電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

NHKの金曜時代劇「蝉しぐれ」の脚本はやはりすぐれていた

2014年02月10日 06時01分16秒 | -藤沢周平
NHK-TVで2003年に放送された金曜時代劇「蝉しぐれ」は、今なお再放送の要望が絶えず、要望に応えて何度も再放送されている名作ドラマです。これは、藤沢周平の原作が優れており、作者の代表的な名作であることに加えて、主人公・牧文四郎を演じた内田聖陽ら、配役陣の好演が大きいと思いますが、どうもそれだけではなさそうだと思うようになりました。

先にDVD3巻で一挙連続視聴した「腕におぼえあり」も、同じ藤沢周平作品であり、主演の村上弘明も共演の役者さんたちも、それぞれに持ち味を発揮し、おもしろく楽しめる作品に仕上がっていると感じました。しかし、同じNHK-TVの連続時代劇作品ではありますが、「蝉しぐれ」と「腕におぼえあり」の二作を並べてみると、「蝉しぐれ」のほうには、香気というか、緊張感・密度感のようなものを感じます。その原因を考えてみると、やはり脚本の違いに行き着きます。

「腕におぼえあり」のほうは、原作にない登場人物と原作にはないエピソードを加えて二回も水増し(^o^;)しておりますが、「蝉しぐれ」のほうは、秘剣村雨を伝授し、お福さまと赤子を守って逃げ込む先となる加治織部正という人物を省略し、秘剣伝授は師匠から、逃げ込む先は間宮中老に一本化することでストーリーを単純化したものの、そのほかはおおむね原作にきわめて忠実な形で脚本が作られています。

「蝉しぐれ」の脚本を書いた黒土三男氏の、原作『蝉しぐれ』への傾倒とこだわりは明らかで、多くの制約の中でも原作の香りを最大限に尊重した結果と言えましょう。原作を尊重する手つきは、勝手に切り刻むのではなく、まさに「白手袋をして事にあたる」といった風情であり、「蝉しぐれ」の脚本は、やはりすぐれたものであったのだなと、あらためて感じました。おそらく演出の意図も同じだったと思われ、名作ドラマができあがった所以であろうと思われます。

写真は、久々にドカッと降った新雪に点々と残るアホ猫の足跡。裏の畑に続く道を、いったいどこへ行ってきたものやら(^o^)/

コメント (2)