北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上防衛作戦部隊論(第十五回):広域師団直轄部隊、師団通信と広報支援による民生安定

2015-06-30 22:17:19 | 防衛・安全保障
■通信隊と広報支援部隊
 師団直轄部隊、“特殊作戦隊”、“警務隊”、“通信隊”、“広報支援部隊”、“無人偵察機隊”、“電子隊”、“飛行隊”、“後方支援隊”、についての続きです。

 通信隊、師団通信は指揮統制の基幹を担うものですが、第一線戦闘部隊は航空機動旅団と装甲機動旅団であるため、この二つの異なる編成の部隊を指揮統制するという難題の一方、前方へ指揮所を構築する必要性や、第一線戦闘部隊の大きな任務に含まれる電子戦は必ずしも含まれません。

したがって師団通信と旅団通信、通信部隊の任務にあって重搬送の部分、将来的には野戦用戦術インターネットにより置き換わりつつある部分ですが、ここに特化することになります。一方、師団は隷下に全く進出速度の異なり、更に後方支援や輸送面での支援が異なる部隊を指揮する事となります。

 航空機動旅団は進出速度に特化し打撃力が不十分、装甲機動旅団は進出速度よりも打撃力に重点を置いた編成であることからの師団の指揮が必要になるものですが、通信については戦術インターネットによる共同交戦能力と衛星通信能力による通信確保により、多数の直轄部隊を有する機動旅団程大規模な部隊である必要ない、といえるでしょう。

 広報支援部隊、訳語に難渋しますが米軍などの心理戦部隊を想定します。心理戦には宣伝と広報業務が含まれますが、我が国自衛隊は専守防衛を念頭としている為、特に重要な分野は専守防衛が開戦即本土決戦を意味している点です、専守防衛は国土防衛への外征を行わない為の必至となる難点ですが。

 広報、民生安定の観点から非常に重要です。国民保護の観点から非戦闘員避難を円滑に行い、且つ陣地構築へ会計部隊による用地借用手続き等を全般的に支援する部分を担い、併せて国民保護法に基づく国民保護協議会並びに指定 公共機関及び指定地方公共機関が作成する国民保護業務計画と第一線部隊の行動を調整する任務を負います。

 人員規模面では、特に広域師団は隷下の航空機動旅団と装甲機動旅団に重点を置く編制ですので、師団直轄部隊には充分な要員を出すことはできませんが、必要な場合には方面隊の支援を受け、コア部分だけでも師団に置く必要はあります。他方、方面隊の広報支援部隊などは、可能ならば予備自衛官補制度を利用し、報道関係者等広報業務の経験者を有事の際だけでも助力を受ける方策が欲しいところ。

 この法整備以前は、師団防衛計画等において戦闘地域住民は避難するとの前提がありましたが、行政機構が戦闘等により機能不随となる場合での支援を任務とし、現在師団司令部総務が実施している広報任務の戦時における遂行、法執行機関への連絡任務と孤立地域や非戦闘員退避施設及び集合地域の把握と退避支援、など。

 加えて司法について第一線での用地接収や民生被害の局限化の徹底と第一線状況に関する報道関係への調整と支援、必要に応じ車載拡声器や電子媒体及び広報紙の戦闘地域及びその隣接地域での発行と配布等を担います。一見地味ですし、第一線で有事の際に行う事なのかと問われるでしょうが、情報は重要です。

 社会は情報によって相互行為が成り立ちます、ここが途絶するという事を避けるためには、こうした任務の必要性が大きい、ということ。広報支援任務は、後方地域を担う方面隊と第一線地域を担う師団との区分が重要となりますが、この点については戦闘地域と後方地域の区分をそのまま援用する事が妥当でしょう。

北大路機関:はるなくらま
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陸上防衛作戦部隊論(第十四回):広域師団直轄部隊、野戦憲兵たる師団警務隊の位置づけ

