電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第230回定期演奏会でメンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」等を聴く

2013年07月22日 06時03分11秒 | -オーケストラ
土曜出勤の翌日、貴重な日曜休日は、早朝からサクランボ収穫後の防除からです。朝食の後は頭からシャワーを浴び、午前中に夏季剪定した枝を焼却処分して汗をかき、一休みして午後から出かけました。行先は、もちろん山形テルサホール、山形交響楽団第230回定期演奏会です。指揮は、藤岡幸夫(Sachio Fujioka)さん。

演奏会本番前のプレトークが興味深かった。山響定期を振るのは四回目という藤岡さん、親友である飯森範親さんが、合唱団「山響アマデウス・コア」を「奇跡だ」とあまり褒めるものだから、「本当かよ?」と信じていなかったのだそうです。ところが、今回はじめて共演してみて、もうびっくり!これは間違いなく日本でナンバーワンの合唱団だと大絶賛です。リップサービスのうまい藤岡さんの言葉ですので、文字通り受け止めてよいのかどうか不安はありますが、ナンバーワン・クラスの合唱団に成長していると考えて大喜びすることにいたしましょう(^o^)/



さて本日のステージは、「ドイツ・ロマン派の礎」と題して、オール・メンデルスゾーンの特集プログラムです。

(1) 序曲「フィンガルの洞窟」Op.26
(2) 序曲「美しいメルジーネの物語」Op.32
(3) 交響曲第2番 変ロ長調「讃歌」Op.52

前半の序曲の楽器編成は、向かって左から1st-Vn(10)、2nd-Vn(8)、Vc(6)、Vla(6)が指揮台を取り囲みます。Vla の後方に Cb(4)が並び、弦楽セクションは 10-8-6-6-4 という編成。正面後方の木管セクションは、前列がFl(2),Ob(2)で、その後方にCl(2),Fg(2)が位置し、金管セクションは、左手奥にHrn(2),右にTp(2)、そしてTpとCbの間にTimpが陣取ります。ステージ最後方には合唱団が登る台が設置され、ちょっとベートーヴェンの「第九」のような雰囲気です。本日は、客演コンサートマスターに永峰高志さん、2nd-Vnにも平尾昌伸さんが客演で首席に座ります。

第1曲目:序曲「フィンガルの洞窟」、第2曲目:序曲「美しいメルジーネの物語」は、いずれもメンデルスゾーンらしい佳曲です。とりわけ、木管楽器の使い方がうまいと思います。たとえば「美しいメルジーネの物語」は、木管楽器で始まり、ヴィオラがそっと支える役割を果たしています。また、演奏のほうでも、木管楽器を突出して目立つようにはせず、少しだけ浮き彫りになるようなバランスにしていました。

あっという間に休憩。後半は、本日のメインとなる「交響曲第2番"讃歌"」です。

交響曲第2番「讃歌」は、トロンボーン3本による始まり、しかも一本はバス・トロンボーンのもよう。うわ~、カッコイイ!オルガンが低く響いて、このあたりは通奏低音を模した(意識した)のでしょうか。トロンボーンの主題は「とーてもイイヨ~」と聞こえます。これに対して、低音の木管の音は、なんて惚れ惚れしてしまうんでしょう。弦とフルートが一体となって奏されるあたり、ほんとにきれいです。消え入るようなクラリネット・ソロの後に続くところは、本当に優しく美しく素晴らしい。あ~、これがメンデルスゾーンの素顔なのだな~と思います。
何度か繰り返される主題は、どうしても「ハッコネノヤマハ、テンカノケ~ン!」と聞こえてしまいます(^o^)/
ヴァイオリン独奏が静かに消えて、Obを除く木管と弦が美しい旋律を奏でます。フルートも、オルガンの音を模したような響きを背景にしています。メンデルスゾーンは、木管の使い方がほんとにうまいと感じます。さらりと、でも印象的。高橋さんと鷲尾さんのファゴットの響きも、いいなあ。静かに第1部が閉じられます。

合唱団が登場する間に、オーケストラはチューニングをします。三人の独唱者が拍手で迎えられ、第2部が始まります。

第1曲、合唱の出だしから、すでに心を奪われました。2曲目、半田美和子さんのソプラノ・アリアと女声合唱。第3曲は、テノールの高橋さんによるレツィタティーフとアリア。第4曲、男声合唱に女声が加わり、混声合唱になります。第5曲、ホルンソロにオーケストラが続き、半田さんと馬原裕子さんによるソプラノ二重唱。ホルンと弦楽がずっと寄り添いますが、ここは実に美しい!そして大きく合唱が盛り上がって、再びソプラノの二重唱、そして合唱。思わずゾクッとします。
小休止の後、第6曲、テノールの高橋淳さんのアリアとレツィタティーフ。ソプラノが「夜は過ぎ去った」と宣言すると、Tb,Tpが再び輝かしく鳴り響きます。第7曲、合唱。「光の武器を手に取ろう」と歌う、実に輝かしい合唱。光の武器と言っても「スターウォーズ」のライトサーベル(?!)とは違うと思いますが(^o^)/
第8曲、合唱、アカペラで。なんと素晴らしい響き!オーケストラが入ってくるまで聴き惚れ、オーケストラが入ってくるとさらに聴き惚れて、という状態です。第9曲、テノールが立ち、ヴィオラとチェロ、コントラバスをバックに歌います。これにファゴットが加わり、さながら低音楽器の饗宴ですね。さらに、ソプラノにはヴァイオリンとフルートが加わり、華やかさを添えます。テノールとソプラノの二重唱。弦とフルートとファゴットをバックに、透明感のある響きです。
第10曲、最終合唱は男声から始まります。「諸国の民よ、主に栄光と力を捧げよ!」と歌います。「Danket dem Herrn und Ruhmt seinen Namen~」のところ、フーガですね。オーケストラもフーガ、合唱もフーガ、若いメンデルスゾーン君、お見事です。トランペットが鳴り響き、ティンパニが、オルガンが、トロンボーンが、そして再びバス・トロンボーンが「ハッコネノヤマハ、テンカノケ~ン!」を奏し、合唱が続いて「ハレルヤ!」を歌い、全曲を閉じます。

いや~、素晴らしかった!滅多に聴けない曲だからという興奮もありますが、なんといっても演奏の素晴らしさに大興奮です。ホルンの深々とした響きにも魅了されましたし、ほんとにいい演奏会でした。参院選の開票速報で放送時刻が早まった大河ドラマ「八重の桜~鶴ヶ城開城」の出だしを観られなかった残念さを軽く忘れさせてしまうほどの、素晴らしい演奏会でした。



終演後の交流会では、本日の指揮者・藤岡幸夫さんが得意のリップサービスを連発しながらも、お客さんの入りが今ひとつだったことに苦言を呈しておりました。たしかに、これはいささか残念なところですが、妻も公的な役割が割り振られていたようで、選挙の投票日当日の演奏会であることを考えれば、私一人で行くしかなかったというのは致し方ない現実だったでしょう。



むしろ、三人のソリストの皆さんが、合唱の素晴らしさ、レベルの高さと、山響の演奏とをそろって激賞していたのが印象的でした。ソプラノの二重唱の素晴らしさとともに、急遽代役を果たしていただいた高橋淳さんの心意気を感じたところです。

コメント (4)