電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『香乱記(三)』を読む

2014年02月05日 06時03分31秒 | -宮城谷昌光
新潮文庫で、宮城谷昌光著『香乱記』第三巻を再読しました。季桐を救出するため忍び込んだ臨済の城を舞台に、物語は始まります。

「斉王の席」
臨済の城は、二十万の秦軍に囲まれ、魏王とともに田横らは脱出の機会を失います。斉王・田憺の率いる斉軍が救援に向かいますが、秦の章邯の自在な用兵に敗れ、田憺は死亡し、臨済の落城は必至となります。魏王は自らの命と引き換えに吏民の助命を願い、開城しますが、田横らは追跡を逃れ、博陽に達します。秦への反撃は楚と連合して行われることになります。

「天旋地転」
楚軍は項梁が率い、秦軍は章邯が率いています。この対決は、田横の進言によって司馬龍且が東阿の塁を攻撃したことから動きだし、項梁の楚軍が勝ちをおさめますが、項梁は油断を突かれ、斉王を嗣いだ田市はどうも王の器ではないようです。そして、ここからは項羽と劉邦の名がひんぱんに登場することになります。

「輝く星」
趙高の独裁のもとで、李斯が死に、岸当が田横のもとにやってきます。しかし、孤軍で奮闘する秦将・章邯は、二世皇帝に復命するよりも項羽と和睦する道を選び、楚の傘下に入ります。末期状態の秦では、章邯の違背に驚き慌てますが、趙高は皇帝を欺くことのみを考え、現実への対応は全くなされません。

「秦の滅亡」
父・扶蘇の仇として皇帝を狙う蘭は、上林苑で狩りを行う皇帝・胡亥を狙います。そうしているうちに趙高が謀反を起こし、さらにその趙高を後嗣の秦王嬰が暗殺します。扶蘇の子・蘭が女であったことを初めて知った田横は驚きますが、自分が蘭に敬慕されていることはまだ気づいていないか、または情勢がそのような状況にない、ということでしょう。



主人公は田横ですが、実際には田横を中心にして時世が動いていくという意味での主人公ではなく、楚漢戦争前夜、帝国秦が倒れるという時代の変転に、必死で従っているといったところでしょうか。

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