北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:ポスト四次防の日本版巡洋艦隊構想、ヘリコプター巡洋艦・ミサイル巡洋艦

2014-05-31 22:15:26 | 北大路機関特別企画

◆ソ連太平洋艦隊巡洋艦部隊への対抗策

 備忘録的なものですが、資料解析とともに気づいた話から。

Ddhimg_3603 海上自衛隊は第四次防衛力整備計画に続くポスト四次防において、巡洋艦を建造する構想を立てていた、部内検討かその域をでないものかはもう少しいろいろと調べたいところですが、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦が計画されるまでの検討中に、幾案かの巡洋艦計画が研究されていたようです。

Ddhimg_0708 8300t型ヘリコプター巡洋艦案、6000t型ミサイル護衛艦案、8700t型全通飛行甲板型護衛艦案、調べてゆくと新聞報道や専門誌検証とその他報道発表等に出てきます。はるな型を拡大した8300t型とタータ-システム搭載の6000t型、という二つの護衛艦案が実現していれば、ソ連太平洋艦隊巡洋艦隊に対抗できたのかもしれません。

Ddhimg_3769 8300t型ヘリコプター巡洋艦と6000t型ミサイル巡洋艦、続いて検討されたといわれるのはハリアーを搭載可能な8700t型全通飛行甲板型護衛艦の模索です。8700t型といいますと、おおすみ型と同程度の船体を有するもので、実現していれば、ひゅうが型護衛艦以前に全通飛行甲板型護衛艦が配備されていたことでしょう。

Ddhimg_7988 未成となった幻の海上自衛隊15000t型強襲揚陸艦計画というものを先日紹介しましたが、海上自衛隊の未成建造案、その模索というものは調べてみますと色々な話が出てきますし、部内案というものが最初にどう出てくるかという流れを見ますと、納得するものもあります。このあたりは、いつか紹介しましょう。

北大路機関:はるな

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平成二十六年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.05.31・06.01)

2014-05-30 22:38:08 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事
 いよいよ六月を迎えようという中、日中関係の摩擦が高まっているところですが、今週末の自衛隊関連行事について。

Img_2105  今週末は様々な自衛隊関連行事があり、師団行事や旅団行事に戦車部隊行事から航空祭まで一通り紹介しましょう。師団と旅団行事ですが、まず、日曜日、真駒内駐屯地にて第11旅団創設記念行事が執り行われます。第11旅団は道南地区を防衛警備する旅団で、部隊規模は師団時代よりも縮小されていますが、各連隊は高度に機械化され一部が装甲化、特科部隊は全て自走化され戦車大隊も有している強力な部隊です。映画ガメラ2レギオン襲来、にて冒頭に出てくるのもこの真駒内駐屯地、当時は師団駐屯地でしたが。

Img_8533  第9師団創設記念青森駐屯地祭、師団行事として青森市にて実施されますが、今年度も市街パレードを土曜日に行い、日曜日に駐屯地祭が行われます。東北北部を防衛警備管区とする第9師団は青函地区をその警備管区に有し、冷戦時代ソ連軍が北海道に侵攻するという状況に際し、本州からの増援部隊を展開するために絶対確保しなければならないのが青函地区で、そのため戦車や火砲で北海道に準じる部隊として整備されてきました。近年、改編を受けていますが、改編前は重装備ながら旧式装備が多く、その点で近代化が大きく進んだところ。

Img_8394  戦車部隊駐屯地祭ですが、帯広第5旅団隷下の第5戦車大隊が駐屯する鹿追駐屯地にて駐屯地祭が行われます。鹿追戦車祀り、かつては廃棄乗用車を74式戦車で押し潰す展示や体験乗車において戦車数に比較し来場者が多くなかったことからそのまま砲手や車長のハッチに乗車できた時代もあるとのことですが、流石に昨今はそこまで行かない模様、しかし戦車中隊3個を有する戦車大隊として90式戦車を充足、道東地区ににらみを利かせている部隊です。

Img_1268  普通科部隊駐屯地祭として行われるのは名寄駐屯地祭、駐屯する第3普通科連隊は北海道最北の普通科連隊として最も精強な普通科連隊、雪上の普通科連隊として知られている連隊です。その任務上、有事の際は連隊戦闘団編成が間に合わないとの想定で一個特科大隊が旭川駐屯地から前進配備され、駐屯地内には防護カバーに守られたホークミサイルが射撃準備を完了、現在は分さん配備となりましたが73式装甲車や96式装輪装甲車により充足された編成をとっていました。

Img_8080  施設科部隊駐屯地祭としては和歌山駐屯地祭。和歌山駐屯地と聞きますと南海電鉄の特急サザンで一本、という印象をお持ちの方がいるかもしれませんが、日高郡、和歌山市からかなり御坊市まで更に南の方へ行くところにある駐屯地です。水際障害中隊が駐屯しており、有事の際には機動展開し沿岸部に水際地雷を敷設する水陸両用車両が装備されています。装備する94式水際地雷敷設車は東日本大震災では水陸両用車両として洋上の捜索活動にも投入されました。

Img_7070  海上自衛隊行事について、海上自衛隊大湊航空基地において大湊航空基地マリンフェスタが行われます。編隊飛行や艦艇一般公開や体験航海などが行われるとのこと。航空基地と艦艇基地は隣接しています、海上自衛隊基地の中で特に交通難所に或るのですが一般公開は土曜日に行われるとのことですから、陸奥湾を越えてむつ市の大湊航空基地に土曜日足を運んだ後日曜日に青森駐屯地祭で陸上自衛隊の師団祭を、という方策もいかもしれません。

