電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上〜貴族院外伝・1年生』を読む

2018年12月13日 06時02分28秒 | -香月美夜
香月美夜著『本好きの下剋上』シリーズは、主人公の本好き残念少女マインが、その魔力の大きさを見込まれて領主の養女ローゼマインとなり、大活躍(?!)する話です。本編では、基本的にローゼマイン視点で語られることが多いのですが、この11月に発行されたばかりの別巻『貴族院外伝』は、全編が主人公以外の他者視点で描かれます。そのため、ローゼマイン視点ではあまりピンとこなかった出来事が、実は周囲にはどう受け止められていたのかがわかり、興味深いものがあります。

貴族院の一年生の期間に限定して、大領地ダンケルフェルガーとのディッターや、ローゼマインが途中で帰還してしまった間の残された者たちの奮闘・てんやわんや、あるいは他領の視点から見たエーレンフェストの産物など、描く視点が違うと「なるほど、こう見えるのか」というあたりが面白い。

それだけでなく、ひたすら強さを求める外見詐欺の残念美少女アンゲリカの神殿におけるエピソードなどは、読者の心に訴える面があるのではなかろうか。
アンゲリカは、代々の側仕えの家系に生まれたけれど、理解力が不足し、家族からは細やかな気遣いができない不出来な子としてみなされて育ったようです。側仕えではなく騎士となる道を選び、ひたすら強さを求める理由が「勉強がキライだから」というのですから、なんとなく共感する人も少なくないのでは(^o^)/
落第寸前のところをローゼマインに助けられたために、ローゼマインに心底傾倒し、護衛騎士の役割を果たすことを重視しています。そのアンゲリカが、神殿の平民である灰色巫女や灰色神官たちの中に居場所を見つけるところが、童話のように切なく微笑ましい。

さて、本編は第四部「貴族院の自称図書委員IV」へ続きます。シリーズはまだ全体の半ばくらいでしょうか。
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