電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第40回定期演奏会でハイドン、モーツァルト、高田三郎を聴く

2011年07月18日 06時01分00秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団の定期演奏会も、第40回を迎えました。当方、第何回から聴いているのか定かでないのですが、夜間勤務の頃は行きたくても行けなかったのですから、たぶん半分ぐらいではないかと思います。それにしても、2001年4月の第1回から10年。当初からのメンバーである中島さんと倉田さんにも、「遥けくも来つるものかな」という感慨があるようには見えません。あくまでも実践の途上、日々是新なり、という心境かも。

さて、某カバン店でコンパクトなショルダーバッグを選んでいたために、演奏会場である山形県郷土館「文翔館」議場ホールに到着したのは、ヴァイオリンの茂木智子さんとヴィオラの田中知子さんのお二人による Ensemble Tomo's のプレコンサートが始まった頃でした。ミヒャエル・ハイドンによるヴァイオリンとヴィオラの二重奏が、相変わらずチャーミングです。

18時15分頃、今回担当する中島さんのプレトークが始まります。今回は、メンバー交代について説明。新メンバーの今井東子(はるこ)さんは、少し変わっています、と言ってから、いや、性格じゃなくて経歴が、と笑いをとります。千葉大(文)を卒業後、印刷会社に勤務、その後音楽を続けたいと英国に留学、帰国して山形交響楽団のオーディションを受け、昨年入団したばかりだとのこと。なるほど、たしかに変わっていることは確かですが、当方、工学部原子核工学科を卒業して某大医学部に学士入学し、医者になった友人がいますので、大きな驚きはありません。むしろ、音楽が好きだったことに一貫性を見出すほうです(^o^)/
中島さんのプレトークは毎回見事ですが、今回もまた、必要にして十分、簡潔に作曲者と曲目を描き出します。

そしてメンバーが登場。第1ヴァイオリン、中島さんは紺系のグレーのシャツを腕まくりして、黒っぽいプリントのネクタイをしています。第2ヴァイオリンの、注目の今井東子さんは、エメラルド・グリーンのドレスに、髪を後ろにまとめ、すっきり涼しそうです。メガネがとてもお似合いで、ステキな才媛という雰囲気です。ヴィオラの倉田さんは、長袖のカッターシャツにノーネクタイと、エアコンを意識したのでしょうか。チェロの茂木さんは、白ワイシャツに明るいグレー系の斜め格子縞のネクタイといういでたちです。

最初の曲目、ハイドンの弦楽四重奏曲変ホ長調、Op.20-1、「太陽四重奏曲」というあだ名のついている曲です。中島さんの解説によれば、食卓の音楽という位置づけにあった弦楽四重奏曲を、自立した音楽ジャンルとして確立した曲とのこと。第1楽章:アレグロ・モデラート、第2楽章:短いメヌエット。第3楽章:厳粛な気分に情感がこもる、アフェットゥオーソ・ソステヌート。そして第4楽章:フィナーレはプレストで演奏されます。私は、新メンバーではじめて聴いたことになりますが、山Qの音楽に、しなやかさが加わったように感じました。

そしてモーツァルトのオーボエ四重奏曲ヘ長調、K.370 です。オーボエ独奏は、同じ山響団員の斎藤真美さん。空色がかったうすい緑色と言えば良いのか、表現に困りますが、硫酸鉄(II)の微結晶のような色のドレスで登場です(^o^;)>poripori

第1楽章:アレグロ。いきなりオーボエの突き抜けた音から。木管が一本入ると、それだけで室内楽は空気が変わります。快活なモーツァルトです。強い音も弱い音もたいへん美しく、ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→オーボエと渡されて、アンサンブルに。第2楽章:アダージョ。弦が奏でる悲しげな音にオーボエの長い音が加わり、情感が強まります。うーん、いいなあ。最後のオーボエの超高音も難なく決まりました。第3楽章:ロンド、アレグロ。輪舞的なリズミカルな面はやや後退しますが、音楽をしっかりと表現。実演を聴くと、この曲のオーボエの高度な難しさが、あらためてよくわかります。齋藤さん、さすがです。

ここで、15分の休憩です。この間に、次回、10月9日の第41回のチケットを2枚、購入しました。妻の都合も聞きませんでしたが、たぶん大丈夫なことにして(^o^)/



休憩時の写真に、お客様が写ってしまっていましたので、ちょいと Gimp でキャンバス地ふうに加工してみました。これなら、ご本人以外は、たぶんわからないでしょう(^o^;)>

後半は、高田三郎の「山形民謡によるバラード」から「幻想曲」で始まります。解説によれば、高田三郎の友人の奥さんが、山形県の、現在の庄内町にの出身だとか。奥さんがおもしろい子守歌を歌うんだと聞いて友人のところに行き、この元歌を知ったのだそうです。その歌詞が、なんと、「やろててははは てんにんだとよ やろまたてんじょうさ ゆきたから うらのささぎを てぐるばし」(お前の父母は天人だということだ。お前も天上へ行きたいなら、裏の笹薮を探しなさい、そこに羽衣が隠されているから)というものだそうな。
この曲は、1913年生まれの作曲者が27歳のときに書いたそうですので、1940年ということになります。もうすぐ太平洋戦争が始まろうという頃です。中島さんのブログに、作曲者の高田三郎の言葉が紹介されています(*1)が、諸外国の音楽シーンについての情報が入らなくなる頃の、半ば諦めの気持ちも入った自覚なのかも、と思いました。

曲は、ヴィオラとチェロから始まり、ヴァイオリンが加わる形でスタートします。ヴィオラが、民謡風の味わいのある旋律を奏でます。これを1st-Vnが繰り返し、さらにチェロに移行します。1st-Vnが、やや異なる旋律を示し、ヴィオラがピツィカートする中で、ヴァイオリンとチェロが無調ふうな、しかし民謡風な旋律を奏でます。幻想曲と名づけられてはいますが、悲歌ふうな印象も強い音楽です。聴衆から、思わず「ブラ~ヴォ!」の声がかかります。

最後は、モーツァルトの弦楽四重奏曲第16番、変ホ長調K.428 です。言わずと知れたハイドンセット中の名曲。第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ。第2楽章:アンダンテ・コン・モト。第3楽章:メヌエット、アレグロ。第4楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。たいへんな集中力が感じられる演奏で、ここはもう、ひたすら聴き惚れました。チェロの茂木さんが、縁の下の力持ち的な活躍で、しっかりと役割を果たしていたのが印象的でした。

そして、盛大な拍手に応えて、アンコールは同じモーツァルトの「狩」の第4楽章。これも良かった~(^o^)/

新メンバーを迎えての再スタートとなった第40回定期演奏会、大いに楽しみました。他のメンバーのニコニコ笑顔に比べると、今井さんの表情には、まだ緊張がありあり(^o^)/
回を重ね、ステキな笑顔が自然にこぼれるようになると、さらに落ち着いた音楽の愉悦感が現れてくるのでは、と期待しているところです。次回は10月9日(日)、楽しみです。

(*1):山形Q練習40-vol.12~「中爺通信」
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