北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】霧の榛名&赤城山,上州地鶏と軍鶏料理を彩る群馬高崎前橋夜の居酒屋紀行

2020-02-29 20:14:34 | グルメ
■上州夜道,冷の清酒は榛名山
 はるなさんはWeblog北大路機関創始者、榛名山は群馬の名山で小学校運動会では榛名組と赤城組に分かれて競うという。本日は四年に一度の2月29日という事で榛名の話題を。

 榛名山望む群馬県高崎市、人口36万の北関東有数規模を誇る都市です。2009年に護衛艦はるな除籍に併せて、はるな探しとして初めて訪問しましたのが榛名山東は榛東村の第12旅団祭、以来旅団祭の際には榛東村に隣接の高崎市界隈を散策する御縁となりました。

 第12旅団は空中機動旅団、その駐屯地は榛名山中腹にあり、式典会場となる相馬原飛行場地区の高台からは赤城山を望む、師団旅団司令部駐屯地の中では最高の眺望を誇る立地ではないか、と思います。その情景を撮影し、高揚した気分で傾ける杯は、また格別ですね。

 上州地鶏軍鶏農場、新幹線高崎駅前の商業ビルに在る居酒屋さんです。群馬県と東京の友人共々実は群馬県は軍鶏が名物という事を知りまして、中でも軍鶏すき焼きという逸品があるという。すき焼きといえば牛さん、鳥すきは旧海軍でチョウスキと親しまれたもの。

 軍鶏すき焼きは、玉葱を使うといい、群馬県と云いますと長葱という当方の妙な思い込と云いますか、印象がありましたのでちょっと意外でした、が旨い。考えてみれば軍鶏のはっきりとした歯応えには玉葱の、時と共に新鮮が柔らかく解れ味の沁みる具合が好いのか。

 ビール、すき焼きに合うお酒は何なのかと考えますと、時間を掛けて嗜むには清酒か焼酎が良いと思う、が、軍鶏となりますと、清酒と共に移ろいゆく時間を嗜みますと、間違いなく煮込み過ぎて硬くなる。これは避けたい、するとビール、という結論に至りました。

 軍鶏といいますか鶏肉は、美味しいのですが加熱しなければ幾つかの留意事項があるのですが、時間と共に歯応えが変わりまして、加熱しつつ新鮮を受け止める具材なのでしょうね。ただ、鉄鍋前に話が弾んでいる間に出遅れてしまうと折角の軍鶏も逃してしまいます。

 すき焼きは一人旅では風情が出会わないものでして、成程多くで囲む鉄鍋から薫る香ばしい割り下と共に具材が料理へと移ろいゆく中、さて煮込み具合と先鋒は何処から行くかの駆け引きと思い出話や近況話の同時進行が、一つ、すき焼きの醍醐味なのかもしれません。

 上州地鶏軍鶏農場、しかし〆では雑炊か饂飩が選べるという事でしたが、此処で意見が二分、個人的にすき焼きは割り下の個性が強すぎ、雑炊で全て平らげるには健康面の塩分が気になるのですが、ここで一大議論に。幸い今回は饂飩派が多数派に。美味しかったです。

 蒟蒻といえが群馬、という。反論は認める。東京と群馬の友人とは楽しい時間を過ごしましたが、やはり一人旅の醍醐味を感じたい、しかし、疲労困憊だ。そこで宿泊していましたアパホテル高崎駅前内の居酒屋にて一杯だけ、一人きりの晩酌を愉しむ事としました。

 赤城山、日本酒が宿泊の場合一合サービスという嬉しい特典がありまして、つまり一号分のお値段で二合楽しめる訳ですね。肴が必要だ、ということで蒟蒻刺身に加え山菜と茸の天麩羅を頂き、何と言いますか健康面に配慮しているのか、油で揚げて台無しなのか、と。

 海老と豆腐の和風アヒージョ、清酒は水が全て、とは伏見でも灘でも強調されるのですが、嗜み始めて盃を重ねますと、清水のように身に透き通る清酒に水の地位を知る訳ですね。故に白湯を呑まない当方は清酒は基本が冷、すると熱々アヒージョを愉しみたくなります。

 榛名山、ビジネスホテルの居酒屋さんなのですが、赤城山と榛名山という日本酒が揃っていました。榛名山とは霧の榛名とはまた違う清酒です。ところで、このお店、看板で入口の一部が隠れていたのですが、店名の隠れ部分に“京都”とあるのですね。ここまで来て。

 湯葉と榛名山、湯葉に漬物とブリューチーズを湯葉で巻いたものなのですが、清酒に漬物の酸味と合う。云われるとこれが京都的、という事なのかな。二軒目の独り酒というものは、どちらかというと淡々と杯を傾けつつ肴を含み思案する、時間を愉しむものだと思う。

 アパホテル高崎駅前、上信電鉄高崎駅のほぼ真上に位置するホテルでして、実は朝食の関係からルートインを多用する当方ですが高崎駅前ルートインは少々というか非常に駅から歩くため、陸橋で駅から繋がるこちらにしました。大浴場もあり居酒屋も、楽しめました。

 第12旅団祭、高崎駅から公共交通機関で臨む事としますと榛東村方面への始発バスは0815時、前橋駅からも榛東村へバスが運行されているのですが、到着時間は0900時を確実に過ぎます、旅団祭を良い撮影位置から臨むのには自動車か榛東村に泊まる必要がある、のか。

 群馬県は自動車普及率が高く一軒一台ではなく一人一台、というだけでもない、自動車一人一台一家に一台軽トラック、と云われました。故に名店を巡る際にも自動車が不可欠でして、すると一杯晩酌は相乗りが必要、となる。名店は駅近ばかりではないのですからね。

 豆利平、前橋市の鳥料理専門店です。東京と群馬の友人共々お勧めのお店という事で、まず第12旅団祭の撮影を経まして、榛東温泉という榛東村立天然温泉を満喫した上で湯気と共にお店へ。実は全ての鉄道駅から離れていまして、電車旅の当方一人では縁遠い場所だ。

 鳥めし、群馬名物という。意外に思ったのは鳥めしといいますと名古屋名物という印象がありました。SFの巨匠小松左京御大の小説“首都消失”冒頭に駅弁鳥めしが登場しますからね。名古屋の鳥めしは味御飯に鶏肉の照り焼きが載せられ籠の弁当箱に入ったものです。

 群馬名物の方の鳥めし、驚いたのは銀シャリの上に鶏肉が載せられていて、秘伝タレがまぶしてある、名古屋の駅弁に慣れている当方には一寸吃驚しました。ただ不思議な共通点と云いますか、長方形の弁当箱に収められているのは、群馬も名古屋と同じなのですね。

 上州地鶏の焼き鳥盛り合わせ。長々と雑談を嗜むには焼き鳥、という事なのでしょうか。焼き鳥は熱々が好いと昨今思うようになり一本二本を注文する当方ですが、これは一人呑みの流儀か、すると冷めても風味変り難いタレをわいわい囲む方がある種話題も弾みます。

 豆利平、相馬原駐屯地から15km程離れているのですが、人気店です。実は30分ほど待ち時間がありまして、店内の長椅子では収まりきらず、少々煙感酷いものの喫煙場所の長椅子で待っていました。ちょっと一杯、というには若干時間に余裕が必要かもしれませんね。

