北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新幹線国際輸出研究【2】単線新幹線,中国格安高速鉄道に対抗し得る日本の新幹線制御技術

2020-09-30 20:09:54 | コラム
■大量輸送機関,東海道新幹線
 中国高速鉄道輸出は運行経費を就役後払いで現地運行を中国が管理する方法で無償建築が可能、成長を果たした。しかし日本の新幹線も方法によっては安価に建築し得ます。

 日本の新幹線輸出、中国の格安高速鉄道との対立構造、と理解できる反面、日本の新幹線は複線の限度を超えた輸送力を高度な制御システムにより実現することで、開業以来の衝突事故皆無を実現しました。制御システムと運行システムが確実に機能しているからこそ、300km/h近い速度での毎時10本以上、最短五分間隔の高頻度運転が実現している。

 脱線事故は地震災害により発生していますが、幸い転覆事故には至らず犠牲者を回避できているのは僥倖です。東日本大震災での回送列車競合脱線という列車全長と地震波長が偶然一致し脱線した事案、新潟中越地震や熊本地震の脱線、この二つは営業列車の脱線となりましたが転覆しなかった事で最悪状況は回避できました、ただ僥倖だけではありません。

 東海地震、1974年制定の大規模地震対策特別措置法により危険が常に指摘される巨大地震に対し、東海道新幹線を運行する当時の日本国有鉄道はテラスシステムという早期地震検知システムを太平洋上に広く配置しました。これは震源域に地震計を多数設置する事で地震発生を迅速に検知、揺れが到達するまでに列車を緊急停止させる早期警戒システムです。

 緊急地震速報のようなもの、と思われるかもしれませんが、もともと気象庁が緊急地震速報システムを構築したのは東海道新幹線のテラスシステムを全国へ拡大したもので、東北新幹線用のユレダス早期警戒システムと強化される地震検知用システムをより広く展開させたものが気象庁緊急地震速報システムです。これだけで安全性重視が垣間見えましょう。

 制御システムに最大の安全性を図ることで高頻度運転を実現している東海道新幹線、最高速度を両立させた山陽新幹線の技術は確かに安全性に反映されています。1998年に開業したドイツ高速鉄道は開業翌年に脱線事故を発生させていますが、事故調査委員会の最終報告は最高速度規制表示の運転士見落としというもの、自動列車制御技術を欠いた為でした。

 信号見落としによる衝突事故はスペイン高速鉄道でも発生しており、基本的に自動列車制御システムにより運転士に信号情報が運転席へ表示され、緊急時には自動停止する日本の新幹線制御システムではこれほどの、一人の運転士にすべての安全をゆだねることでのヒューマンエラーが発生する冗長性はありません、しかしこれらは当然コスト面に反映する。

 新幹線の採算性という視点では高頻度運転を行っている東海道新幹線が突出して高い収益性を維持しており、これが次の新型車両開発や安全性強化へ寄与している点も大きなものがあります。東海道新幹線を運行するJR東海はこれら資産の蓄積を持って国鉄時代からの悲願であったリニア中央新幹線を自己資本により実現させる方向で更なる輸送増強を期す。

 最大輸送力から見た東海道新幹線の輸送力は毎時12本運行、16両編成1322座席です。しかし、中国高速鉄道は高頻度運転で毎時2本、安全性重視は治安面に重点が置かれ駅構内立ち入りに手荷物検査場を設置し空港保安体制に準じる安全対策を行うとともに、列車到着30分前には駅に到着するという認識で運行、列車時間三分前の東海道新幹線とは違う。

 国際競争入札へ日本の新幹線技術を考えますと、輸送需要という視点からは単線で対応できる程度の需要しかないのかもしれません。我が国新幹線技術であれば、退避線に途中駅を建設する事で30分間隔毎時2本の運転間隔ならば、単線運行も可能でしょう。逆視点から日本が費用面で中国高速鉄道へ対抗するには単線新幹線構想は決定打となりえましょう。

 日本の新幹線は大量輸送を念頭としたシステムであり、高速鉄道としての目的地への短時間接続は手段に過ぎない、これは日本の国土を反映したものでもあります。例えば、東海道本線沿線の静岡県平野部が仮にあと200km太平洋上に伸びていたならば、東海道新幹線は無かったかもしれません、複々線化を行い必要ならば第二東海道線を建設できました。

 しかし東海道本線の複々線化は当時の高度経済成長期には輸送需要の増大比率から早々に輸送力限界に達すると考えられ、複々複線化を行い上下線各3本を確保するかもう一つの東海道本線を建設する必要がある。加えて土地価格上昇は沿線の複々線化を難しくしており、東海道本線の複々線化費用と費用対効果で見合わなくなると計算されていたのです。

 輸送力増強を主眼とした東海道新幹線、高度経済成長期の日本における東京大阪間の大量輸送需要に対応する輸送力を有した東海道新幹線は複線構造でも諸外国の複々線よりも大きな輸送力を求められ、そして高度な制御装置が現在もその輸送需要に対応する容量を有しています。この日本の制御システムによる輸送力強化は世界でも非常に稀有といえます。

 アメリカ、鉄道大国アメリカは高速鉄道に興味を示すことなく1950年代から国内高速輸送に旅客機を活用、1970年代にはジャンボ機の導入により国内航空路線網が鉄道を置き換える確たる地位を築くに至りました。このアメリカでは、高速鉄道技術構築までの間、長距離輸送には興味深い方式が採られています、輸送力増強に同一地点間平行線建設を採った。

 ニューヨークとボストンを結ぶ列車は1970年代の時点で五路線が平行線として維持されていました、決して東京大阪間が東海道線と中央線に日本海縦貫線で結ばれるような平行ではなく、十数km隔て別の複線を建設したのでした。こうしたならば、仮に一本が停電事故や信号故障等で不通となっても、大幅な遅延が発生しても、輸送力は維持できるでしょう。

 アメリカ方式は広い平野部により実現した方式で、土地取得費用も日本の首都圏とは比較にならず安価で、そして峻険な山間部を貫くトンネルなどはこの区間にありません、広大な国土だからこそできたのでしょう。日本が例えば東海道本線と中央本線の中間部にもう二つ平行路線を開通させる場合、日本アルプス縦貫トンネルが必要となり費用面が難しい。

 鉄道線路が限られている以上、短時間で多数を移動させるには速度を向上するほかありません。ほかの選択肢には在来線列車編成を15両編成から30両編成としたならば、輸送力は増強する事もできるでしょう、しかしこの場合も駅地点間距離の面で編成の長大化には限度があり、東海道本線に東海道新幹線並みの輸送力を求めれば65両編成になってしまう。

 東海道本線の表定速度は東京大阪間556kmが最速の特急サンライズ瀬戸出雲で六時間三四分で表定速度換算では85.5km/h、東海道新幹線のぞみ号は所要時間二時間半で552kmを結ぶため、表定速度は220.8km/hあり、実に東海道本線と東海道新幹線では2.58倍もの差が違うのです、東海道本線の車両は四列座席ですが新幹線は五列、輸送力はこれだけ違う。

 日本の新幹線システムであれば単線でも、途上国が求める輸送需要には対応できる、逆に中国高速鉄道による複線輸送力よりも日本の新幹線を単線で運行する方が輸送力大きくできる、そして専用軌道である新幹線方式ですが、日本型制御システムを用いれば狭隘地形でも単線で非常に輸送力ある高速鉄道を敷設可能、これが最大の強みだと考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】潜水艦特集,仏原潜火災と流行禍下米原潜建造及び新装備開発と中国秘密基地暴露

2020-09-29 20:13:13 | インポート
■週報:世界の防衛,最新8論点
 今回の防衛情報は各国潜水艦情勢を中心に最新論点を纏めてみました。写真はいろいろあって全て海上自衛隊潜水艦で代用です。

 フランス海軍は最新攻撃型原子力潜水艦シュフランの兵装システム試験を七月下旬より開始したとのこと。シュフランはシュフラン級攻撃型原潜の一番艦で、出動公試中となっています。潜航試験は四月下旬に完了、この試験では母港予定地のツーロン軍港に展開した上で兵装システム、ソナーと魚雷及びミサイル、また静粛性の確認などを実施している。

