にあります。これは海軍の運用体系に起因するものとお考えください。

Img_8811 海上自衛隊の護衛艦は6隻を除き満載排水量4000t以上の大型水上戦闘艦で、今回、中ロ演習規模を上回る規模の演習を一国で行ったことにより、実質的に我が国をけん制する、という目的は達することが出来ていません。また同時に、ソマリア沖海賊対処任務や外洋練習航海と同時にこれだけの艦艇を稼働させている海上自衛隊の能力について、今回の中ロ演習と共に記憶する必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

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巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える① 高機動車水陸両用型開発の必要性

2012-04-22 21:28:25 | 防災・災害派遣
◆広く薄く配備し、津波被害へ備える
南海トラフ地震の津波被害、想定が中央防災会議によりより大規模なものが生じると見直されました。
Img_0879 新しい巨大地震被害想定。想定が為された以上想定外という文言は今後禁句であり、津波被害に際し自衛隊は航空機と艦船、架橋装備を持って東日本大震災へ臨みましたが、離島防衛をも包含し、本格的な水陸両用車両を装備し、津波被害へ迅速に対応する必要性は切迫しています。この点で、高機動車の水陸両用型、というべき車両の必要性が、高まっているといえるでしょう。 震災一か月前に78式雪上車後継に通年運用可能なBV206J-02が最適という記事を掲載しましたが、あれも水陸両用、しかし両用戦に使えるかとなれば別問題になります。
Img_4136 アメリカ海軍対地戦センターがhigh speed
amphibian:HSAとしてイギリスのギブステクノロジー社が2007年に水陸両用スポーツカーを試作し、この車両を原型に人員輸送能力を付与した車両開発を要求したことがありましたが、高機動車を原型とした水陸両用車両があれば、災害派遣に際して大きな能力を発揮するかもしれません。
Img_0408 HSAは、高機動両用車と訳すべき車両で、人員三名程度か乗員と重量500ポンド貨物を搭載する小型車両とともに、その大型車両として16名輸送用の車両を構想していました。非常に特徴的な車体構造を有しており船型車体を有しており車輪により陸上を機動するのですが、車輪はこれまで水陸両用車両の大きな抵抗として高速航行を不可能とする要因となっていました。
Img_1430 この問題に対して、HSAでは車輪部分を地上走行から水上に進入した時点で水平として、水面から車輪を離す構造を採用しています。この特殊な方式により陸上最高速度160km/h、水上最高速度は48km/hと非常に高い機動性を有していることが特筆するべきで、この速度であれば日本でも道路交通法に基づき高速道路での走行が可能となります。
Img_33_68 特筆すべきもう一つの点は海上での運用が可能、というところです。陸上自衛隊では水陸両用車両として浮航能力を有する73式装甲車が配備されていますが、73式装甲車は基本として浮くことが出来る装甲車で、障害突破能力に超堤能力や超壕能力に加え地形障害としての河川を突破できる、というもので、波浪が大きい海上での運用は不可能です。湖沼地帯や河川で観光用に用いられている水陸両用車についても同様の欠点があることは忘れてはなりません。
Img_482_1 94式水際地雷敷設車は、海岸線付近に水際地雷、実質的には小型の機雷ですが敷設するという関係上会場に進出する必要性があるので、車体形状が完全に凌波特性を考慮した形状となっています。このように海上に進出するためには相応の形状が必要となるのですが、HSAについては、この会場での運用を前提とした形状となっているのが大きく評価されるべきところ。
Img_1732 しかし、この機構からご理解いただけるように高機動車とは根本的に車体構造が異なり、運用コンセプト以外は完全に設計する必要があり、高機動車を生産するトヨタ自動車にて生産が可能であるのかも未知数です。国産開発が難しければ、HSAの試作車両、3名乗車型と車体規模が共通する73式小型トラック、1t半のような連絡や斥候任務に用いる車両として取得する方法が考えられるでしょう。
Img_0777水陸両用部隊として多数を専門部隊に集中配備するのではなく、積雪地に後半に配備されている78式雪上車のように、全国の部隊に、部隊の本部管理中隊や本部などに、2両から4両程度を駐屯地に広く配備し、災害時には特に津波災害と水害に際し、情報収集と迅速な軽輸送任務、救難救助任務に充てることが期待されます。軽装甲機動車のように装甲は欲しいところです、BV206J-02のように装軌式でなければ上陸できる海岸が不整地突破能力の観点から制限されるところですが、頑張りすぎるとヘリコプターと同等の費用を要することで開発中止となったアメリカの海兵遠征戦闘車EFVと同じ轍を踏んでしまうので要注意です。
Img_6245 勿論、問題点はあります。特にウォータージェット推進、スクリュー推進方式共に、今回の東日本大震災では漂流物が大きな障害となっていました。小型のホバークラフトか観測ヘリコプターの多用が望ましいのですが、ホバークラフトは完全に専用装備となってしまいますし、陸上での長距離移動は不可能、ヘリコプターについては多数を後半に配備するということ現実的ではありません。
Img_0936i 技術的に津波障害物を超えての運用が可能な推進能力を付与しなければ、実用性には問題が出てしまうのですが、その反面、94式水際地雷敷設車は東日本大震災において任務に当たっています。津波漂流物の凝集などをさらに研究し、水陸両用車の運用と津波障害物の影響については、このあたり、もう少し研究を進めるべきともいえるところ。
Img_2529 他方、実のところ最大の問題は日本において水陸両用車両が普及しない最大の理由として、船舶と陸上車両の法律上の区分です。近年、大阪でも水陸両用バスなど観光用に陸上と水上を往復する車両の運用が行われていますが、自衛隊車両として運用する以上は、法律上の区分が欲しいところで、こうした視点を踏まえたうえで、次の地震による津波災害が現実となる前に、装備化を望みたいところです。
北大路機関:はるな

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佐世保基地在籍艦艇、現在全艦が出港!沖縄近海・九州近海で17隻が実弾訓練

2012-04-21 23:55:40 | 防衛・安全保障

◆今週末の佐世保基地一般公開は中止

 現在沖縄近海では自衛艦11隻、九州周辺で6隻が訓練中です。自衛隊関連行事で記載するべきでしたが、本日と明日の佐世保基地週末一般公開は中止となっています。

Simg_1366 佐世保地方隊HP艦艇一般公開情報では、14日土曜日に多用途支援艦あまくさ、15日日曜日に護衛艦あさゆき一般公開、と明示されているのですが本日21日土曜日は”佐世保在籍艦艇不在のため中止”、22日日曜日も”佐世保在籍艦艇不在のため中止”と明示されていました。

Simg_0057 この一般公開情報は4月1日に発表されているのですが、この時期と18日から28日まで、11隻の艦艇が参加し沖縄近海において実施される実弾射撃訓練の期間が重なることから、佐世保基地在籍艦艇全てが出港、というのはこの訓練に参加していることが考えられます。

Img_3350 沖縄近海での訓練には11隻の自衛艦が訓練中で、九州周辺の五島列島周辺海域と下関沖で6隻の自衛艦が訓練中。佐世保基地の在籍護衛艦は、あきづき就役で16隻体制となっていますので、他の管区からの護衛艦も参加、もしくは九州周辺から沖縄へ展開している護衛艦もあると考えられるのですが、自衛艦17隻が同時訓練、日常的な演習としては規模が大きい区分にはいるようですね。

北大路機関:はるな

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