ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.11.21 ドラマ、文庫、映画~紙の月

2014-11-21 23:24:47 | 映画
 映画「紙の月」を観た。
 以前このブログでも紹介した「八日目の蝉」の時と同様、まずTVドラマを視、原作を読み、映画で仕上げ、というトリプルパターンである。
 本作も私が好きな作家・角田光代さんの原作。

 今年の初め、原田知世さんがヒロインの梨花役で、NHKドラマ化された。「41歳主婦、一億円横領」というキャッチコピー。5回連続だったから、計4時間を優に超えるボリュームだった。早く原作を読みたかったが、文庫が出るまで・・・とじっと我慢して、発売早々買い求め、どんどん加速していく主人公の破滅へのストーリーを一気読みした。
 あぁ、この描写があのシーンだったのか、と思い出しながら。そう、ドラマは今回も実に原作に忠実に作られていた。

 映画「私をスキーに連れてって」であれほど可愛らしかった原田さんが、こういう役を演じるようになったのだな、としみじみ思ったドラマだったが、清楚な彼女だからこそ、そのギャップを堪能出来たのだろう。
 そして今回、7年ぶりの映画主演という宮沢りえさんがヒロインを演じる予告篇を見て、封切りを楽しみにしてきた。

 「紙の月」といえば英訳は“Paper Moon”。かつてあのテータム・オニールが史上最年少でアカデミー賞助演女優賞を受賞したアメリカ映画と同じ題名だ。が、「紙の月」のパンフレットには“Pale Moon”とあった。“蒼い月”だろうか。
 映画の中で、主人公が初めて朝帰りをする時、見上げた空に透き通るように浮かぶ月、なぜか彼女がこれを指でなぞると消えてしまう。青白い三日月よりももっともっと細い月、まさにこの物語を象徴的に表すシーンだった。そう、今から起こることは全て、現実ではない、というような。

 映像は2時間を超えるものだったが、とにかくスピード感に溢れ、私もその展開と一緒に走り切って、エンドロールでは息も絶え絶え・・・という感じだった。主人公の友人たちの描写を交互に読ませる原作とは違い、ひたすらヒロインの生活-銀行と恋人と-に焦点を絞った大胆な作り。原作には登場しなかった女性銀行員2人が、それぞれヒロインに大きな影響を与えることになる。

 それにしても、フランス人形のように可愛かった宮沢さんが41歳になるというのだから、一回り上の私が歳をとるのも当然だわ~、などとどうでもいい感想を持ちながら、彼女の、華奢な体を感じさせない体当たりの演技-ラストはアスリートさながらひたすら走り続ける-に圧倒された。
 どんどん大胆に、そして透き通るほど綺麗になっていきながら、色々なハードルを軽々と超えてしまう、その過程にも目を見張った。
 まさしくコピーどおりの「最も美しい横領犯」!
 恥ずかしながらAKB48の誰が誰だかさっぱり見分けがつかない私だけれど、卒業生であるという大島優子さんもイマドキ(といってもバブル崩壊後、1994年の設定)の若い窓口係という面白い役を演じていたし、勤続25年の古参銀行員を演じた小林聡美さんとヒロインのラストの対決シーンは息苦しくなるほどの緊迫感。彼女の「お金で自由にはなれない」という言葉が重く響いた。

 今回の映像で、日々、他人(ひと)様のお金を数えながら、だんだんお金がただの紙切れに見えてくる、感覚が麻痺していくことに背筋がゾワゾワしてくる。ああ、あの時、内定を頂いた銀行に就職していなくて良かったのかも、などと思ってしまうのである。
 本作は“女”の物語、であるけれど、男性軍もしっかと脇を固めていた。
 ドラマも文庫も映画も、三者三様、どれも愉しめる作品である、と思う。
コメント
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