北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

中部方面隊、平成25年度連隊等協同転地演習へ第10師団より北部方面隊管区に展開

2013-06-30 23:17:56 | 防衛・安全保障

◆人員2300名・戦車28両含む車両800両が参加

 防衛省によれば、陸上自衛隊は7月2日から8月4日にかけ、連隊等協同転地演習を実施するとのことです。

Img_64_46 訓練は陸上自衛隊が有事の際に組織される統合任務部隊等に対し、遠隔地の部隊が戦闘態勢を維持しつつ迅速に長距離を展開することが目的とされ、車両による陸路機動や艦船を含む船舶による海上機動や航空機による空中機動を行うことを念頭に、部隊移動の能力を練成するもの。

Img_2041 従来は北方機動演習として、ソ連に最も近接する北海道に対し、その軍事的圧力が加えられたことを想定し、本土の師団を北海道へ増援する演習として継続されており、冷戦後には北方への機動に加え、北海道の重装備部隊を西方などに展開させる演習としての性格を有し、演習名称も協同転地演習と改め今に至ります。

Img_1732 今回の連隊等協同転地演習は中部方面総監河村仁陸将が演習担当官として訓練に臨み、名古屋の第10師団を中心とした基幹部隊が派遣、参加部隊規模は人員2300名、車両など800両、航空機9機が参加します。車両800両のうち28両は第10戦車大隊の戦車が派遣され、航空機はCH-47Jが6機、UH-1が2機、OH-6が1機参加するもよう。

Cimg_0656 人員規模から連隊戦闘団を編成しての派遣のようですが、戦車28両の参加は、第10戦車大隊の半分に当たり、これは派遣される一個普通科連隊に対して二個戦車中隊を配置した増強型連隊戦闘団の編成を採り、北海道へ展開することとなります。

Kimg_2637 ヘリコプターのうち、CH-47輸送ヘリコプター6機は第10師団には配備されていないため、第1ヘリコプター団等の装備を一時師団の隷下に置き運用することが考えられ、これが第10師団等を、という演習参加部隊の第10師団以外の参加部隊ということなのでしょう。

Mimg_4137 協同転地演習は、長距離機動訓練と揚陸訓練に実弾射撃訓練という三分野から構成されています。長距離機動訓練は7月2日から14日にかけ車両や船舶及び航空機による機動を実施します。主力は海上輸送となり、海上自衛隊の輸送艦と民間船舶がその輸送の主力となるでしょう。

Mimg_4413 海上輸送は、海上自衛隊輸送艦の場合、人員最大1000名、完全武装340名を輸送できるとされていますが、近年の装甲化され車両化された部隊を輸送するには数十両程度が輸送できる程度で、普通科中隊に戦車小隊と特科戦砲隊と輸送車両を搭載すれば一杯というところ。

Mimg_4508 対して、例えば太平洋フェリーが運用するフェリーいしかり、は総トン数15762t、旅客定員777名とトラック184両に乗用車級車両100両を輸送可能となっていて、これは港湾設備を有さない海岸線への揚陸を置くなうための輸送艦と民間フェリーの輸送力の違いを端的に示しているといえるやもしれません。

Kimg_7457 揚陸訓練は、北海道の浜大樹訓練場において輸送艦からのLCAC揚陸艇を用いての訓練となります。この揚陸訓練は7月8日から9日にかけて行われ、実際に港湾設備の無い海岸へ部隊を海上から直接揚陸させます。併せて民間船舶を用いて揚陸した部隊と共に矢臼別演習場における実弾射撃訓練が行われます。

Aimg_2550 矢臼別演習場では、行動と実弾射撃訓練が行われます。まず、第一に行進や集結地での行動訓練や攻撃を含めた一連の訓練を実施、続いて重迫撃砲を含む各種装備の実弾射撃訓練の実施及び爆破訓練を行う、とされ、北海道の広大な演習場を用いての効果的な訓練が行えるもの。

Miimg_1571 大部隊の迅速な展開能力は、東日本大震災における全国からの部隊展開を円滑に実現したことからもその能力の高さは垣間見えますが、併せて今後の想定される有事に際しても、迅速に着上陸が想定される周辺地域へ部隊を展開させることで軍事行動を相手に思いとどまらせることが出来、これが抑止力というものとなります。

Img_1795 訓練は実弾訓練を終了後、7月24日から8月4日まで復路を機動し、駐屯地へと戻ります。復路においても車両による長距離機動や艦船を含む船舶による海上機動と航空機による空中機動を実施し、これも長距離機動の訓練となります。

北大路機関:はるな

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南スーダンPKO 第四次派遣隊任務開始、首都ジュバ市に加え周辺地域へ任務拡大

2013-06-29 22:49:45 | 防衛・安全保障

◆梅本哲男2佐以下西部方面隊主力に300名派遣

 防衛省によれば、南スーダンPKO任務自衛隊派遣部隊へ第四次派遣部隊が現地にて第三次派遣部隊より引き継ぎを実施、任務へ着手したとのこと。

Pimg_9539 南スーダンPKOはスーダンより独立した南スーダンに対し、国家運営上必要な社会基盤構築の必要性から国連憲章七章措置によるPKO部隊の派遣が決定し、我が国も国連からの要請を受け、2011年に政府が陸上自衛隊より施設部隊を中心としたPKO部隊を編成し派遣を決定、参加しているものです。

Pimg_9649 指揮官は第2施設群副群長梅本哲男2佐で、派遣部隊は、これまで南スーダンの首都ジュバ市を活動区域として道路整備などの任務に当たってきましたが、南スーダンPKO参加国の一部変更に伴い、今回の第四次派遣部隊からはジュバ市の周辺にある州を併せて活動範囲としました。

Pimg_5364 新しい任務区域は首都ジュバの周辺に当たる中央エクアトリア州、西エクアトリア州、東エクアトリア州で、これにより南スーダンのかなりの地域を自衛隊派遣部隊が担当することとなります。南スーダン国内では神の抵抗軍等の武装勢力による散発的な戦闘や、隣国スーダンの油田地帯へ南スーダン軍が攻撃を加えるなど情勢は不確定要素が大きいのですが、今のところ問題はありません。