 シュフランの試験は若干前倒しされているとのことで、フランス海軍は2030年までの間にシュフラン級攻撃型原潜6隻を導入し、現在運用中のリュビ級攻撃型原潜を全て置換える計画だ。前倒しとなった背景には、六月に発生したリュビ級原潜ペルルの火災事故が考えられる、造船所での火災であり死者は出なかったが船体前部が溶け落ち修理不能となった。

 リュビ級攻撃型原潜はフランス海軍初の攻撃型原潜で、ドゴール政権時代に核戦力整備の観点から戦略ミサイル原潜建造を優先した為に攻撃型原潜の建造が遅れた、安価に収めるべく過小の船体であり、この反省からシュフラン級は水中排水量5200tと比較的常識的な船体構造を有している、年間270日間の作戦行動が可能となり海軍戦略投射能力を高める。
■コロナとニューポート造船所
 世界最強の潜水艦部隊を支えるアメリカの潜水艦産業も世界を覆うCOVID-19コロナ禍下の影響は逃れられません。

 ニューポート造船所は新型コロナウィルスCOVID-19影響により65%しか工員が集まらずヴァージニア級原潜などの建造に影響が生じているとのこと。COVID-19の感染拡大がアメリカにおいて最も深刻であった四月と五月には同造船所を運営するインガルス社が自由休暇制度を採用した為、工員出社率は50%にまで低下し建造が大きく停滞したという。

 ヴァージニア級原潜はロスアンゼルス級攻撃型原潜を置き換える最新の攻撃型原潜です。ニューポート造船所ではこの他、ジェラルドフォード級原子力空母の建造を進めると共に留守アンゼルス級攻撃型原潜やニミッツ級原子力空母の定期整備も実施しており、同造船所では熟練工員を優先事業に配分した事で複雑な建造工程が更に悪影響を受けたとのこと。

 中国海軍の脅威増大を背景に、アメリカ海軍はヴァージニア級原潜の建造を急いでおり、海軍の要請により現在は建造期間を従来の70カ月から60カ月へと短縮する工程を実施、この変更とCOVID-19感染拡大が重なり、複雑な計画が更に複雑化したとのこと。ニューポート造船所はヴァージニア級に関する建造費増大により1億1100万ドルの損失を見込む。
■SEAL用特殊潜水艇新型
 特殊潜航艇という響きは日本では特攻兵器の印象を与えてしまいますが本来は特殊部隊運搬用です。

 アメリカ海軍は七月、海軍特殊作戦部隊SEAL用特殊作戦潜水艇SDV-Mk.11の洋上試験を開始しました。これは原子力潜水艦から運用され沿岸部への特殊部隊展開に用いられるものです。現在運用されているSDV-Mk.8と比較した場合、航続距離が大幅に延伸すると共に潜望鏡等を備え錯綜海岸地形や峻険沿岸部での作戦能力が高まるものとされています。

 SDV-Mk.11の要目は未だ発表されていませんが、SDV-Mk.8は1983年に運用開始、乗員2名とSEAL要員4名を輸送し、水中排水量17tで全長6.7m、リチウムイオン電池を動力としていますが発電能力など再充電は原子力潜水艦に依存するとのこと。最高速力は6ノットで航続距離は33kmで人員を搭載しない場合は67kmであり12時間の行動が可能です。

 SWCS浅海域戦闘潜水艇とも称されるSDV-Mk.11の試験はハワイ沖にて実施されています。この建造はアラバマ州のテレダインブラウン技術会社により1億7800万ドルで開発契約が為され、推定される水中排水量は20t程度といい、輸送能力は同程度であるといいますので大型化部分は航続距離延伸や船体強化に充てられ、2024年に完成するとのこと。
■ブラジル初の国内建造潜水艦
 ブラジル海軍は航空母艦はじめ中古ながら洗練された装備体系を構築していますが、このほど最新鋭潜水艦の話題が入りました。

 ブラジル初の国内組立潜水艦リアチュエロが初の出動公試を開始した、ブラジル国防省が発表しました。PROSUBブラジル潜水艦開発計画として進められる潜水艦、初の公試は8月12日に実施され、ブラジルのマディラ島造船所から沖合15kmの海域で実施されています。既に施設付近での全没試験は2019年11月20日に実施、完成に近づいています。

 リアチュエロは水中排水量2000tでAIP方式、20ノットで水上航続距離は12000km5ノットで1050kmフランスとスペインが共同開発したスコルペヌ級通常動力潜水艦のブラジル仕様で、元々フランスはスコルペヌ級を自国用に開発していましたが、戦略ミサイル原潜計画の予算拡大により建造費が不足したため、輸出用として設計を継続したものです。

 ブラジルのセペチバ造船所において建造されるリアチュエロは2012年に起工式を経て公試まで既に8年間を要していますが、ブラジル海軍はスコルペヌ級潜水艦4隻を建造中であり、海軍はこの費用に99億ドルを投じています。リアチュエロは現在ブラジル海軍が運用するドイツ製209潜水艦4隻を置換える構想で、性能は倍になるとして期待されています。
■VLWT超軽量魚雷計画
 潜水艦の魚雷搭載能力を聞きますとそれを使い切ったらばどうすれば、という素朴な不安に見舞われますがこのほどこれを解決する新しい装備が生まれました。

 アメリカ海軍ヴァージニア級攻撃型原潜用VLWT超軽量魚雷計画がノースロップグラマン社により進んでいます。これは軽量急速打撃兵器計画の一環として進められる装備で324mmの短魚雷となっていますが、ヴァージニア級原潜には533mm魚雷発射管が搭載され、一般に潜水艦は長魚雷を投射する為に533mmから650mmの魚雷発射管を採用します。

 ヴァージニア級攻撃型原潜は既に19隻が就役しており老朽化が進むロスアンゼルス級攻撃型原潜を置き換えています、当初は高性能のシーウルフ級原潜を量産する計画でしたが対潜性能に特化しすぎたシーウルフ級は使い難く量産は3隻で終了しました。他方シーウルフ級は8門の魚雷発射管を有していますがヴァージニア級の魚雷発射管は4門のみです。

 VLWT超軽量魚雷は長魚雷ほど射程を有さないものの小型であり多数を投射できる運用を想定しています、その任務は潜水艦攻撃や水上艦等への攻撃を想定すると共に魚雷防護手段として敵潜水艦が投射した長魚雷への迎撃用にも用いられる用途も想定しており、潜水艦への実戦配備は2024年を目処として現在、水上戦闘艦からの評価試験を実施中です。
■衛星写真に写った中国秘密基地
 中国軍は爆撃機はじめ大半の戦略兵器を地下に隠す事で有名ですが、商用画像衛星に偶然その様子が映り込みました。

 093型商級攻撃型原子力潜水艦とみられる艦影が南シナ海の海南島楡林海軍基地の地下施設につながるトンネルに入る様子が人工衛星から撮影されました。写真は米衛星画像企業プラネットラブズ社が撮影しSNS上で21日に発表されました。商業衛星が雲のない日に適切なタイミングで上空を通過し撮影出来たのは非常に稀有と僥倖といえるでしょう。

 商級攻撃型原子力潜水艦は水中排水量7000t、650mm魚雷発射管を搭載するほか、後期建造艦はVLSを搭載している可能性も。中国海軍が運用する攻撃型原潜では最新型で現在6隻が運用、前型の漢級攻撃型原潜が静粛性などで重大な問題を抱えていた事からロシアよりヴィクター3型攻撃型原潜の技術情報を入手し建造され2006年より竣工が始りました。

 海南島楡林海軍基地の潜水艦施設は地下に置かれています、これはスウェーデン海軍のゴトランド島における潜水艦地下施設よりも大きく、またアメリカやロシアの潜水艦施設は地下には置かれていません。この施設は中国の航空優勢への懸念の表れで、中国軍ではH-6爆撃機等、主要な施設を地下に配置していますが、このほどその一端が露わとなりました。
■タイ海軍の中国潜水艦取得延期
 タイ海軍が中国から導入する元級潜水艦取得が延期されるとのこと、COVID-19新型コロナウィルスによる経済後退が原因です。

