北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

二〇二一年大晦日,非常時継続強いたコロナ禍と杞憂の社会基盤崩壊,そして明日への淡い安心感

2021-12-31 20:10:59 | 北大路機関特別企画
■二年目のコロナ禍を越えて
 東日本大震災十周年と二年目のコロナ禍が続きましたが大晦日を今年も無事迎える事が出来ました。

 COVID-19との戦いに明け暮れたともいえる2021年もいよいよ大晦日、みなさま如何お過ごしでしょうか。世界はオミクロン株の大津波とさえ評される規模の感染拡大に曝され、また膨大な死者数を重ねた諸国では戦々恐々という状況が続いています。2020年のコロナ禍は2021年内に終息を踏んでいましたが、来たのは変異株の集束、クラスターでした。

 日本はうまくやっている、実のところこの認識です。いや2021年夏の感染拡大は、コロナウィルスが季節性感染症であり冬の乾燥した空気とともに拡大する感染症であることを考えますと、いよいよ観念というものを考えさせられたものだと正直に白状します、しかし、驚いた事ですが、東京五輪とパラリンピックの閉幕とともに嘘のように感染は縮小します。

 オリンピックとともに縮小した感染、これは一日100万接種という、当初は無謀とさえいわれた全国規模のワクチン接種躍進により物理的に追い込んだ構図が一つ挙げられるのと、もう一つは、単一民族国家、こう揶揄さえされるほど防災や平和と人命尊重への基本的な価値観の共有が、感染対策としての自粛で不思議な程に、一致した点が挙げられましょう。

 オミクロン株、この出現さえなければ、2022年はもう少し安穏として、例えば九州や東京にくらいは物見遊山や買い物に出かけられたほどに収束していたのではないかとおもいました。もちろん水際対策があっての前提ですが。そして現在も重ねて厳重を極めすぎた水際対策、WHO世界保健機関から行き過ぎを指摘された水際対策は一定の効果がありました。

 感染対策の勝利、いまはまだ暫定的なものですが、2020年も2021年も、人口一億あたりの年間死者数は一万を越えていません、この勝利といえる状況はどのようなものがあるのでしょうか。不思議と日本の感染対策は自粛頼り、都市封鎖やマスク着用法的義務、ワクチン強制接種や強制入院措置を執らずして、感染抑制は何故かなんとかなっているという。

 強権国家への変貌。実のところCOVID-19による感染拡大は脅威でしたが、これを機に日本が強権国家へ変貌する事への支持、感染対策を考えれば強権を国家に付託する必要へと追い込まれる構造が醸成されることを危惧していました、もっとも、COVID-19は致死率2%という、数字で50名の感染者の内5名が重症化し1名が死亡する危険なものでしたが。

 国家が必要な決断を結果へとつなげる際に、もちろん強権というものはある程度必要だとは認識しています、しかしそのためには準備と議論を積むべきものであり、拙速よりも決断を重視し、ともすれば1925年治安維持法のような法整備を、政府が行うのではなく国民がこれ以外手段のない状態へ追い込まれ、厳しい措置が法整備される可能性もありました。

 結果としては強権でない故に成功した部分がある。諸外国の封鎖措置や強制隔離と移動制限は、結果として反発を招き、ミニマムアクセスというべき、政府が規制しているが厳しい規制の中で許されることは最大限行うという主権者の刹那的とさえいえる反発、これが拡大の下地を醸成し、却って感染拡大の温床を醸成したように思える。日本と逆に。

 自粛主体の強制措置は、ある意味で強制力は持たないが、ここに自己責任論、感染対策の主役は国民一人一人なのだという変な国民主権主義を強い、飲食店店主や事業所長や経営者一人一人にアメリカのCDC長官並の権限を授権させたことは、却って日本全体での感染対策に成功したといえるのかもしれません。それも初期の感染抑制という成果所以ですが。

 500万以上の死者。世界をみますと日本の成功は例外的です、辛い犠牲。実のところ単一民族国家という揶揄は、民族学的には誤りであっても、空気を読める人間の社会総体という意味でみれば、日本の成功に繋がったのかもしれません。それほどに大規模な感染拡大を、経済的に制御可能な余地がありながら許した諸国の構図には散見できるよう思うのです。

 政治は権力を欲するという性悪説ではなく、国民の支持により成り立つ性善説に依拠してなお、その国民を守るためには強権を発動するほか内として、民主国家であり自由な諸国であった西欧や北米の諸国家が、並ぶようにコロナ対策の名の下に強権を発動し、しかしかえって逆効果である様子は、海外報道に偽り無く示されています。悲劇的とさえ云えた。

 有事法制。実のところ日本は危機に曝されていない状況での危機管理への議論に政治的禁忌というほどではありませんが冷淡といいますか消極的な部分があります。実は危機管理というものは余裕のある平時にこそ研究すべき命題なのですが、先読みの拙さか果たして建前本音の論争は平時に抜けられないのか、モラトリアム主義なのか、まだわかりません。

 緊急事態法制というものはこうした時節に討議すべき命題であったのかもしれませんが、これに準じて超法規的措置というものを制度、こちらは官僚機構が、嫌うためにどうしても場当たり的な特別措置法が制定されるか、有事の際を想定していない平時的な有事法制を整備するにとどめる、ある種の悪弊があります。危機に際して急に整備するのだから。

 危機に際しては、平時にないのであれば場当たり的な特別措置法が取って代わるものですが、何しろ緊急立法措置に近いものを強いられ、そしてもともと必要なものが存在しなかった故に制定されるために特別措置法が後の法整備への基礎として存続してしまいます。この構図が、COVID-19に際しても踏襲されることを実は懸念していたのが率直な印象だ。

 緊急事態法制は必要なものであっても、場当たり的に制定されてしまっては、それこそ現行憲法下に連綿と構築してきました戦後日本での価値観の基盤が破綻してしまいます、そして自粛という強制措置を有さない緊急事態宣言が昨年発令された際、その危機が具現化しつつあるのではないかという懸念が実のところあり、それは今年の夏も同じでした、が。

 幸いにしてこの懸念は杞憂ともなりました。ただ、これが新しいモラトリアムの続きとなったのが現状です。このままでは良いとも思わないのですが、強権主義への行き過ぎと反発という、不可逆的な価値観の総転に繋がらなかったことは僥倖でもあり、だからこそ落ち着いた緊急事態法制への広い議論というものに繋がれば、とも緩く期待する次第です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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二〇二一年大晦日,防衛情報と榛名防備録-Weblog北大路機関の一年間を振り返る