2015-06-29 23:29:30 | 防衛・安全保障
■野戦憲兵
方面隊規模での警務隊の任務と師団の警務隊の役割について前回示しましたが、この続き。

諸外国の野戦憲兵の任務には道路標識の撤去が含まれます、ただ、これは我が国の場合警察が所管する道路標識であり、有事の際にこの撤去などは実施できるのか、微妙なところです。道路標識は、侵攻する敵に位置情報を表示するものであるため、特に冷戦期、西ドイツなどは撤去訓練を行っていました。今日的にはGPS等が普及し意味が無さそうではありますが。

第一線交通統制は第一線部隊に所属する補給支援を行う段列と前線の交通統制支援を行う点で、これは円滑な補給態勢を構成すると共に後方攪乱部隊攻撃への対処が限定的に含まれ、遊撃隊による攪乱攻撃から自衛できる程度の装備、例えば軽装甲機動車等の装備も必要となります。

このほか、第一線部隊の機動には、例えばオートバイ機動により機甲部隊の人口密集地移動に際し、装甲車両部隊に随伴、交差点などで装甲車両通行直前に交通統制を行い、信号機の調整を行う余裕がない際の随伴交通統制を行う必要もあります。こうかんがえると、我が国は専守防衛で国土戦を想定する割には、この種の準備が充分ではありません。

このほか落伍者救出線は、第一線部隊の戦闘行動に際し、特に徒歩機動中に落伍者が生じた際に、段列と前線の間に一定間隔の哨所と巡回線を構築する事で救出出来る態勢を構築するもの。我が国では敵前逃亡は自衛隊法上の扱いが諸外国ほど厳しくはありませんが、これは我が国が例外的というところ。

諸外国では市民権剥奪や無期刑乃至死刑を含む非常に厳しい対応が為されており、落伍者と脱走者を明確に区別する必要があります、この為の制度が憲兵隊による落伍者救出線で、友軍部隊へ保護された落伍者の引き渡しなど、脱走ではなく憲兵に落伍を申告する事で脱走行為と明確に区別するもの。

司令部警備任務は、現在、人員不足から音楽隊までを動員し対応する事としていますが、交通統制と司令部任務は、野戦憲兵の重要な任務、検問や指揮官連絡は的確に行わなければ部隊軌道や後方支援輸送網に影響を与えてしまうため、相応の訓練を受けなければ対処出来ないでしょう。

特に司令部機能が部隊の機動により、機動旅団の任務も機動力を以て展開を繰り返すため頻繁な移動を繰り返すわけですので部隊行動の管理統制という意味で一種重なる分野であるため、応急的な音楽隊による警備に加え専門任務として警務隊を充てる必要性があります。

北大路機関:はるなくらま
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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第九回):練習機を対テロ用COIN機に用いる事例はある

2015-06-28 23:11:52 | 防衛・安全保障
■練習機とCOIN機
練習機について、前回軽攻撃伊としての運用が南西諸島での脅威想定に対処し得ないところまでを検証しました。

現在の練習機の中には、軽攻撃機としての能力を持つものがあり、中にはそれを強調する機体も存在します、これまでに紹介しましたM-346の姉妹機であるロシアのYak-130などは明らかに軽攻撃機としての能力を強調していまして、空対空ミサイルの運用能力は短射程型に止まりますが、火器管制装置の能力は、オプション次第で相当高められるもの。

Yak-130は軽攻撃機としての性能を強調しつつも、あくまで練習機なのですが、搭載する短射程空対空ミサイルの性能は日進月歩ですので、例えばMiG-21のような戦闘機であっても旧式のミサイルを搭載したまま、迂闊に近寄れば返り討ちにする程度の能力があります。もちろん、防空管制支援等の有無と水準も大きく反映するものではあるのですが。

このほかに、大半の練習機は戦闘機や攻撃機というほどではなくともCOIN機、即ちゲリラやテロ組織に麻薬密売組織等の制圧に用いる用途の軽攻撃機ですが、このCOIN機程度の用途には、初等練習機でも転用可能なオプションを備えている例が多いのです。また、逆にジェットではなくターボプロップ方式の低速機のほうがCOIN機のきめ細やかな用途に合致している、という事情もあります。