 タイ海軍の中国製潜水艦導入計画が新型コロナウィルスCOVID-19パンデミックによる経済破綻の為に延期されるとのこと。これは8月31日にタイ国防省が発表したもので、パンデミック下の8月に中国から新型潜水艦2隻を225億バーツ、日本円で770億円による契約を予定していました。同型潜水艦は既に2017年に3隻が購入され、現在建造中です。

 元級潜水艦が輸入される計画で、通常動力型としては中国最新、AIP推進方式です。潜水艦の導入計画はタイ政府によれば一年間の延期を予定していますが、軍クーデターによる非合法政権が続く中でCOVID-19パンデミックによる経済破綻は、全くない休業補償と感染対策と無関係の公共事業継続に伴う増税政策からタイ世論は厳しい反応を示しています。

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アルバニアとアゼルバイジャンが軍事衝突,欧州へ通じる南コーカサスパイプライン上での戦闘

2020-09-28 20:10:11 | 国際・政治
■緊張のナゴルノカラバフ
 世界の新型コロナウィルスCOVID-19死者数が100万に迫る中、旧ソ連の南コーカサス地方ナゴルノカラバフにおいて戦闘が発生しました。

 アルバニアとアゼルバイジャンにおいて正規軍同士の武力衝突事案が発生しました。両国は旧ソ連構成国であり国境問題が生じていました。戦闘が発生したのはナゴルノカラバフ自治州で、戦車が攻撃を受ける状況や地対空ミサイル陣地などへの航空攻撃と思われる空撮映像等が確認されています。戦闘により非戦闘員含む17名が死亡しているとのこと。

 領土問題が直接の原因です。アゼルバイジャン領土内にナゴルノカラバフ自治州があり、その帰属問題があり、アルメニアをロシアが、アゼルバイジャンをトルコが支援しています。アルメニア軍がアゼルバイジャン軍の戦車を攻撃する動画がアゼルバイジャンより公開されアルメニア軍が最初に攻撃を加えたとしています。ただ、情報は錯そうしている。

 トルコはアゼルバイジャンを支援、これはアゼルバイジャンにイスラム教徒が多いための歴史的なつながりが背景にあります。ロシアはアルバニア双方に武器を輸出しており今回ロシアはアルメニアに基地を置きつつ、しかし双方の停戦を呼びかけています。ナゴルノカラバフは1994年に独立、その後の停戦までに非戦闘員含め三万名が死亡しています。

 アルメニアは人口295万名で国内総生産は134億ドル、ノアの方舟伝説の残るアララト山麓を領域としており、第一次世界大戦ではトルコとロシアの最前線となり、第二次世界大戦後にソ連に併合、1991年に独立を回復します。国民の98%がキリスト教徒であるアルメニアではこの際に隣国となったアゼルバイジャンとナゴルノカラバフ戦争が勃発します。

 アルメニア軍は現役5万4000名、国防費は6億3000万ドルでGDP比は5%を超え、ミリタリーバランスによればロシア製T-90主力戦車30両とT-72主力戦車140両、BMP-1/2装甲戦闘車200両等の機会か戦力を有し、防空軍としてSA-8等100基を装備、空軍は新しいSu-30戦闘機18機、Su-25攻撃機15機やMi-24攻撃ヘリコプター15機等を持つ。

 ロシア軍がアルメニア領内に駐屯しています。ギュムリ基地にロシア軍第102基地隊が展開しており、MiG-29戦闘機18機、そして長射程の戦域防空システムであるS-300防空システムに加え短距離弾道弾部隊が展開しているとされ、また、アルメニア軍準軍事組織としてナゴルノカラバフ防衛軍があり、旧式戦力主体ですがかなりの重戦力を有するという。

 アゼルバイジャンは首都が空母の名ともなったバクー、人口1027万名で人口の97%がイスラム教徒でありGDPは453億ドル。アゼルバイジャン軍は国防費が22億ドル、現役兵力6万6000名で予備役兵力は60万名に達します。主力は陸軍で5個師団隷下に22個自動車化狙撃旅団が置かれ、トルコ政府の支援下で装備体系はソ連製からNATO規格へ向かう。

 アゼルバイジャン軍は戦車がT-90を100両とT-72戦車470両に旧式T-55が100両、BMP-3装甲戦闘車100両とBMP-1/2が80両、トルコとの防衛協力によりコブラ軽装甲機動車350両とアクプス軽装甲車300両、南ア製マンバ等の耐爆車両を200両程度ライセンス生産する。空軍はMiG-29戦闘機18機とMiG-21が若干数、Su-25が12機とMi-24が17機など。

 天然ガスパイプラインが存在する。このアルバニアとアゼルバイジャンの軍事衝突問題を複雑なものとするのは、この南コーカサス地域にはロシアの天然ガスパイプラインが敷設されており、天然ガスパイプラインはこれ一本ではないのですがロシアから南欧地域への重要なパイプラインとなっており、この地域の政情不安定は思わぬ影響を生みます。

 SCPX南コーカサスパイプラインは692km、このパイプラインはそのまま2019年に開通したTANAPトランスアナトリアパイプラインの1850kmを経てトルコからエーゲ海までを直通し、TAPトランスアドリアパイプラインの878kmを経て、ロシアからイタリアまでを直通しているのです。そして近年、天然ガスは欧州の重要な新エネルギーとなっている。

 イタリアとロシアを結ぶパイプライン、天然ガスは近年世界で関心の高まる気候変動問題への切り札の一つとして注目されているのです。天然ガスの主成分はメタンガスやプロパン、要するに二酸化炭素よりも遙かに温室効果の高い気体となっており、これが大気中に自然放出されますと気候変動が劇的に進む懸念、するとどうするべきか、燃やせばよい。

 脱石炭と脱石油として再生可能エネルギーに脚光だけはあつまっていますが、発電量で原子炉一基に相当する発電量を賄うには膨大な土地を切り開き太陽光パネルを敷き詰め風力発電塔を設置せねばなりません。砂漠地帯は別として森林を開拓する場合にはCO2排出権には森林面積の再生産量が含まれるため、太陽光パネルはCO2排出権に悪影響も及ぼす。

 ここから生じる問題は、南欧地域が脱石炭と脱石油とともに再生可能エネルギーが補填できないエネルギーを原子力とともに新しい天然ガスに依存する枠組みが構築されつつある最中でのパイプラインへの影響です。そして紛争が長期化した場合は、トルコがギリシャと対立するエーゲ海天然ガス開発を促進する要素ともなり、別の紛争へ波及しかねません。

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【日曜特集】航空自衛隊60周年小松基地航空祭(1)F15オープニングフライト(2014-09-20)

2020-09-27 20:17:01 | 航空自衛隊 装備名鑑
■小松基地航空祭二〇一四開幕!
 日曜特集、本年は新型コロナウィルスCOVID-19影響により航空祭は総中止となっていますが、航空自衛隊60周年小松航空祭の活況をお伝えしましょう。

 小松航空祭オープニングフライトは六機編隊へ増強されて再度若狭湾方向から。航空祭の撮影位置は多く分けて二つ、一つは滑走路前に陣取って離着陸の様子を超望遠にて格好良く撮影する定番、もう一つは出遅れた場合に敢えて後ろの方で飛行展示に重点を置いて撮影すること。

 写真は一枚目よりも十数分程まえ。小松基地上空F-15戦闘機三機編隊が0754時に航過飛行を実施する。この日は小松基地航空祭、そして福井駅前に宿泊の当方は北陸本線を小松駅に到着した時点で長大すぎるシャトルバス行列を回避しまして、小松駅から小松基地まで徒歩で一心に歩くこととしました。

 オープニングフライトを展開する三機編隊のF-15J戦闘機。小松駅から小松基地まで、タクシー乗り場も長蛇の列でしたので、路線バスで近くまで行くことも考えたのですが結局徒歩ならば一時間で4km進める、ということでざっと55分ほど歩いて漸く小松基地へと。

