電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮部みゆき『霊験お初捕物控(二)・天狗風』を読む

2006年01月20日 22時21分02秒 | 読書
出張に持参した宮部みゆきの文庫本『霊験お初捕物控(二)・天狗風』、けっこう速いスピードで読了。日中は歩き回っても朝晩は他に予定もないし、CDで音楽を聞きながらひたすら文庫本を読みまくった。
第1章「かどわかし」、真紅の朝焼けの後に、強風がふき下駄屋の娘がいなくなる。番所では神隠しの線よりも父親の殺害説が強くなり、父親が自殺する。だが、本当に神隠しではないのか。南町奉行・根岸肥前守鎮衛は、夜桜見物にことよせ呼び出したお初と右京之介に探索を命じる。
第2章「消える人びと」、下駄屋の職人2人は奉行所に引っ張られたという。天井からお初に近づくなと警告する声がしたり、「助けて」というおあきの朱文字が浮かんだり、首なし猫の死骸が落ちてきたり、怪奇なことが連続する。真紅の朝焼けの中、強風が吹き、今度は八百屋の長野屋の娘が消えた。便乗して千両箱をゆすり取ろうとした悪党は、一見観音様の姿をした天狗すなわち女の悪霊に首を取られてしまう。なんだか妙な虎ネコも登場、これがなんとも生意気なネコだ。
第3章「お初と鉄」、このネコの名が鉄。お初は鉄の話すことがわかる。鉄は天狗を不倶戴天の敵とみなしている。鉄の働きで、下駄屋の職人たちは浅井屋の蔵に閉じ込められていることがわかり、二人を救い出すことに成功するが、口の悪い生意気な鉄も相当の化け猫だ。源庵先生の見立てで、下駄職人の一人は阿片中毒と判明、どうも浅井屋と因縁があるらしい。
第4章「武家娘」、浅井屋の周辺を探索するうちに吹き矢で襲撃されたり、なにかと怪しい。また、しのと呼ばれる武家娘が持つ、亡くなった叔母の小袖にこめられた執念が、悪霊となっていることがわかる。鉄と和尚と呼ばれる年寄りネコが根岸肥前守鎮衛に会って、お初は知恵と勇気をもらい悪霊と対決、大活劇ののちめでたく大団円となる。

「わたし、きれい?」というのは、昔はやった口裂け女の台詞だったはず。この観音様の姿をした天狗という名の悪霊、やることなすことかなりダイナミックな妖怪だ。これと対決するのだから、お初も相当に気の強いスーパー娘さんだね。鉄というネコのため口が笑える。
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