 高崎えにし。高崎駅東口から陸橋沿いの焼き鳥屋さんです。赤提灯というものは夜に一際鮮やかに映るものでして。実のところ相馬原駐屯地界隈の居酒屋さんにも興味があったのですが、中華料理屋が一軒在るのみ、しかも高崎からの交通利便性から断念しました、と。

 高崎えにし、カウンターを中心に奥座敷と二階席が広がる店内で、此処と巡り合ったのは何年前でしょうか、ホテルは高崎駅西口付近を利用しますので東口側を利用したのはヤマダデンキを利用した後の散策の果てだったと思います。高崎のヤマダは拠点というもの。

 群馬では鳥ばかりだなあ、思うのは今回改めて。第12旅団祭以外の群馬を余り知りませんが。勿論中心部では豚料理やお寿司等も楽しんだのですが、妙に記憶に残ったのは軍鶏すき焼きと群馬鳥めし、だからこそ焼き鳥も含め鳥料理が印象強く思ったのかもしれません。

 赤城山という地酒が。霧の榛名という地酒は群馬総社駅で昔知り、ここ高崎のデパートから送ったほど。群馬県は榛名に赤城という旧海軍を代表する殊勲艦の艦名を冠した峰々が広がり、高雄に愛宕に比叡と三笠が続く京都に通じるものを感じる。その地酒を含みつつ。

 五本盛や六本盛、焼き鳥の提灯を掲げるお店には定番の一つですが、個性で売る焼き鳥店では串名から想像できない部位の調理法がありまして、先ずは五本盛等盛ってもらい感触を確かめた上で、次の注文と行きたいところです。次の注文は一本一本を吟味し、愉しむ。

 鳥皮ポンズなどは、一本一本の焼きたてを頂く幕間に杯を乾かせない為の工夫の一つです。同じ種類をばりぼり貪る若者独特の頂き作法も良いのかもしれませんが、二軒目に嗜むようなお酒の肴を探すには、時間というものも併せて楽しむこころの余裕が、大切ですね。

 榛名山と赤城山、群馬県は散策しますと中々に趣き深い場所も多く、実のところハーゲンダッツの世界三箇所工場の一つが在ったり、名物焼きまんじゅうや御焼きなど、年に一度散策するだけでは深い場所までは至れないのですが、それでも、一寸散歩は、楽しいです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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グアム沖で中国艦が米機をレーザー攻撃!052D型駆逐艦が米P-8A哨戒機に,太平洋艦隊が抗議

2020-02-28 20:01:20 | 防衛・安全保障
■西太平洋上の米中軍事緊張
 グアム沖でアメリカ海軍の哨戒機が中国海軍駆逐艦よりレーザー光線を照射されるという事態が、新型コロナウィルス肺炎蔓延続く最中に発生しました。

 さみだれ、太原。アメリカ海軍のP-8A哨戒機がグアム近海で中国海軍駆逐艦よりレーザー照射攻撃を受けました。今回P-8A哨戒機に対しレーザーを照射しましたのは昨年自衛隊自衛隊観艦式外国艦艇として招待されました中国海軍駆逐艦太原と同型の052D型駆逐艦です。アメリカ海軍によれば照射を行った艦艇の艦番号は161、艦番号から駆逐艦呼和浩特です。

 P-8A哨戒機はボーイング737型旅客機に対潜哨戒や海洋監視等の各種センサーを搭載した哨戒機です。事件は2月17日に発生しアメリカ海軍により昨日27日に公表されました。レーザー照射事件はグアム島西方380浬の公海上で発生、アメリカ海軍乗員に負傷者はありませんでしたが、P-8A哨戒機のセンサーが駆逐艦からのレーザー照射を検知しました。

 052D型駆逐艦にはレーザー砲等は搭載されていませんが、艦砲として130mm単装砲を搭載しており、この為に測距装置を搭載しています。通常、測距装置には余程の旧式でない限り有害なルビーレーザー等ではなく、安全なアイセイフレーザーを採用するのですが、アメリカ海軍によれば航空機のセンサーや操縦士への危険が及ぶものであった、とのこと。

 呼和浩特、P-8A哨戒機へレーザーを照射したのは昆明級/052D型駆逐艦の12番艦で2016年に竣工した防空駆逐艦です。レーザー照射は米中間でも2014年西太平洋海軍シンポジウムにおける多国間海上相互規範CUES,そして更には米中国防当局海上航空安全規則覚書MOUにおいても実施しない協定があり、アメリカ太平洋艦隊は強く抗議した、とのこと。

 052D型駆逐艦には測距装置としてレーザーレンジファインダーが搭載されていますが、機種によっては電子機器に有害であると共に視力に対しても影響を及ぼす波長があり、アメリカ海軍は今回のレーザー照射が電子機器及び人体の特に視力に対し影響を及ぼすレーザー照射を行わない米中MOUへの違反行為であるとして抗議、事態は深刻といえましょう。

 ゆうだち、に対して中国海軍が行いP-1哨戒機に韓国海軍が実施したレーダー照射事案が在った。そして今回のレーザー照射、一文字違いではありますが、レーダー照射は特に射撃管制レーダーが用いられたため、攻撃手順の一巻であるとして批判され、中国政府は日本政府に陳謝しました。他方、一文字違いのレーザー照射は攻撃そのものといえましょう。

 中国軍による米軍機へのレーザー照射は初めてではなく、2018年5月3日にもアフリカのジブチにおいてC-130輸送機に対して実施されており、この攻撃ではジブチ共和国が中国や日本、フランスやアメリカなどに対し提供されている飛行場にて、中国人民解放軍区画から米軍機に実施、操縦士二名が軽傷を負い、外交ルートで抗議する事例がありました。

 レーザー兵器使用は特定通常兵器使用禁止条約CCW追加議定書により使用が禁止されています。具体的には1995年締結の特定通常兵器禁止条約追加議定書4により禁止されており、失明をもたらすレーザー兵器の使用と失明をもたらすレーザー兵器の移譲が禁止され、1998年に発効しています。そしてこの中では測距用レーザーについても制限があります。

 アイセイフレーザー。レーザーとは方向性を持ったコヒーレント光であり、これが眼球の水晶体をへて網膜の裏側に当たりますと、比較的小さなエネルギーであっても永久失明を引き起こします。測距用にかつて1970年代にもちいられていたルビーレーザーなども実は有害であり、その後は波長が視力に影響しないアイセイフレーザーに転換しているのです。

 軍用レーザーは、測距装置はもちろん、レーザー誘導爆弾など、その用途は広く、例えば測距装置などは目標への正確な距離を算出することで戦車射撃などを性格に命中させる際の不可欠な要素となっていますし、対戦車ミサイルなどはレーザー反射光へ誘導する第三世代型がまだ世界中で多く、レーザー誘導爆弾等も普及しています。ただし此処で制限が。

 視力を奪う目的でのレーザーは、現在国際法にて禁止されていますが、国際法に禁止が明示される前であっても1907年ハーグ陸戦条約において、兵士に不要な苦痛を与えることを目的とした兵器が禁止、当時はダムダム弾などが想定しましたがレーザーも含まれる解釈があり、更に1932年ジュネーブ条約とともに1930年代後半から国際慣習法と考えられた。