ただ、COIN機が我が国防衛に寄与するかといいますと、ほぼその用途はありません、対ゲリラ戦用といいますが、我が国は内戦中のような状況にありませんし、国際平和維持活動においてもこの種の航空機を投入する可能背うは無く、更に武装勢力の他特殊部隊対処等国内での所謂グレーゾーン事態などは想定されるものですが、COIN機は携帯地対空ミサイル等に脆弱性を有しており、我が国へ浸透する程度の能力と戦略目標を有する脅威へは、能力不足でしょう。

一応、COIN機のほかに練習機の用途としてジェット機であっても超音速戦闘機と異なる小回りから、低速小型機による自爆テロ対策や、法執行機関を支援しての情報収集の母機として、更に哨戒機よりも速度が速い機種については海洋監視任務に、用いる事は可能である、としてこの種の航空機の多用途性を強調するメーカーもないではないのですが、しかし専用機種である必要性も低いというところ。

軽攻撃機運用を前提とする練習機は、この通りの状況を想定していますので、我が国が想定する航空攻撃任務とは大きな開きがあるのです。特に、南西諸での有事のさいには脅威対象は艦艇に関して高度な防空艦艇を随伴させ、前述の通り南西諸島までを戦闘行動半径に含める戦闘機は高性能、COIN機としての運用が限界となる航空機はなかなか出番が考えられません。

冷戦時代、欧州NATO正面であれば、軽攻撃機アルファジェットが軽攻撃任務を、特にドイツ空軍が想定していまして、確かに当時のソ連地上軍は最高度の野戦防空能力を有していましたが、超低空飛行と多数の分散運用を重ね合わせることで、近接航空支援に寄与する可能性があったのですが、残念ながら欧州にあてはまる要素と我が国南西諸島の情勢、違うものがあるのです。

北大路機関:はるな くらま
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陸上防衛作戦部隊論(第十三回):広域師団直轄部隊、二つの機動旅団を運用する機構

2015-06-27 23:10:18 | 防衛・安全保障
■広域師団直轄部隊案
広域師団が指揮する装甲機動旅団と航空機動旅団、その機構について、直轄部隊はどうあるべきなのでしょうか。

師団は、二つの旅団を隷下に有し、この指揮統制と情報優位に資する部隊を師団直轄部隊として隷下に配置します。これは師団直轄群という位置づけに充て、現在の司令部及び司令部付隊を大きく拡大改編し能力を強化したもの、という形をとります。それでは、装甲機動旅団と航空機動旅団を指揮する師団の直轄部隊について提示してゆく事としましょう。

必要な部隊の要素は、旅団の情報優位を確保し、編成が全く異なる二つの部隊へ指揮統制を行うC4ISR能力を確保するところにありますので、部隊は、“特殊作戦隊”、“警務隊”、“通信隊”、“広報支援部隊”、“無人偵察機隊”、“電子隊”、“飛行隊”、“後方支援隊”、等を師団直轄部隊とします。無人偵察機隊と電子隊は師団情報隊、とすることも選択肢として考えられるところです。

師団司令部については、特に幕僚機構や庶務及び総務の任務は司令部付隊により対応することが出来ますが野戦における情報優位の獲得はどうしても野戦部隊や専門の職種による部隊が必要となり、新設するべき部隊に挙げました。一方で後述しますが、方面隊の業務と師団の業務は、第一線戦闘部隊と後方部隊との戦域区分を以て分担する方策が合理的でしょう。

特殊作戦隊、レンジャー中隊と呼称を変えることができるやもしれません。ただ、情報優位獲得と攪乱や警戒監視任務を主要任務とし、レンジャーの遊撃戦闘を主体とした運用よりも高度な能力付与が求められる点が相違点です。もっとも、米特殊作戦部隊のような国外への潜入や友好国への軍事教育支援等の任務は含まず、レンジャーと偵察隊の中間に当たる部隊を想定します。

防衛出動待機命令や敵特殊戦部隊浸透に伴う治安出動命令の時点で重要施設や緊要地形への空中機動とオートバイ機動により展開し、監視にあたると共に必要であれば攪乱戦闘を展開します。偵察隊と任務の共通性がありますが、斥候班や情報小隊程度の装備で偵察警戒車等の装備は持たず、敵の反応を見て戦力を推し量る偵察任務を任務に含まない為、特殊作戦隊としています。