 再度上空をオーバーヘッドアプローチにて編隊を組み替えて。オープニングフライトは0745時からと聞いていたのですが、距離からぎりぎり間に合うかな、というきわどい時間配分で、重い撮影機材を担いで、いや片山津か加賀温泉に泊まればよかった、と思いつつ。

 小松基地ゲートにようやく到着しました。はい。オープニングフライトは焦がされるような思いと重い、重いのは撮影機材だ、素数を数えて心を落ち着かせつつ、ようやくゲートまで到着したのでした。そう、オープニングフライトは基地へ歩み進めつつ撮影したもの。

 小松基地に入場しますと小松救難隊のUH-60Jが離陸してゆく。海沿いの小松基地は1941年に帝国海軍が農水省用地むじな浜を買収し設営した飛行場で1943年に舞鶴鎮守府小松飛行場として創設、1944年には陸上攻撃機二個飛行隊を有する基地として運用が本格化した。

 UH-60Jの離陸を見上げつつ格納庫を抜けてエプロン地区へと急ぐ。歴史有る飛行場だけに来場者も多く、つまり混雑するのだ。だから撮影位置は素早く決めなければ良い写真は撮影できません。ここ小松基地は金沢からも30kmといい、京都や大阪からも文化的に近い。

 六機編隊がこの日の最大の編隊飛行という貴重なフライトなのです。航空祭でなければ大編隊はなかなか見られない、だから航空祭の撮影ではここに重点を置くのですが、残念なことにオープニングフライトで実施されると、そう、撮れるよう早起きせねばなりません。

 六機編隊を見上げつつ幸いにして滑走路脇に撮影位置を確保できた。自衛隊が小松基地を開庁したのは1958年、旧海軍を経て1945年に米軍が接収し補助飛行場としましたが、1953年に民間空港として開放、1955年から全日空が大阪への航空路線を設置しています。

 小松ではいままでに十二機編隊飛行、というものが最大であった。しかし八機程度が編隊を組んでくれませんと大編隊ではなく編隊飛行、という程度でしてもう少しF-15が参加してくれたならば良かったのになあ、とも。そして曇天も少しだけ残念なきがしますよね。

 全日空のボーイング777が羽田空港へ向けて離陸してゆく。小松航空祭は民間航空会社とも共同し、離着陸の際には各航空会社から何処へ向かうかのアナウンスが入ります。全日空は小松空港開港のさいの最初の会社で、当時の社名は日本ヘリコプター空輸、という。

 第6航空団が小松基地の戦闘機部隊、そのF-15がローリングコンバットピッチにより六機編隊は解かれてゆく。第6航空団は1961年に小松で創設、千歳基地から第2航空団第4飛行隊と松島基地から第4航空団第8飛行隊を移駐させ、7月15日に第6航空団は生まれた。

 ローリングコンバットピッチを経て一斉に着陸進路へと向かいます。F-15J戦闘機はアメリカ軍が世界中で運用し、空中戦で撃墜されたことはない無敵を誇る。ただ、1961年の第6航空団創設当時は当然、こんないいものはなく、旧式のF-86F昼間戦闘機を装備している。

 六機編隊が徐々に解かれて三機となりつつ更に旋回していった。イーグルはアメリカ空軍の中でも格闘戦を重視する"戦闘機マフィア"とよばれる理系集団が当時長距離ミサイルがあれば機動力は不要という主流派に叩きつけた挑戦状が具現化したもの、といえるもの。

 着陸し小松空港のターミナルビルとF-15イーグルの並び。小松空港は金沢から東京へ向かう定番、この航空祭当時は北陸新幹線の金沢開業前でした。新幹線で東京へ行く場合は当時、上越新幹線へ北陸本線特急を乗り継ぐ必要がありまして、空路の方が遙かに早かった。

 エアドゥ北海道国際航空のボーイング737が千歳空港へと離陸してゆく。第6航空団の始まりが千歳基地からの飛行隊派遣でしたので何か親しみを感じる、当時千歳基地はマザースコードロン、増やした飛行隊を全国の新設航空団へ供給していたという歴史があります。

 第303飛行隊F-15J戦闘機が二機編隊で離陸、デジタル迷彩の記念塗装だ。F-15Jは強度計算や構造寿命よりも最高のチタン合金で軽くしかし頑丈に設計するというものでして、これが連綿と近代化改修に対応できるタフな機体構造を構成し、これこそF-15最強伝説だ。

 デジタル迷彩記念塗装機と通常塗装F-15Jの対比が。F-86F昼間戦闘機は1964年に当時の航空自衛隊岩国基地第82航空隊に移駐し、1965年に期待の超音速戦闘機F-104Jを装備する第205飛行隊が小松にて創設されました。岩国の航空自衛隊は1963年から1967年まで。

 F-15Jデジタル迷彩は航空自衛隊60周年記念塗装でもある。航空自衛隊の創設は1954年、警察予備隊が保安隊と海上警備隊と成長を経て、独立した空軍組織としてアメリカ空軍が主軸となって航空自衛隊を創設しました。旧軍にも独立した空軍という機構はありません。

 第306飛行隊のF-15J二機が日本海上を旋回し750km/hでフライパスする。航空法の関係からこれが日本国内の航空祭で実施できる最高性能なのだとか。なお、F-15J戦闘機は搭載する二基のプラットアンドホイットニー-IHI/F-100-PW-220エンジンで音速2.5倍を出す。

 デジタル迷彩のF-15Jが着陸して誘導路をこちらへ、奥はターミナルだ。この撮影位置、いやはや出遅れたのにも関わらず良い撮影位置、最前列近くを確保できたのは僥倖でしたが、ちょっと地上展示航空機が滑走路発着する航空機を隠してしまう、残念な位置という。

 JASDF60周年と大書されたF-15Jのデジタル迷彩がみえる。考えてみればジェット機を飛ばせる搭乗員も居ない1954年創設から始まり、今やF-15に現在はF-35,それに二桁のE-2CとE-767,巨大な国産のC-2や第六世代を狙うF-2後継機、自衛隊も大きくなったもの。

 第306飛行隊の2機編隊がウェーキを曳いて上空を日本海へ旋回する。F-15はミサイル万能時代に投じられた一石とは前述の通りですが、ミサイル誘導に必要な重厚レーダーを積んで身軽に飛ぶべく頑丈に頑丈を重ねて入手しうる最強のエンジンを搭載した設計のもの。

 F-15J三機編隊、広角で地上にはU-4やP-3CにF-2が並ぶ。小松基地では2007年より脚立地区を設置し、航空祭会場にて脚立利用者とのトラブルを回避していまして、2006年まではこの構図をもう少し高い位置から撮影できたのですが、現在はそうした摩擦はない。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本版ハリケーンハンターが必要だ(2)61年目の”伊勢湾台風”慰霊の日と米空軍気象観測機

2020-09-26 20:00:14 | 防災・災害派遣
■名古屋を襲った巨大台風
 日本国内、2020年はいまのところ巨大な台風被害からは免れていますが61年前の本日は災害史の転換点を迎えていました。

 9月26日、本日は伊勢湾台風上陸から61年目の慰霊の日です。大水害時代、という単語を本年は別の特集でも用いていますが、1940年代から1950年代に掛けては千人単位の犠牲者が生じる大水害時代、というものであったのですね。その中でも伊勢湾台風の被害は桁を外れたものがありました、死者行方不明者5098名、負傷者38921名、恐るべきもの。

 伊勢湾台風は1995年の阪神大震災発災までは、戦後最大の自然災害、であり続けた訳です。そして大水害時代、と云い得るのは、決して日本が戦後の治水事業や防災設備を建設し続けた事で、伊勢湾台風のような巨大水害を過去のものとし得た訳ではない、こう説明が成立つのです、その論拠としては、気象庁が発表している日本上陸時の台風気圧にみられる。

 第二室戸台風、1961年9月16日上陸の台風が中心気圧925hpsという日本本土上陸時最低気圧の第一位でした。第二位が929hpsの1959年9月26日の伊勢湾台風、第三位が930hpsの1993年9月3日、第四位が935hpsの1951年10月14日、第五位が1991年9月27日、という。実のところここ数年間の巨大台風が上位五位には入らないものでは、あるが。