Pimg_5743 他方、活動区域の拡大はこうした不確定要素との遭遇リスクを高めるほか、隣国ウガンダから延伸する補給路によりPKO部隊が任務に当たっているなど、情報収集と情勢判断には慎重を要するものがあり、今後とも緊張感とともに政府と自衛隊の情報と判断の共有の継続が求められる、と言えるでしょう。

北大路機関:はるな

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ミサイル破壊措置命令終了へ 防衛省、北朝鮮弾道ミサイル事案脅威縮小を判断

2013-06-28 22:51:45 | 防衛・安全保障

◆二ヶ月半に渡る警戒態勢は一応の収束

NHK等の報道によれば、政府は現在継続しているミサイル破壊措置命令を終了する方針を示しました。

Nimg_2849 防衛省によるミサイル破壊措置命令は今年4月7日、北朝鮮が日本海側のミサイル発射施設へ、弾道ミサイル部品を搬入し、組み立てを開始している状況が衛星写真などにより判明し、万一我が国へ発射された場合に備え、人口密集地域などへの落下を事前に防止する観点から発令されたもの。

Aimg_2372_1 このミサイル破壊措置命令は、これまでの破壊措置命令が北朝鮮の発表した発射実験の経路と時間の情報を得てのものではなく、朝鮮半島の緊張に伴い弾道ミサイルの発射準備を進めている状況に応じて実施したものであったため、どの経路で発射されるのか、いつ発射するのか、しかいのか、判明しないものとなっていました。

Mimg_6916_1 このため、弾道ミサイル迎撃部隊は日本海上にイージス艦を二隻配置すると共に全国の重要地域へペトリオットミサイルPAC-3高射隊を展開させつつ、これまでのミサイル破壊措置命令のような落下地域へ重点配置を行うという選択が出来なかった、という点で異例といえたやもしれません。

Simg_8181 したがって、防衛省は弾道ミサイル迎撃部隊の配置について詳細な配置を公表せず、これは仮に今回のミサイル発射が軍事的な意図を以て使用される場合、重要な防護地域での防御体制を報じる事に対し、同時にこれは配置していない脆弱性の高い地域を公表することにもなったため、ある意味仕方なかったものではありますが。

Nimg_7098 上記の通りの事情はありつつも、着々と飛来に備えていたことも今回の迎撃態勢の特色と言えるものだったでしょう。また同時に4月18日、高射教導隊の装備を管理替えする形で、那覇基地の第5高射群へPAC-3が配備されることとなり、これを以て全国すべての高射群へPAC-3が配備される態勢が完成しています。

Iimg_2869 こうして警戒態勢が維持されると共に、北朝鮮側の弾道ミサイル発射準備態勢が一部解除されつつあるとの情報が入り、5月11日には警戒態勢の縮小を防衛省が発表、日本海へ展開している二隻のイージス艦のうち、一隻を通常任務へ戻す措置を執りました。

Mdimg_8270 ミサイル迎撃態勢が維持される一方、5月28日には、PAC-3は元来都市防空用ではなく基地や港湾などの拠点を防護する装備であるため射程が小さいことが問題視され、ミサイル発射の兆候が示されるたびに配置されている基地から都心部へ逐次対応するのでは即応性が低くなるとし、都心部への常駐を政府が検討していることが報じられています。

Thimg_8587 更には6月に入り、政府は現行のPAC-3が有する射程15kmから20kmに対し、射程が200kmと大きいTHAAD:戦域高高度迎撃ミサイルの導入を視野に、米軍がグアムへ展開しているTHAADへ性能や取得費用などの調査を開始したことが報じられ、話題となりました。

Simg_5725 この間、国籍不明潜水艦の南西諸島領海接続水域への潜航侵入事案や南西諸島の緊張継続など、様々な事案があり、我が国を取り巻く安全保障環境の縮図のような二か月半ではありましたが、一応、今回の警戒体制は収束されることとなり、イージス艦やPAC-3部隊は基地へ戻ることとなります。

北大路機関:はるな

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平成二十五年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2013.06.28)

2013-06-27 22:27:07 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 ゲリラ豪雨怖いですね、急な冷風や雲行きの兆候に接し、降雨確認後最初の十秒間での雨宿り場所への回避が遅れれば着衣水泳後状態へまっしぐら、当方は喫茶店に退避し事なきを得ましたが皆様如何お過ごしでしょうか。

Gimg_8067 さて、そんな今週末の自衛隊関連行事ですが、土曜日に北千歳駐屯地祭が行われます。北千歳駐屯地は、千歳空港にほど近く、航空便によっては日帰りが可能な行事として、実際日帰りで行かれる方もいまして、当方もその方向で考えていたのですが、航空便の関係上展開を断念したところ。

Gimg_1898 北千歳駐屯地は、第1特科団本部、第71戦車連隊、第1高射特科団の一部中隊などが駐屯しており、隷下には第1特科群と第4特科群に203mm自走榴弾砲やMLRSを装備する七個特科大隊、そして三個地対艦ミサイル連隊を有して編成されており、近く縮小予定ではありますが自衛隊最大の特科部隊を構成しています。

Gimg_4553 加えて第7師団隷下の第71戦車連隊が駐屯しています。第7師団といえば、お隣東千歳駐屯地に師団司令部を置いていますが、東千歳駐屯地には実は戦車連隊は駐屯しておらず、北千歳駐屯地、北恵庭駐屯地、南恵庭駐屯地へ各戦車連隊が駐屯しています。戦車と火砲、陸上戦闘の根幹を担う機動打撃と火力投射の象徴でありながら我が国では近年軽視されている重装備の最大限の迫力の前へ、足を運ばれてみてはどうでしょうか。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第4師団創設58周年 福岡駐屯地創設62周年記念行事詳報⑪ 航空機着陸と迫力の太鼓演奏

2013-06-26 22:41:42 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆訓練展示状況終了後の駐屯地祭

 普通科部隊の突撃とともに戦車部隊の前進、これをもって仮設敵は陣地を放棄、我が方が奪還し訓練展示模擬戦の状況は前回、終了しました。

Fimg_6586_1 状況終了の号令と共に式典の完了が放送され、招待者は祝賀会食会場への誘導が開始、初夏の快晴の下で他の来場者も飲み物売り場や自販機へ、装備品展示会場や或いは装備品展示会場へ、と歩み始める最中、AH-1S対戦車ヘリコプターのローター音が聞こえてきます。