警務隊、司令部警備任務と第一線及び競合地域における交通統制と部隊展開における支援を任務とします。方面隊の保安中隊とは別に、方面隊の支援を出た第一線付近での任務を想定、更に各国憲兵の任務に含まれる落伍者救出線の構築等も担います。

ここで方面隊の保安中隊と師団警務隊の任務の相違ですが、方面隊の保安中隊は各駐屯地への分遣隊派遣による警務任務を行う点と有事における方面隊の後方での策源地における交通統制等を行う点、特に警務分遣隊は策源地となる駐屯地警備を有事の際にも担うのに対し、師団警務隊は野戦憲兵としての任務を担う点に違いがあります、特に機動運用を行う点が最大の違いといえるでしょう。

北大路機関:はるなくらま
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平成二十七年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2015.06.27-28)

2015-06-26 22:35:48 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 今週末の自衛隊関連行事について。

 北千歳駐屯地創設記念行事、第1特科団と第71戦車連隊等が駐屯する駐屯地で、特に第1特科団は地対艦ミサイルや多連装ロケットシステムを有する野戦砲兵部隊として世界最大の規模を誇ります。訓練展示では長射程装備と90式戦車の協同などが見どころといえるでしょう。

 別海駐屯地祭、第5偵察隊の駐屯地です。少々行きにくい場所ではありますが、かつては普通科中隊なども分駐しており、自衛隊ではかなりの高度装備を集めた第5旅団の隷下部隊、偵察警戒車や軽装甲機動車を主力装備とする偵察隊ですが、旅団隷下の各種装備の展示も行われます。

 島松駐屯地祭、札幌駅から近くの駐屯地で北海道補給処本処と北部方面後方支援隊等が駐屯するほか、実戦部隊としまして第1高射特科群第303高射中隊と第304高射中隊が駐屯しています。後方支援部隊中心で派手な行事ではありませんが、お近くの方は是非どうぞ。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・6月28日:別海駐屯地創設50周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/5d/
・6月28日:北千歳駐屯地創設63周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/1ab/
・6月28日:島松駐屯地創設63周年記念行事・・・www.mod.go.jp/gsdf/nae/nadep/dep.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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陸上防衛作戦部隊論(第十二回):師団を構成する装甲機動旅団と航空機動旅団

2015-06-25 23:01:48 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団と航空機動旅団
装甲戦闘車についての検証と提案を連載してきましたが、ここから戦略単位と作戦単位について。

陸上自衛隊の全ての師団と旅団を二つの種類の機動旅団に改編し、二種類二個旅団を以て一個の大型師団を編成する、師団は一方面を担当する戦略単位であり、二種類の旅団は機動力を重視し空中機動能力と軽装甲機械化部隊の直協を行う旅団と、戦車及び重装甲装備と打撃力を重視し機動打撃を行う旅団とに区分する。

そして機動力を双方ともに度合いの違いの範疇で有する為に、一個師団隷下の二個旅団であっても現在の方面隊管区を一個師団ですべて対応可能な機動力を付与する、方面隊管区と隣接する方面隊管区を自由に起動する為機動旅団、一個師団で広い管区を受け持つため広域師団、という呼称を付与しました。

航空機動旅団と装甲機動旅団、と便宜的に名称を付与していますが、機動力を重視し空中機動能力と軽装甲機械化部隊の直協を行う旅団が航空機動旅団で、第12旅団型の編成に対戦車ヘリコプター隊を付与した編成、若しくは第13旅団型の編成に方面航空隊を付与し戦車中隊を機動戦闘車に置き換えた編成を念頭とするもの。

戦車及び重装甲装備と打撃力を重視し機動打撃を行う旅団が装甲機動旅団で、第11旅団型の編成に戦車中隊を一個増強すると共に方面特科部隊のMLRSを付与し全般火力支援能力を付与した編成、第5旅団型の編成に化学防護隊を特殊武器防護隊へ増強し方面特科部隊のMLRSを全般支援部隊として特科隊を特科連隊とする編成、概略は以上の通り。

