電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『残月~みをつくし料理帖(8)』を読む

2013年07月08日 06時02分00秒 | 読書
角川春樹事務所刊の時代小説文庫に収められた人気シリーズ「みをつくし料理帖」の最新刊、高田郁著『残月~みをつくし料理帖』を読みました。なんだかんだといいながら、第八巻まで読んでしまった、文字通りハマっている読者です(^o^)/

第1話:「残月~かのひとの面影膳」。吉原の大火で、あさひ太夫を救いだして命を落とした又次をしのび、一ヶ月後の「三方よしの日」には精進料理を出すことにします。「つる家」の客がつけた名前が「面影膳」というのですから、うまいものです。今後の伏線であろうと予想されるのが、摂津屋の登場でしょうか。
第2話:「彼岸まで~慰め海苔巻」。玄関番をつとめていたふきが、又次の仕込みのおかげもあって調理師見習いに昇格し、りうが玄関番を兼ねて呼び込みをするようになります。この章では、一柳の柳吾の協力で、芳の息子、佐兵衛が失踪した事情が判明します。
第3話:「みくじは吉~麗し鼈甲珠」。登龍楼からの呼び出しに、澪は出かけていきます。話の中身は、吉原の新店に澪の腕がほしいとのことでした。厚かましいスカウト話に、澪は「四千両」と啖呵を切ります。登龍楼の采女宗馬は、来月の18日と期限を切って、吉原で商うに相応しい料理を考え出してみよ、と賭けに誘います。どうしてそんな賭けに応じなければならないのかよくわかりませんが、澪はそれに応じてしまいます。玉子の黄身を味噌とみりん粕に漬け込んだ「鼈甲球」は、味の正体を采女宗馬に暴かれることはありませんでした。
第4話:「寒中の麦~心ゆるす葛湯」。大阪天満一兆庵のご寮さんだった芳の真価は、一流料亭「一柳」の主・柳吾にはよくわかりました。また、看護の際にも様々な気配りを見せたことは、店の者たちにもよーくわかりました。柳吾が芳を後添いにと望むのは理解できます。房八の時には全く考えもしなかったけれど、柳吾ならばと芳の気持ちも動いたようです。澪の行く先にも少しずつ変化が現れてきているようです。



主な登場人物から小松原さま=小野寺数馬が消え、物語は仕切り直しに入ったようです。戯作者の清右衛門の役割が、はじめのうちは理不尽な客の代表みたいだったのが、しだいに味の判定者に変わり、次には野江の身請けの方策を示す方向指示の役割を果たすようになり、ポケモンなみに進化しています。きっと、作者のお気に入りのキャラクターに昇格してきているのでしょう(^o^)/

【追記】
本書中に、誤植というか、たぶん誤変換を一つ見つけました。p.147の12行目、

× 主人公が奉行人に背かれ
○ 主人公が奉公人に背かれ

でしょう。珍しいミスです。
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