 フォークランド紛争。レーザー兵器が視力を奪う目的により使用されたのは1982年、イギリス海軍が水上戦闘艦に艦橋構造物にサーチライト状のレーザー照射装置と思われるものを搭載していました。また、同時期、アルゼンチン軍機が不自然な墜落を起こした事からレーザー照射による突発的失明が原因と疑われる事例があり、疑義がもたれています。

 湾岸戦争でもイラク軍がT-72戦車の一部にダズラーミサイル妨害装置が搭載されており、これが視力を奪う、つまり対戦車ミサイルの視線合致誘導を妨害する、レーザー兵器と見なされ、多国籍軍ではその対策に追われました。なお、レーザー兵器対策は特殊遮光ゴーグルが用いられ、相当数が準備されたのですが、幸い、レーザー兵器は使われていません。

 特定通常兵器禁止条約はこうした懸念を受け、明確にレーザーが禁止されたのですが、イギリス海軍のほかにソ連海軍水上戦闘艦の一部にも同様の形状装備が1980年代に確認されていまして、ソ連海軍艦艇が戦闘に参加する事例はありませんでしたが、東西冷戦下、使用されることなく、しかし明確に禁止されていない装備というものは多かったといえる。

 344型火器管制装置。キノコを横にしたような形状のレーダーが今回レーザー照射に用いられたもので、パルスドップラーレーダーと共にTV目標追尾装置、そしてレーザー測距装置が搭載されています。レーザー測距装置はテレビカメラ状のもので誤照射を防ぐためにカバーが被せられているのがお分かりでしょうか。要するに戦闘照準にしか用いないもの。

 中国の今回の照射行動、特定通常兵器禁止条約追加議定書4には中華人民共和国も批准しており、アイセイフレーザー以外のレーザーを第三国の航空機に対して照射したことは厳しく批判されると考えるのですが、もう一つ、迂闊であると嘆息するのはレーザー兵器は近年、視力を奪う目的以外で開発が日米含め進み、使った事で相手に口実を与え得たこと。

 SHiELDシステム。2019年よりアメリカ空軍及び海軍がF-15戦闘機やF/A-18C戦闘機用に開発している機体自衛装置です。F-35戦闘機やF-22戦闘機、アメリカ軍はステルス戦闘機の配備を進めており、これらの航空機はミサイル攻撃を受けた場合でもステルス性によりミサイルに見つからず回避することが可能です。しかしそれ以外はどうか、ということ。

 F-15やF/A-18Cなどはステルス性が無く、そのために機体を自衛する掉尾として開発されたものがSHiELDシステムで、これはレーザーを用いるもの。戦闘機搭載用レーザー砲というもので機体の後方含む周辺から接近する空対空ミサイルや地対空ミサイルを破壊するための装備、現段階では開発を経て試験中ながら、基本装備で広範に配備される計画です。

 C-130J輸送機などは機体自衛レーザー装置が比較的早い時期から配備されていまして、こちらはSHiELDシステムのようにミサイルを破壊するのではなく、携帯地対空ミサイルなどの赤外線追尾装置にレーザーを幻惑するもので、我が国でもC-1FTBに搭載し評価試験を実施しています。こうした装備があるのですから、仮に中国が本件を正当化したらば。

 特定通常兵器制限条約追加議定書4の範疇において日米やNATO諸国は、現段階では平時から妨害目的によるレーザーの照射装備は有していません、が、機体自衛装置として対人用には使わないレーザー装置があるのです。故に中国が測距用としてアイセイフレーザー以外を使用し続けた場合、周辺国に強力な測距用レーザー使用の口実を、示したのですね。

 中国海軍によるレーザー照射は、海上自衛隊護衛艦ゆうだち、に対する火器管制レーダー照射と同じ現場の暴走であるのか、グアム方面への中国海軍軍事行動の一環としての中国政府や共産党党中央の支持を受けてのアメリカ海軍への公海上での飛行妨害行為であるのかは現時点で不明ですが、西太平洋での極めて憂慮すべき事態である事は確かでしょう。

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令和元年度二月期三月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.02.29-03.01)

2020-02-27 20:01:20 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 来週月曜日から全国すべての小中高と特別支援学校を臨時休校とする政府要請が行われましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

 今週末の行事紹介、としたいところですが防衛省は新型コロナウィルス肺炎の拡大を受け当面の行事公開中止を決定したとのこと。今年度は未だ今月いっぱいと共に三月末日まで続きます。しかし、新型コロナウィルス肺炎の日本での感染拡大を受け、政府は大規模行事などの自粛や延期を勧告しており、防衛省もこの指針とともに中止を決断したとのこと。

 防衛大学校や防衛医科大学校などの卒業式、陸海空自衛隊の幹部候補生学校では父母が招待され挙行されていますが、こちらについても父母正体を取りやめ内部行事として行うとのこと。三月には護衛艦まや竣工や練習艦隊出航、例年では春日井駐屯地祭等も執り行われ、艦艇広報も行われるところですが、今年度については致し方ないのかもしれません。

 2009年の新型インフルエンザ拡大と世界保健機関WHOによるPHEIC衛生非常事態宣言が発令された際には、五月の千僧駐屯地祭等が中止となっており、本年は夏季に東京五輪が予定されている為、富士総合火力演習が五月に前倒しされる事から一般抽選などは四月から開始の必要があり、この当たりの実施についても事態の推移を見守ってゆきましょう。

 今週末の自衛隊案連行事無し。こんな週末では新型肺炎や新型インフルエンザを警戒して山陰地方あたりに疎開したいところですが、こんな時だからこそ軍隊のNBC対策備品を生活に役立ててみてはどうでしょうか。第一次世界大戦ではフランス軍やイギリス軍、ドイツ軍は今日では日用品として身の回りにあふれる意外なもので毒ガスを防いでいました。

 マスク、木綿の伝統的なマスクで今回の新型肺炎には意外と効果が無いと専門家の意見が出されているものですが、あの白いマスクで草創期の毒ガス戦、塩素ガスが使われていた事には防いでいました。若干、いやかなり不安に見えますが食塩水を沁み込ませると草創期の塩素ガスによる攻撃はある程度防げたという。なにかマスクが心強くなってきますね。

 ティッシュ。ソンムの戦い等で神経ガスや糜爛剤が投入されますと木綿マスクは役に立ちません、そこで大活躍したのがティッシュです。実際には顔面全体を覆うマスクのフィルターに木綿フィルターが用いられ、戦後大量余剰品がティッシュとして民生化されたもの。七枚程重ね塩粒を挟んでいたようですがティッシュ加工手製マスク、代用品にお勧めです。

 さて撮影の話題を。戦闘糧食、非常に時間に余裕のない状況で喫食できるよう、パック保存食を中心にクラッカーと組み合わせた手製の戦闘糧食を防水パックに収容して携行した、という話題を前回紹介しましたが、この容量、主としてミラーレス一眼一式と同程度に収める事が出来る利点があります。リッツクラッカー一袋はミラーレス用ズームレンズ一本と体積ほぼ同じ。