2021-12-31 14:41:41 | 北大路機関特別企画
■北大路機関の大晦日
 みなさま、やってまいりました年末の大晦日と新年迎える幕間のひとときをいかがお過ごしでしょうか。

 2021年のWeblog北大路機関を振り返りますと、中旬と下旬にて時間はかかりましたが、COVID-19にあわせた改編を漸く完了することが出来ました。昨年からは自衛隊行事が全面見合わせとなりましたことを背景に、もともとは第二北大路機関記事として作成していました防衛関連の時事情報を防衛情報としてまとめて、掲載を継続しているところです。

 第二北大路機関のほうは平常運転といいますか、もう写真は凄いことになっていますが、朝一番に防衛時事を、夜には旅の特集を、旅の特集は文章のみ北大路機関に掲載したものを再編集するという方式で、Weblog北大路機関と第二北大路機関の相互補完を行い、また補助的に2019年より開始した第52北大路機関についても運用を継続、確立しました。

 防衛情報は、しかし第二北大路機関に掲載したものを論題に沿って再度編集し掲載していましたので、月刊誌なみに北大路機関への掲載は遅れてしまい、第二北大路機関の掲載を経ずして北大路機関へ時事情報を一つの特集として掲載、これはもともと自衛隊以外の特集としてまとめていました北大路機関記事を、表題で防衛情報へ統合したものなのですが。

 月曜日と火曜日、一週間のうちの二日間を防衛情報が占める、結果としてこうした構図となったのですね。そこで従来の伝統的な北大路機関の重箱の隅をつつくような話題を土曜日の午後に掲載するという、ちょっと執筆能力的には綱渡りとも考えたのですが、熟慮の結果です。そして現在の北大路機関記事、9写真記事12写真記事前への回帰も行いました。

 日曜日の夕方に草創期の北大路機関のような、長くはないが毎日掲載という、模索の段階の北大路機関が数多く掲載した短文的な記事を主として鉄道の話題、そしてもう一つグルメや映画の話題として掲載しています。このあたりは記事として需要はあるのですが、防衛関係の話題への需要ほどではない、そこで思い切って日曜日夕方へとに移管したかたち。

 日曜特集と土曜詳報という二つの写真記事を掲載するなか第二記事、この位置づけは、しかし案外とアクセス数も多く、もちろん執筆量が多くなりますので負担が多く、言い換えればいつまで継続できるのか、第二記事の文字数で本記事に置き換わることもあり得るのですが、COVID-19の影響下で行事が行われない間、その分を記事作成に充てられます。

 京都幕間旅情を水曜日に限定し、木曜日を連載記事掲載に充てる。2021年紅葉の季節から、これは試験的な取り組みとして開始しました。北大路機関の原点ともいえる、近所の散歩で撮ったスナップ、これが京都幕間旅情の源流です。ただ、これも水曜日と木曜日の二日間にに掲載しますと、防衛情報とともに一週間の記事一覧の大半を占めてしまうのですね。

 連載記事を木曜日に、この区分けも2021年の新しい試みです。北大路機関は一度に10記事を表示できる設定としています、現在は土曜日と日曜日に2記事を載せ、水曜日に概ね2記事を掲載していますので、一週間で10記事という循環、これは2021年に開始しました新しい掲載様式です。また一週間7記事へ回帰する事もあり得ますが、当面の指針です。

 2022年も日本と世界はCOVID-19、特にオミクロン株と向き合ってゆかねばなりません、ただ、こうした中でも夜の仕事上がりに日常の一幕に、ふとWebを閲覧した際なにかこう、ほう、と思えるような写真と記事にて話題を提供できる一要素に、Weblog北大路機関が加わることが出来れば、幸いです。それではみなさま、残る2021年大晦日を、良いお年を。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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北大路機関『自衛隊最新装備2021』新型哨戒ヘリコプターとリチウムイオン電池潜水艦

2021-12-30 20:21:25 | 北大路機関特別企画
■自衛隊最新装備2021
 北大路機関が撮影しました自衛隊最新装備2021はコロナ禍下ではこうしたものとなっています。

 SH-60L哨戒ヘリコプター、三菱重工小牧南工場にて試験飛行を行っている様子です。海上自衛隊は1991年に採用のSH-60J哨戒ヘリコプターに続いてSH-60K哨戒ヘリコプターを導入していますが、さらなる改良型としてSH-6-Lを開発しました。XSH-60Lとしてその初号機が初飛行しましたのは今年5月21日、紛れもない現在試験中の最新鋭航空機です。

 S-70シリーズとしょうされるUH-60多用途ヘリコプター、SH-60Lは従来のSH-60Kと比較しエンジンが同型、整備補給面では70%の互換性があるという事で、特に現在の護衛艦にはそのまま搭載できるほどの共通性を有しているという。此処に加えて、ギア系統がアラビア海などの高温地域での運用を重視するとともに機体強度も再設計で強化された。

 三菱重工はSH-60JからSH-60Kへ改良の際に機内容積を拡張し対潜能力を強化していますが、この際にJ型よりもK型は運動性能で限界が指摘されており、L型はここを再設計し振動を抑制、また機体形状の変更は最高速度の向上にも繋がっているとのこと。当初名称はSH-60K能力向上型となっていまして、2018中期防では6機取得が計画されています。

 EC-1電子訓練支援機J/ALQ-5改搭載型。実はかなり長い期間EC-1をみることがありませんでした、首都圏の航空機撮影は航空祭のみという状況が延々続いていますので、偶然岐阜基地へ定期整備へ入りますEC-1、遠景にはC-1輸送機とみえたのですが、しかし機種が遠景にも円形とわかり、驚きあわてて撮影機材を準備したという、幸運と偶然の重なり。

 J/ALQ-5改は特徴的な機首部分を筆頭に機体周囲にわたり妨害電波用アンテナアレイを装着しており、ここから実戦状況を再現する電子戦環境を構成します。ただ、この種の能力がどの程度かは不明です。一方、自衛隊はEP-3電子情報収集機やYS-11EB電子測定機など、実は電子戦情報収集の部隊規模では世界有数で、再現の為の情報は蓄積があります。