Fimg_6536_1 そして先ほどの訓練展示仮設敵陣地の奥からは82式指揮通信車が、さては先ほどの訓練展示の結果に不満がある仮設敵増援部隊が逆襲してきたのでしょうか、状況再開ッ!、と、まあ、そんなわけはなく、こちらは装甲車体験乗車の様子で、車上には見学者の姿も見える。

Fimg_6598_1 AH-1Sは、地上展示へ、福岡駐屯地へ着陸してきたのでした。目達原駐屯地の機体ですが、福岡駐屯地の式典会場であれば、ヘリコプターは充分着陸できるため、この式典会場、本来のグラウンドとして使える訓練展示終了後に装備品展示へと着陸してきたわけです。

Fimg_6610_1 この日は五月なのですが、流石というべきか、九州は暑かった、しかし、式典終了後でしたので、来賓用のテントと座席が開放されたので、テントの下で椅子に座りながらの撮影です。小型の折畳椅子は飛行機で持ってきているのですが、座ってみると来賓席、やはり椅子は大きい方がいい。

Fimg_6658_1 ヘリコプターの着陸と前後して、太鼓演奏、式典前にも行われていましたが、行われました。腕力と統率については折り紙つきで、各駐屯地の太鼓保存会から参加がありました。この種の太鼓では年間を通じて練習ができ、継続的に全員集まっての演奏、自衛隊は日本最大の太鼓保存機関なのでは、と毎回太鼓の演奏の水準の高さに感心します。

Fimg_6665_1 対馬元寇太鼓も、対馬元寇太鼓は、韓国最強の王という世宗大王が18000名の大軍で対馬を攻めた1419年の応永外冦にて、対馬領主宗貞盛が手勢600名を以て果敢に反撃、戦力差30倍をものともせず、朝鮮の和議の申し出も去らねば元寇と同じく皆殺し、と突っぱね、対馬を守り切ったことで有名ですが、その宗家の館跡が今の対馬駐屯地、太鼓も直接かは不明ですが当時からの伝統があるものです。

Fimg_6556_1 UH-1J多用途ヘリコプターも着陸してきました。地上で誘導している隊員の姿が見えます。対馬への侵攻があった際には第四師団隷下の対馬警備隊が対処すると共にこのUH-1が、第四飛行隊と西部方面航空隊より増援を以て対馬に駆けつけるのでしょう。ただ、対馬警備隊はレンジャーが多い自衛隊の最精鋭部隊の一つ、応永外冦を考えると、さっさと増援に展開しなければ対馬警備隊だけで片付けてしまうかも。

Fimg_6566_1 この写真もテントの下の座席から撮影したのですが、日差しは凄いものの敷けが少ないので日陰に入るだけで気持ちいい、そして先ほど買った冷えたお茶が美味い。ただ、幾列にも並ぶテントの下の座席、快適かもしれないけれども、後ろの方に座った人は何も見えないような気もしますね。

Fimg_6642_1 続いてOH-6D観測ヘリコプターが、この機体を貼ると誰とは言いませんが、BK-117で置き換えるべきでエンジンはどれこれが良い、とかUH-1の写真を貼るとOH-1のエンジンをUH-1に移植させろ、と勝手に持論を押し付けてくる方がいますが、正直凄く迷惑です、BK-117なら他に該当記事があるのだからそこに書き込めばいいのだし、変に無関係なことを書き込まれると他のコメント投稿者を萎縮させてしまうので迷惑、自覚してくれないと困る。

Fimg_6647_1 と、まあ、この写真を撮影した時にはそんなことは考えずパチパチとっていたのですが、お隣のご老人、ご家族でお見えの方のようですが世間話に意気投合しまして、このあたりや宿泊した久留米のあたりの名物や名所旧跡など、いろいろ教えてもらいました、今度はしっかり観光もしたいぞ。

Fimg_6656_1 着陸した航空機はエンジンを停止すると、地上展示の準備を開始します。ちなみに車両や火砲の装備品展示会場は別の場所、正確には正門からこの式典会場までの途中に用意されています。なかなか見ない装備やここだけの部隊マーキングもあり、しかし撮影位置確保の方が重要だ、と示威店前には見るのを断念したところです。

Fimg_6522_1 さて、ご老人と弾んだお話も余り長く引き留めては、とお開きにして、ご縁があればまたお会いしましょう、と挨拶し、こちらも展示の装備品を撮影するべく移動を開始します。先ほどの太鼓演奏の部隊が撤収しているところに出合いました。

Fimg_6676_1 AH-1S,地上展示の準備が完了しましたので、グラウンドへ立入が出来るようになりました、背景の空には旅客機が飛んでいますが、これは福岡空港が近いから、空港ビルまでは6kmほど、空港敷地滑走路の端までは3kmくらい、ちなみに新幹線の博多駅までは空港までと同じ約6kmです。

Fimg_6677_1 駐屯地最寄駅はJRだと南福岡駅、西鉄だと雑餉隈駅、駐屯地すぐ隣には、航空自衛隊西部航空方面隊司令部の展開する春日基地があります。福岡駐屯地の災害派遣初動車両、装備品展示会場へ向かう途中に並んでいるのが見えました。

Fimg_6684_1 この写真は東日本大震災の翌年、ここ福岡駐屯地からも東日本大震災へは災害派遣部隊が出動し、様々な任務に就いた、という話を装備品展示にて隊員さんから聞くことができました。これについては、書きだすと長くなりますので、次回紹介することとしましょう。

北大路機関:はるな

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嘉手納以南米軍施設、日米合同委員会決定で西普天間地区の返還が年内実現へ

2013-06-25 23:56:11 | 国際・政治

◆再起動に成功した嘉手納以南返還合意

 嘉手納基地以南の米軍基地全面返還、これは民主党政権交代以前に日米合意で決定し、民主党が覆し初期化した課題でしたが、年内に推進するようです。

Pimg_9519 6月13日に日米合同委員会に置いて決定したもので、小野寺防衛大臣臨時記者会見によれば返還が実現するのは、キャンプ瑞慶覧に隣接する西普天間米軍住宅地区の返還で、当初予定よりも半年間はやく年内にも返還が実現する方向で調整している、とのこと。