 メインディッシュパック、コンビーフやツナと焼き鳥、パック化されて販売されていまして、常温保存可能ですし、喫食後パックは丸められて便利です。サラダ用パックとして、ヤングコーンやスウィートコーンにマッシュルームやビーンズと様々な種類が販売されていまして、常温保存が可能です。野菜があるかないかで食事の満足度が変わってきます。

 ただ、難点はクラッカーの主食としての機能です。各国の戦闘糧食を見ますと、主食をクラッカーで済ませている事例は多いのですが、どうしてもコメの主食に慣れていますと、代替品にはなりません。パック飯では加熱が必要なものが多く、不定期な機会でも即座に喫食する、という目的を完遂するには、クラッカーの方が不味くとも手早い、のですよね。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都幕間旅情】六波羅蜜寺,空也上人が疾病を祓い今も安寧願う西国三十三所第十七番札所

2020-02-26 20:16:37 | 写真
■洛陽三十三所観音霊場札所
 清水寺に建仁寺と京都駅から東は世界に知られた寺院が並びますが皆様、急ぎ過ぎてはいないでしょうか。

 六波羅蜜寺。山号を補陀洛山とする朱色の美しい寺院は京都市東山区松原通大和大路東入に鎮座する真言宗智山派の寺院です。多くの方は五条通を清水寺へ上りますが、鴨川を渡り手前を東山の方へ歩み進めますと、空也上人所縁の寺院が静かにしかし確かに広がる。

 本堂と弁財天堂と宝物収蔵庫。六波羅蜜寺の伽藍は今日でこそそれ程壮大なものではありませんが、仏教美術の多くを中世から今日に継承しました収蔵庫とともに応仁の乱以前の貴重な仏教建築が今日に維持されており、宝物殿以外は日中自由に拝観ができるのです。

 西国三十三所第17番札所として列せられると共に洛陽三十三所観音霊場第15番札所、そして神仏霊場巡拝の道第118番であり都七福神巡り弁財天札所という、格式ある寺院の歴史は千年を遥かに超える祈りの場で、建立当初には都の西にて西光寺と称していました。

 空也上人が造営しましたお寺は、天暦5年の西暦951年に遡り、この頃の京都は疾病病魔を払うべく建立され、空也が佛鉦鳴らし念仏唱えつつに悪疫退散を祈り歩く姿は、木造空也上人立像として日本史や美術教科書に並ぶところですが、この六波羅蜜寺に奉じられる。

 西光寺として建立された当時には、京都に蔓延する疾病の原因が皆目見当つかず、空也上人は僧侶600名と共に十一面観音像を山車に乗せ、念仏を唱えると共に洛中を巡幸し、疾病祓いを願いました。いわば当初、御旅所に近い形での西光寺であったのかもしれません。

 本堂は貞治2年即ち1363年の修営外陣を板敷きとしたもので、応仁の乱を辛うじて生き延びた仏教建築です。この本堂は蔀戸に四半敷土間を組み合わせた所謂天台式建築様式となっていまして、西光寺から六波羅蜜寺となった後の造営様式が如実に見て取れましょう。

 十一面観音を御本尊として奉じる御山ですが、この御本尊木造十一面観音立像は西光寺の時代に御本尊として奉じられたという、平安時代の彫像である秘仏です。1999年に国宝に指定されていますが特別拝観は辰年数日間に執り行われるのみであり、時を待ちましょう。

 木造四天王立像は空也の自からの彫像と伝わりますが、寺には本堂宝物館に数多仏教美術が並びます。前述の木造空也上人立像は鎌倉時代にかの仏師運慶の四男である康勝の作といい、平清盛像木造僧形坐像や木造伝運慶坐像という運慶の肖像彫刻も安置されています。

 六波羅蜜寺となりましたのは空也の没後、法主として貞元年間の西暦977年に比叡山より中信がお寺を天台別院として天台宗寺院へ改めた上で六波羅蜜寺としました。この六波羅蜜寺とは仏典の六波羅蜜に由来したとも、当地の古名“六原”に由来したとも伝わります。

 平清盛はじめこの六波羅の地名は日本史に示される立地ですが、平清盛が今出川の旧邸から改めて造営した六波羅殿、そして鎌倉幕府が朝廷を監視するべく京都に置きました六波羅探題も、この六波羅蜜寺の当たりと云います。そしてお寺は最盛期非常に広かった、と。

 江戸時代には五条通が現在ほど広くは無かった事は当然としても、清水寺や大谷本廟に隣接する程の大伽藍が広がっていたとされますが、明治維新とともに始まった廃仏毀釈による寺域売却が進んだことで狭くなっており、周辺は町家や学校に囲まれる立地となります。

 学校に囲まれた事は実のところ残念な結果をもたらしまして、2009年に近所の学校校舎建て替え工事を実施した際に振動により宝物殿収蔵品が損傷する事態となり、京都市との間で係争がありました。校舎解体は他にも残っており、今後予断を許さない状況があります。

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さよならOH-6D観測ヘリコプター【2】現代のBK-117&EC-145規模,軽ヘリコプターの活路

2020-02-25 20:05:26 | 先端軍事テクノロジー
■高性能と両立せぬ軽量機
 明野航空祭でのOH-1とOH-6の引継式も想い出の話となりましたが、観測ヘリコプターの任務は現代の課題です。

 OH-1観測ヘリコプターと同程度の監視能力が無ければ長射程化する火砲と第一線へ普及する地対空ミサイル脅威下では撃墜されに行くようなものです。特科火砲射程は40km台となり、早い話が京阪本線や阪急京都本線に匹敵、京都駅から大阪城の距離に等しく、見えない事は無いですが、OH-6Dのように双眼鏡での着弾観測は現実的に考えて難しい。

 ドイツ連邦軍はEC-145を採用しました、EC-145,要するに川崎重工BK-117のユーロコプター側名称ですね。EC-145,多用途機として運用するには過小で観測機として運用するにも限界がありますが、EC-145はドイツ陸軍において救急ヘリコプターとして導入されドイツ国内三カ所に配備されるとの事、救難ヘリコプターですが衛生軍ではなく陸軍の配備です。

 EC-145というユーロコプター社製ヘリコプターのドイツ連邦軍での採用決定、これは驚かされるものでした、EC-145は川崎重工BK-117の欧州版、共同開発しましたメッサーシュミットヘリコプターエアクラフト社と川崎重工の機体なのですね。高度な電子機材を搭載していない、だからこそ比較的安価で且つ運用が容易である小型ヘリコプターの採用です。

 救難ヘリコプターではなく救急ヘリコプター、これならば例えば山間部での戦闘救難任務や海上での墜落航空搭乗員救助というような厳しい状況での運用は想定しませんのでEC-145でも充分事足りる、ということでしょう。BK-117,実はこの機体が観測ヘリコプターに向いているのではないか、という話題は2006年頃に本論でも掲載していますがけれど。

 BK-117,その後に航空科の方といろいろとお話ししました際に、敵防空火器の圏内を飛行した場合にヘリコプターは確実に撃墜されると認識しなければならない、という現状を多くの方から強調されまして、実際、アフガニスタンでは対空火器の圏内を飛行したCH-47などが多数撃墜されたコブラ作戦という実例、その圏外から攻撃を加える性能が必要です。