 EC-1はC-1輸送機21号機を改造し、1986年から運用を継続しているものです。そしてC-1輸送機はF-4E戦闘機よりも前の機体、残るところあと僅か数機という状況ですので、これもRC-2電子データ収集機の派生型などに遠くない将来置き換えられる可能性もあります、最新装備を搭載していますが、搭載している機体は長くはみられないかもしれない。

 とうりゅう。川崎重工神戸工場にて引き渡し直前の様子で艦番号512の明示から艦名がわかります。そうりゅう型潜水艦の12番艦で、Weblog北大路機関運用開始が一番艦そうりゅう就役前でしたので12番艦、数がそろったものだと驚かされるとともに新型たいげい型潜水艦の建造も進んでおり、涙滴型は退役、時代の変化というものを感じるところですね。

 そうりゅう型はAIP潜水艦として有名でしたが、11番艦おうりゅう以降、そうりゅう型の特色であったスターリング機関、いわゆるAIP非大気依存方式の推進装置はリチウムイオン電池に切り替えられており、これで空気のない水中での発電は不可能となりましたが、リチウムイオン電池の蓄電能力は従来の鉛電池を遙かに凌ぎ、結果的に性能向上しました。

 川崎重工神戸工場に隣接して三菱重工神戸造船所では最新たいげい型潜水艦たいげい、そして同じ川崎重工神戸工場では、たいげい型潜水艦二番艦はくげい建造が進められていまして、はくげい進水式は今年10月14日に挙行されています。さらに三番艦は2022年進水式目指し三菱重工神戸造船所で建造中、コロナ禍下でも防衛力整備は続きます構図が在る。

 ひゅうがロービジ化。ロービジュアルの略称ですが、COVID-19感染拡大前には護衛艦の艦番号は遠目にも鮮明にわかりやすい塗装が為されていて、護衛艦除籍行事などでは艦番号が自衛艦旗返納後に消されてゆくのが寂寥と荘厳が両立する不思議な情感を誘うものでした。しかし、近年は護衛艦や掃海艇などで艦番号を見えにくい色に変更しているのです。

 護衛艦の艦番号はAIS船舶位置情報を作動させていない状況では一見して艦艇の行動が明確にわかる情報となっています、これは例えば周辺国の航空偵察などに護衛艦の稼働状況、行動範囲や運用情報を拡散しているようなもの、Weblog掲載でさえ一定期間空けるなど配慮しているのですが、自衛隊側でも位置情報秘匿の観点から、塗装変更が行われたかたち。

 ヘリコプター搭載護衛艦の堂々たる艦容からはロービジ化の影響は小さなものですが、しかし長期航海を経て錆が目立つ護衛艦などがロービジ塗装となっていますと、一見して除籍艦のようにみえてしまう。実際退役艦まつゆき、をロービジ塗装と勘違いしたほどで、必要性は理解できるものの、ここまで情勢は緊迫しているのか、と寂しく思うのですね。

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【京都幕間旅情】圓光寺,東国は足利学校より庠主閑室元佶招いた徳川家康の教育普及への願い

2021-12-29 20:21:34 | 写真
■教育こそが国家安泰の要
 教育こそが国家安泰の要、徳川家康がこの寺院を拓きました背景にはこうした願いが在ったのでしょうか。

 圓光寺、徳川家康は東国にあります足利学校のような教育機関が関ヶ原の戦い、その後の世界には必要だと考えたのでしょう、足利学校より庠主、つまり学長、閑室元佶を京都に招きまして、先ず伏見城下に伏見学校圓光寺という学問を目的とした寺院を拓きました。

 奔龍庭という枯山水の庭園、ここの瓦を用いました波紋の演出は、いつ頃から作庭に取り入れられているのでしょうが、白洲とともに気持ちよく個性的です。枯山水の庭園は数多ありますが、親しめるほどに近くで眺める事が出来るというのも面はゆく楽しいものです。

 瑞雲閣。ここにもズイウンがあったのか、とは閑話休題です。そして待月庵という茶室が在りまして、此処から眺める椛が非常に美しいのですね。もっとも、この写真を撮影しました翌日から予約なしには入れなくなりましたので、この日に自由に拝観できて幸でした。

 待月庵の茶室から十牛之庭を眺める、今年も拝観者が少なくて心地よいものでして、紅葉の季節、その入り口に拝観したのですが、幸いに快晴に恵まれまして、青空と白洲の青と白、青椛が紅葉に染まり始める色彩の極彩色が印象に強く残り、素晴らしい写真を撮れた。

 徳川家康の学問普及という視点は、閑室元佶とも重なるものでして、伏見版木活字という活版印刷胃必要な活字と印刷技術を開発普及させる事に尽力しました。写本で本を一冊一冊増やしていた時代から活版印刷ができるようになりますと知識はもう一気に普及します。

 孔子家語、伏見版木活字ではまず説話集の大量印刷を行ったとされています。当時には日本にとり世界とは南蛮文化との邂逅を果たしたものの、南蛮文化は基盤となるキリスト教価値観の理解が必要で、先ず普及させるには価値観の重なる儒教が求められたのでしょう。

 貞観政要、中国の太宗が集めた政治理論、初期のものです。徳川幕府の統治機構は、興味深い事に鎌倉幕府の将軍と御家人を対等とした調和型でも室町幕府の曖昧な統治機構と連合政府型という方式でも無く、明確な中央集権国家を意図していました。この背景の一つ。

 三略。もう一つ印刷されたのは兵法書です。治において乱を忘れず、この視点なのでしょうか。伏見版木活字はこうしたものを印刷したという。ただ、現在の圓光寺には印刷工場としての趣はありません、いやあっても可動はしていないほど前の技術なのですけれども。

 臨済宗南禅寺派の寺院、こう説明しましたが、修行道場、とも記されている山門ですが、これは明治時代以降の事です。しかし、始まりの伏見学校圓光寺という名前の通り、当初は当地よりも遠く、叡山電鉄沿線と云うよりは今の近鉄沿線に在ったと云えば遠さが分る。

 伏見城が廃城となりますと伏見学校圓光寺の立地の利点は当然ですが無くなります、すると洛中が良いということになりまして、相国寺山内に遷座するのですね。そしてまた三世澤雲祖兌禅師の時代に、現在地に遷座しました。寛文7年こと西暦1667年のことという。