Img_0697 半年間の前倒しは、地元宜野湾市からの早期返還を求める要望に対応するもので、返還される米軍施設は地権者へ返還されることとなっています。この年内返還とは、管理替えを意味するのではなく、年内に地権者へ土地が返還される、とのことで、これにより宜野湾市が構想する観光開発などが進むこととなるでしょう。

Img_8956 返還されるのは住宅地区で、航空基地ほど再利用への障壁は大きくは無く、他方用地返還は西普天間の場合、当初の巨大商業施設への再利用に失敗し荒廃している読谷補助飛行場跡地に比べれば那覇市街地に近いため、住宅街としての需要も大きいといえるかもしれません。

Img_3847f 加えて、今回は半年間前倒しで実現するという方針が、米議会で実現性が疑問視され予算の凍結などが指摘される在沖米軍のグアム移転事業への具体的な推進について、民主党政権の何も決まらず先送りのみ政治主導で決定するという方策からの、自民党政権への転換に合わせた脱却と推進を印象付ける点で意義は大きい。

Img_9624 併せて、宜野湾市が求める航空機事故への懸念についても、これは改善されることとなります。普天間基地の航空機についても安全性が向上する計画で、具体的には今年夏には老朽化が進み構造疲労などが指摘されている旧式のCH-46が新型に代替されることが発表されましたが、他にも旧式木の置き換えは進みます。

Eimg_7481 既に旧式化していたUH-1N汎用ヘリコプターは昨年までに改良型のUH-1Yへ置き換えられましたが、AH-1W攻撃ヘリコプターも新型のAH-1Zへ、CH-53D重輸送ヘリコプターもCH-53E機種転換が開始される計画で、これにより普天間基地の所属航空機が一挙に更新されることとなります。

Oimg_0868 普天間基地そのものについての返還計画は名護市への代替飛行場建設が沖縄県側の反対により遅々として進みませんが、仮に実現すれば沖縄の玄関である那覇空港から最初の米軍基地まで、鉄道とバスを乗り継いで延々一時間半を掛けて足を運ばねば出会わない事となり、これは沖縄が米軍基地の島、という印象を大きく塗り替える事でしょう。

北大路機関:はるな

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歴史地震再来と日本安全保障戦略③ 沖縄トラフ・八重山地震への想定と災害派遣対処

2013-06-24 23:53:42 | 防災・災害派遣

◆海上部隊と航空部隊の集中

 沖縄トラフにおける八重山地震、歴史地震として記録に残るこの巨大地震が再来した場合、どういった被害は起こるのでしょうか。

Qimg_0287 1771年4月24日の八重山地震では、マグニチュード7.4から8.0と巨大地震であったものの大きな揺れは観測されず、震源に近い石垣島で推定震度4前後、ただ沖縄本島や久米島と慶良間諸島、与那国島での推定震度は3前後で広範囲に分布しているため、長周期振動が発生していることがわかります。

Qimg_3048 しかし、当時の最大の被害は津波被害で、広範囲に及ばず被害が八重山諸島に集中したことから、隆起と沈降による津波ではなく海底地滑による大波とも考えられるのですが、それでも八重山諸島を襲った明和の大津波で石垣島を縦断し35mから最大85mとの分析、他方、沖縄本島や九州島にはそこまでの津波は無く、逆に千葉県房総半島に被害の記録はあります。

Qimg_8101 離島災害といえば、三原山噴火災害における全島民避難や奄美大島豪雨災害のような単一での離島災害は多く経験がありますが、同時に多数の離島が被災する災害は、南海トラフ地震のような巨大地震とはまた違ったものとなるでしょう。

Qimg_9032 この地震が再来した場合、どうなるのでしょうか。地震発生、すると震源に近い八重山諸島をこの地域としては突き上げるような大きな揺れが襲います。台風に備える石垣などは少なくない数が崩れ、避難路を塞ぐこととなるでしょう。そしてその数十秒から一分後、地震は長周期振動となり、まず約200km離れた那覇市と台湾台北市を襲います。

Qimg_0829 更に地震発生から数分後、長周期振動は中国上海市と南京市、鹿児島市を襲います。ゆっくりとした震度三から四の揺れは、揺れのエネルギーを貯め込みやすい超高層ビルを襲い、免震構造や長周期振動対策を行っていないビルは破壊され、構造によっては避難の間もなく倒壊することとなるでしょう。

Qimg_1209 そして、地震の揺れが収まった数十分後、海底地滑りによる第一波が最大波となる津波が、局地的に八重山諸島を押し流し、一時間数十分後に台北市と沖縄本島を数mの、二時間後には中国沿岸部を、そして沿岸最大の都市上海市を、津波が襲います。しかし、八重山諸島は八重山地震での津波被害では沿岸部の引き潮の意味が分からず海岸線にでていたことが被害を拡大させていたため、高台へ避難すれば住民の被害の割合は軽減できる。

Qimg_4686 日本では恐らく地震発生と共に内閣府に災害対策本部が設置され、那覇航空基地及び鹿屋航空基地より情報収集へP-3C哨戒機が、那覇基地及び新田原基地より戦闘機が緊急発進し、情報収集に当たります。沖縄県知事は被害状況を受け防衛省へ災害派遣要請を行い、自衛隊の派遣が開始されます。

Qimg_7841 災害派遣の主力は地震災害であれば陸上自衛隊ですが、離島連鎖災害という従来の地震対処とは異なる被害を前に、特に被害の中心となる八重山諸島では、那覇からの部隊が展開できず、仮に沿岸監視隊を置いていたとしても津波被害区域にあるため退避に用いた車両を除き使用できず、まず陸上からの情報収集が行うことが出来ません。

Qimg_7387 このため、海上からの部隊輸送と、無事であった沖縄本島の飛行場施設、那覇航空基地は海抜3mであるため、八重山地震の津波被害程度ならば冠水は免れるかもしれませんが、滑走路が被害を受ける可能性があります。このため、海抜の高い普天間基地と嘉手納基地がその拠点となるでしょう。しかし、輸送の中枢は艦艇となる。

