電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

陳舜臣『聊斎志異考~中国の妖怪談義』を読む

2011年07月27日 06時04分02秒 | -外国文学
清朝期に流行した、蒲松齢『聊斎志異』は、学生時代に教養の講義で「中国文学」をとり、そこで紹介されたのがきっかけで親しむようになった、いわば中国の「妖怪モノ」です。岩波文庫に上下巻で入っており、何度も読み返して楽しんでおります。それとともに、作家が自分のお気に入りのお話を選び、短いコメントを添えた形の、陳舜臣『聊斎志異考~中国の妖怪談義』が中公文庫に入っているのを見つけましたので、さっそく購入しておりました。多忙な日常の中でも、一晩に一話ずつ読み進めると、怪異譚の中にも、大人向けのお色気あり、はたまたほろ苦い微苦笑あり、これはまた実によろしいですね(^o^)/

第1話 美しき狐
第2話 侠女
第3話 幽霊なんかこわくない
第4話 公孫九娘
第5話 西湖公主
第6話 幽霊屋敷の人たち
第7話 阿英という女
第8話 霍女変幻
第9話 雲蘿公主
第10話 神女
第11話 黄英とその弟
第12話 錦瑟と春燕

意外にもリアルなのは、人間以外の女性、実は狐や冥界の存在なのですが、これと交わっても子ができない、というあたりです。中国ではすでに DNA が発見され分子遺伝学が普及していたわけではありません。たぶん様々な種間交配の知見が、こうした観念を生んだのでしょう。物語では、てっとりばやい解決として人外の妻が人間の妾を探してきて子を生ませることが多いのですが、このあたりは、なんとも男性社会の価値観です。でも、中には強烈な妻を恐れる恐妻家の話も出てきますので、実際の姿はそれほど単純ではなさそう(^o^)/

『聊斎志異』本編へのコンパクトな導入として、好著だと感じました。

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