旅団を編成し師団を臨時編成する選択肢は一応考えられるのですが、航空打撃力と軽装甲部隊だけでは重装備部隊の着上陸や、所謂粘り強い抵抗線の構築は難しく、戦果拡張に至る機動打撃力が不足します。しかし、装甲機動力を重視し戦車を中心とした旅団との連携が不可欠になるのと同程度に戦車を中心とした部隊を単独で運用するだけでは、緊要地形確保への進出速度が充分ではない。

そこで進出掩護や集結掩護に空中機動部隊程の速力を発揮する事は出来ません。この点から、師団、という戦略単位を常設し対応する必要があり、重ねて臨時編成する運用は有事の際に戦力逐次投入、手近な旅団から順次投入する事で第一線部隊の編制が不均衡なものとなる可能性、連携を十分に練成できない可能性があり、これを無視することが出来ません。

北大路機関:はるなくらま
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協同転地演習開始、中部方面隊師団等転地演習第13旅団主力として北部方面隊管区へ展開

2015-06-24 23:16:29 | 防衛・安全保障
■第13旅団、広島から北海道へ!
 陸上自衛隊は22日より中部方面隊実施の協同転地演習を開始しました。広島など山陽山陰地方から北海道へ部隊が展開します。

 師団等協同転地演習として、今年度は広島の海田市に司令部を置く第13旅団が訓練実施部隊となり、陸海空の機動を以て北部方面隊管区へ展開を開始しました。協同転地演習は、有事の際に陸上自衛隊の全国規模の緊急展開を想定した能力を演練するもので、かつては北海道への侵攻へ本土師団を展開させる北方機動演習と呼ばれていたものです。

 山下総監が訓練統裁官としてあたり、協同転地演習は第13旅団を基幹として、人員2000名、車両600両、航空機10機が参加し展開され、車両には戦車8両と榴弾砲10門が含まれると共に、航空機にはCH-47,AH-1S,UH-1が参加、方面隊直轄部隊等が参加していることを示します。人員2000名といえば旅団の半分以上、戦車は第13旅団には一個中隊のみとなっていますし特科隊も三個中隊基幹ですので半数以上の規模です。

 演習は、22日から来月2日にかけ、陸路機動展開や海上輸送及び空中機動を展開、更に北海道の浜大樹と矢臼別演習場において揚陸と長距離射撃訓練等を実施した上で、復路として来月9日から16日にかけ機動訓練をおこなうもので、長距離機動を演練すると共に併せて北海道の良好な演習場環境を活用するという目的も大きいものでしょう。

 中部方面隊管区には中演習場のみで大演習場が無く、特に第13旅団管内には4両の戦車小隊射撃を行う演習場がありませんので、大規模な部隊機動を行うという意味もあります。北海道の矢臼別演習場はFH-70榴弾砲の14km遠距離射撃が可能です、FH-70はBB特殊装薬を運用する事で35km以上の遠距離射撃が可能ですが、例えば大演習場である東富士演習場でも3kmの射撃まで、北海道の演習場環境は本州ではなかなか整備できません。

 北方機動演習を協同転地演習と改称した点は文字通り、北海道へ本州九州から展開するという冷戦時代の想定から、現代では九州南西諸島への軍事的圧力の増大という情勢変化を受け、北海道からの部隊展開訓練が実施されます。併せて北海道へ本州九州からの部隊展開を行う背景には、特に機動展開能力を向上させ、本州から北海道に当たる距離を展開させる能力を整備し、西方への有事に対処する機動力を整備する目的もあります。

 他方、近年、協同転地演習は中部方面隊と東北方面隊など本州の部隊が主力となっており、九州の西部方面隊隷下部隊は特に北部方面隊からの協同転地演習参加部隊との協同訓練を重視している一方で九州から北海道への師団規模の部隊展開は行われなくなってきました。これは、脅威の西方シフトへ対応し、九州から大部隊を転地させることを避けているようにもみてとれます。

 こうして開始された協同転地演習ですが、有事の際に第13旅団も当然第一線へ展開する想定を示したわけです。ただ、ここで忘れてはならないのは本州九州は第1師団と第8師団の一部、合計2個中隊だけが新型の10式戦車で、残りは制式化より40年以上を経た74式戦車を装備しており、緊急展開を想定する以上、相応の装備を広く近代化し普及させる必要はあるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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現代日本と巡洋艦(第十回):日本の巡洋艦はどういった装備を搭載すべきか