Qimg_9088 非常に狭い水道を経た湾の奥深くに位置する佐世保基地は、海軍が港湾封鎖と艦砲射撃に備えた立地ですが、津波被害に期せずして強い立地ともなっています。この地いき最大の宮古島市は人口52000名、津波の被害が大きい石垣市は人口47000名、与那国町と竹富町で構成される八重山郡は人口5500名、被災地総人口は10万強で、ここに艦艇が割り振られます。

Qimg_8107 同時にP-3C哨戒機、那覇航空基地が使用できない場合には鹿屋航空基地の機材等が用いられ、厚木航空基地や八戸航空基地からの機体が洋上の津波漂流物と共に漂流者の捜索に当たります。漂流物が多ければ、救難飛行艇US-1AやUS-2は着水できないため、ヘリコプターとの連携が考えられるところ。

Mimg_0092 防衛省は、佐世保地方総監隷下に統合任務部隊を発足させ、指揮下に派遣可能な稼働艦艇全てを割り振ることとなるでしょう。これにより、被災者はヘリコプターとエアクッション揚陸艇により暫時洋上の避難所に収容され、物資輸送はヘリコプターを中心に行われると共に津波被害を受けた港湾と空港の復旧に着手します。

Qimg_3178 多数の航空機が同時投入されるため、東日本大震災における航空管制のように浜松基地よりE-767早期警戒管制機が沖縄本島以南に進出、ヘリ御プターの空中官制を行う事となるでしょう。恐らく被災地の航空管制施設は地上部分のものが地震と津波により被害を受けるため、これがなくてはさいがいはけん規模を拡大できない。

Qimg_4399 もしくは、イージス艦の情報処理能力が航空管制に活躍するかもしれませんが、自衛隊の空中機動能力は非常に大きく、輸送能力と部隊規模では中国人民解放軍を実は上回ります。被災地域の迅速な救出、幸い東日本大震災程海水温が低くないため低体温症までの猶予はありますが、水道施設などのインフラの支援が必要で、やはりここでも時間との戦いとなる。

Qimg_7610 併せて、港湾施設と空港施設の復旧へ、津波被害を免れた被災地域の建築会社器材とともに陸上自衛隊施設部隊が派遣されます、輸送艦の母港がある中部方面隊隷下部隊か、被災地管区の西部方面隊隷下部隊か、投入が迅速に行うことが可能な部隊が上陸することでしょう。

Qimg_5063 施設部隊は、着陸地域が無事であれば輸送機からの空挺により、基本的には陸上誘導員をヘリコプターにより展開させ、エアクッション揚陸艇により海岸線へ上陸します。こうして、港湾施設が復旧すれば、復旧は大きく前進します。輸送は民間部門の方が遙かに起きく、阪神大震災でも東日本大震災でも民輸送の復旧までを支えるのが重要でした。

Qimg_7990 ただ、併せて、中国沿岸部では、都市部の高層ビルが倒壊し、海岸線近くの住宅街などは津波被害を受けます。このため、自衛隊が南西諸島付近に大部隊を展開させると共に、人民解放軍も東シナ海を隔てた沿岸部へかなりの部隊を展開させることとなるため、無用な緊張を解く事前の情報共有体制が必要となります。

Qimg_2203 それでは、この機に乗じ中国軍が侵攻してくる可能性はどうなのでしょうか。これは、実のところ未知数ですが、艦艇基地、例えば空母遼寧の母港である青島後小口子基地などは、防波堤こそあるものの半島の外側に位置し、台風を想定した位置であっても津波を想定していません。日本の場合は基地の立地が艦砲を想定して湾の奥に位置している時代のものだったのですが、中国の現代の基地にはこうした配慮が無い。

Kimg_9291_1 中国東海艦隊は司令部が寧波が3m程度の津波に襲われる立地にあり、舟山基地も外洋に面しています。中国南海艦隊は楡林基地は台湾の海兵隊強襲に備え大竹島と黄平島が津波を防ぐかもしれませんが、広州基地は外洋に面し半島の陰に或るものの台風が防げるだけで津波には無防備です、湛江基地については資料がありませんが、少なくとも沿岸人口が大きく人的被害では日本以上の規模で中国沿岸部の被害が出る中で、軍事行動は出来るのでしょうか。

Img_2861 加えて、東日本大震災以上の規模で在沖米軍の海兵隊や第七艦隊より航空母艦や強襲揚陸艦を含めたかなりの部隊が展開する事となり、嘉手納基地へは米本土からの空輸部隊が展開するため、この地域の日米協力は非常に大きなものとなるため、軍事的に手を出すことは出来ません。

Eimg_2500 もちろん、日本側の復旧が民主党時代のような不手際により遅れに遅れた場合や、中国沿岸部の被害が中国国内の情勢に影響を長期的に及ぼした状況では、地震の数年後に重大な局面はあるかもしれません。他方、自衛隊の災害派遣による南西諸島での活動が活性化した場合、偵察機を展開させる可能性は多く、これについては検討が必要です。

Mimg_1373 しかし、何よりもこの地震は詳しい震源などの情報が少なく、ただ被害は発生したという歴史地震の中でも記録的な津波記録を有しているものであり、この為の研究を更に進め、こうした事態も起こり得るのだ、という研究は政府としても自衛隊としても、もちろん沖縄県としても、行われるべきでしょう。

北大路機関:はるな

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尖閣諸島防衛への一視点⑳ 次の沖縄戦を防ぐ環太平洋及びアジア諸国との国際協調が重要

2013-06-23 23:53:30 | 防衛・安全保障

◆最終回:沖縄慰霊の日とともに

 本日は1945年のこの日、沖縄に於ける我が軍の組織的抵抗が不可能となり沖縄戦に敗北した沖縄慰霊の日です。

Cgimg_3794 次の沖縄戦を回避するにはどうすればよいのか。沖縄戦では、本島中央部の嘉手納海岸に上陸した米軍部隊を、第32軍2個師団1個旅団が敵の出血強要と陣地固守の下、抵抗を続けたものの遂に守り切れず、敗北したものでした。その後我が国は敗戦、平和憲法を制定し日米同盟を唯一の出島として軍事的な鎖国を続けてきましたが、冷戦期に在っては北方、今日では南方からの軍事的脅威に曝されているところ。