 今年もたくさんの活字を打ちました、COVID-19の時代ゆえに写真を撮影出来ない事も多く、その分だけ活字を打っていたようにも思います、この背景には活字はWebを通じて広く意見や見識や知識を普及し交換する事が出来る為なのですが、これも活字があってこそ。

 活字文化というものは、日本では活字が有れば読む文化があり、文字に親しみ文章を工夫する価値観もあります。しかし辿りますと、こうした先人の努力が支えているとも思うのですね。今年もあと僅か、ふと、このお寺を紅葉の季節に拝観した事を思い出しました。

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【京都幕間旅情】圓光寺,十牛之庭飾る紅葉の寺院は伏見版木活字とニッポン活字文化の伝道師

2021-12-29 20:00:24 | 写真
■今年も活字のお世話になった
 今年も無事にたくさんの活字を打ちまして多くを様々な場面でお伝えする事が出来ました。本日も二部構成です。

 圓光寺、今年もあと僅かとなりますと、いろいろな出来事がありましたけれども、改めてたくさんの文章、活字を打ったものだと感慨深く思い起こします。北大路機関は写真の仕上がりや速報性に限界はありますけれども、文章と併せて記憶に残るものをお伝えしたい。

 十牛之庭という庭園には栖龍池が水をたたえ、そして水琴窟が意外に大きな独特の和音を奏でています、奔龍庭、もうひとつこちらは枯山水の庭園が有りまして、歩み進めますと不思議な生き生きとした庭園と価値観を遷す庭園が陰陽を具現化するように迎えてくれる。

 文章を書くには活力と発想力と知識と機械が必要です、その為に廃止が必要なのですけれども、その前提として活字と活字を読む文化というものが必要だ、勿論気力も必要で、こう、庭園を眺めて発想を高めつつ、こころの静養と休養をになうのですが、これに加えて。

 京都市左京区一乗寺小谷町、ここは叡山電鉄一乗寺駅から少し比叡のほうへ歩み進めました静かな立地にあります石畳の重々しく新鮮な散歩道の一角にあります寺院、安土桃山時代から江戸時代へと世の中が遷ろう時代に開山となりました寺院で、そして活字に所縁が。

 伏見版木活字。印刷物に用います活字がありますが、安土桃山時代末期に大量印刷の為に開発された伏見版木活字というものが実に5万2320個も、そして摺刷盤2面とともに現存しています。書物を大量に普及させるには活字と印刷技術が不可欠、その御寺ということ。

 瑞巌山圓光寺は臨済宗南禅寺派の寺院ですが、はじまりは学校という不思議な歴史を湛えています。慶長6年こと西暦1601年に三要元佶により開山となりました寺院です。三要元佶は閑室和尚とも閑室元佶ともいい寺社奉行の任にもありました徳川家康の幕僚の一人だ。

 閑室和尚、九州生まれの武将であり教育者であるとともに出家し僧侶となっています。伏見版出版技術普及へ尽力するとともに、九州生まれですが下野国足利荘、いまの栃木県足利市にありました足利学校での教授方を務めており、足利学校というのは古い学校の一つ。

 千手観音を奉じる御寺ですが、この足利学校と所縁あるものです。寺子屋といいますか、日本では教育と寺院の関係が強い印象はありますが、足利学校は専門教育と生涯教育の場であり、進められていたものは高等教育でした。そしてこの学校と繋がりが在るのですね。

 足利学校は平安時代初期に創設された高等教育機関と云い、研究によってはそれ程古くは無く中世の頃に開校し古い由来がある事を中世に示しただけとも云われるものですが、永享4年こと西暦1432年に当地の領主となった上杉憲実が再興に尽力し規模を広めました。

 北条氏政が16世紀の享禄年間に再興したともいいますが、宣教師フランシスコザビエルの所管にも記される巨大な学校だったといい、北条氏により保護されていたのですが、北条氏が小田原城落城により滅亡しますと廃校の危機に曝され、蔵書の散逸危機に曝されます。

 徳川家康、この際に足利学校が支援を求めたのが関東を受領した徳川家康の支援で、家康に保護されるようになる一方、豊臣秀吉の意向を受ける事となり京都は伏見城下に伏見学校圓光寺として分校を造営する事となります、これが寺の始りといい、始まりは学校だ。

 伏見学校圓光寺、開港となりましたのは関ヶ原の戦いの翌年であり、戦国乱世はいよいよ安定期に定着させたいという家康の願いが在ったのでしょうか、これが教育重視の姿勢となるのですね。この為に教科書、書籍の普及が必要であり、伏見版木活字が生まれました。

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【防衛情報】もがみ型4番艦みくま進水式,はつゆき型護衛艦12隻最後の一隻練習艦せとゆき除籍

2021-12-28 20:05:36 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は海軍関連の最新情報を纏めてみました。長崎では護衛艦もがみ型が更に一隻進水式を迎え続々と建造されてゆきます。護衛艦もどんどん変わってゆくのですね。

 海上自衛隊の護衛艦もがみ型4番艦みくま、12月10日に三菱重工業長崎造船所にて命名式と進水式を迎えましたもがみ型護衛艦は旧式化した護衛艦あぶくま型と護衛艦あさぎり型及び退役が進む護衛艦はつゆき型護衛艦を置換えるべく建造されている護衛艦で、コンパクト艦という位置づけでしたが満載排水量は5500tと非常に大型となっています。

 みくま、この艦名は旧海軍の最上型重巡洋艦二番艦三隈の艦名を継承したものです。三隈は最新鋭大型軽巡洋艦として建造が計画されつつ、艦砲を155mm砲からワシントン海軍軍縮条約失効を受け建造に制限が無くなり203mm艦砲に切替え重巡洋艦として完成していますが、ミッドウェー海戦において損傷、その後米軍艦載機の猛攻により撃沈されました。

 もがみ型は一年間に2隻という比較的早い建造が進められており、一番艦もがみ進水式は2021年3月ですが、三菱重工業長崎造船所には一番艦もがみ、とともに2021年6月22日に進水式を迎えた護衛艦のしろ、3隻が並んでいます。先行して二番艦くまの、が三井E&S造船玉野艦船工場にて2020年11月19日に進水式を迎え、来春に竣工する予定です。
■せとゆき除籍
 舞鶴の護衛艦まつゆき除籍となり護衛艦はつゆき型は練習艦が残るのみでしたが。