Img_0886  航空祭、防府北基地航空祭が日曜日に行われます、T-7練習機を運用する飛行教育団が展開している基地の航空祭で、初等練習機であるT-7の軽快な飛行や編隊飛行に加えて、外来航空機の展示、F-15戦闘機やF-2支援戦闘機にC-1輸送機等の飛行展示が行われるとのことです。先週の静浜航空祭が遠すぎていけなかった、という型には山口県のこちらに足を運ばれてはどうでしょうか、なお、陸上自衛隊駐屯地とも隣接しているので第13飛行隊のヘリコプター等が参加するとのこと。

Img_6393  防府南基地開庁記念行事、こちらは土曜日に行われます、飛行展示が外来機により実施されるとのことです、陸上の教育施設で滑走路が無い方がこちら、南基地、滑走路がある方が北基地で日曜日に航空祭が行われます、間違えることは無いと思いますが、土曜日に滑走路が無い方で基地祭が行われ、日曜日に滑走路がある方で航空祭が行われる、防府北基地と防府南基地、あれ、飛行場はどっちだったか、というのは専門家(?)でも間違えるとのこと、皆様も間違えないようご注意ください。

Img_1943  高尾山分屯基地開庁記念行事、第7警戒隊が展開する春日基地の分屯基地です、韓国空軍が爆撃する計画を立てていたといわれる防空の最前線、地名から中央線で東京から一本、と勘違いされがちですが、山陰地方の高尾山です、東京駅から東海道本線の寝台特急サンライズいずも号で一本、というところでしょうか、山陰本線沿線の方の高尾山です、京都の高雄山とも間違えやすいですし、台湾の高雄市とも間違えやすい、のか。美保基地のC-1輸送機による外来機飛行展示などが行われます。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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榛名防衛備忘録:グレーゾーン事態を考える① 中国機異常接近事案と衝突事故の懸念

2014-05-29 23:52:15 | 国際・政治

◆救難航空部隊妨害攻撃への自衛権行使

 政府は平時と有事の境界線にあたるグレーゾーン事態に対する自衛隊の行動検討を開始しました。

Gzimg_1121  グレーゾーン事態対処、自衛隊の出動と言えば、自衛隊法第七十六条に基づく防衛出動、自衛隊法第七十八条に基づく治安出動、自衛隊法第八十三条第二項に基づく災害派遣、自衛隊法八十二条に基づく弾道ミサイル等破壊措置命令や海上警備行動、等が挙げられますが、これ以外の状況を想定したもの。

Img_6543 グレーゾーン事態は平時であっても有事に準じた緊張状態が展開している状況を想定しており、言い換えるならば放置すれば有事に展開する可能性がある危機的状況を意味します。現行の自衛隊法では有事に展開するのを待たねば武力攻撃事態と認定出来ませんでしたが、武力紛争の勃発を放置する現行法は我が国のみならず諸国民の利益となりません。

Img_6654p  グレーゾーン事態ですが、幾つかの検討が為されており武装漁民を装った非正規部隊の浸透等が検討されているのでは、と考えられます。一方で、東シナ海海上で24日に発生した中国戦闘機異常接近事案について、こうした事案が繰り返され、空中で航空機同士の衝突事故が発生した場合を想定する必要はないでしょうか。

Img_0057_1 中国機の異常接近事案は中国国防省が問題なしと会見し、中国外務省筋の情報として現場が暴走したと報じられたところは先日掲載した通りで、再発防止措置を採らないことを明言したわけですから今後も繰り返される可能性があります。そして、中国は2001年に海南島事件として米軍機へ挑発を行った戦闘機が衝突し墜落する事案が発生しています。

Abimg_8835 仮に中国機が挑発を行い、その結果中国機が自衛隊着や米軍機、もしくは民間機などと衝突した場合、どう対応するのでしょうか。通常の航空機事故であれば、航空自衛隊の航空救難団や海上自衛隊の救難航空隊が対応することとなります。事故が公海上で、特に我が国防空識別圏内と中国が主張する防空識別圏と重複する空域で発生した場合、どうなるのでしょうか。

Eimg_2500 この防空識別圏と中国が昨年重複させた防空識別圏は、中国軍が救難ヘリコプターとして運用するSA-321シュペルフルロンのコピー機では往復が限界で救難飛行は厳しい状況があります。更に中国軍は救難機に当たる航空機が少なく、海洋監視機に頼る事となるでしょう。結果、飛行計画が提示されなければ那覇基地から航空自衛隊がスクランブルを掛ける要件を満たし行動することとなるわけです。

Img_4994   また、日本側の救難ヘリコプターの行動に対し、異常接近などの妨害を行うことは、仮にこうした事案が先日発生した異常接近事案の繰り返しにより生じた際には当然考えられ、この場合、救難航空任務をどう展開するのか、航空救難が妨害される想定を何処まで考え対応するのかの準備が必要となります。

Himg_3633 グレーゾーン事態は、放置すれば有事に展開する状況下での封じ込めを企図するものですから、絶対航空優勢を確保する航空撃滅戦を期し、例えば早期警戒管制機と戦闘空中哨戒を組み合わせ、敵空中警戒部隊を撃破し情報優勢を採ったのちに一気呵成に戦闘機部隊を無力化する、という選択肢は、少なくとも平時である限り執る事は出来ません。

Himg_3314 戦闘機部隊を展開させ、防空識別圏内において戦闘空中哨戒を実施しつつ、その支援下で航空救難任務を展開する、という方法が一つ考えられるところですが、この場合の武器使用基準や交戦規則をどのように考えるのか、グレーゾーン事態に合わせた対応を検討しなければなりません。