 伊勢湾台風は上陸前にその接近がかなり生活に予報された台風ではありました、その危険な台風の接近を感知したのは、アメリカ空軍の気象観測機だったのですね。この情報を受け、9月25日に名古屋海上気象台は台風前日前に海上強風警報を発令しています。ただ、不幸であったのは和歌山県に上陸した26日が土曜日であり、行政の対応の遅れがあります。

 伊勢湾台風では26日1115時に愛知県が、1130時に三重県が暴風警報と波浪警報及び高潮警報を発令し住民に警戒を呼び掛けます。しかし、戦後復興により広がった住宅地には貯木場隣の住宅街や海抜0メートル地帯等の危険な立地が数多あるものの、ハザードマップのようなものはまだ無く、戸板を板で固定する程度の準備のまま台風を迎えた事例が多い。

 台風対策はハザードマップと気象衛星によりかなり進み、避難指示のいち早く広範にわたり出されるようになりいわゆる行政の落ち度というものは少なくなりました、堤防も高くなった。しかし、その分だけ、気象予報を受けて地方中核市が全域で、政令指定都市が広範囲で、住民数十万に対して避難指示を発令する実情も増えています、頻度も高くという。

 過去に例のない水準の暴風、台風10号気象庁予報は幸か不幸かはずれました、昨年の台風19号の本土上陸よりも勢力は小さく九州に接近したのです。令和元年東日本台風、こう記録される2019年台風19号は最低中心気圧が915hPsまで成長し、死者91名という甚大な被害を引き起こしました。今回の台風10号もここまで成長する当初予報であったのですね。

 猛烈な勢力まで台風10号は育つことはありませんでした、太平洋高気圧の影響が予想よりも大きく、台風進路が西よりとなったことで前週に通過した台風9号が攪拌した洋上をすすんだため、海水温度が低くなっており台風の勢力は育たなかったためです。育っていれば、室戸台風並の勢力で記録的な高潮と暴風被害が生じた可能性はあったのですが。

 ゴジラの息子。1967年の作品ですが映画の世界では自衛隊による台風観測という描写は存在しています。映画ではP2V7対潜哨戒機が台風観測任務を行っている様子が描かれていました、冒頭、台風観測の最中にゴジラと遭遇するのですね、機長を演じていたのは黒部進氏、前年1966年にウルトラマンのハヤタ隊員役でトップスター仲間入りを果たしました。

 しかし現実世界でも過去、気象庁が台風観測機を必要としており、政府部内で予算面で検討されたことがあります。具体的には気象庁の観測を自衛隊が支援するという形で自衛隊が予算などを検討していたといいます。具体的にはアメリカから気象観測用のWB-50観測機、B-29爆撃機の改良型を改造した機種、この機体を中古取得する構想であったという。

 ゴジラの息子、その二年前の1965年には一つの悲劇がありました、マリアナ沖漁船大量遭難事件です。1965年10月7日、カロリン諸島で発生した台風29号が急速に勢力を増しました、この進路上を日本のマグロカツオ漁船団40隻が操業中であり、台風接近を受け避泊地としてマリアナ諸島のアグリハン島沖に退避しました、これは一週間前の経験による。

 900hPsという巨大台風がこの一週間前にもマリアナ沖を通過しており、漁船団はアグリハン島の島影に避泊することで安全にやり過ごすことができたため、この経験を活かしたものだったのですが、台風は大きく迂回し915hPsの勢力で船団を直撃、7隻が沈没もしくは座礁し3名負傷、死者1名と行方不明者208名という、異例規模の遭難事故となりました。これを契機に台風観測機の必要性は認識されているのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和二年度九月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.09.25-09.26)

2020-09-25 20:04:41 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末も行事がありませんので過去の岐阜基地航空祭の写真と共にCOVID-19の話題を視てみましょう、アメリカ死者20万という衝撃的な報道がありました。

 COVID-19, アメリカでの死者数が遂に20万を越え、アメリカ国内では全米33州で感染が拡大傾向にあり、15州では死者数が再度増大しています。日本国内での感染者数が中国の感染者数に迫る中、すでに死者数は1500を超えていますが、アメリカの死者数の多さは衝撃的と言わざるを得ません。全世界での一週間の新規感染者数200万、実に6%という。

 自衛隊関連行事をいつ再開できるかについて、募集対象者や基地周辺住民事前登録による限定公開というものは順次実施されているところですが、昨年の、いや今年一月の空挺団降下訓練始めの際の様な自由な一般公開が再来する為には、先ず、感染拡大を抑える必要があります。自然終息は難しく、ワクチン開発まで医療崩壊を起こさない事は肝要となる。

 トランプ大統領は四月にCOVID-19の感染拡大について、冬までに死者数を20万に抑えられたならばわれわれは良くやったといえる、こう数字を示した訳ですが、大統領の警鐘は当時大袈裟と受け止められたものの、冬を待たず中秋にこの数字が現実のものとなったのです。これは感染症対策における州政府の自治権を今後揺るがす集権化の鏑矢と成り得る。

 20万の死者数。日本国内では大規模な自粛要請と巨大クルーズ船ダイヤモンドプリンセス横浜検疫に際して、早い段階でCOVID-19の危険性を体験として認識させられたことが、その後の感染対策の、失敗ではないかとの指摘は常にありましたが、感染拡大をある程度収める事が出来ているよう思われますが、このまま乗り切れる確証も、また、無いのです。

 世界全体では死者数は100万に迫り、増加率が10%収まったとはいえ全体では深刻な状況は変りありません。ただ、先進国では治療法が手探りで拡大しており、集中治療室での生存率が高まっています。アフリカでの感染は若年層の患者が多いことから感染者数に対しての死者数が抑えられ、しかし、感染死者数はアジア地域での増加が顕著となっています。

 フランスでは24時間の感染者数が1万名の大台に乗り、しかもPCR検査を強化しているものの、その陽性率は6.1%となっており、欧州での第二波は現実のものとなりつつあるようです。呼吸器系感染症であるコロナウィルス、そのピーク時は冬季の乾燥した大気によるものであり、北半球での早秋からの感染拡大、また冬が訪れた場合の懸念が残ります。

 ロックダウン、都市封鎖は各国で再度行われるのでしょうか。イギリス政府は感染再度の拡大を受けジョンソン首相が最長六ヶ月間の延長を見込んだ上で、可能な限りの在宅勤務や外食産業では2200時までの営業制限、スコットランドでは更に厳しく、個人邸宅への訪問の全面禁止を挙げて感染拡大防止を強化しています。緩規制は今年冬の二番煎じという。

 都市封鎖回避への緩い規制、しかし再規制であり、イギリス政府ではスペインやフランスとともに現在の拡大を危うい分水嶺として感染再生産数を1.0に抑えなければ再度都市封鎖以外選択肢がなくなるとして、先手を打つことが大事、国民へ理解を求めています。更に、感染状況に大きな改善があれば六ヶ月以内に対策を完了する可能性も示唆しています。

 日本が欧州やアメリカの様な、若しくは中国武漢の様な、少し前の南米やメキシコ、現在のインドや南アフリカのような厳しい感染拡大と大量の犠牲者という状況のような厳しい状況とならなかった背景は、様々な要素があるとされているのですが決定打については未知数です。先日の四連休はかなりの人出が在ったようで、休日の分散等も必要に思います。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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ミサイル防衛専用艦建造よりも改まや型イージス艦が最適,護衛艦として簡略化で建造費低減案

2020-09-24 20:01:59 | 先端軍事テクノロジー
■こんごう型護衛艦後継艦にも
 イージスアショア代替問題について一部報道ではミサイル防衛のみに特化した特殊船の政府検討を報じています。

 ミサイル防衛専用艦。かつて軍事評論家江畑謙介先生が1990年代に提案した弾道ミサイル防衛の方法です。しかしあれから20年以上を経まして、当時は薄かった中国海軍の脅威が増大し、長期の少子高齢化が進む我が国では一隻の護衛艦も貴重であり、弾道ミサイル防衛にのみしか用いられぬ専用艦を維持する事について、負担の大きさが見合っていません。