 AH-64Dの重要性がこうしたかたちで示され、また大口径高射機関砲の脅威があったフランスのマリ介入作戦ではEC-665があくまで自軍上空から遠距離攻撃を行うという、文字通りの”近接”航空支援を行い成果を上げています。こうしたなかでBK-117や同程度の安価な航空機の活躍の場というものは、実際に観測任務を考えれば非常に薄かったわけですね。

 UH-72,他方でアメリカ陸軍州兵などは基本的に海外派遣に用いない用途としてEC-145の系統にあるUH-72を採用、連絡任務などに成果を上げています。ドイツ連邦軍は現在、救急ヘリコプターにUH-1Dを充てていますが要するに自衛隊ではとっくの昔に全廃となったUH-1Hよりも前の形式です、そして三カ所に配備されるという運用ではあるのですが。

 EC-145の配備を見ますと、ドイツ連邦軍は現在第1装甲師団と第10装甲師団に特殊作戦師団の三個師団体制を採用しいていますので、師団数と救急ヘリコプター部隊は同数、というかなり配慮した配備となっています。それでは話題を日本に戻しましょう、自衛隊はBK-117やEC-145のような航空機を用いにくい背景には、専守防衛の政策が在ります。

 日本の専守防衛、つまり敵の正規軍で加えて海上航空自衛隊の初動段階において一時的に絶対航空優勢を戦域確保できる相手との戦闘を、憲法上宿命づけられていますので、安易な航空機は撃墜されるだけです。憲法を変えて安価な航空機を、とも考えるのですがそれほど簡単に改憲手続きは実現しません。結果、OH-6D後継機は宙に浮いたまま、減勢が。

 OH-6D後継機は現れぬままに、年度末の全廃を待っている、という。BK-117,さて、救急ヘリコプターを念頭とした航空機に自衛隊も採用できないでしょうか、ドクターヘリと用途が重なる、と批判もあるでしょうが現行法では防衛出動時にドクターヘリを自衛隊の指揮命令体系に置く枠組みは存在しません、すると負傷者が生じた場合はどうするべきか。

 国内法の壁。更に自衛隊の場合は医師法の関係上、救急車に医療設備を十分施すことが出来ません、過去にアメリカ陸軍のストライカー装甲救急車をみる機会がありましたが医療用コンセントに輸液や心電図機材がならび在る程度の措置が可能、対して自衛隊の救急車は単価を格納し包帯所に運ぶ1t半という格差でした、この点ストライカーは衝撃的だった。

 自衛隊では現時点で、ダストオフ即ち第一線からの救急搬送に貴重な方面航空隊のUH-1Jを投入しているため、空中機動と航空救急搬送の両立が少々不安であると感じたことも事実です、すると、BK-117をOH-6の後継ではなく新しい救急航空機、そして副次的に防衛出動以外の情報収集にあてる搬送ヘリコプターとして採用し得る余地はないのでしょうか。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【映画講評】復活の日(1980)【1】未知の病原体による人類の終焉,巨匠小松左京が問う文明観

2020-02-24 20:09:07 | 映画
■角川映画,深作欣二監督作品
 COVID-19流行と共に懐かしい本作が注目を集めているようで、深い内容の本作を流行禍に便乗して撫でるのは余りに残念と思い深読みの話題を綴ってみました。

 復活の日、角川映画が1981年に制作しましたSF巨編です。原作は1963年に発表された日本SF界の巨匠小松左京の著書であり、アジア風邪や香港風邪の影響下で発表、日本沈没や首都消失とともに膨大な代表作の中でも異彩を放っています。そして復活の日、その主題が新型ウィルスによる人類文明の終焉と復活への端緒という、壮大なものなのですね。

 2011年東日本大震災に際し同じ著者の代表作“日本沈没”に注目が集まった事を一つ思い出しました、あの作品は1973年版映画やテレビドラマ版も素晴らしいのですが、最後に護衛艦はるな登場、日本沈没第二部では護衛艦くらま舞台、そして災害描写以上に日本の文明観を問う、実は非常に深い原作を映画として纏め、一種原作への入り口としていました。

 潜水艦の映画だ。実はこの作品、原作にも原子力潜水艦が重要な役割を果たしますし、映画では原子力潜水艦は流石に撮影協力が得られなかったようですが、チリ海軍の潜水艦が撮影に協力、映画“潜水艦イ57降伏せず”程ではありませんが潜水艦も描かれている邦画屈指の潜水艦映画、といえるかもしれません。これも映画化への力の入れよう、とおもう。

 深作欣二監督作品。映画は仁義なき戦い始め任侠映画で世界的な知名度と共に映画エイリアンシリーズに影響及ぼしたガンマー第3号-宇宙大作戦や日本版スターウォーズというべき宇宙からのメッセージ、日米合作戦争映画トラ・トラ・トラというよな様々な作品で名を残した深作監督の作品で、製作費は30億円規模、邦画としては超大作予算が組まれた。

 草刈正雄主演。南極昭和基地に渡瀬恒彦と夏木勲と千葉真一というアクション映画並みの陣容とともに多岐川裕美と緒形拳を加え、更にアメリカ政府首脳にグレン-フォードとロバート-ヴォーン、原子力潜水艦艦長にチャック-コナーズ、マクマード基地越冬隊長に困ったときはいつものジョージ-ケネディ、本作のキーマンにボー-スヴェンソン、中々の顔ぶれ。

 小松左京の作品、日本沈没や首都消失にエスパイ、映画化されたものは数多く、さよならジュピターのように映画は振るわなかったが後に発行したノベライズ版がベストセラーとなった事例も多く、しかしその世界観は壮大であり世界観まで包括しての映画化が難しい、故に首都消失や日本沈没はたんなるパニック映画に終わった印象がないでもありません。

 原作を敢えて読まれてみては、世界観が広がりますよ、ということで読了前、敢えての少しネタバレを挟みます。復活の日、ベストセラーでありまして、私も初めて読破したのは中学生の頃でしょうか、なにか価値観の形成に大きな影響があった作品です。そしてこの作品には、小松左京氏の旧制中学時代の価値観が反映されているようにもおもえるのです。

 新型インフルエンザ、これに偽装した未知のウィルスによる人類滅亡の危機を示した本作は、現在流行しつつあるCOVID-19新型コロナウィルス肺炎の中国での流行が本格化した頃からAMAZONプライムビデオなどの配信において、同じく感染症の脅威を描いたアウトブレイクとともに、こちらは空気感染するエボラ新型が相手でしたが、注目を集めた。

 アウトブレイクとともに、そのうち細菌列島のような作品にも注目が集まるのでしょうけれども、改めてAMAZONプライムビデオにて視聴されたかたには、より深い原作世界も触れていただければ、としまして今回特集としました。復活の日、日本でのベストセラー化と一時はアメリカへ映画化権利が検討されるほどに1960年代には話題となりました。

 南極の観測基地で越冬中であった一万名程度の観測隊員と米ソの原子力潜水艦二隻を残して世界は破滅する、衝撃的な展開で、角川映画はこの超大作の映画化にあたって世界初という南極ロケを敢行するなど、その制作にも注目が集まるものでした。しかしこの作品、単なるアウトブレイク、爆発的感染やパンデミー、世界的流行禍が舞台ではありません。