Img_0356 交戦規則、特に想定される状況では対領空侵犯措置任務で携行する短射程空対空ミサイルだけでは不十分で、中射程空対空誘導弾の装備が必要となりますし、何よりも交戦規則を明示し行動を限定列挙として可能な事のみ明示し縛るのではなく、制限列挙として不可な事例のみ、例えば策源地攻撃を禁じる等、明示し行動を確保するよう対応しなければなりません。

Img_5989 現場に責任を押し付ける旧軍のような構造に陥らないためにも限定列挙では無く制限列挙とする交戦規則を明示する必要があり、特に衝突事故の発生という現段階の中国機の行動を見る限り充分想定される事態を、どう武力紛争、所謂戦争状態に陥らないよう対処するか、重要な課題と言えるでしょう。

北大路機関:はるな

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パシフィックパートナーシップ2014、海上自衛隊輸送艦がアメリカ・オーストラリア軍を輸送

2014-05-28 23:53:45 | 防衛・安全保障

◆日米豪の環太平洋防衛協力を示す機会

 読売新聞などが防衛省からの情報として報じたところによれば、先日紹介したパシフィックパートナーシップ2014への参加へ、自衛隊が輸送協力を行うとのことです。

Himg_0998 海上自衛隊は輸送艦おおすみ型の、くにさき、を訓練に派遣しますが、この際、アメリカ軍とオーストラリア軍部隊を140名輸送するとのことです。米豪軍部隊は輸送艦くにさき、にアメリカ海軍横須賀施設より明日29日に乗艦し出航、6月6日に最初の訓練地であるヴェトナムへ展開する予定です。

Eimg_9350 おおすみ型輸送艦は、満載排水量でアメリカのドック型輸送揚陸艦とほぼ同程度の規模を有し、外洋からのエアクッション揚陸艇による揚陸を主任務とするもので、装甲化された一個普通科中隊を基幹とした戦車小隊と特科部隊を含む中隊戦闘部隊を輸送する海上自衛隊の輸送艦で、三隻が建造されました。

Img_4136  今回の派遣は、大規模災害を想定し各国部隊及び民間団体との連携を演練する演習ですが、昨年に既に実施予定地区が決定していたものの、その実施国がヴェトナム、カンボジア、フィリピン、以上の参加国となっています。特にヴェトナムとフィリピンではともに中国からの軍事圧力が高まり極度の緊張状態にあります。

Uimg_2975  特に西沙諸島でヴェと南鐐を中国が武力奪取し係争地化した海域付近にて中国側が石油掘削工事を大規模に展開し緊張が激化、併せて26日に発生した中国船によるヴェトナム漁船襲撃事案はヴェトナム漁船の沈没という結果となっており、緊迫化は極度に達しています。

Img_8846 今回の演習は多国間の官民の防災訓練を以て信頼醸成を深める事ではありますが、同時にこの地域における軍事的緊張を強める中国に対して、各国の連携を以て軍事的挑戦を実行に移す事への一つの抑止力となるかもしれません。こうしたもう一つの責務も背負い、くにさき、は明日ヴェトナムへ出航します。

北大路機関:はるな

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海軍記念日(五月二十七日):海からの平和へ改めて『新しい八八艦隊』整備が必要だ

2014-05-27 23:46:39 | 北大路機関特別企画

◆イージス艦八隻&全通甲板護衛艦八隻

 本日は海軍記念日、日露戦争、日本海海戦に勝利し制海権を維持し講和への大きな躍進となった記念日です。

88img_274_2 我が国は日露戦争へ、戦艦六隻と装甲巡洋艦六隻から成る六六艦隊を明治期に整備し、ロシア海軍へ挑みました。その後、海軍は第一次世界大戦後の国際情勢へ対応するべく、ポストジュットランド型超弩級艦について、戦艦八隻と巡洋戦艦八隻から成る八八艦隊の整備へ着手しました。しかし、戦間期の国際公序となった軍縮へ呼応し、戦艦長門と陸奥のみ完成、加賀が船体を空母に転用したのみで、実現には至りませんでした。しかし、八八艦隊の呼称は戦中戦後も幻の艦隊計画として語り継がれたのはよく知られているところです。

88img_4731 海上自衛隊では、初のヘリコプター搭載護衛艦はるな就役後、ひえい、しらね、くらま、と艦隊航空能力を司る艦艇が整備され、紆余曲折を経てその後汎用護衛艦にも各一機の哨戒ヘリコプターが搭載されるに至り、対潜掃討任務及び制海権確保へ必要な作戦単位に関する研究の末、海上自衛隊機動運用部隊である護衛艦隊の基幹部隊、四個の護衛隊群を、護衛艦八隻&哨戒ヘリコプター八機、を基本単位とする、海上自衛隊版八八艦隊が最適とされ、90年代までに四個護衛隊群を四個の八八艦隊へ改編しました。

88img_1324 新しい八八艦隊、海軍記念日に北大路機関はこの編成の必要性を提示したいと考えます。長くWeblog北大路機関をご覧戴いた皆様には旧知の持論を再度もしくは再々度です。新しい八八艦隊とは“イージス艦八隻&全通甲板護衛艦八隻” を以て護衛艦隊を構成する、という提案です。イージス艦八隻&全通甲板護衛艦八隻、かなりおおきな計画案に見えましょうが、現行の護衛艦隊は新中期防衛力整備計画完成時には四個護衛隊群はイージス艦八隻&全通甲板護衛艦四隻となります。

