電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

昔の事務所の様子はたしかにこんな風だった~高度成長以前のオフィス

2013年08月08日 06時04分03秒 | 手帳文具書斎
当ブログには、「手帳文具書斎」というカテゴリーがあり、パーソナルな事務を中心とした記事を連ねておりますが、事務用機器やツール類が参考になるという理由で、オフィスの歴史にも興味を持っております。その点では、昔の事務所の様子~腕カバーをした事務員とそろばんとペンと帳簿~の再現展示は、たいへん興味深いものです。

山形県郷土館・文翔館は、国指定重要文化財であり、大正初期の石造建築としても貴重なものです。昭和末に修復されたものですが、室内の飾り天井の漆喰の見事さなど、思わず感嘆してしまいます。何度訪問しても見飽きることのない素晴らしいものですが、今回は少々違う角度から、常設展示の中でも特に興味深い、「昔の事務所」風景をご紹介しましょう。



事務所の一角では、主任らしい男性事務員が黒い腕カバーをしてソロバンに向かっています。課長と思われる年配の男性が、万年筆を手に、和服の女性事務員から話を聞いている、という情景です。昔と言っても、課長が真ん丸眼鏡をかけ、女性事務員が和服を着ているのですから、おそらくは大正~昭和初期くらいかと思われます。





机上には、赤とブルーブラックらしいインクびんと吸い取り紙があり、ペン立てには数本の鉛筆と付けペンが入っていて、鍵のかかる印箱がのっています。机上には帳簿が広げられ、本立てには関係帳簿一式が並んでおり、木製の未決箱と既決箱には、文書が入っている、という風景です。



現実には、通帳や印鑑などが入っていたと思われる、革製の出納バッグが机上に放置されることはあるまいと思われますが、幼い頃に眼にした農協や役所の風景が、ちょうどこんなものでした。小学生の頃、同級生のお母さんが農協の事務員で、鉄ペンやガラスペンにいちいちインクを付けて書かねばならない煩わしさを嘆き、万年筆の便利さを話していた記憶があります。昭和30年代、まだ元気だった祖父が、万年筆で日記や葉書を書いているのを、羨ましく眺めていた、そんな時代でした。

さすがに昭和30年代には、女性事務員も洋服を着て働いていましたので、この風景とはいささか違いますが、でもどこか懐かしさを感じるものです。

ちなみに、これは旧知事室。



そして、こちらが旧山形県庁・文翔館のサイドビューです。



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