 せとゆき。練習艦せとゆき退役行事が25日に呉基地にて挙行され、これで護衛艦はつゆき型として建造された護衛艦は練習艦転籍艦を含め12隻全てが除籍されました。せとゆき、は2012年に護衛艦から練習艦への改造工事をうけ練習艦に転籍、練習艦隊に所属していましたが、はたかぜ型ミサイル護衛艦の練習艦転籍に道を譲り長い任務を完了したわけです。

 はつゆき型護衛艦は対潜対空水上能力を備えたシステム艦、88艦隊、護衛隊群の護衛艦8隻哨戒ヘリコプター8機体制実現へ1982年より短期間で12隻が建造されました。当初は20隻が建造される計画でしたが、後期艦は構造物をアルミ合金から鋼製に変更し、拡大改良型の護衛艦あさぎり型8隻へと建造が変更され、あさぎり型を加え20隻を整備しました。

 システム艦であり、満載排水量4000tの船体に対艦ミサイル、大型対潜ヘリコプターとアスロックの弾庫まで備えた強力な水上戦闘艦となりましたが、むらさめ型など最新艦の竣工とともに活躍を護衛隊群から沿岸防備と練習艦に転換、重武装は2000年代からの中国海軍活性化をもよく抑止でき、近年は最新もがみ型の量産開始によりその役割を終えました。
■ミネアポリスセントポール
 フリーダム級沿海域戦闘艦の新しい一隻がかつての潜水艦の名を継いで竣工しました。

 アメリカ海軍は11月18日、新沿海域戦闘艦ミネアポリスセントポールを受領しました。これはロッキードマーティン社のフィンカンティエリマリエッタマリンズ造船所において建造されていました、フリーダム級沿海域戦闘艦の11番艦です。フリーダム級は変速装置などに重大な問題点が指摘されましたが、ミネアポリスセントポールから改良されました。

 ミネアポリスセントポールはアメリカ海軍ではロサンゼルス級攻撃型原潜の艦名として知られていますが、こちらの方は2007年に除籍されています。フリーダム級はクーパーズタウンが建造中で、こちらも2022年1月には納入される予定で、この他に同型艦の、マリネットとナンタケット及びベロイトが建造中、クリーブランドが建造準備中となっています。

 沿海域戦闘艦は冷戦後の対テロ戦争時代を想定し設計された、高出力と監視能力を重視した水上戦闘艦であり、2010年代からの従来型脅威の再活性化に対しては、その武相の低さと、打撃力の面での拡張性の低さが問題視されています。この為、暫定的な打撃力強化の試み等は為されていますが、初期建造艦については比較的新しくとも退役が始っています。
■フランクE.ピーターセン
 世界で最も量産されているイージス艦というアーレイバーク級ミサイル駆逐艦も新しく一隻が竣工しています。

 アメリカ海軍は11月30日、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦フランクE.ピーターセンジュニアを竣工させました。これはハンティントンインガルスインダストリーズにて建造されていたもので、COVID-19新型コロナウィルスのアメリカ本土における感染拡大により建造は遅延が強いられましたが、予定通り2021年に竣工させることができています。

 フランクE.ピーターセンジュニアはアフリカ系初の海兵隊将官の名を冠した駆逐艦です。海兵隊将官であるとともにヴェトナム戦争を始め300以上の戦闘を中心とした実任務に参加しています。アメリカ海軍ではアフリカ系従軍功労者の艦名も近年増え、ジェラルドフォード級空母にも真珠湾攻撃に際し勇気ある行動をとったドリスミラーが冠せられました。

 アーレイバーク級ミサイル駆逐艦は現在もっとも建造されているイージス艦で、ハンティントンインガルスインダストリーズでは現在、レナサトクリフヒグビーとジャックH.ルーカス及びテッドスティーブンスとジェレミアデントンが建造中となっています。計画当時は東西冷戦時代でしたが、卓越した防空力と拡張性は今後とも海軍の主力となるでしょう。
■イージス艦ダニエルイノウエ
 アメリカから母港へ向かったダニエルイノウエが真珠湾記念日翌日のパールハーバー基地へ到着です。

 アメリカ海軍の新造イージス艦ダニエルイノウエが12月8日、パールハーバー基地において任務に着任しました。ダニエルイノウエはアーレイバーク級ミサイル駆逐艦で2021年3月8日に竣工、海軍は初度作戦能力獲得前訓練を行った上で、艦名の由来となったダニエルイノウエ上院議員の出身地であるハワイ州のパールハーバー基地へ配備を決定しました。

 ダニエルイノウエがパールハーバー基地へ到着した12月8日は、日米開戦となった歴史的な真珠湾攻撃から80年を経た翌日であり、日系二世であったダニエルイノウエ氏は志願し有名な442連隊戦闘団に配属され活躍しています。不幸な歴史から80年と1日を経たハワイですが、現在日米は同盟国となり、太平洋での日米防衛協力の一翼を担う事となります。

 イージス艦はアメリカ海軍と共に海上自衛隊、続いてスペイン海軍及びノルウェー海軍が採用し、韓国海軍とオーストラリア海軍が導入しています。基本型のSPY-1レーダーに続いてアメリカ海軍ではSPY-6レーダー、スペインと日本の防空専用艦ではSPY-7レーダーの搭載へと進化を続けており、21世紀においても海上打撃力と防空力の中枢を担います。
■FREMM-DAアルザス
 フランス海軍アキテーヌ級フリゲイト初の防空型が竣工しました。未来型を印象付けるステルス設計が印象的な新しいフリゲイトです。

 フランス海軍は11月22日、多機能防空フリゲイトFREMM-DAアルザスを受領しました。FREMM-DAアルザスはアキテーヌ級フリゲイトの7番艦です。もともとはFREMM多目的フリゲイトとしてフランスとイタリアが共同開発した新世代の水上戦闘艦で、2005年の計画当初はフランス海軍が17隻を、イタリアは10隻を建造する計画がありました。