88img_1103 現在の護衛艦隊は四個護衛隊群より編成され、各護衛隊群は対潜掃討中枢任務編成護衛隊と防空弾道ミサイル防衛中枢編成護衛隊、つまり、多数のヘリコプターと集中運用するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)や弾道ミサイル防衛に対応するイージス艦(DDG)という通常の護衛艦(DD)よりも突出した性能を持つ艦について、ヘリコプター搭載護衛艦を中心とした護衛隊とイージス艦を中心とした護衛隊、この二つから護衛隊群を編成しているわけです。護衛隊:DDH&DDG&DD&DD+護衛隊:DDG&DD&DD&DD,というもの。

88img_1421 新しい八八艦隊案は、DDH中心の護衛隊とDDG中心の護衛隊という編制を統合し、護衛隊群は二個護衛隊を基幹とする編成を現行のまま維持しつつ、各護衛隊は全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦・ミサイル防衛対応イージス艦・汎用護衛艦・汎用護衛艦、で編成する案です。現在の編成が整備開始された当初はヘリコプター搭載護衛艦を中心とする護衛隊にはイージスシステムでは無く従来型のターターシステムを搭載したミサイル護衛艦が防空用に配備されていましたが、イージス艦に置き換えられるため、防空格差が無くなります。

88img_1587 イージス艦は、こんごう型四隻、あたご型二隻が配備されていますが、ターターシステム搭載はたかぜ型二隻がイージス艦へ置き換わり、四個護衛隊群を構成する八個護衛隊全てにイージス艦が配備、これらは艦隊防空に加え弾道ミサイル防衛任務にすべて対応します。即ち護衛隊群に所属する護衛隊はその編成如何を問わずすべて弾道ミサイル防衛任務へ対応することとなり任務に投入されるのですから、それならば、ヘリコプター搭載護衛艦を四隻増備し各護衛隊を同一編成としたほうが、更に運用の互換性が高まるのではないでしょうか。

88_img_4051_1 ヘリコプター搭載護衛艦、はるな型はるな、ひえい、しらね型しらね、くらま、この艦種は世界的に見て特種な艦型です。哨戒ヘリコプター三機と情報中枢機能を一手に担う艦艇で、特に海上自衛隊は米海軍でいうところの駆逐艦に艦載運用する軽量な対潜ヘリコプターではなく、空母に搭載しソナーなど比較的高度な装備をもつ大型の哨戒ヘリコプターの運用を重視してきました。当初はヘリコプター搭載護衛艦二隻を集中し六機のヘリコプターを運用してきましたが、これは米空母の回転翼対潜哨戒飛行隊の機数と同数です。

88_img_4262 ヘリコプター搭載護衛艦を旗艦とする編成へ、八八艦隊が整備された際、はるな型しらね型を中心とした対潜掃討群の運用は一つの頂点を迎えると共に、海上自衛隊は、より大型で満載排水量19000tに達する全通飛行甲板型護衛艦として、ひゅうが型ひゅうが、いせ、を建造、満載排水量を25000tに拡大した護衛艦いずも型の建造に着手し、洋上航空機の集中運用を、従来の護衛艦はるな型に依拠しつつさらに高度な洋上航空機運用体制を構築してきました。

88img_2170  新しい八八艦隊案を提示した背景には、諸外国が政治的シンボルというようなかたちで軽空母を建造する事例が散見されるなか、全通飛行甲板型護衛艦を一つの装備体系として研究し運用し維持する方策を海上自衛隊が構築し、そのノウハウを最大限活かす手法を組織として部隊として会得した点に注目すると共に、航空機の柔軟性と汎用性を活かす点、全通飛行甲板型護衛艦は将来的にF-35B戦闘機に代表される小型空母や強襲揚陸艦の全通飛行甲板から運用可能な戦闘機を搭載し運用し得る点、以上の二つを強化するものがあります。

88img_2287_1 我が国が直面する脅威は、多々ありますが海上自衛隊へ課題として想定される任務は、本土直接侵攻対処、局地侵攻及び島嶼部防衛対処、シーレーン防衛、国際平和維持活動、大規模災害対処、以上のようなものがあるでしょう。新しい八八艦隊は本土直接侵攻対処任務においては稼働部隊全力の複数護衛隊群が対潜掃討を行いつつ敵勢力へ接近もしくは制海権を確保、従来は艦対艦誘導弾に限られた投射力を仮に艦載機としてF-35Bを運用できれば、非常に遠距離からの打撃が可能となりますし、策源地攻撃を行うことも可能でしょう。

88img_2131_1 局地侵攻及び島嶼部防衛対処では、機動運用可能でイージス艦により対艦ミサイル及び実用化試験中とされる対艦弾道ミサイルからの防護力が大きな護衛隊は、局地防空任務として航空自衛隊の基地機能の補完、水陸両用部隊を支援する空中機動部隊の補完、全面戦争に至らない局地戦域では一個護衛隊群が正面に展開し稼働部隊全てが拡大阻止任務に当たり、状況の早期鎮静化と拡大阻止に当たることが出来るでしょう。本土直接侵攻対処と局地侵攻及び島嶼部防衛対処では共通する部分は多い。

88img_0393  新しい八八艦隊は国際公序に資する艦隊でなければなりません、旧来の帝国海軍や国際貢献時代以前の専守防衛時代を踏襲することなく、国際の平和と安全に寄与するべく国際公序としての海洋秩序、海上交通の自由と開かれた海の保障へ、参画しなければなりません。この点で米海軍や、公海上を含めた海洋の専有を目指す勢力への対応にインド海軍が南シナ海地域での哨戒任務を構想しており、八八艦隊であれば、ローテーションでその一翼を担う事も可能です。

