ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.11.7「ワーク・ライフ・バランス推進で備えよう!仕事と介護の両立」シンポジウム参加

2014-11-07 21:16:10 | 日記
 暦の上では立冬の今日は、小春日和の良いお天気になった。週末からはお天気が崩れるというので、今日の日差しは大切に、との天気予報を聞きながら、午後から都心のホールで開催されたシンポジウム「ワーク・ライフ・バランス推進で備えよう!仕事と介護の両立」に参加してきた。
 少し前までは、私にとってのワーク・ライフ・バランスといえば子育てと仕事の両立がクローズアップされていたけれど、年月を経て、予期せぬ治療が大きなウエイトで加わり、ようやく子育てが一段落しそうになったら介護が加わるのも時間の問題ということになっている。
 そんなわけで、つい、こうしたテーマだと聴きに行って少しでも心穏やかに気持ちの準備をしておかなくては、と思う。

 今回は「少子高齢化により介護の担い手が不足しているため、働きながら介護をする労働者が増えています。介護の担い手は中高年層に多く、企業において中堅社員や管理職の立場にある人も少なくありません。突発的に起こる仕事と介護の両立問題に備えるため、ワーク・ライフ・バランス推進について改めて考えてみませんか。」という触れ込み。
 ニッセイ基礎研究所主任研究員である土堤内昭雄氏が基調講演『「仕事と介護」のためのワーク・ライフ・バランス~人も企業も“幸せ”になる働き方』の講師を務め、後半は大成建設株式会社管理本部人事部人材いきいき推進室長である塩入徹弥氏と共同印刷株式会社人事部人材開発課長の新井妙子氏がパネリストを、コーディネーターを土堤内氏が務める、パネルディスカッション『企業事例から見る仕事と介護の両立支援』と続いた。

 土堤内氏は都市計画や建築が専門だが、最近は「幸福」に関する研究をされているという。基調講演では、40分ほどの時間でワーク・ライフ・バランス(以下WLBという。)と幸福度、WLBの意義、「大介護時代」(団塊の世代が後期高齢者になる時代)のWLB、人も企業も“幸せ”になる働き方という4本立てで、コンパクトに分かり易く頭の中を整理して頂いた。
 人口減少時代にある中、世帯数は2019年をピークに増え続けている。特に単独世帯が増えている。単独世帯が3割強、夫婦のみの世帯が2割弱、つまり過半数が1人か2人の世帯である。世帯平均人員は全国では2.42人(2010年)であるが、東京に限っていえば1.99人。家族はもう複数ではない、という指摘に改めて驚かされる。そう、我が家も今や夫婦2人世帯になっているのだった。かつて料理番組のレシピは4人分だったが、今や2人分というのにも頷かされる。
 そんな中、生涯未婚率が2割を超えている。男性に限って言えば25%。4人に1人が配偶者を持たず、けれど(長寿の)親はいる。ということは、親の介護を任せられる人はなく、自らが背負わなければならない。一方、専業主婦世帯よりも共働き世帯が増えている中、妻にだけ仕事も家事も育児も(夫の親の)介護も、では当然手が回らない。男性が介護から無縁ではいられない時代、かつての性別分業はもはや成り立たない時代になっているのである。
 医療の進歩で長い人生を手に入れることが出来たが故のリスクを負う私達は、自らの介護のリスク、親の介護のリスク、更には(長寿でいることによる)経済的なリスクを背負っているという言葉が印象的であった。今や“24時間働けますか”という社会ではなく、“ケア”の社会である、と。 
 現代は、介護、子育て、妊娠・出産、そしてかつて不治の病と言われたがんが治る病になってきたことで治療しながら働く人たち(まさに私もその端くれである!)も含め、(自分を含む誰かを)ケアしながら働くのが当然の時代である、皆が時間制約の中で働く時代である、と定義された。
 聞きながら何度も頷きつつ、ちょっとウルウルしてしまう。やっぱり私、まだ働かせて頂いていていいんだ、辞めなくていいんだ、と。

 年間10万人という介護離職のうち、7割が女性ではあるが、増加率は男性の方が高いという。しかし、介護の4割は必要な時に手を貸すレベルのものであり、終日ケアが必要な要介護4,5は2割だという。そうなる前、要介護1,2の段階を長く維持することで、介護休暇等を取りながら働き続けることが出来るのではないか。
 ケアのために離職することなく、働き続けることで幸せになるためには、働くことを広く考えること、これこそがこれからの企業に求められるテーマではないか。ハタラクという言葉は、自分の周囲を楽にする(傍を楽にする)が語源だそうだ。働きにはお金になる働き(稼ぎ)とそうでない働き(勤め)があり、そのバランスこそがWLBなのでは、と講演を閉められた。

 後半のシンポジウムは、お二人のパネリストが自社の取組事例を報告された後、コーディネーターが幾つかのポイントを掘り下げながら質問され、それにパネリストが答える形で進んだ。ふだん仕事をしていても、なかなかよそ様の企業のことを知る機会はないので、本当に勉強になる。いずこも試行錯誤を重ね、苦労をされながら、知恵を絞って社員の支援をされている。そう、経験豊富で優秀な人材を介護(や育児等)のために手放すということは、企業にとっても決してプラスにはならないのである。

 会場からの質問にも応えて頂きながら、あっという間に終了時間になった。集中してメモを取り続けての2時間半は正直かなり草臥れたけれど、とても満ち足りた気持ちで会場を後にした。
 仕事も治療も家族との時間も自分の時間も、どれか一つでも諦めるのはまだ早い、続けられる限り今の生活を続けたいと思っても大丈夫、と背中を押してもらえた気持ちになった。
 皆が少しでも幸せに暮らせることを素直に祈りたくなる良い1日だった。

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