 まや型護衛艦の簡略型を建造し、ミサイル防衛に充てられないか。専用艦の難点は、結局のところ新設計が必要であり設計費という問題を無視しているのです。何隻も量産するならば話は別ですが、そうした話もありません。それならば動かない海上浮体石油掘削リグを領海内の沿岸近くに配置した方が、運用は陸上自衛隊が行えますし安価だったでしょう。

 イージスアショアは固定施設であり、破壊工作や飽和攻撃へ脆弱性があります、海上配備ならば移動し回避が可能だ。設置場所も当初の秋田山口両県を断念し、舞鶴基地に近い若狭湾と大湊基地に近い陸奥湾とすれば補給も容易、将来更に佐世保基地近くの玄界灘に置ければ南西諸島も守り得ます。全く無駄とは考えないのですが変更が急で付け焼刃過ぎる。

 イージス艦の簡略化、アメリカ海軍ではアーレイバーク級ミサイル駆逐艦のフライトⅡにて実施しています、建造数よる量産効果もさることながら、初期型にあたるフライトⅠと比較し、二割以上安価となった。しかし簡略型であっても持てる国の簡略型、その能力は最も過酷な海上戦闘にも将来に渡り対応できる高水準にある。これを日本に当てはめよう。

 CIWS廃止。対艦ミサイル攻撃への最後の防衛手段である20mm高性能機関砲を思い切って廃止することで21番砲と22番砲の予算を削減します、突飛な案に見えるかもしれませんが、元々イージス艦の防空能力は高く、ここに近接防空をESSMに統合するという事であれば納得できるのではないでしょうか、ESSMはMk.41VLSにそのまま搭載できます。装備を減らせば乗員も省力化できる。

 17SSM省略。ハープーンミサイルや90式艦対艦誘導弾の後継として開発された17式艦対艦誘導弾、まや型は8発を搭載していますが、これを思い切って廃止する。対艦戦闘はスタンダードSM-6により代替する、威力はそれ程大きくはありませんがAIM-120のレーダーシーカーを搭載する新世代の艦対空ミサイルはアメリカ海軍でも対艦用に採用予定です。

 搭載艇のRHIB化,護衛艦には7.9mや11m搭載艇が2隻搭載され、乗員3名で人員22名や貨物などを搭載し7ノットで航行可能です、塗粧や沖留時の交通に必須装備ですが、重い、特に新型は。そこで軽量のRHIB複合艇とすれば、デリックのを省略し、航空格納庫付近にクレーンを搭載するだけで運用可能です、搭載艇区画はステルス性で複雑化していて省ける意味は大きい。

 ミサイル垂直発射装置VLSの後部VLS後日装備,アメリカ海軍はここまでは検討だけで実施しませんでしたが、まや型は前部に64セルと後部に32セルのVLSを備えています、64セルだけでは心もとない様に思われますが、イージスアショアミサイル迎撃用SM-3はここまで多数を搭載する計画は無く、またスペインと豪州のイージス艦はVLSが48セルです。この水準の装備ならば、ミサイル防衛以外にも艦隊で活躍できる。

 こんごう型護衛艦、1993年から4隻が建造されたイージス艦ですが、まや型護衛艦簡略型2隻をイージスアショア代替に充て完成するのを最速で2024年と見積もった場合、この時点で一番艦こんごう艦齢は30年を超えており後継艦が必要となります。そこでイージスアショア代替艦に続いて、改まや型に定数通りVLSを設置しSPY-6搭載へ設計変更、建造すれば量産効果が成立つ。

 LRDRレーダー。イージスアショアを複雑としているのは既にレーダーシステムの費用がアメリカに支払われており、いま中止した場合でも契約金額の半分前後にあたる数百億円が返還されない可能性が高いのです。日本では調達計画の政府反故は日常ですが、例えばドイツがPAH-2戦闘ヘリコプター調達縮小の際には違約金で45%の支払いを行っています。

 まや型を改造するとしてSPY-1に代えてLRDRを搭載できるのか、LRDRはSPY-6のようにSPY-1の搭載艦への設計変更を見込んだものではありません。ただ、ここでも上記の省略部分が重量軽減に繋がり、復元性の問題を多少払拭できる可能性はあります。なにしろCIWSだけでも重量が4.5tあり、これを二基省く事で9tの重量軽減となるのですからね。

 ミサイル防衛専用艦よりも簡略型イージス艦、しかし、イージスアショアを二基に留まらず大量配備を行うならば、話は別です。陸上自衛隊が運用する海上配備システム、そのまま南西諸島に進出し島嶼部防衛にも強力な防空能力を発揮できます、03式中距離地対空誘導弾やペトリオットの後継とも成り得ます、ここまで政府が考えているかは定かではありません。

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【京都発幕間旅情】宗安寺(滋賀彦根)赤門迎える御堂は井伊直政高崎に開いた不思議な御寺

2020-09-23 20:01:19 | 旅行記
■淀殿念持仏奉じる近江の御寺
 勝者が全てを得る二元論、一種デジタル的で現代的と見えますが敗者をも包容する多元的な価値観がかつての我が国でした。これを体現する御山が彦根にある。

 赤門が真夏の厳しい陽射しの下に少々日焼けした退色の緋色を青空と見事な色彩対比を醸し、なにか長すぎた梅雨明けに唐突な猛暑酷暑の陽射しに疲れた印象を、しかし奥の本堂が疲れているも佇まいを糺す僧侶の風格の様な気風を漂わせる。ここは彦根宗安寺です。

 宗安寺庭園。滋賀県彦根市の寺院です。彦根と云えば江戸時代の大藩彦根藩が西国大名への抑えとして機能していまして、成程江戸時代に大きく整備が進んだ彦根城の城下町は明治維新の後にモザイク画のような和洋折衷化が進みましたが平成に再整備され今に至る。

 近江牛でも一つ入れて活力を増そう、新型コロナウィルスCOVID-19感染症の所謂コロナ禍下にあって少々社会が息苦しさを増している最中に美味しい銘牛を頂く事としました、なんでも近江牛は安土桃山時代から滋養強壮の薬膳として親しまれたもので特に美味しい。

 京橋通、ここは彦根城城下町の、駅前に至る通りとは別の寺町として整備されたもので、平成の外観復元に際しては商店街を江戸時代の商家風に化粧直ししているのですが、美味しい近江牛を頂いた後に、ふと佇まい美しい伽藍が並ぶ事に趣きを感じ、歩み進めました。

 上野国箕輪、この寺院は元々井伊直政治世下の群馬県高崎に天正18年こと1590年に建立されましたが、関ヶ原の戦いに勲功を挙げつつ銃弾に重傷を負った井伊道政が徳川家康より銃弾に身を挺して勝ち得た地に程近い彦根に転封を定め、その際に寺院も遷座したもの。

 井伊直政所縁の寺院という事で、成程それならば山門の朱色も赤備え由来かと思うと、もともとは石田三成の居城佐和山城の大手門を移築したものといいまして、佐和山城は廃城の後に彦根城へ移築されましたが、城下町に残る数少ない佐和山城の遺構でもあるという。

 住持成誉典応上人は高崎での開山から慶長8年こと1603年の彦根遷座まで井伊直政につき従いこの地に至りました。歴史によれば三年前の関ヶ原の戦い戦跡地通り彦根に至った成誉典応上人はじめ高崎からの人々は感じるものがありまして、この寺院の安置仏に現れる。

 淀殿の念持仏と石田三成の念持仏、宗安寺にはこの二柱が安置されていまして、淀殿の念持仏は御本尊として奉じられています。大坂城の仏間より大坂夏の陣にて譲り受けたといい、修復に際し鎌倉期の文永7年こと1270年に佛師阿澄に彫像された事がわかりました。

 石田三成の念持仏は拝観に際し間近に手を合わせる事が出来まして、主君は違えど戦国乱世の鎮定と平和の到来に尽力した武将の敗戦没後にあっても思いを受け継ぐ価値観には尊敬の念が湧きます。井伊家所縁の寺院は浄土宗、徳川家康没後は位牌奉安所ともなります。