88img_8204 シーレーン防衛では、対航空母艦対処任務が重責となります、陸上航空基地の戦闘機戦闘行動半径圏内であれば、F-15JとE-767の協同により航空優勢を確保しつつ航空撃滅戦を展開、その下でF-2支援戦闘機のASM-2/3の飽和攻撃、P-3C/P-1哨戒機からの対艦ミサイルの飽和攻撃、以上を反復することでほぼ確実に無力化が可能ですが、陸上航空基地、その圏外において航空母艦が脅威行動を採った際には、ヘリコプター搭載護衛艦のF-35Bに重責が掛かりましょう。ヘリコプター搭載護衛艦二隻、護衛隊群で一個航空隊運用出来ればよい。

88img_8401 F-35Bは、取得費用でP-1哨戒機に匹敵する大きな装備で、場合によってはSH-60Kとその後継機、SH-90となるのかSH-101となるのか未知数ですが、P-1とSH-Xの一部取得数に再検討を加える必要は出てくるやもしれません。一個航空隊を12機編成とし、護衛隊群四個で予備機を加えれば50機以上、60機近くが必要となります。F-35Bの要員を養成する練習機は航空自衛隊にしかありません、他方で、陸上基地の支援を受けられない地域で独立した運用を行うためには不可欠な装備で、統合運用により対処するべきでしょう。

88img_7784 国際平和維持活動、大規模災害対処、これら任務では洋上からの航空拠点としての能力は大きな機能を発揮します、フィリピン台風災害統合任務部隊派遣における護衛艦いせ、東日本大震災における護衛艦ひゅうが、の活躍は今更敢えてしめすまでもないでしょう。加えてイージス艦による航空統制能力が期待できますし、汎用護衛艦に搭載するヘリコプターの整備支援機能としてのヘリコプター搭載護衛艦が有する航空機整備支援能力も非常に大きな能力を発揮すると考えて間違いありません。

88img_8062 新しい八八艦隊、その整備にはヘリコプター搭載護衛艦四隻の増備が必要となります。しかし、幸いなことにヘリコプター搭載護衛艦はイージス艦よりも建造費が低く運用体系は既に確立されているため新装備導入に伴う有りがちな戦術上の空隙は生じません。F-35BについてはF-35Aを航空自衛隊が導入計画を進めており数年内に配備が始まります、併せて運用基盤も国内に構築されますので障壁は低いでしょう。海軍記念日に際し、改めて様々な任務に対応できる“新しい八八艦隊”の必要性を提示する次第です。

北大路機関:はるな

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菅官房長官、中国軍機異常接近を“極めて危険な行為”と抗議 中国外務省“軍の現場が暴走”

2014-05-26 23:30:19 | 国際・政治

◆軍の現場が暴走と弁明、これでは政治交渉は不能

 中国軍機異常接近行動について、本日も掲載することとしましょう。日本政府が抗議し、中国外務省が軍の現場が暴走と弁明しました。

Img_7807 菅官房長官は本日午前の記者会見において中国軍機異常接近行動を一歩間違えれば空中衝突に発展する点を指摘し“極めて危険な行為”として強い口調で抗議し、“決してあってはならない。偶発的な事故につながりかねない極めて危険な行為と認識し、誠に遺憾だ”と述べました。

Img_6052p 今回、中国側は自衛隊機へ30mの距離まで接近し、この異常接近が危険な行為として批判されています。30mは日常の距離では遠く感じますが、哨戒機や輸送機の全幅が30m程度ですので、空中での30mの接近は衝突事故につながりかねず、実際、過去には中国軍機が曲技飛行紛いの異常接近の末に衝突し墜落する事案も発生しています。

Gimg_7354 中国外務省は弁明に必死で、異常接近により空中衝突の危険が生じたことが最大の問題であることを、そもそも異常接近のことには触れず、軍の現場が暴走し生じた、との見解を示しました。護衛艦ゆうだち、への射撃管制レーダ照射の際にも同様の報道があったことを思い出される方も多いでしょう。

Simg_8664  軍の現場が暴走、これは日経新聞が中国外務省筋の話として報じたもので、中国軍の行動は正当な権利としつつ、軍の現場が暴走し、日中関係の雰囲気を壊すことも懸念する、という内容を報じました。軍の現場が暴走し勝手に戦端を開く、とは戦前の大陸における日本軍の話のようで、凡そ21世紀の軍隊とは思えません。

Img_1908 日経新聞報道では中国国防省が日本側に一切の偵察と妨害活動をやめるよう求め、緊急に抗議したとしていますが、これは我が国に隣接する区域での軍事演習に対して、我が国として関心を持たざるを得ず、もとより日本側へ履行を期待したものとは考えられませんが、我が国は逆に断固とした対応を示すべきでしょう。

Img_6610 仮にこうした無理な主張が為される場合には、周辺地域での大規模演習への関心を持つことは独立国としての正当な権利だ、と撥ね付けるか、逆に日本側が対して中国側に東シナ海での一切の軍事演習を慎むよう要求すれば呑むのか、と問うべきかもしれません。

Img_2616  もっとも、ここまで踏み込んだ提案では無く、今回の異常接近事案について、我が国は中国側へ接近を強行した責任者の処罰を要求するべきなのでしょうか、ゆうだち射撃管制レーダ照射事件の際も同様でしたが、中国側は其処に相手が存在することが悪い、と話題のすり替えばかりを行っており、状況がすり替えばかりで打開できない現状では一つの姿勢を突き付けるという必要は出てきます。

Img_1234 中国外務省の“軍の現場が暴走”、という報道は非常に日中関係に不確定要素を与えるもので、現場の独断専行横行する危険な中国軍、という視点で見た場合、例えば日中間の政治問題を外交上平和的に解決したとしても、中国軍が独断で軍事行動を展開し、平和的な外交妥結を軍事力で突如覆す可能性を示唆しているわけです。