 FREMM多目的フリゲイトのなかで、フランス海軍は2015年にアキテーヌ級フリゲイトアキテーヌを竣工させていますが、6番艦までは対潜フリゲイトとして設計されていまして、今回竣工したアルザスは防空フリゲイト、防空型は2022年竣工を目指す最終艦ロレーヌの建造も薦められています。共に満載排水量は6100tでありステルス性を重視した設計です。

 アキテーヌ級フリゲイトはフランス海軍向けに8隻が建造されていますが、当初計画の10隻は実現せず、フランス海軍はエジプトへタヒヤミスル、モロッコにムハンマド6世を輸出します。また、イタリア海軍仕様はカルロベルガミーニ級フリゲイトを汎用型と対潜型で8隻建造し、アメリカ海軍は改良型をフォレスタル級フリゲイトとして採用しました。

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【防衛情報】空母クイーンエリザベスグローバルミッションと英フューチャーソルジャー計画

2021-12-27 20:13:41 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 2021年は空母クイーンエリザベス日本寄港が大きな話題となりましたが、今回の防衛情報はそのイギリスを特集しましょう。

 イギリス海軍の空母クイーンエリザベスは12月12日、母港ポーツマス基地に帰港しました。5月にポーツマス基地を出航して以来、実に七カ月間の航海は平時における訓練航海としては異例の規模であり、また平時の訓練航海ではありますが、武装勢力ISIL掃討作戦に艦載機F-35Bを展開させ、クリミア半島沖へ随伴艦を派遣する等の任務にも当りました。

 七カ月間に及ぶ処女航海の目的地は日本の横須賀基地、空母クイーンエリザベスと随伴艦8隻は大西洋から地中海、地中海からスエズ運河を超えてアラビア海、アラビア海を経てインド洋、そして南シナ海と東シナ海を経て太平洋、実に49000浬という地球一周を超えてさらに長い距離を航行し、乗員たちはクリスマス前に母港ポーツマスへ帰港したわけです。
■グローバルミッション
 横須賀のクイーンエリザベスには中々感じ入るものがありましたが長期航海故に凄い事も。

 イギリス海軍の空母クイーンエリザベス処女航海は壮大な規模となりました。艦載機としてクイーンエリザベス艦上に展開した米英機は28機、戦闘機は全て第五世代機のF-35Bで、飛行時間は4000時間以上に上り、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、フランス、ギリシャ、イスラエル、インド、イタリア、日本、オマーン、韓国と訓練しました。

 グローバルミッションと位置づけられた航海では物資の消費量も長期航海に見合った壮大なもので、クイーンエリザベス艦内の消費量も、ソーセージ25.5t、タマゴ210万個、ジャガイモ19万個、フルーツプリン22.7t、ベーコン120万枚、牛乳35万5200パイントを消費したとのことです。クイーンエリザベスの随伴艦も無事母港へ帰港したとのことです。
■レンジャー連隊を新編
 クイーンエリザベスポーツマス帰港となりましたイギリスでは陸軍の大変革が始まりました。

 イギリス陸軍は12月1日より特殊作戦旅団レンジャー連隊の新編訓練を本格化させました。特殊作戦旅団レンジャー連隊は2021年3月より本格的に始動した“フューチャーソルジャー計画”に基づく新編部隊で、その編成計画が2021年3月に発表され、今回4個大隊の練成訓練が開始されていますが、部隊は市街地から山間部や砂漠地帯まで対応します。

 フューチャーソルジャー計画はこの計画は現役兵士と予備役兵士の即応柔軟な運用体制を目指す2000年以降の過去20年間で最も急進的な陸軍再編計画であるとされています。新たに陸軍ソルジャーアカデミーが新編され、基礎訓練を行うと共に予備役であっても兵科により先端の訓練を担うとされ、陸軍を10万名単位で現役と予備役を最適化させるという。

 陸軍は今後十年間で4個師団へ再編され、師団は旅団戦闘団を基本とし、砲兵や防空砲兵と工兵に無人機部隊やサイバー戦部隊を可能な最小限の作戦単位まで統合させる戦術任務群を構成すると、このレンジャー連隊からは各師団へレンジャー大隊を派遣する計画です。師団は現役と予備を混成、従来の予備役、国防義勇軍という位置づけは転換点を迎えます。
■英陸軍は4個師団体制へ
 フューチャーソルジャー計画の大変革は先ず評価支援部隊から始まります。自衛隊の写真で代替していますが遠くない将来に中隊以上の規模での日英共同訓練も普通となるのかもしれない。

 イギリス陸軍は2022年にヨークシャー連隊第二大隊を元に評価支援部隊を編成する計画です。評価支援部隊は全軍改編に先立ち、チャレンジャー3主力戦車とエイジャックス装甲偵察車、ボクサー装輪装甲車とAH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプター、そしてランドセプターミサイル及び無人航空機を混成編成した近代的な大隊戦闘群を構築します。

 ウォリアー装甲戦闘車などは、評価支援部隊への改編に際してボクサー装輪装甲車へ置き換えるとして、これは一例ですが旧式装備の転換に併せて部隊編成を置換える事で、改編による混乱を最小限とする方針です。しかし、これは言い換えれば装備も編成も一度に転換する事を意味し、どのようにして新編に等しい改編を行うのかは一つの関心事といえる。

 チャレンジャー3主力戦車については開発が進んでいる段階ですが実験段階の装備であると共に、加えてでエイジャックス装甲偵察車についてはオーストリアスペイン共同開発の車両を根本から改良した一方、乗員が精神に変調をきたすほどという異常振動問題は解決されていません。この為、陸軍は12億ポンドの追加費用が必要になると展望しています。
■ロボット部隊の強化へ
 ロボット部隊の大規模な編成にイギリス陸軍は踏切り、遠くない将来に戦車とロボットの連携が始ります。痛感するのは陸上自衛隊のこの分野での遅れだ。

 イギリス陸軍はラインメタルBAEランドシステムズ社を含む企業連合よりUGV無人地上車輛体系コンセプトを取得する事となります。これはイギリス国防省Dstl国防科学技術研究所が進める将来無人プラットフォーム計画の具現化で、現在利用可能な既存技術と十年間の開発期間を見込む二つのフェーズに分かれ装備開発を実施することとなっています。

 UGV無人地上車輛体系コンセプトでは、先ず既に実現可能な技術として中型UGVとして2tから5t程度のものを補給任務や負傷者後方搬送等の任務に充てる構想があります。そして第二フェーズでは火力支援ロボットを想定し、具体的には戦車部隊の斥候、装甲戦闘車より下車展開した小隊を複数無人戦闘車により火力支援を行う運用などを想定しています。