 朝鮮通信使節団高官宿所、江戸時代には宗安寺は、こう、位置付けられまして庭園などは一時でも隣国高官を迎えるに相応しい風情を醸すべく、広くはありませんが静寂と清涼を湛えています。ただ、彦根城下町は元禄の大火の災厄に見舞われ、赤門以外焼失しました。

 長浜城付属御殿、現在の本殿は元和元年の1615年に長浜城は豊臣家滅亡を受け西国監視の責務が軽くなり廃城となった長浜城の遺構を江戸中期に移築したもので、御堂から庭園を昭和期に並べられたゆったりとしたソファーから時間の移ろいと共に眺める事も出来ます。

 虎の板絵が残る本堂、宗安寺は井伊家所縁の寺院であるとともに藩士の会合所として繁く供され、歴史の裏舞台に登場するのは激動の幕末、維新政府と徳川幕府の何れに彦根藩が恭順するかの秘密会議を開いたのがこの堂でした、彼らの見た風景を今見る事が出来ます。

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【榛名防衛備忘録】機動戦闘車vs装甲戦闘車,高威力化進むCTA機関砲と各国FVの重装甲化

2020-09-22 20:08:53 | 先端軍事テクノロジー
■16MCV優位脅かすCTA機関砲
 16式機動戦闘車は間近に見ますと物凄い迫力ですが、これは絶対優位ではない、特に最新鋭の装甲戦闘車を見慣れていない故の印象なのかもしれません。

 現代の40mm機関砲弾はAP弾を中心に弾薬改良が進み戦後第一世代戦車の75mm徹甲弾に比肩する威力がある、こういう話をお聞かせいただいたのは10年ほど前、技術の発展に驚かされた事を意味します、湾岸戦争では25mm機関砲で第一世代戦車を撃破しましたが、機動力を重視した第二世代戦車であれば正面装甲を貫徹する威力ですから正に驚きだ。

 16式機動戦闘車は生き残れるのだろうか、機関砲の発展は留まるところを知らず、CTA機関砲として発射速度を大幅に向上させコンパクト化も両立した新時代の機関砲が徐々に装甲戦闘車の機関砲として配備がはじまっています、要するに威力の高い40mm砲弾を短時間で集中する、第一世代戦車の小隊集中射撃のような打撃力を装甲戦闘車がもちつつある。

 10式戦車であれば対抗し得ます、正面装甲は第三世代戦車の120mm滑腔砲に耐える水準で弱点となる側面部分は自動装填装置等の採用で脆弱性を抑えています、しかし16式機動戦闘車は戦闘重量26t、車体は74式戦車よりも巨大だが重量は軽量、とても大口径機関砲を跳ね返す圧延均一鋼鈑換算50mm以上の防御力を有していると考えられないのですよね。

 16式機動戦闘車は元より、大口径火砲を搭載した装輪装甲車全般に言える点なのですが、一方的にCTA機関砲の標的となる可能性はないのか。勿論、この点は陸上自衛隊も理解しており、訓練展示などで示される機動戦闘車は防御戦闘として陣地からの運用を基本としています、そして陸上自衛隊はことあるごとに本装備を戦車ではない、と強調しています。

 4000mの超長距離射撃、16式機動戦闘車は2019年富士総合火力演習において三段山、特科部隊の射撃目標の置かれた遠距離目標への射撃展示を初公開、戦車射撃は日本では2000mを基本としており、極めて遠い目標への射撃を成功裏に完了、交戦距離の長さを誇示しました、105mm砲はL7系技術を応用しており7km以遠の目標とも交戦実績がある。

 プーマ重装甲戦闘車、KF41リンクス、AJAX装甲偵察車、CV-90装甲戦闘車、もちろん装甲戦闘車は16式機動戦闘車の105mm砲に耐えられるような装甲ではありません、ただ、これらは戦闘重量が30tを超え、一部には増加装甲で40tを大きく超えるものがあり、これにより正面部分は35mm機関砲耐弾が基本となっています、昔よりも遥かに硬くなった。

 ノモンハン事件においてソ連のBT-5は高威力の45mm砲を備えていたが、その分軽装甲である為に九七式中戦車の短砲身57mm砲弾が命中すると簡単に撃破されたという。逆に多少装甲が厚かった九七式中戦車は高初速の45mm砲弾が命中すると簡単に撃破された、とも。大口径砲を搭載の装輪装甲車と大口径機関砲を持つ装甲戦闘車の将来像にみえます。

 AMX-10RC装甲偵察車、チェンタウロ戦車駆逐車、ストライカーMGM装甲機動砲、105mm砲を搭載する装輪装甲車は幾つかが開発されましたが、AMX-10RCの後継としてフランスは40mmCTA機関砲を搭載したスフィンクス装甲偵察車を開発、チェンタウロ2として120mm砲を搭載した改良型が生まれる等、この種の車両は現在、揺動期にあるといえる。

 16式機動戦闘車は戦車大隊を置き換える装備として、即応機動連隊機動戦闘車隊や偵察戦闘大隊戦闘中隊への配備が進んでいます、この為に戦車の代替、少なくとも極めて高度の重装備と理解されているように思えるのですが、相手が戦車であった場合は勿論、装甲戦闘車であった場合も安泰ではない、こうした認識で機動戦闘車を視てゆく必要を感じます。

 憂慮すべき点は自衛隊の装甲化の遅れが顕著であり、実際のところ機動戦闘車を装備する即応機動連隊は自衛隊の機会か態勢における最高水準の機械化部隊という位置づけとなっている点で、“実感としての装甲戦闘車部隊”というものへの対処認識が薄いように思える点です。もちろんこちら側の105mm砲弾に耐えられる装甲戦闘車は考えにくいのですが。

 多次元統合防衛力、現在進められる防衛力整備の源流に在る統合機動防衛力構想では、重装備の敵機械化部隊に対しては即応機動部隊は緊急対処部隊であり、あくまで北方からの総合近代化師団や総合近代化旅団の増援を待つ、という前提ではあるのですが、装甲近代化師団でさえ96式装輪装甲車は僅か、装甲戦闘車などは装備されていない現実があります。

 16式機動戦闘車は優れた装備なのですが、第一線級の装甲戦闘車が相手の場合はかつての25mm機関砲のようなものとは別次元の高威力を有する機関砲が搭載されており、自衛隊も89式装甲戦闘車の後継に当る装甲車両をせめて総合近代化師団の普通科連隊だけでも充足するか、北海道部隊の九州への員数外10式戦車の事前集積、思い切った16式機動戦闘車やCTA機関砲装備の偵察車輛を揃える必要があります。

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【防衛情報】イージスアショア代案とアイアンドームのTHAADリンク,NASAM防空システム

2020-09-21 20:10:33 | インポート
■週報:世界の防衛,最新の8論点
 今回の防衛情報はミサイル防衛や防空に関する話題を中心に議論してゆきましょう。

 防衛省はミサイル防衛専用艦の建造を検討中、来年度防衛予算概算要求に関わる報道の中でイージスアショア代替案が急浮上しました。これは日本本土を弾道ミサイル防衛から防護する陸上配備型イージスミサイル防衛システム“イージスアショア”のブースター落下問題に関連しての配備中止を受け、何らかの代替措置が必要とされる中での一案です。

 ミサイル防衛専用艦の他に、メガフロートなどの海上浮体構造物上にイージスアショアを建設する海上施設案、イージスアショアのレーダーアンテナ部分のみを陸に建設しブースター問題を抱えるミサイル発射装置のみを海上に置く分離案等が検討されましたが、海上施設案は攻撃や災害などへの脆弱性、分離案はデータリンクの問題から難色があったとも。

 イージス艦の建造費は高額ではありますが、ミサイル防衛専用艦は通常の護衛艦から不要となる対水上戦闘や対空戦闘能力等を割愛し、機関部なども簡略化した上で建造費を抑える事でイージス艦の半分程度に建造費を抑えられる見込み。運用担当や新しいイージスアンテナの整合性については全く未知数のまま、来年度概算要求に盛り込まれる見込みです。
■ラインメタルの印新工場
 ラインメタル社が機関砲に関する新工場をインド国内に建設を計画しています。