Cgimg_2816 我が国の防衛戦略は過去の戦争の敗因に依拠し、日米協同で紛争を抑止し万一に備える事。によりあの沖縄戦の敗因は、先んじて米軍と戦火を交えたフィリピン決戦にて、それ以前のマリアナ沖海戦で海軍航空戦力が、フィリピンでの陸軍総力戦に協同したレイテ沖海戦で水上戦闘艦部隊主力を喪失し、制海権の維持が不可能となったところで、フィリピン増派により手薄となった台湾へ沖縄第32軍より金沢第9師団を抽出し、手薄となったのが大きい。

Cgimg_8193_1 無防備であれば、逆に戦争を誘発する、戦時であれば優先目標が列挙されたうえでその中で最も防備が薄い地域から逐次攻撃を受けるため、離島という特性を活かした機動運用部隊を適宜配置し、防備を固める事こそ、必要であり、これが戦争を抑止、次の沖縄戦を回避する数少ない手段でしょう。

Cgimg_5202 蛮勇をふるって、例えば離島の幾つかを放棄して逃げれば平和を得られるのだ、という誤解を仮に強行すれば、元々この海域の離島を何故強大な防衛力を有し、今なお世界最大級の経済力と国際金融力を有する日本を相手に考えているのか、考えた場合、妥当な策とは到底言えず、次の戦争を誘発してしまう視点を忘れてはなりません。

Cgimg_4419 中国は、太平洋地域での米軍の影響力排除を念頭に置き、併せて台湾の武力併合による中華民国の消滅を公言しており、南西諸島の一部を占領されれば極東米軍の台湾有事抑止の均衡が崩れ、そのまま我が国シーレーンを巻き込んだ台湾有事へと発展、南西諸島有事の局地戦を遙かに上回る戦火に曝されてしまいます。

Cgimg_2274 それならば、絶対平和主義を念頭に中国に我が国そのものを委ねれば、という無抵抗主義を提示したならば、今度は我が国土を拠点として米中衝突の舞台を提供することとなり、日本の曖昧な行為が結果的に第三次世界大戦の引き金を引くことにもなりかねない。国家には領域を保全する義務があり、そうした意味では日本の防衛は通じて世界の平和につながっている、ということ。

Cgimg_8604 以上の視点に基づき、沖縄本島の恒久拠点化やヘリコプター搭載護衛艦への固定翼機搭載とその増強、南西諸島南部のミサイル配備による防御強化、沖縄配備旅団の自己完結分散戦闘能力の配備、南九州管区師団の両用作戦部隊化、沿岸監視隊の配置、空港防備体制の構築、いろいろと提示してきました。

Cgimg_4207 他方、現時点では沖縄を守れるのか、という視点にのみ立つならば佐世保を中心に我が国は有力な水上及び潜水部隊と航空部隊を有し、防空能力も迅速に増援する態勢を構築しているため、有事の際には数で劣っていたとしても我が方が非常に有利となっています。

Cgimg_9421 これは量的優位では質的優位に対処する限界について、例えば1991年の湾岸戦争が大兵力の質的優位への対処限界を示したような、情報優位の獲得と迅速化による戦域優位の獲得を丹念に防衛力へ反映させた成果と言え、他方情報優位への費用負担の重要性を組織として理解している程度差から、この優位は当面不変であるといえるもの。

Cgimg_4604 ただ、これは実戦で優位に立つ、という側面を示しているだけであり、軍隊の抑止力として一流は戦争に展開させない事、戦闘に展開する以前に相手に侵攻を断念させるだけの抑止力を発揮出来なければ、使ってわかる防衛力、というものでは二流と言わざるを得ません。

Cgimg_4167_1 この視点に立つならば、国際協調を如何に確立するかが重要であり、アジア諸国が一致して安全保障に相応の責任を持つという立場での連携を確認する、軍事同盟というような踏み込んだものではなくとも、相互の訓練等に基づく信頼醸成措置などを構築しておくだけでも大きく効果は換わるでしょう。

Cgimg_0860 こういうのも、我が国へ軍事的圧力をかける中国は、かの国が批判する大戦前の我が国の政策をかの国は特に軍事的膨張という面においては我が国の、彼らが誤りとする手法を踏襲し、周辺国に戦争を仕掛け、侵略行為を自己正当化している結果、ほぼ全周の諸国へ攻撃を仕掛けたことで完全に軍事的に孤立し、後に引けなくなってしまった、ということ。

Cgimg_8584 実際に、過去に中国より侵略をうけた国は、すでに占領されたチベットや、撃退したインドにヴェトナムやソ連と台湾、一部を占領されているフィリピンなどと、ある程度協調する必要があるのではないでしょうか。もっとも台湾との軍事的協同は、実のところ外交的に少なくないリスクを有するため、慎重に距離を置きつつ模索しなければなりませんが。

Cgimg_0822 特に理想としては、我が国が先の大戦が周辺地域に及ぼした被害に鑑みた軍事的自制と同程度のものを中国が自覚することです。しかし、それを願うにも、こればかりは限界があるため、軍事的な鎖国を我が国が行い、アジアを含めた世界からの軍事的孤立を歩んだ戦後のわが国外交防衛戦略から、大きな転換を考える必要があるのではないか。

Cgimg_7185 かの国が、我が国へアジアからの孤立を招く、と警鐘を鳴らす実態は、アジア諸国を北東アジア地域大きく狭めたもとでの中傷であり、実際にはかの国こそが孤立している、もしくはかの国から世界が孤立する、分かりやすい表現では世界からかの国が孤立している、という事に他なりません。

Cgimg_0649 こうしたうえで、我が国の防衛力を以て、かの国から近年不当な軍事的圧力、正確には力を背景に画定されている国境線を侵蝕されている諸国への圧力を、これは国際法的な分野で、経済的な分野で、もしくは防衛協力というような分野を含めて、日本国として国際協調の針路をとる、国際公共財としての防衛力を考える手段とならないものでしょうか。

Ccimg_5250 これは一見、我が南西諸島に対し軍事的圧力をかけている新しい大国に対し敵対的な方策となっているのではないか、という批判があるやもしれません。しかし、必ずしもそうではなく、かの国が軍事的膨張を領土的膨張へ転化する国策を維持し続けた場合、必ず他の地域大国や超大国との軍事的衝突に発展することは自明であり、これを回避し世界の責任ある一員へと誘う上で、必要なものと考えるわけです、かつてそうする国に恵まれなかった我が国の歴史をたどることとならないように。