 チベット風邪とよばれる新型インフルエンザが春先頃から爆発的感染をすすめ、しかも同時期に鶏など鳥類にも致命的な伝染病が蔓延、インフルエンザワクチンを有精卵から培養していた世界のワクチン産業は大打撃を受け、阪大が細菌分離に成功するものの、世界中で有効なワクチン開発が遅々として進まず、致死率は徐々に30%へと不気味に上ってゆく。

 インフルエンザでは他の天然痘などの様な法定伝染病のような厳しい防疫手段を世界中が執ることが出来ず、今風にいうならば、正しく恐れて、いるうちに病院は機能不随に陥り、しかもインフルエンザとともに突如心筋梗塞を引き起こすポックリ病と呼ばれる正体不明の伝染病が伝播し始める、こうして学校休校から始まり社会は徐々に蝕まれて行きます。

 人との接触感染か飛沫感染か、とにかく町中ではマスクが溢れ、せき込む声が満員電車の中で聞こえますと人々は顔をしかめ、葛根湯がよいとか卵酒に限るとか、新興宗教にホメオパシーというべき疑似科学の怪しい対処法が溢れる中でも現実としての感染者数が増えてゆき、たかが風邪じゃないか、という楽観論が手遅れを防ぐ端緒を塞いでゆきました。

 ソ連首相が風邪で死亡、日常的なインフルエンザへの不安が一つ、新聞の社会欄から国際欄に飛び出る一つの転機としまして、この事件が登場するのですが、この転機もアメリカ大統領が、折角進めていた米ソ核軍縮交渉が頓挫してしまった、こう嘆きまして、インフルエンザよりも核戦争の脅威払拭の方が重視されている風潮が示されるに留まりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【7D特報】奉祝天皇誕生日特別企画,百里基地ブルーインパルス飛行展示(2016-11-26)

2020-02-23 20:05:04 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■首都圏に舞う航空自衛隊精鋭
 本日は天皇誕生日、令和年間初の天皇誕生日という事で慶祝の意を込めて百里基地でのブルーインパルス飛行展示の様子をお送りしましょう。

 ブルーインパルス、航空祭の華であり大団円というべき大空の妙技、この飛行展示を目的に航空祭を探訪する方も多い、しかしブルーインパルスは簡単なようで奥が深い展示であり、如何に美しく撮影するかは、ある種数十年の命題となりえるのかもしれませんね。

 松島基地より全国に展開するブルーインパルス、松島基地では毎日基地HPにて飛行訓練実施情報が開示されることから、東北の特権といいますか、ブルーインパルスを有休の日数分だけ撮影している、という気合いの入った方も多いとかで、少々うらやましくも思う。

 T-4練習機、実は当方が初めて見上げたブルーインパルスは超音速のT-2練習機時代でして、昨今は航空愛好家の方でもT-2練習機を飛行している様子をみたことがない、という方もふえている様でして、私もそれなりに年季が入ってきてしまったのか、と寂しくも感じます。

 T-2練習機の戦闘機然とした、実際有事の際には補助戦闘機として運用されることが想定されていたのですけれども、一方で翼面加重の関係から小回りに制限のある機体に対してT-4は亜音速ながら小回りの利く展示が可能になったといい、そんなものかと当時は思った。

 航空自衛隊の航空祭なのですから、ブルーインパルスを撮影する際にどうしても考えるのは、単に見上げるだけのブルーインパルスではその写真単体、大空とブルーインパルスだけの構図となってしまいまして、どの基地で撮影したのか一見してわからないということ。

 日本全国、ブルーインパルスは数多くの基地にて、時には基地以外でも飛行展示を実施しますので、まずはどのようにして、その撮影場所を連想できるか、という背景を考えます。このこだわり、ブルーインパルス本場ではないからこその留意、というところなのですね。

F-4戦闘機の基地ならば列線をできるだけ構図に含めて撮影したいところですが、思いの外撮影位置というものを早い段階で決断して、おそらくはこの角度からこう飛行するのだろう、と判断しそのための必要な位置を連想しまして撮影準備を行わねばなりません。

 ブルーインパルスの撮影は、しかし、予行をしっかり撮影する余裕はない当方として、この基地ならばこの建物を背景に撮影しよう、と気合いを入れていますと進入経路が予想と違ったり、飛行展示の区分が当日の天候に影響され、実はかなりの失敗を重ねました。

 最前線物語。リーマーヴィンの映画のような話題ですけれども、撮影位置でたとえば多少難しそうなアングルであっても、最前列を確保できますと、画角の自由度というものがかなり大きくなりまして、撮影の際に少し厳しい姿勢でも安心して撮影することができる。

 基地飛行展示にて、最前列というものは滑走路を見渡せる立地を意味しますから、離陸の瞬間の素早い飛行展示の機動飛行へ遷移する瞬間を撮影できるのですが、目の前に地上展示航空機がありますと、視界遮られると思ったりもします、ところがブルーインパルスは。

 ブルーインパルスはスモークを曳いて飛行展示をおこないますので、目の前の地上展示航空機、その真上に飛行展示の妙技、これぞ曲技飛行という情景を構図とすることが、つまり被写体の変化を盛り上げられるのですね。これも撮影位置選択肢の一つといえましょう。

 T-4練習機、次のT-X練習機はどのような機体になるのだろうか、こう考えつつ昔はT-2の戦闘機然としました機能美と俊敏鋭利な機体形状に浪漫感じたものなのですが、T-4,見慣れてみますと、なかなかに航空自衛隊の航空祭に馴染んだ、こういえるのかもしれませんね。

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衛生自衛隊が必要だ:3.11東日本大震災追悼【5】福島第一原発原子力災害の再来への警戒

2020-02-22 20:00:21 | 防災・災害派遣
■核攻撃脅威へも抑止力
 東日本大震災を回想しますと、あの当日に世界に中継された巨大津波と共に災害救助への障害となった原子力災害、その二つが突出して印象的でした。

 核事故にも核攻撃にも備える必要がある。こうした視点から、どの科の官庁が行う必要があるならば、特に東京消防庁にも厚労省医系技官にも、こうした準備を求めるには限度があります。対特殊武器衛生隊を含めた専門知識を、全く平時インフラが機能しない状況に置いて、確実に迅速に立ち上げて機能させるには、軍事機構たる自衛隊しか対応できない。

 被曝治療、これは非常事態法制の枠組と共に考える必要がありまして、原子力非常事態を背景に発動させる非常事態法制の一環として被曝衛生治療に対し研究と部隊運用に実績を持つ機構として自衛隊が民間医療施設の機能維持を行う、という視点は見方を換えれば文民統制に反する可能性、自治体行政への自衛隊との関係を一種再認識させるものといえる。

 非常事態法制の中に、平時から被曝治療に関する情報を蓄積し、多数の被曝者を同時に応急治療を行う運用計画を有している組織として自衛隊を挙げ、その上で、現場で最も適切な行動を遂行可能な当事者に指揮命令系統を非常時に限定して包括する、という枠組を構築する必要があるでしょう。理想は民間に十分な被曝治療余力ですが現実は見るべきです。