Img_3118  こう考えますと、日本側としては、中国政府は人民解放軍に対する文民統制を強化し、人民解放軍の位置づけを中国の外交政策と政治が一体として周辺国との交渉を行う際に、中国政府の方針を現場の独断で霧散させないよう、政軍関係をしっかりとしたものとするよう、要求するべきでしょう。政治的妥結を日中が求めたとしても中国軍が独断で破綻させてしまう、という中国外務省の視点を放置しては、中国は世界のどの国とも友好関係を永続させる事は出来なくなります。

北大路機関:はるな

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中国戦闘機が海空自衛隊機へ異常接近!南西諸島我が国飛行情報区・防空識別圏内にて

2014-05-25 23:17:46 | 国際・政治

◆その背景は?警戒飛行中のOP-3CとYS-11EAへ

 防衛省によれば、24日、東シナ海公海上において海上自衛隊機及び航空自衛隊機へ中国戦闘機が異常接近する事案がありました。

Okimg_1952 東シナ海洋上では、日中の国連海洋法条約に基づく等距離中間線を基準とした排他的経済水域の境界線を中国が一方的に無効を宣言し、更に航空管制への責任を持つ飛行情報区に沿って設定された我が国防空識別圏を中国が一方的に再設定を通告、民間航空機への飛行情報区に基づく安全運航への責任は持たないが、主権の権利は行使するという理解し難い行動を採り、日中間で緊張が高まっています。

Okimg_4424 この東シナ海公海上の我が国防空識別圏内を飛行していた海上自衛隊の画像データ収集機OP-3Cと、航空自衛隊の電子情報収集機YS-11EBに対し、中国軍の戦闘機が異常接近する、という事案があったわけです。24日1100時頃、OP-3Cへ50mまでの近距離に接近する事案が発生、続いて同日1200時頃、YS-11EBへ30mにまで接近した、とのこと。

Okimg_9111 OP-3CとYS-11EBは、現在、東シナ海で実施されている中ロ合同軍事演習へ警戒監視を行ていたものとみられますが、平時にここまで近距離に戦闘機が接近得ることは非常に危険で、併せて中国戦闘機はSu-27/30系統の戦闘機と見られ、防衛省発表では、ミサイルなどを搭載し武装していたようです。

Okimg_1402 小野寺防衛大臣は臨時記者会見において、今回の中国軍機の異常接近に対し、偶発的事故の発生につながりかねない危険な行為だ、として中国軍戦闘機の異常接近行動を厳しく批判するとともに、外交ルートを通じ中国側に厳重抗議する姿勢を示しています。

Oimg_0106 30mまでの異常接近とは、YS-11の全幅は32mですので、写真のYS-11FCとU-125FCとの距離が概ね30m程度となります。写真は航空祭での展示飛行の様子ですが、実任務中に第三国の戦闘機が、この写真の距離にまで突如接近することが、如何に意見な行為か、端的に見ることが出来るでしょう。

Oimg_4418  OP-3CとYS-11EBの任務は電子情報収集を担っています。この中でOP-3Cは速報監視画像レーダ装置SLARと長距離監視センサーLOROPを搭載、非常に遠距離からの画像情報を電子的に収集可能です。また、YS-11EBはレーダや電子戦情報等を演習などにより生じる微弱な拡散電波情報を収集する任務に当たります。

Okimg_3615 中国機の異常接近がなぜ危険かというと、2001年4月1日に海南島沖にて、米海軍のEP-3電子偵察機を挑発した中国空軍のJ-8戦闘機と空中衝突事故が発生、J-8は墜落し搭乗員が死亡、EP-3は海南島へ緊急着陸し、機体と乗員の返還を巡り米中軍事衝突の危機となりました。J-8の搭乗員は挑発を繰り返す常習者で抗議文を募るURLを米軍機に飛行中に張り紙を出すなど、凡そ近代軍の要員とは思えない行動が知られています。

Okimg_1590 今回の異常接近事案は、東シナ海海上における中国軍のプレゼンスを示そうとする行動の一環と考えられますが、海南島沖でのEP-3との衝突など過去の稚拙な行動を見ますと、中国軍の衝突も辞さないとした計画的に実施した行動であるのか、搭乗員の突発的異常行動であるかは、何分過去の異常事例があるためになんともいえません。

Okimg_0122 しかし、公海上においてこうした異常行動を我が国が放置した場合、空中衝突事故の可能性をも放置することとなり非常に危険な事となります。我が国としては厳重に抗議すると共に再発防止を促し、仮に中国側が公海上での行動を制約する措置を示唆するならば、同等の措置を我が国も採る可能性を示唆する事を含め、不測の事態を防ぐよう行動するべきでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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RQ-4無人偵察機、三沢基地到着 台風期における米空軍グアム配備機の分散配備計画一環

2014-05-24 23:20:47 | 防衛・安全保障

◆グローバルホーク、環太平洋が舞台

 NHKによれば配備計画が進められていた米空軍三沢基地のRQ-4グローバルホーク無人偵察機の第一機が24日、三沢基地へ到着したとのことです。

Eimg_30920 RQ-4,残念ながら手元に写真がありませんが、非常に大型で、監視範囲と滞空時間という部分で非常に高性能の無人偵察機となっています。航続距離は22000km以上、無人機ですので搭乗員の交代へ着陸する必要が無く36時間連続で任務飛行が可能です。これは、航空自衛隊が運用するE-767早期警戒管制機と比較した場合、E-767の航続距離は10370km、警戒飛行時間は13時間程度を想定していて、勿論空中給油などで延伸しますが、RQ-4は単体性能で、全体として無人機は無人ならではの長時間の飛行能力が特色といえるでしょう。