Ccimg_1738 南西諸島の防衛を考えることは、南西諸島が台湾有事への強烈な安全弁となっている現状に鑑み非常に重要であり、実戦を以て勝つことではなく、戦争を抑止する体系を構築し、不幸な衝突を回避すると共に隣国の世界での地位への昇華を支える、次の沖縄戦を防ぐことは、世界の安定にもつながっているという視点から物事を考える必要があるでしょう。尖閣諸島防衛への一視点、このように考えた次第です。

北大路機関:はるな

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US-2出動!辛坊治郎氏と岩本光弘氏太平洋横断航海遭難へ災害派遣、金華山沖1200km

2013-06-22 22:46:52 | 防災・災害派遣

◆波高4メートル・風速19メートル・沖合1200km

 海上自衛隊は昨夜、太平洋上にて遭難者の救助を行いましたが、その遭難者が辛坊治郎氏であったことに少々驚かされました。氏は京阪神を中心に報道番組のほか、政治討論番組の司会などで非常に有名な方です。

Simg_2135 さて、この方が番組を長期休演し、全盲の船乗り岩本光弘氏とともに太平洋ヨット横断へ挑む最中、昨日太平洋上においてヨットが障害物に接触し、浸水ののち転覆、沈没の可能性があり救命艇に移乗し海上保安庁へ救助を要請することとなりました。しかし、今回の救助要請は、その現場がかなり過酷な状況となっていました。

Srimg_7671 現場は宮城県金華山沖1200km、日本列島南方海域には台風が遊弋しています。担当する第二管区海上保安部長は海上保安庁の装備では即座の救助は困難と判断、21日1000時に厚木航空基地の海上自衛隊航空集団司令官へ人命救助に関わる災害派遣を要請、航空集団は隷下の第四航空群及び第31航空群へ出動を命じています。

Simg_1601 1049時、厚木航空基地よりP-3C哨戒機が離陸しています、これは救難飛行艇US-2に先行し、遭難海域へ進出、要救助者の正確な位置を把握し、後続のUS-2を誘導するために先行したもの。続いて1139時、厚木航空基地を第31航空群のUS-2救難飛行艇が離陸しました。第31航空群は岩国航空基地に展開する航空群ですが、1機程度を救難任務へ備え、厚木航空基地へ展開させており、今回も厚木より出動しました。

Srimg_8199 US-2は従来のUS-1を置き換える新型機として新明和工業にて国産開発されたもので、対潜哨戒飛行艇PS-1を源流とする航空機ですが、新明和工業はかつての川西航空機、第二次大戦中に世界最高の性能を持つ飛行艇とされた二式大艇を開発した企業で、それ以前の飛行艇と併せ、日本の飛行艇技術の現時点での集大成と言える航空機です。

Simg_21010_2 元々は、P-2VやP-2J対潜哨戒機、今日ではP-3C哨戒機が洋上で墜落事故を発生させた際に、救難ヘリコプターの行動圏外で従来の高速艇では不可能である迅速な救難任務を行うために開発されたもので、航続距離は4700km、波高3mでの海面に離着水が可能であり、短距離離着陸性能に優れ離着水距離は僅か300m程度でしかありません。

Simg_2153 しかし、今回の遭難現場は過酷を極めました。波高4m、風速19m、悪天候下では燃料消費も大きくなり、離着水の障害となる海上漂流物の確認も視界不良が邪魔します。このため、機長は現場海域に到達したUS-2は着水を断念し、一旦厚木航空基地へ引き返す判断を下しました。

Simg_5989 1505時、第四航空群のP-3C一機が厚木航空基地を離陸します。このP-3Cは1049時に離陸した最初のP-3Cを交代するべく離陸したもので、荒天下にて大きくなる燃料消費に対応しての交代、同機も遭難海域上空に常駐し、波高が高い同海域において漂流する救命艇の位置を見失わないよう展開したもの。

Srimg_1976 続く1508時、厚木航空基地より再度US-2が離陸します。波高は相変わらず4m前後だったようですが、機長は波の動きを読んだうえで慎重に荒れる海面へ着水に成功しました。こののち、夜間となるため救助が困難になる分水嶺での着水敢行といえるでしょう。

Simg_4726 1814時、要救助者の救助に成功します。US-2はPS-1やUS-1と同じように胴体に消波装置を設置していますが、これが救助任務の際、機上救難員の乗り込んだボートにとり最大の脅威となります、何故ならば胴体が波浪で浮き上がった刹那に引き込まれれば、消波装置の溝ごと落ちてくる飛行艇に押し潰されてしまうからです。

Simg_1549 この難題を乗り越え、体調に異常がないことが確認されたのち、US-2は2230時、厚木航空基地へ着陸しました。これをうけ2240時に災害派遣要請を出した第二管区海上保安部長より撤収要請が出され、今回の厳しい災害派遣任務は完了しました。

Kimg_6495 1000km以上沖合の荒天の海域へ迅速に救難任務を行うことが出来るのは、世界でも海上自衛隊のUS-1AやUS-2くらいのものでしょう、行動半径で1000km以上のヘリコプター、特に荒天時でも1000km先で救難任務を行える機体は世界を見渡してもほぼありません。

Iimg_1549 航続距離で2000km以上のヘリコプターは意外とあるのですが、救難任務ではホバーリングを行う必要があり、このホバーリングが燃料消費を著しく悪化させるのです。また、荒天時は風向きや風速もヘリコプターの航続距離に少なくない制約を課します。

Img_3847f このため海外であれば、ヘリコプターに空中給油を行うことで航続距離を延伸し、救難任務を行う事となるのですが、ヘリコプターへの苦衷給油はプロープ&ドローグ方式、つまり空中給油機から延びた給油ホースの着脱口へヘリコプターが空中で接続する方式が採られるため、荒天時には制約される可能性があるのです。

Eimg_7577 ホバーリング時間を15分と見積もった場合でも沖合1200km、厚木航空基地からは更に遠い海域への救助は仮にMV-22であっても制約を受けます。こうなりますと、ヘリコプター運用能力を有する水上戦闘艦か大型巡視船を経由して救助する飛び石救助方式を採らざるを得ず、狩りに巡視船で救助に向かった場合には数日を要していたことでしょう、これをUS-2は数時間で成し遂げました。