 ラインメタルBAEランドシステムズ社を含む企業連合は、当面8両の技術実証車輛をDstl国防科学技術研究所へ納入しイギリス陸軍における各種評価試験に充てるとしています。UGVは開発コスト全体としては安価な装備ではありませんが、部隊全体の生存性を高く維持すると共に能力を大きく底上げする期待から費用対効果は高いものと期待されています。

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二〇二一年自衛隊行事回顧録【後篇】ファントムラストフライトとブルーインパルス移動訓練

2021-12-26 20:03:42 | 北大路機関特別企画
■日の丸ファントム!任務完了!
 二〇二一年自衛隊行事回顧録は空母クイーンエリザベスという最新鋭空母の来航と云う思い出と共に馴染んだ機影、ファントムと云う老兵の任務完了も印象深いものでした。

 ファントム退役。2021年は歴史的な一年です、その一つがやはり1971年から2021年まで、実に半世紀にわたり日本防空の重責を担い続けたF-4EJ戦闘機、ファントムのラストフライトでしょう。ラストフライトの情報は錯綜し、なかなか岐阜基地通いはCOVID-19下でやってよいものか、そして混み続ける基地周辺に大丈夫かな所謂"密"を感じたものです。

 F-4EJ,茨城県の航空自衛隊百里基地ではF-4EJ改が一足先に任務を完了し退役となりました、さすがに百里基地まで撮影に通うのは無理であり、第7航空団特別塗装のファントムも撮影してみたいとは後ろ髪ひかれていたのは、正直なところ大きかったのですが、常識と良識で"自粛"を"強いられた"構図です、しかし岐阜には、無事に撮影へと行けましたね。

 半世紀のファントム、運用面から考えますと第一線で防空任務に当たるのは厳しい状況があります、周辺国の情勢は緊迫化していたのですから。しかし、これも大任を果たした、その名の通りにラストフライトでは快晴の青空とともに最後まで残りました3機のファントムが美しい編隊を描き、戦闘機は1971年以来の歴史の彼方へと飛去ってゆきました。

 F-35の時代。ファントムが飛去るとともにファントムの後継はF-35Aライトニングです、このころには感染状況がある程度落ち着きましたので、舞鶴と岐阜だけにしておこう、という北大路機関ならではの"自粛"を暖機運転へ一段進めまして小牧基地へ久々に撮影へと進出しますと、幸運にもF-35戦闘機が2機まさに離陸する様子に遭遇します。幸先良い。

 小牧基地、C-130輸送機とKC-767空中給油機の基地ですが、岐阜基地ばかり撮影していますと、この小牧基地の撮影環境というものは新鮮ですね。三菱重工小牧南工場へ戻るF-15戦闘機なども正面から撮影できました、この撮影位置は公園となっていまして、そしてそれほど人は居ません、手荒いと自販機も博物館にあり、人の少なさはなかなか快適です。

 三沢基地へF-35は2機とも飛行していまして、ひょっとしたら戻ってくるのでは、と待ち続けた当方には拍子抜けでしたが、それでもいろいろと撮影することができました。やはり、いろいろな基地を巡る余裕ができましたのは、これはオミクロン株の出現でまだもうしばらくは続くコロナ下ではありますが、ワクチン効果で出歩けるようには、なりました。

 ブルーインパルス、しかし、岐阜基地でブルーインパルスが見えるとは思いませんでした。巡回訓練ということで、航空祭ではなかったのですけれども、確かな飛行展示です。ブルーインパルス、航空祭では撮影する機会も多いのですが、松島基地以外ではブルーインパルスは外来機となりますので、どうしても撮影優先度は中の上、最上ではなかったもの。

 東京五輪でのブルーインパルスも報道映像で眺めるだけでしたが、さすがにブルーインパルスが撮影できるといっても、あの毎日数万の感染者が溢れた中で東京まで撮影になどいけるものではありません、しかし、向こうから来てくれた構図ですね。岐阜基地での撮影場所、今回は過去にないほど地図と実地で真剣に検討し、航空宇宙博物館で撮影しました。

 ブルーインパルス、この巡回訓練は来るべき航空祭再開に備えて、全国の基地への展開要領を再確認するということでしたので、もちろん、来年度の航空祭予定は文字通りの白紙なのですけれども、次は航空祭で飛行展示を眺めたいものです。次の航空祭ではF-4戦闘機が消えて、当たり前に外来機にF-35が並ぶことになるのかもしれませんけれども、ね。

 江田島練習艦隊出航。考えてみますとWeblog北大路機関は2005年の運用開始以来、毎年撮影に行くことができたのは岐阜基地航空祭と守山駐屯地祭だけでした、毎回撮影というならば不定期開催の舞鶴展示訓練が含まれ。しかし、岐阜基地航空祭も守山駐屯地祭もCOVID-19にて中止です。第3師団祭は新型インフルエンザで過去中止はあったのですが。

 練習艦隊近海練習航海部隊。ただ、過去の北大路機関記録を視ますと、この近海練習航海だけは毎年どこかで撮影していますし、2012年からは毎年江田島での出航を撮影しているのですね。そして、これは部内行事ですので昨年も今年も規模は縮小こそされていますが、実施されています。そして薄氷を踏む思いでもまあ一応一通り撮影することもできました。

 近海練習航海は記念式典も寄港歓迎式典も中止、外洋練習航海は文字通り外海に出るだけで寄港はせず補給のみで帰国、近海練習航海部隊の遠洋練習航海もほぼかたちだけ、厳しい世界の実状が垣間見えるところですが、しかし、その門出だけは記録でき、またWeblogにて紹介できましたことは幸い。日常は維持され、力強くとまた開きつつあるのですね。

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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌,キエフ-祇園から眺める高雄愛宕とロシア料理

2021-12-26 18:21:05 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 榛名さんの総監部グルメ日誌といっても総監部の置かれている舞鶴からは100kmほど離れた京都市の話題です。

 キエフに異変が。そう知人から雑談の際に切り出されまして、南座に友人を案内した際に気付いたのだけれども、あのキエフがなにかあるらしい、とお教えいただきました。とはいってもそのキエフ、ウクライナの首都キエフにロシア軍が侵攻したのではありません。