Img_9535_1p RQ-4は、合成開口レーダーと電子光学/赤外線(EO/IR)センサーを搭載し監視飛行を行います。この点では、巨大なレーダーを搭載し航空機を監視するE-767よりは洋上哨戒任務を行うP-3C哨戒機と似た運用を採るというべきでしょうか。合成開口レーダーの性能は明らかにされていませんが、概ね200km以上の小型目標を監視追跡可能とされ、電子光学/赤外線(EO/IR)センサーも100km以上の距離を隔て目標を監視可能です。同時追尾目標は1900とされ、偵察だけでなく広範囲の監視活動に威力を発揮します。

Adimg_9824 RQ-4は、巨大な無人偵察機です。これは、主翼を長時間飛行する任務へ対応を考え、低速で飛行できるよう細く長くしたもので、全幅は35.42mに達します。参考までにKC-767空中給油輸送機の全幅は47.57m、 C-1輸送機の全幅は30.6mです。主翼の幅はKC-767程ではありませんが、C-1よりは一回り大きく、その巨大さがわかるでしょう。ただ、空虚重量は6.71tとC-1の23.3tよりも軽く、本機が偵察機であることを示しています。RQ-4は全長13.52m、巡航速度343ノット、1998年に初飛行を果たし2004年より配備が開始されました。

Img_3305 RQ-4は、移動式管制装置と基地管制装置の二つで遠隔操縦可能で、今回配備されたRQ-4はカリフォルニア州の空軍施設より遠隔操縦され、グアム島から日本へ到着しました。無人機となりますと、他の航空機と衝突するのではないか、という問題がありますが、偵察飛行は19000mと旅客機の巡航高度の1.8倍から2倍の高高度を飛行するため、旅客機はRQ-4の巡航高度まで上昇できません、即ち現状では安全性に問題は無く将来成層圏を飛行する超音速旅客機が大量導入でもされない限り衝突の危険性は皆無と言えるでしょう。

Timg_9322 他方、過密空域では有人機ほど例えば異常接近機への回避行動などで迅速に行うことが出来ません。このため、同型機の導入を計画したドイツ空軍等は欧州の過密空域での運用は不可能、と結論を出していますし、米国内でも軍用機に限らず無人機全般の航空ルールの画定が急がれているところです。反面、我が国では新幹線に代表される鉄道網の比重が比較的高く一概には言えません。一方で、無人機の法律上の扱いが不明確で、国内での無人機運用が進まず、例えば東日本大震災などでも活用の機会が大きくはありませんでした。

Img_4577a 何故三沢基地へ配備されたのでしょうか。それは、台風への対策です。元々RQ-4はグアム島のアンダーセン基地を拠点として運用されてきましたが、アンダーセン基地は台風の影響を多く受けるのです。グアムの台風は物凄く、格納庫に収容していても格納庫ごと吹き飛ばされるほどで、コープノースグアム演習に展開する航空自衛隊機も、優先的に格納庫へ収容する協定を結んでいますが格納庫ごと飛ばされた際には米軍は責任を持てない、と返答されたこともあり、台風が発生する7月から10月までの期間に影響が生じるとのこと。

Img_0479 グアムの台風ですが、例えば2002年にグアムへ上陸した超巨大台風ポンソナは、最大風速128ノット以上で最大瞬間風速70mという、規格外の巨大台風が上陸しています。これこそ格納庫ごと吹き飛ばされる威力がある台風を示し、アンダーセン基地の空軍機等は移動可能な機体を全て沖縄の嘉手納基地などに退避させました。なお、グアム州ではこの巨大台風に対して犠牲者は無く、巨大ではありましたが想定内の規模でこの瞬間最大風速が生じた、といえるのでしょうか。

Gimg_2674 三沢基地は青森県にあり、冷戦時代はF-16戦闘航空団を展開させる北方の槍、航空自衛隊の北部航空方面隊司令部やF-2を運用する航空団にE-2Cの飛行隊が展開しています、そして台風は中々来ません。米空軍施設は、嘉手納基地は台風進路にあり適さない、岩国航空基地と厚木航空基地は海軍や海兵隊の施設、横田基地は首都圏航空過密空域にある、したがって、三沢基地が最適だ、と選ばれたのでしょう。 2機が配備され、10月まで三沢を拠点として運用されるほか、地上管制装置を三沢に展開させる、とのこと。

Img_2230 RQ-4ですが、航空自衛隊も3機を導入する計画があります。長時間の警戒監視飛行に寄与する機体ですので監視飛行に最適ですし、何よりも大規模地震へ対応する有力な航空機で、被害状況を常時エンジン音が救助活動に影響しない高高度から判定し派遣部隊の行動を支援することが出来ます、もちろん南西諸島防衛でも1900の目標を常時追尾できますから隣国がどれだけ多数の船舶を展開させても同時監視が可能です。ただ、運用に関する基盤や方法が未知数ですので、米空軍の支援を受ける事となります。そのノウハウ蓄積に三沢基地での運用は大きな機会ともなるでしょう。

北大路機関:はるな

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平成二十六年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2014.05.24・25)

2014-05-23 23:07:27 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 特定の花粉に影響がある方、一番辛い時期ですが皆様如何お過ごしでしょうか。

Fimg_5101 今週末の自衛隊関連行事ですが、北海道と九州で師団行事、西日本と東日本で方面直轄の団創設記念行事があるほか、九州と首都圏近郊にて航空祭が行われます。普通科部隊記念行事なども粉われますので、市街パレードの実施などもあり、今週末は様々な行事がまさに目白押し。