Simg_13220 1200km先にて、風速19mと波高4mの波浪を乗り越えての救難任務は、US-2の限界性能に近い任務ともいえます。救難飛行艇はUS-1A、US-2が合わせて7機、岩国航空基地と分遣の厚木航空基地へ向け、今この瞬間も待機していますが、その能力の高さが、カタログデータに示されたものよりも高いことが、今回の任務達成により証明された、といえるかもしれません。

北大路機関:はるな

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防衛産業、我が国防衛力を構成する重要要素の将来展望? 国際協力の法整備波及効果

2013-06-21 23:07:47 | 国際・政治

◆情報漏洩防止と防衛装備多国間国際分業

 内需を超える国際共同開発に続き、技術革新への対応、という視点から前回特集しましたが、今回はもう一つ別の視点から。

Diimg_1679 技術革新、我が国だけの運用体系では将来戦闘というものを全て想定することは出来ず、特に演習環境や演習場を越えての実戦状況の再現を念頭に置いた戦域優位の確保と戦略優位の獲得への情報収集一点についても、やはり我が国単独では限界があることは否めません。

Diimg_3059 実戦環境を我が国が想定する最大規模で再現する、といいましても、仮設敵の装備を想定する脅威へ師団や航空団に艦隊規模で再現し、日本列島全域を以て住民避難と関係機関の協力を以て実弾演習を行えれば可能なのかもしれませんが、世界中でそんなことをやった国もやれる国も一つもありませんし、今後も出てくるわけがありません。

Diimg_2755 このため、実戦経験のある国と、特に戦域優勢の確保への追及を続けているアメリカを筆頭とするNATO諸国との研究や演習等を通じてすすめるほかない、これが技術革新への対応には一国ではなく、多国間での連携による新しい戦術や戦略の模索を行う必要、として提示したわけです。

Diimg_3725 他方、今回示したい多国間協力は、多国間国際分業や国際共同開発の推進を経て、主たる目的である有効な装備品の効率的な開発と運用整備基盤の恒久的な維持という難題の達成とともに、もう一つの問題である国内法の整備という分野への波及があるのではないか、ということ。

Diimg_4288_1 これは過去の記事で、防衛装備品の無いjでは十分でない分野を補う手法として防衛装備品の対外供与という仕組みを考える中で、例えば我が国係に潜水艦を輸出する場合、報道公開では入り口のハッチの厚さから秘密としているのに、輸出してこの秘密を維持できるのか、というように、我が国では国産装備品のブラックボックス化や、技術供与と情報流出阻止の両立という視点が確立されていない、という点を問題として提示しています。

Diimg_3505 しかし、これは同時に、我が国への防衛装備品を供与する際にも、必要な情報管理の仕組みが求められているわけであり、例えばアメリカが日本へ装備品を輸出する際に、その輸出と装備品の運用体系が構築されることで、日本からアメリカの脅威となる国へ情報が漏洩しないか、危惧することはある意味当然と言えるでしょう。

Diimg_9021 日本が輸出する場合、我が国の重要な秘密が漏れるのではないか、と危惧をすると同時に、実はすでに日本へ輸出した国でもこうした危惧があるわけで、このための日米協定が締結され、必要な情報は防衛機密により守られています。護衛艦などを見学された方は、様々な場所に日米合意に基づく秘密保全区域であり立ち入り禁止、という掲示をご覧になられたことでしょう。

Diimg_8526 実はかつて、航空自衛隊が次期戦闘機としてF-22の導入を模索した際、同時期にイージス艦からどの程度かは不明ですが情報漏洩事件が発生、このほかに不測の業務用PCを補う私物PCからのウィルス感染による情報漏洩事案もあり、これらはアメリカ側でも問題とされ、議会にも報告されF-22の導入に対しても少なくない影響が生じる事となりました。

Diimg_0583 この点で、航空自衛隊は新しい戦闘機としてF-35を導入を決定した際、併せて日本国内での最終組み立てが行われ、実際に他の開発参加国が了承するのか、という水準での情報開示が行われる方向で調整されており、実現すれば、これぞ交渉術、という我が国への波及効果をもたらすと共に、非常に大きな情報保全への世界への責任が生じる事となります。

Diimg_0779 特にF-35は開発中の情報が元来情報保全について先進的であると信じられたアメリカからも様々なサイバー攻撃やヒューミント事案により削り取られるように個々の情報が標的となっており、情報に接近する機会が生じる我が国も今後大きな攻撃に曝されることは言うまでもありません。

Diimg_2838 それならば、もっと使い物にならない戦闘機を揃えよう、という選択肢はあり得ないわけで、これは外圧により、併せてスパイ天国と揶揄された、実のところ実態からかい離した中傷とも思うのですが、その我が国において、特に防衛上もリスクがあった状況を改善する、一つの波及効果となるのではないでしょうか。

Diimg_7957 この点で、防衛産業に係る国際協力は、日本が中々持ちえなかった情報保全といった防衛法の整備面で、一つの今まで為しえなかった波及効果を生み出す、という視点があるわけです。こうした枠組みは、一見数量化された防衛力とは無縁ですが、重要性は非常に大きい。

Nimg_8382 多額の予算を投じて開発した新装備であっても、対抗手段を講じられた時点で陳腐化することとなります。如何に努力した場合でも、運用からどうしても露呈する部分はあり、それまでに新装備へ代替する必要があるのですが、情報保全はこの装備のこうした意味での耐用年数を伸ばす、ということ。

Gimg_8315 これまでは、中で止める、という方式により情報保全を試みていたわけですが、防衛装備品は防衛産業により維持されている、という実情を鑑みれば、どうしても防衛省だけが努力して防ぐことは出来るものではありません、これは国産装備も海外装備も共通するもの。

Gimg_6610 防衛産業からの情報漏洩を阻止する、こうした視点も必要になり、そのためには防衛省の内規や防衛省の努力だけではなく、我が国全体での情報漏洩に対する法整備が必要となるのです。多国間国際分業や国際共同生産という試みは、これを進める重要な要素ともなるのではないでしょうか。

北大路機関:はるな

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