 スカイシールド35高射機関砲システムについてラインメタル社は8月、インドのウッタルプラデーシュ州に新工場を建設するとのこと。ウッタルプラデーシュ州ではビハラート重電機工業社が受け皿として名乗り出た。ラインメタル社では合弁企業立ち上げに意欲的であり高射機関砲に加え榴弾砲や戦車砲の現地生産を計画し、10億ドル規模の投資となる。

 スカイシールド35高射機関砲システムは自衛隊がかつて運用したエリコン35mm双連機関砲L-90の発展型、単銃身構造となったが装填装置の改良により毎分1000発を投射可能だ、35mm機関砲2門とレーダーによりスカイシールド35高射機関砲システムを構成、ミサイルとの連接も可能、機関砲ながらAHEAD調整散弾により高い防空戦闘能力を誇る。
■アイアンドーム睨むアメリカ
 アメリカは自衛隊の様な野戦防空システムの重要性を低く考えていますが、このほどイスラエル製ミサイルシステムとの間で興味深い動きがありました。

 イスラエル製アイアンドーム防空システムのアメリカ国内生産が開始へイスラエルのラファエル社とアメリカレイセオン社系列レイセオンミサイルディフェンスが合弁企業アイアンドームウェポンシステムズ社を8月、設立しました。アイアンドームはロケット弾などの同時攻撃を防ぐべく20連装発射器3基を基本とし1セット60発を即応弾とするもの。

 レイセオン社はアイアンドームを同社が製造するTHAAD終末段階高高度迎撃ミサイルと連接する構想で、THAADは射程250kmで中距離弾道弾等の極超音速目標を撃墜するシステムですが、対航空機や巡航ミサイル迎撃能力を有していないのが運用冗長性における問題点とされていました。アイアンドームの射程は20km、全く性格の異なるミサイルです。

 THAADとアイアンドームの連接では、THAADのAPY-2レーダー等を管制用に利用すると共にTHAADは弾道ミサイル警戒に特化、一方で高付加価値目標であるTHAADを防護する、若しくは野戦防空用として巡航ミサイルや無人機、攻撃ヘリコプターによる攻撃に備えるものとなり、例えば野戦防空システム整備が遅れるアメリカ陸軍には朗報でしょう。
■ドイツ軍IAMDS計画
 ドイツ軍は長らく緊張緩和を受けての軍備削減を続けてきましたが、がたがたとなった野戦防空及び戦域防空の再建に着手するようです。

 ドイツ連邦軍は8月14日、次期地対空ミサイルIAMDS計画へ技術提案書を各社へ要請したとのことです。IAMDS計画は都市部や策源地防空を担う戦域防空に加え戦術弾道ミサイル防衛を念頭としたものであり、この提案書にはIAMDS構成ミサイルシステムの開発及び試験と評価に加えて第一線への配備への生産費用等の見積もりも含むとのことです。

 MSEミサイルシステムが現段階では最有力視されていると考えられ、MSEシステムを開発したロッキードマーティン社とMBDAドイツ社が応募の意向を示しているとされます。このMSEのミサイル部分は航空自衛隊も採用しているペトリオットミサイルPAC-3であり、元々はMSEが既存のペトリオットミサイルシステムに適合したものがPAC-3という。

 ドイツ連邦軍には現在地対空ミサイルはスティンガー車載システムしか配備されていません、ペトリオットミサイルはPAC-1が中心であり既に全廃し韓国などに売却、ホークミサイルやローランドミサイルも既に老朽化により廃止されており、有名なゲパルト自走高射機関砲も機甲部隊縮小に併せ全廃され、MSEは射程30kmの重要な防空装備となります。
■ハンガリーNASAM導入へ
 AMRAAMを地上発射可能とした簡便ですが強力な防空システム、ハンガリー軍は旧ソ連製ミサイル後継に導入する計画です。

 ハンガリー陸軍はアメリカ製NASAM防空システムの導入へ10億ドル規模の契約を行うと8月12日に発表した。NASAM防空システムはノルウェーのコングスベルク社が主体となりアメリカのレイセオンと共同開発した防空システムでAIM-120-AMRAAM空対空ミサイル地上発射型というもの、システムはAN / MPQ-64により索敵し射程は30kmである。

 NASAM防空システムはハンガリー軍に装備される16基のソ連製2K12クラブ地対空ミサイルを置き換える。ハンガリー軍は冷戦時代にはワルシャワ条約機構の一員として旧ソ連製装備とその亜種の国産により国防態勢を担っているが、NATO加盟と共にロシアからの軍事脅威を受け徐々にその装備体系をNATO標準装備体系へ改めており今回もその一環だ。
■韓国版アイアンドーム開発へ
 韓国軍は首都圏を北朝鮮ロケット弾から防衛するべく新型のミサイルシステムを開発するとのこと。

 韓国国防省は8月10日発表の中期国防計画において韓国版アイアンドーム防空システムの開発を発表した。中期国防計画は2021年から2025年の国防多年度計画であり、この計画では近年増大する北朝鮮ミサイル脅威へ対抗するべく3600t型潜水艦と4000t型潜水艦の建造も盛り込まれ、検討段階ではあるも4000t型には弾道ミサイル搭載の可能性がある。

 アイアンドームは短射程地対空ミサイルだが即応弾が60発と多く、小型ロケット弾や砲弾を撃墜可能、元々はイスラエルがゲリラからの多連装ロケット弾攻撃から都市部を護るべく都市外縁部で撃墜させるための装備、韓国はソウル首都圏とその北部近郊の人口密集地域が北朝鮮からの長距離野砲やロケット弾射程に曝されており、その防衛を模索している。
■ストライカー装甲車にレーザー
 自衛隊の96式装輪装甲車は相変わらずですが車体に余裕あるストライカー装甲車へレーザー砲搭載計画が進められています。

アメリカ陸軍はM-SHORADストライカー計画としてストライカー装輪装甲車派生型であるレーザー防空システムの試験計画を決定したと発表しました。これはストライカー装輪装甲車にノースロップグラマン社製50kw級レーザー砲を搭載するもので、2億0300万ドルの契約、今回決定した計画では2021年後半から射撃試験などを開始するというもの。

 M-SHORADストライカーは2021年に完成し、2022年度には4両のM-SHORADストライカー小隊を編成しての実動実験に移行する。支援車両は4両で4億9000万ドル、試験車両ならではの非常に高価なものとなっていますが、量産時にはストライカー旅団戦闘団に配備され無人航空機は勿論、部隊に脅威を及ぼすロケット弾や迫撃砲弾等から防護します。
■EA-18Gに新型電子妨害装置
 EA-18G,実のところ自衛隊も当面はF/A-18Fを導入しその後にF-35を調達、その上でF/A-18FをEA-18Gに改修し中国無人機運用に対抗すべきと考えているのですが。

 アメリカ海軍はEA-18Gグロウラー電子攻撃機次世代電子妨害装置NGJ-MBの飛行試験を8月7日に開始したとのこと。飛行試験はメリーランド州パタクセントリバー飛行場に展開する海軍第23評価飛行隊により実施され、適合試験を実施、既に既存飛行ポッドに統合化しており技術的要点も完成している事から早ければ今年秋にも量産開始となるもよう。

 NGJ-MBは主契約企業がレイセオン、現行のAN/ALQ-99戦術妨害システム後継という位置づけであり、この評価試験にはアメリカ海軍と共にオーストラリア空軍にも資する、とアメリカ軍担当者は説明した。EA-18Gはアメリカ海軍の主力電子戦機で空軍支援にもあたる。第23評価飛行隊では、三電波帯域での電子妨害を今後順次評価試験を行うとされる。

 EA-18Gグロウラー電子攻撃機はNGJ-MBの搭載により防空システムは勿論個々に運用される小規模な独立戦術防空システムや通信ネットワーク網をも無力化できる体制を目指す。オーストラリアはEA-18Gこそ導入していないがF/A-18Fを運用中であり将来発展性を見越しEA-18Gと同等の電子配線冗長性を盛り込んでおり電子戦機へ改修が見込まれている。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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