Img_4316 師団行事は、東千歳駐屯地の第7師団創設記念行事、そして福岡駐屯地の第4師団創設記念行事で、第7師団は我が国唯一の機甲師団、戦車連隊三個を中心に大規模な機甲部隊の観閲行進が繰り広げられます。膨大な戦車と装甲車に火砲の迫力は物凄いの一言に尽きる。

O0img_5631 中部方面隊直轄施設部隊である第4施設団が京都府宇治市の大久保駐屯地で、東部方面隊の教育訓練およびょび自衛官訓練を担う東部方面混成団が横須賀市の武山駐屯地にてそれぞれ記念行事が行われ、加えて航空学校分校が置かれる北宇都宮駐屯地祭も今週末、実施されます。

Kimg_0836 普通科部隊関連行事では、明日土曜日と日曜日に金沢駐屯地祭が行われ、土曜日には金沢市内で市街パレードが行われ日曜日に駐屯地祭が行われ舞す。日曜日には宮崎のえびの駐屯地にて記念行事が実施されることとなっており、こちらも土曜日に市街パレードが行われます、今年度は例年と時期が違いますのでご注意ください。

Mimg_6488 兵庫県の青野原駐屯地には中部方面隊直轄の中距離地対空誘導弾部隊が展開していますが、こちらも駐屯地記念用事が行われることとなっています。03式中距離地対空誘導弾を全国で最初期に配備した実戦部隊です、お近くの方は是非どうぞ。また、航空自衛隊下甑島分屯基地祭も今週末です。

Img_4277 航空祭では西日本の海上自衛隊哨戒ヘリコプター部隊の総元締めである第22航空群が展開する海上自衛隊の大村航空基地祭、静岡県の第11飛行教育団が展開する静浜基地において航空祭が行われます、T-7練習機を多数運用し富士山が見える航空祭として有名です。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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島嶼部防衛に奄美警備隊新編へ、武田防衛副大臣が朝山奄美市長と房瀬戸内町長らと会談

2014-05-22 23:34:50 | 防衛・安全保障

◆対馬警備隊と同等の400名規模を複数配置

 朝日新聞によれば、武田防衛副大臣は南西諸島防衛に関する警備部隊新編に向け、奄美市の朝山市長と瀬戸内町の房町長らと会談を行いました。

Iimg_5138 奄美市と瀬戸内町は奄美大島にあり、防衛省は南西諸島の島嶼部防衛を強化するべく、沖縄県と鹿児島県島嶼部へ複数の警備部隊を配置するべく調整を進めており、このなかで警備部隊の誘致を進めている鹿児島県の奄美大島に対し、最初の警備部隊新編を行うべく調整を進めている、ということなのでしょう。

Mimg_5956 南西諸島への警備部隊新編と配置は中期防衛力整備計画にもり込まれていますが、当初は北海道北部に配置されているような、数十名規模の沿岸監視部隊が配置される程度ではないかと考えられてきました。しかし、今回の報道では配置される部隊は400名規模の警備部隊となる旨報道されました。

Fimg_5547 警備部隊、400名規模となりますと、福岡の第4師団隷下に置かれている対馬警備隊が400名規模で、奄美警備隊と呼称されるようになるのでしょう。対馬警備隊は本部管理中隊と普通科中隊一個を以て編成され、軽装甲機動車や81mm迫撃砲に対戦車誘導弾など装備しています。

Img_0481  一個中隊の規模では師団規模の浸透等大規模戦闘は対応できませんが、本部管理中隊を有しているため、対馬警備隊は九州からの普通科部隊が複数中隊で増援へ展開した場合、普通科連隊として運用できるよう、その指揮統制及び支援能力は普通科連隊と同等のものを有しています。

Iimg_0776 特に軽装甲機動車に加え、普通科中隊の対戦車小隊は順次中距離多目的誘導弾の配備を開始するため、射程の大きな本装備は大隊規模の着上陸程度であれば、撃破ではなく遅滞に重点を置いた場合、支援部隊が展開するまでの持久期間の防御戦闘をかなり有効的に対処できる余地があります。

Gimg_2747 ただ、空中機動部隊アンブル等の浸透を想定しますと、これはアンブル攻撃へ陸戦学会等がその阻止か撃破かについて、必要な部隊規模を提示しているのですが、その水準と警備隊の規模を比較しますとやはり能力不足で、増えん部隊を如何に展開させるかが大きな命題となるところです。

Gimg_5354 奄美大島への配置ですが、南西諸島全般に大陸側からの軍事圧力が高まっている現状があり、特に隣国が侵攻を示唆している南西諸島の尖閣諸島周辺だけを注視していても、逆に防衛上の他の空白地域を攻撃する可能性があり、この脅威へ備えるには南西諸島全域への複数部隊の配置が必要になります。

Img_3885 宮古島や石垣島といった南西諸島南部の島嶼部についても警備部隊は新編されるべく調整が進められていると考えられるのですが、理解を得られるところから、特に誘致が盛んである奄美大島に最初の警備部隊新編が本格的に進められている、というところでしょうか。

Img_17_14 一方、島嶼部防衛は繰り返しますが、警備隊の一個中隊だけで対応できるものではありません。海上航空自衛隊との連携は当然必要ですけれども、専守防衛を国是としている以上、上陸以前にこちらから戦端を開く確証は必ずしもある訳ではなく、第一撃は受けるという前提が必要となります。

Mimg_2041 このため、警備部隊は持久と遅滞に主眼が置かれることとなりますので、増援部隊を如何に展開させ、島嶼部を占拠した敵勢力を撃破する体制を構築しなければなりません。その手段として水陸両用作戦を主任務とする水陸機動団の新編に向けた調整が進められており、こちらの進展についても注視するべきでしょう。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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