電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

有川浩『植物図鑑』を読む

2013年07月10日 06時08分27秒 | 読書
幻冬舎文庫で、有川浩著『植物図鑑』を読みました。本物の植物図鑑なら、子供用から家庭用まで何冊か持っています。巻頭のカラー・グラビアは、我が家の周辺によく見かける植物ばかりです。ジャクリーン・ケリーの『ダーウィンと出会った夏』のように、リケジョ(理系女子)と植物の話なのかなと思ったら、さにあらず。まことにベタな、若い男女の恋愛物語で、その場面設定に、野草を料理し食べる話がうまく使われているのでした。

主人公のOLは、河野さやかといい、飲み会の帰りに、マンションの玄関先の植え込みで行き倒れの若い男を見つけます。

「行き倒れてます」
「お嬢さん、よかったら、俺を拾ってくれませんか」
「咬みません。躾のできた良い子です」

と頼まれて、思わず部屋に上げてしまいます。本当は、酔っ払った頭と目で見た若い男がけっこうイケメンだったから、というのが理由のようですが、お礼にと作ってくれた味噌汁とタマネギのオムレツの朝ご飯に胃袋をキューッとつかまれた、という理由もあったようです。OLによくあるらしい、「ご飯を作ってくれる人がほしい」にピッタンコ適合する、イケメン、器用、礼儀正しく人畜無害、料理が上手な若い男を見つけてしまっては、手放すのが惜しい。そこは、恥も外聞もかまってはいられません(^o^)/

というわけで始まった品行方正な同棲生活。これはもう、ほとんどのメニューが精進料理のようなベジタリアン生活で、「肉食系男子」ではなさそうではありますが、それでも若いイツキ君にとっては月山の山伏修行や高野山の百ヶ日修行なみの苦しさだろうと思いますね~(^o^)/
でも、予想通りそこは自然の成り行きで、実に順当な結果となりますが、突然の失踪と突然の帰還は予想外でした。

著者の作品は、『三匹のオッサン』シリーズを読んだだけですが、実はこういう恋愛小説の名手なのだそうです。なるほど、今まで私の守備範囲に入ってこなかったのも無理はない、まことに大甘でベタな話でした。でも、数十年前を思い出せば、こんな感性を持っていた時代もあったなあと、思わず遠い目になってしまう作品でもありました。

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