 スクリーニングと被曝者除染、実のところ世界最悪の原子力事故に数えられている福島第一原子力発電所事故ですが、スクリーニングを行った範疇では衣服に高レベル汚染が確認されるような、つまり身体そのものの除染が必要な程の重度被曝者は放射性降下物が観測された地域、現在の帰還困難地域住民に対しては確認されていませんでした、幸いという。

 最悪の状況を考えるならば1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故、黒鉛減速炉の黒鉛が燃料棒を吹飛ばした結果に大量の放射性物質が拡散した、こうした状況のような福島第一原子力発電所事故より数段酷い状況、人員に対する除染が必要な状況を考慮せねばならず、これは民間医療機関にその能力整備を期待するのはある種、度を越しているといえる。

 対特殊武器衛生隊、次の大規模災害を考えますと、考えたくはない事ではあっても原子力事故の可能性というものは、再生可能エネルギーに限界があり、化石燃料依存度を高められない気候変動対策強化への世界的な趨勢を俯瞰しますと、原子力事故という懸念とは最大限、考えねばなりません。事故防止も、起きた場合への治療という視点も含めて、です。

 被曝という非常事態は一例として喫緊の課題である次の原子力事故への脅威対処として提示しましたが、これは目を逸らしては成らない周辺国からの我が国都市部への核攻撃、核攻撃時の被爆医療という観点も当然含みます。大規模な公共核シェルターを有さない我が国としては、簡単に防衛ということを考慮しただけでも同時に被曝の蓋然性があります。

 核攻撃対処という命題を検討していないことは行政の怠惰ともいえましょう。衛生自衛隊、もちろん厚生労働省などが実働部隊を創設し、東京や大阪が核攻撃を受けた場合の大量被爆患者発生を念頭に十分な医療体制を構築する方向で進むならば、敢えてその必要は提示しません、いや、現実的にはそうした施策は、平時枠組のなかで検討してはならないとも。

 突発的に数十万の被爆者や重篤負傷者が発生した場合に対処できる医療基盤があれば、敢えて衛生自衛隊が必要、という提案を行いません。首都直下型地震や南海トラフ地震での大量負傷者が発生した場合でも、これに対応できる医療基盤を行政が平時から確保できるならば、別にこうした提案は行わないのですね。しかし現実的に可能か、となるわけです。

 巨大災害への医療崩壊回避、被爆治療にしても災害負傷者診療にしても、医療行政を所管する厚生労働省が、真剣に取り組んでいない問題があるのですね、そして、これほどの事態を平時の枠組みで盛り込むことは、無理がある、故に非難は必ずしも妥当とはいえません。有事と平時の区分が必要、これは2019年の首都直下型地震特集に際して再三提唱した。

 平時から日常的に原発事故が発生する事を想定して大量の病床を維持している巨大病院が其処此処あれば、それは逆に異常です。そこまで医療利用者に負担を求める事は論外でしょう、有事に備える医療基盤は平時には無駄となります。有事の備えというものは基本的に有事が回避できるという前提で、使わないからこその備え、というものなのです故、ね。

 実際、化学科の方でいろいろお教え頂きました陸将補の方がいまして、イラク化学兵器無力化や中部地方初の原子力事故を想定した国民保護訓練を提唱された方がいましたが、3.11の前に退官されていまして、不幸なのか幸いなのか長い自衛官生活の中で一度も国内原子力事故に対応する事の無かった方もいます、有事に備えるとはそういうことなのですね。

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令和元年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.02.22-02.23)

2020-02-21 20:07:00 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 新型コロナウィルス国内感染拡大と共に隣国韓国でも同様という最中に皆様いかがお過ごしでしょうか。今週末の行事紹介なのですが残念ながら今週末は行事はありません。

 今週末は自衛隊行事無し、そんな時にはゆとりをもって布団と毛布をコインランドリーで温水洗濯でも仕上げたいところではありますが、銘酒めぐりを嗜んでみてはいかがでしょうか。いやいや、全国の酒蔵には海上自衛隊護衛艦の艦名を冠した銘酒が数多ありまして、集め始めてみますと艦名銘酒護衛艦隊集合訓練の様でなかなかに奥が深いものです。

 霧の榛名。蒼き鋼のアルペジオに登場します霧の艦隊戦艦ハルナ的な響きの銘酒ですが、北関東の銘酒だという、十年以上前に第12旅団相馬原駐屯地祭へはじめていきました際に、居酒屋にこの“霧の榛名”なる銘酒の看板を車中から見つけまして、夜には高崎市内のデパートめぐりにて購入、実に十年以上の付き合い、という不思議な御縁がありました。

 霧の艦隊戦艦ハルナはさて置き、肴となります不思議な缶詰等も実に多彩でして、それ程安価ではないのですけれども、居酒屋一皿程度の予算で美味しいものも多い。昨今は人の集まる場所などは自粛という寂しい風潮にあります我が国や周辺国、こういう時だからこそ普段は余り使わない方向に予算を投じて楽しく過ごしてみたい、というところですね。

 さて撮影の話題。コンパクト機種のデジタルカメラは高性能化が著しいというところなのですが、夜景撮影などで試してみますと、やはりセンサーサイズで一眼レフ、といいますかAPS-C機種には遥かに及ばないものなのだなあ、と実感する今日この頃です、いやこれ、1型センサーを採用したハイクラスのコンパクトデジタルカメラを含めて、夜景で限界がでるのですね。

 APS-Cセンサーを備えたコンパクト機種は幾つか出ているのですが、下手な価格帯のデジタルカメラよりも高価になっていますし、何よりもコンパクト機種の利点であるズーム性能がAPS-C機種ではセンサーに対するレンズの径から高画質の代償はそれなり在るものでして、それならば安価なミラーレス一眼を持っていった方がもう少し良い画質に仕上がる。

 ミラーレス機種については、動く被写体に対する追随能力がかなり限界がある、というよりも構造上最良の方式である一眼レフと比較しますと比較対象がかわいそうになってしまうのですが、動かない被写体、電燈艦飾や装備品展示には、成程多少の用途はあるのだなあ、と予備役としました少々初期のミラーレス一眼を再評価しています今日この頃です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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COVID-19横浜港アウトブレイク!クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号検疫対処を検証する

2020-02-20 20:20:35 | 国際・政治
■厚労省の限界と自衛隊対特衛
 邦人の武漢からの退避は完了しましたが、我が国が入港を許可した巨大クルーズ船では感染爆発“アウトブレイク”というべき状況が発生しています。

 中国新型肺炎の感染が拡大するクルーズ船について、その検疫方法に各国メディアから批判が集まっています。ただ、検疫隔離方法としては、日本船でも日本企業が運行する船でもなく、上陸を希望する入港への検疫措置であり、日本側として検疫の他、実質的に他の選択肢はあったのかという素朴な疑問がないでもありません、執行管轄権の問題ですね。

 プリンセスクルーズについてですが、本社はアメリカ、したがって執行管轄権はアメリカにもあるのですが、たとえば日本政府が、特に国土交通省が監督官庁として、プリンセスクルーズに対して、船舶の維持要員、これは給食支援や機関要員と航海要員、これ以外の要員を、クルーズ船故のレクリエーション要員が多数乗船、この管理を指導すべきだった。