2015-06-23 23:28:01 | 防衛・安全保障
■巡洋艦の兵装
戦力投射と対水上戦闘という部分、我が国が必要とする巡洋艦は対水上戦闘能力が相応に求められるというのが前回の結論でした。

こういいますのも、南シナ海と東シナ海、世界でもっとも水上戦闘艦や潜水艦などが参加する海上戦闘発生の蓋然性が高い海域に国土が隣接しており、海賊対処や漁業権保護に難民対処等に重点を置く一方で、冷戦構造の崩壊後には緊張度が大きく低下し、海上戦闘の蓋然性が低下している諸外国の事例はあまり参考にならない特殊状況にある点を留意すべきでしょう。

対水上戦闘、もちろん実際に展開する場合には主力となるのは護衛艦隊隷下の護衛隊群です。4個護衛隊群、各護衛隊群は、近い将来、いずも型護衛艦二番艦就役と8200t型イージス艦2隻の整備を以て弾道ミサイル防衛に対応するイージス艦2隻と全通飛行甲板型護衛艦1隻を運用する強力な編成を4個もち、編制完結するため、対水上戦闘能力は非常に高いものが期待できます。

戦力投射任務を念頭とするのが、本論での巡洋艦の任務ですが、対水上戦闘などを全く考慮すべきでないか、といわれたらば、そういった単能装備を専用に整備する防衛費の余裕は残念ながらなく、多用途性能が相応に求められます。もちろん、乗員の練度や搭載装備の維持費などをふまえますと、過度に多用途性能を求めることは妥当ではありませんが。

巡洋艦としまして、その任務に戦力投射任務を含める以上、一定以上の船体規模を有し航続距離と長期間の航行能力を付与する点は絶対条件です、こうしますと、視点となるのは速力をどの程度有するのか、そして戦力投射能力を構成する汎用性に航空機格納庫を多用途区画とするとの視点を示していますので、それならば、速力と武装、という部分が起きく左右されるべきものとなる。

すると、搭載兵装をどの水準まで搭載するのか、という視点が必要になります。艦砲を装備の重点としレーダーは警戒監視を主とした多機能レーダーの水準にとどめたうえでRAMなどのミサイルを部分的に搭載するか、Mk41VLSを搭載し各種ミサイルの運用能力までを想定するのか、さらに進みイージスシステムやFCS-3改といった多機能レーダーまでの搭載を想定するか。

艦砲ですが、近年その能力向上は著しいものがあります。射程が非常に大きいものとして、アメリカ製で我が国でも、あたご型ミサイル護衛艦や、あきづき型護衛艦に採用されていますMk45-Mod4などは127mm砲弾が通常弾で37kmへの射程を有するとともにロケット補助推進弾により100km以上の射程を付与させ、対地攻撃能力を強化する研究がなされていました。

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将来航空自衛隊練習機体系への一考察(第八回):南西諸島への経空脅威はSu-27級が基本

2015-06-22 23:27:12 | 防衛・安全保障
■M-346vsSu-27
軽攻撃機としての練習機の限界について、今回も触れてみます。

南西諸島へ脅威対象が展開できる航空機は主として航続距離の大きなSu-27戦闘機及びそのライセンス生産機、少なくとも大陸から南西諸島を戦闘行動半径に含める戦闘機は例外なく中射程の空対空ミサイルを運用する能力を備えている、とみなければなりません。中射程の空対空ミサイルを搭載しないものには爆撃機や攻撃機と、例外がありますが、戦闘機の援護は基本です。

すると、M-346でSu-27に対抗できるのか、という非常に難易度の高い命題がのしかかってくるのです。仮に短射程空対空ミサイルに含まれつつ比較的射程の大きい国産のAAM-5を搭載したとして射程は50kmですが、中射程空対空ミサイルは70kmから100kmの射程を以て攻撃してきますので、完全にアウトレンジ攻撃を受けてしまうでしょう。