 祇園のキエフ。南座の通りの向かい側にありますロシア料理店で、京都の風情を感じるに程よい中層階にて落ち着いた調度品と手堅い料理に若者からナイスミドルまで雰囲気を愉しむには素晴らしいお店です。行ってみると覆いが、単に外装工事をやっていたのですね。

 ボルシチにつぼ焼き料理のグリブイとピロシキは出来立て、それに酸っぱいキャベツのカプスタと、ロシアンティー。キエフのランチはお手頃で、若干遅めな時間までランチを愉しめますので、ちょっと気分転換したいなという頃合いには、実はおすすめのお店と云う。

 ストリチナヤをちょっぴり。首都を意味するストリチナヤはウォッカの定番というのですが、香りは強すぎずさっぱりしていて、時間帯が多少早くとも一杯だけならば気分の清涼剤、夏はジンで冬はウォッカの季節、これが美味しいといよいよ冬がやってきたと実感だ。

 キエフは、ランチタイムには正午前後相応の混雑があるのですが、少し時間帯を外しますと客はこのテーブルだけという事もありますので、こんな時代ですがCOVID-19に少しだけ外食の愉しみを邪魔されない雰囲気がある。混雑していたら店の前で転進するのですが。

 グリブイはつぼ焼き料理でパンかかぶせられ、濃厚なキノコのクリームシチューが隠されている、が壺も焼き立てなので慎重に頂く、熱い感触が広がるがウォッカのそれとは違い、そして煮込まれてもなお茸が独特の風味を湛えているところで、さて、やはりおいしい。

 ロシアンティーにはブルガリアのジャムという薔薇のジャムという不思議なものを含ませますと、なるほど不思議だ花弁が紅茶の中で開きまして、さて今年は兎も角来年の暮れごろにはもう少しリラックスして外食を大勢と楽しめるようになるのかと少し考えてしまう。

 鴨川の畔は京阪祇園四条駅、ここは京阪鴨東線の始発なのですが、キエフは鴨東ビルの六階に在りまして、ランチタイムは1430時までとなっています。年末年始は時間が動きますが続いてティータイムもありまして、六階からの高雄や愛宕の遠景は中々美しいものです。

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クリスマス二〇二一特集!富士総合火力演習10式戦車&90式戦車の戦車射撃と白リン弾発射

2021-12-25 20:01:06 | 北大路機関特別企画
■吹飛ばせ!戦車射撃の迫力
 クリスマス特集ということでイルミネーションよりも迫力の戦車射撃の瞬間をお届けしましょう。

 クリスマスです。COVID-19感染拡大により自衛隊行事総崩れという中、全世界ではクリスマス中止という状況に追いやられていますが、日本では東京と大阪でのオミクロン株感染拡大とクリスマスイヴが重なってしまった構図、この不景気な機運を吹き飛ばすには。

 戦車射撃、懐かしい情景です。コロナ禍下の不景気な気分も90式戦車や10式戦車の120mm滑腔砲戦車射撃と、発煙弾発射の豪快な白リン弾の輝く閃光の幕が幾分か和らげてくれるのでは、とも。2020年と2021年立て続けの富士総合火力演習一般公開中止、これは響く。

 発煙弾発射は富士総合火力演習の機械化部隊による戦果拡張へ移行する機動打撃の瞬間に展開される大団円への一瞬の閃光となっていまして、実は写真をカメラでじっくり構えて仕上げようとしますと時機を逸するような瞬間なのですが、撮ってしまえばあと自由だ。

 戦車と装甲車の発煙弾は、ミサイル攻撃を受けた瞬間などに戦車を視界からも赤外線探知からも瞬間的に隠す、煙覆するために展開されるもので、戦車のエンジンから発する熱をも覆い隠すために白リンが熱のカーテンを展張する、そのための装備でもあるのですが。

 レーザー検知装置などにより戦車はミサイル攻撃を探知する手段があり、またもう少し進んだ装備としてロシアやイスラエルはアクティヴ式防護装置として対戦車ミサイルそのものを迎撃して撃墜してしまうような装備も、高価ではあるけれども開発しています。

 120mm滑腔砲の射撃はおとというより衝撃波に叩かれる、音に包まれるというような生半可なものではありません、この迫力は体験しなければわかりませんが、それもそのはず、戦車砲弾は音速の実に五倍以上まで加速して炭化タングステン合金の砲弾を発射している。

 戦車装甲は複合装甲、特に正面装甲については硬化セラミックとチタン合金により圧延均一鋼板換算で1000mm相当近くまで強化されていまして、これをエネルギーで突き破るには非常に堅い合金を常識はずれの速度で叩きつけるほかないのですね、加速は火薬で行う。

 発砲焔、戦車射撃迫力の瞬間なのですが閃光は砲弾を叩き出した瞬間の高圧高温の瓦斯が音速五倍の砲弾共々空気に主砲を飛び出て触れた瞬間に周辺の空気を燃焼させ、一瞬輝き、そのエネルギーは衝撃波ともなって数百メートルを隔てていても鼓膜も身も叩くのですね。

 戦車というものは理屈ではわからない装備です、いや動力も照準も火力も現代科学の集合体そのものなのですけれども、この戦車というものが叩き出すポテンシャルは実際目にしますと有象無象のミサイルなどによる抑止力より、力強い、この一点で説得力があります。

 機甲部隊の非日常感、戦車は一般公開で動かない状況は鉄の塊のようにもみえますし、特撮映画で模型から火花を放つ瞬間には人間の想像力を試されるのですが、戦車射撃の衝撃は音とは後ろにはあまり響かないはずですが、それを補い余りある痛みを届ける構図です。

 富士総合火力演習、なにしろ普通に手にはいるカメラの一枚でもこうした日常にはない、戦車の大きさを考えればこの炎が日常にあっては困るものですが、そうした瞬間を構成します。その一端を情景に切り取りますと、妖艶というほど熱い焔の迫力を醸すのですね。

 クリスマスイルミネーションの代わりというには少々迫力と刺激が強すぎるところではありますが、この戦車射撃と白リンの迫力がいままさに日本に襲いかかりつつあるCOVID-19オミクロン株の猛威を吹き飛ばすための国民自粛我慢の一助になればと思うところです。

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