 ダイヤモンドプリンセスは、乗員乗客3600名という巨大客船で、3600名といえば、自衛隊の旅団規模、流石に個室で陸上隔離できる施設は日本が準備することは難しい、アメリカのマーシー級病院船でも平時収容能力は1000名、最大2000名ですので2隻必要な水準です。船内感染拡大阻止するには同型船一隻の回航を命令すべきだったのかもしれません。

 政府はプリンセスクルーズにたいして、検疫以外の関連費用をおそらく請求する事になるのでしょうが、もともと検疫隔離は受け入れ国が支援するものではありません、もともとの検疫隔離は接岸させず沖留めさせる事が、過去のコレラ検疫では実施されていましたので接岸許可を知ったときには人道的だ、と感心したものでした。給食支援も行ったという。

 しかし、クルーズ船は政府傭船でも公船でもないのですから、本来は乗客の支援はプリンセスクルーズが実施すべき命題でした。更に14日間の検疫留めを条件として、これを了解して接岸したのですから、問題視されるならば入港拒否か、感染拡大の懸念のない無人島に入港させ、当面は邦人乗客だけ航空機で救助するという選択肢があったはずなのですが。

 憤りといいますか、プリンセスクルーズはダイヤモンドプリンセス乗員だけが苦労しており、結局、現場への交代要員派遣や配食給食要員の追加派遣など、本来運行会社として担うべき責任を果たしていません。こうしたまともな管理が出来ない会社が、船を出入港させ乗客から料金を集められるとして巨大客船を運航している印象を受けてしまいます。

 東京港はそもそもダイヤモンドプリンセスのような11万t規模の巨大客船を想定しておらず、日本が想定する巨大客船とは海面から高さ55m以下の、つまり東京湾レインボーブリッジ下を航行できる規模の客船です。ダイヤモンドプリンセスが晴海ではなく横浜港へ入港したのは、こうした東京湾が想定していない規模の巨大客船であった事が分るでしょう。

 ダイヤモンドプリンセスについては、日本入港を希望し接岸したのですが、選択肢としては国連海洋法条約において入港拒否は難しい、しかし、接岸と補給に限り、人員の上陸拒否と速やかな出航要請を行うことは可能でした。この選択肢を採らなかった理由は入国拒否が基本的に想定していない、大量の邦人乗客が下船予定であったためです。その上で。

 検疫隔離は、他に選択肢があったのかと問われれば、3600名規模の隔離施設を準備しようにも、そもそも邦人ではなく、上陸拒否か接岸拒否か硫黄島や馬毛島など、政府管理下の無人島などに隔離する選択肢もあったのですが埠頭が無いため、11万tの船が入港できる埠頭は日本でも希有、上陸は交通船に依存することとなり、これは現実的ではありません。

 厚生労働省の対応。しかし万全であったかを問われますと、厚生労働省が検疫の責務があるのですが、所謂コレラ、横浜開港記念館などを見学しますと、かつて幕末のコレラ流行という歴史から検疫といえばコレラという印象を持つのですが、この範疇、もちろん新型肺炎への予備知識があったとはいえ、厚労省の認識の基盤はこちらであったのではないか。

 検疫に関して、厚生労働省にはある種、同情、という認識が拭えません。厚労省は激務、NHK特集として官僚の激務で知られる省庁として厚労省が挙げられており、この報道を基調として現在の横浜での対応を考えますと、監督官庁であるべき省庁が前線要員を派遣している、東日本大震災の本省職員を現場に派遣していた状況に近いものがあったわけです。

 感染症の専門家。日本国内にはこの看板を掲げている方や有識者は多いのでしょうけれども、冷静に考えますと未知のウィルスです。世界保健機関WHOなどは過度に警戒しないことを明示していますので、正確な情報の無いままに派遣された、準備不足というよりは情報不足、情報を得る立場に無い立場の省庁、職員でなく省庁、無理を強いたようにも。

 対特殊武器衛生隊を派遣し指揮系統を包括化するべきであった。後知恵故にどうとでもいえる、と批判は覚悟しますが、検疫ではなく新型疾病対策を行うので在れば、炭疽菌などの細菌兵器を念頭に感染拡大防止の先述研究や指揮運用研究を行う我が国唯一の専門部隊である対特衛を全面に出し、厚生労働省やD-MATを自衛隊の指揮下に入れるべきでした。

 対特殊武器衛生隊は人員規模こそ少ないものの、もともとは特殊武器、ここには炭疽菌やエボラなどの生物剤を含む、こうした攻撃に際して、実働を行う部隊であるとともに加えて、専門家として、既に医療や防疫に関する基礎知識を有する集団、自衛隊の衛生隊はもちろんD-MATなど自衛隊以外も含めて、ここを指導し監督する事も念頭とした部隊です。

 衛生部隊は最小限の、世界中どこをみても余分な軍事力を維持できる余裕の歩くには希有だ、最小限の規模で対応しているのですが、多数の衛生部隊や医療組織に対して、専門見地からの指示を行うことで大規模な専門家集団として機能させることができる、かつて化学科部隊がそうでしたが、対特殊武器衛生隊、まさにこの機能が期待された部隊といえる。

 第101化学防護隊とオウム事件。この際に警察と自衛隊との無意味な縄張り意識があり、警察鑑識に化学兵器に関する専門知識がないにもか変わらず、刑事事件と公安事件には警察が主導権を有しているべきとの縄張り意識から、サリンの臭いやサリンの色を確認したという警察の主張、サリンは無色無臭、自衛隊を困らせた、という実例がありました。

 オウム事件では、毒ガスは呼吸器系統から侵入するという、有毒ガスと神経剤の相違が警察官に理解されず、自衛隊がオウム真理教強制捜査に際して多数の防護服を警察が必要としているという理由から北海道中よりかき集めた戦闘防護服をC-1輸送機により空輸したものですが、戦闘防護服を、気合いを入れるために着用する、と誤解した捜査員の事例も。

 戦闘防護服は皮膚から浸透する神経剤より人員を防護するもの、化学学校の方が実地教育を行ったのですが、最後までその場にいたものの聞いていない警察官が多く、戦闘防護服に警察腕章を取り付ける際にピンで穴をあけて固定し、結局廃品にしてしまう、本来戦闘防護服は穴など破損なければ十数回の洗濯して再利用が可能、そんな事例もありました。

 対特殊武器衛生隊。既に派遣されています。ただそもそも法定伝染病に指定された新型コロナウィルスなのですから、その検疫を行う際に生物兵器に準じた対策を行い、検疫官は伝染病の、D-MATは医療の専門家なのでしょうが、生物剤に対しては素人、という立場での垣根を越えた自衛隊の指導を受け入れる、これは防衛省が主導権を担う事を意味するのですが、これができなかった。

 情報不足と云いますか、ダイヤモンドプリンセスの横浜入港時点では感染者は数名で、しかも豪華客船として旅行会社が宣伝している船舶故に隔離は容易であろう、という認識が在ったのですが、新型肺炎中国発表情報と同様に、船内情報はプリンセスクルーズも企業危機管理の稚拙、予見は難しかったとはいえ、自衛隊が主導できなかった事は残念でした。

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