もちろん、支援戦闘機の補助、軽攻撃機としての運用をF-15等の戦闘機掩護を前提とした限定したものに限れば、用途は、つまりSu-27へはF-15があたる、という方式で対応するという構図は有り得るかもしれませんが、現用戦闘機は低空飛行する航空機をレーダーにて発見するルックダウン機能が高く、1970年代のように低空飛行で地上からの乱反射に紛れて接近する事は出来ません、特に南西諸島を念頭とした場合は乱反射が限られる海上が舞台となる訳ですから。

基本的にMー346はSu-27に対抗することを考えていません。もちろん、Su-27の行動圏外において例えば非常に設計が古い旧ソ連製Tu-16爆撃機のライセンス生産型などを隣国は主力爆撃機としていますので、巡航ミサイル発射母機として運用される爆撃機へ、こちらを例えば九州北部や本州西部の防空戦闘の支援に限定して用いることならばできるかもしれませんが。

ただ、T-4練習機を念頭に置きますと、爆撃機への対応、仮に空対空ミサイルを搭載できたとして補助戦闘機に使用できるかは難しいところです。例えばT-4練習機はジェット機ですので錯覚しがちですが、巡航速度ではTu-95、所謂ベアと比較し、実は速度で下まわっています。要撃管制の支援下、ミサイルキャリアーとして運用する他なさそう、というところ。

それでもM-346程度の軽攻撃機を防空戦闘へ投入するよりは、性能面ではペトリオットミサイルのような地対空ミサイルのほうが即応性に優れています。巡航ミサイル発射母機として運用されるこれら爆撃機の迎撃は洋上を離れた場所から運用されますので、戦闘空中哨戒を行うなど過酷な運用を強いられます、ここまで過酷な状況は軽攻撃機の任務に本来含まれません。

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陸上防衛作戦部隊論(第十一回):戦車と装甲戦闘車を合わせた需要と防衛用装軌車、戦車生産基盤

2015-06-21 23:10:20 | 防衛・安全保障
■防衛用装軌車の基盤
戦車生産基盤維持、消耗、という視点から前回まで装甲戦闘車の重要性を指摘してきました。

戦車の生産工場、そして戦車の維持部品を供給する下請けの企業、戦車とある程度共通性のある分野の異なる部品生産を需要として提示する事で、汎用品として民生車両に応用できる建機以外の防衛用装軌車両の生産基盤を残し、更に予備部品など有事の際に消耗する戦車の補填、補充部品などを供給できる体制を維持できる基盤を何とかしなければならない、問題の視座はここ。

そこで、装甲戦闘車に関する視点がでてくるわけです。装甲戦闘車は89式装甲戦闘車の派生型であれ、CV-90日本仕様であれ、ASCOD日本仕様であれ、装軌車両であるとともに装甲防御力と機動力を合わせ持つ戦闘車両ですので、もちろん治具は10式戦車とは全く異なるものではありますが、生産基盤はある程度応用がきくものではあります。

例えば89式装甲戦闘車などは末期の生産状況が年産1両という、なにを考えているのかという状況がありましたが、その生産を支えていたのは99式自走榴弾砲に車体を共用していたとともに、90式戦車を生産する生産ラインの隣に装甲戦闘車の生産ラインを平行配置する事ができたためでして、戦車300両体制下ではこの逆の手法を用いる、という視点が今回の提示した概要です。

必要定数、装甲機動旅団の構想は戦車1にたいし装甲戦闘車2の、戦車中隊と2個機械化普通科中隊という編成の機械化大隊を戦力の骨幹とする構想を示していますので、戦車定数を約300両、機甲師団維持の観点から約300両の上限になります350両と戦闘部隊の戦車を見積もっていますが、定数を考えた場合必要な装甲戦闘車は600から700両、となる。

月産5両と年産60両で整備した場合、10年から12年弱にて必要数を充足してしまいますので、月産3両と年産36両とし、更に戦車生産を年産15両から20両とし月産1両以上という最低水準を併せて生産基盤を維持することとなるでしょうが、有事の際、目一杯生産余力を拡充し二倍としたうえで、装甲戦闘車の生産力を戦車に傾けた場合、とても十分ではありませんが、辛うじて形あるものの補充体制は維持できる、条件付きで可能でしょう。

北大路機関:はるな
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