電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第231回定期演奏会でサリエリ、ディタースドルフ、ブルックナーを聴く

2013年08月12日 20時55分08秒 | -オーケストラ
お盆の日曜日、孫たちがまだ寝ている早朝のうちに果樹園の消毒を済ませ、30度を超える日中はぐったりとダウン、午後からエアコンのきいた車で出かけました。出かけた先は、もちろん山形テルサホール。本日は、山響こと山形交響楽団第231回定期演奏会、2日目のマチネで、「夢の街、おお、ウィーンよ!」と題する演奏会の曲目は次のとおりです。

(1) サリエリ:歌劇「ファルスタッフ」序曲
(2) ディタースドルフ:ハープ協奏曲 イ長調、ハープ:内田奈織
(3) ブルックナー:交響曲第1番 ハ短調 (ウィーン版)

恒例になっている、音楽監督・飯森範親さんのプレトークでは、ディタースドルフについては、ステージ上の配置変更の際に話すこととし、サリエリとブルックナーの曲について解説しました。また、東日本大震災に遭遇した東北の二つのオーケストラがどのように対応したかを描いた、工藤一郎著『つながれ心、つながれ力』(芸術現代社)についても紹介。この本は、前回の山響定期で購入しておりますが、たいへん興味深いものです。



第1曲、サリエリの歌劇「ファルスタッフ」序曲の楽器配置は、正面左から、第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(6)、第2ヴァイオリン(8)、正面奥に、フルート(2)とオーボエ(2)、クラリネット(2)とファゴット(2)、ホルン(2)とトランペット(2)、一番奥にコントラバス(3)、金管の右にバロックティンパニ、というものです。男性楽員の皆さんは、いつものオーソドックスな服装ではなくて、黒のシャツで上着なしの「クールビズ」簡略スタイルです。でも音楽は簡略ではなく明瞭なもので、例えばファゴットを大きく鳴らし、これにオーケストラが答えるというように、ユーモラスな性格が感じられます。当ブログでもサリエリの「フルートとオーボエのための協奏曲」のCDを記事にしています(*1)が、わかりやすく、聴きやすいものでした。

ここで、ステージ上の配置が変更されます。指揮台の左隣にハープが置かれ、楽器編成も Ob(2),Hrn(2),弦楽は 6-6-4-3-2 の5部となります。
この間を利用した飯森さんの解説によれば、このハープ協奏曲は、もともと1779年に作曲されたチェンバロのための協奏曲だったのだそうで、これを K.H.Pillney(1896-1980) がハープの特性を充分に発揮出来るように編曲したものなのだそうです。

さて、そのハープ協奏曲ですが、スラリと長身の内田さんはピンクのドレスで、飯森さんは指揮棒なしで登場です。
第1楽章:アレグロ・モルトは、序奏の後にハープが始まります。典雅に見えて内容的には充実したアレンジです。ホルンに続き、オーボエにステキな旋律が。独奏ハープに寄り添う弦楽部は繊細に。第2楽章:ラルゲット。編成を小さくした効果が現れる、優しい緩徐楽章です。後半は、内田さんの見事なカデンツァに魅了されました。続けて第3楽章:アレグレットに移ります。典雅なロンド形式のフィナーレです。

15分の休憩の後、いよいよブルックナーの交響曲第1番です。楽器の配置は、第1ヴァイオリン(10)、コントラバス(4)に増強され、10-8-6-6-4 の弦楽5部に、Fl(3),Ob(2),Cl(2),Fg(2),Hrn(5),Tp(2),Tb(3),Timp という編成。Tbのうち1本は大型のバス・トロンボーンみたい。飯森さんは再び指揮棒を持ち、第1楽章:アレグロを開始します。山形テルサホールのすみずみまで、山響のブルックナー・サウンドが響き渡ります。第3番、第4番、第5番、第6番、そして第7番と演奏してきた経験が生きて、後年の作品と比較するとナマの旋律が露出する第1番の、はじめての演奏会体験です。第2楽章:低弦とホルンにより開始されるアダージョ。ブルックナーらしい神秘的な厳粛さは、この作品でもじゅうぶんに聴くことができます。第3楽章:スケルツォ(活発に)~トリオ(ゆっくりと)。全休止に続く展開もすでに出来上がっている、ブルックナーのスケルツォです。第4楽章:フィナーレ、動きを持って、火のように激しく。全休止の後に、フルートとオーボエなど管楽器の響きが、コントラバス等の低弦と対比されます。このへんの透明感や音色感は、ちょっとオルガンを思わせます。全体の響きの中で、少しずつ和声が変化していく様子が、実にブルックナーです!

本日は、客演コンサートマスターの田尻順さんやハープの内田奈織さん、ほか客演で演奏していただいた皆さんのおかげもあって、素晴らしいブルックナーの生の演奏を聴くことができました。本当に幸せな時間でした。

(*1):サリエリ「フルートとオーボエのための協奏曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2009年10月

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