関とおるの鶴岡・山形県政通信

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慰安婦像問題、問われているのは日本の政治

2017年01月10日 | 政治全般
 9日(月)韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦問題を象徴する少女像が設置されたことへの対抗措置として、駐韓大使等が一時帰国しました。
 今日NHKが報道した世論調査によると、この措置を「評価する」が50%、「評価しない」が9%、「どちらとも言えない」が32%ということでした。
 日本の政治と国民が大事な事を問われているのではないかと、つらつら考えました。

 「不可逆的に解決」すると合意した内容を履行しない韓国がおかしいと見えるのでしょうが、多くの方が判断材料としているマスコミの報道が非常に貧弱、或いは事実を歪曲していることがこうした世論をつくっているのではないかと思います。

 日韓合意は日本の首相が、「改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に心からおわびと反省の気持ちを表明」し、外務大臣が「当時の軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、日本政府は責任を痛感している」と表明し、日本政府が韓国の財団に10億円拠出するなどしたものです。
 ところがその後日本政府は、国連女性差別撤廃委員会に「軍や官憲による、いわゆる強制連行ではなかった」などとする報告書を提出、「性奴隷という表現は事実に反する」などと主張して、同委員会で各国から厳しい批判を受けています。
 そして、こういう主張と行動が、自民党や維新の党等の少なくない国会議員によって日常的におこなわれています。
 山形県議会でも自民党が慰安婦問題を否定する意見書を数の力で採択(H27年9月。私が反対討論)、日本がおこなった戦争を美化する質問も繰り返されています。
 このような主張をはびこらせたままで、「10億円払った」ことを強調して「合意を守れ」などと主張しても韓国国民の納得はもちろん、国際社会の理解は到底得られないでしょう。
(内田樹さんがルモンド紙の報道を紹介しておられました。http://blog.tatsuru.com/2017/01/08_1049.php)

 そもそも、国民の間に、慰安婦問題を事実とする認識、侵略戦争であったという認識がどの程度行き渡っているのでしょうか。
 毎日新聞が日韓合意に先立つ8月におこなった「戦後70周年」特別世論調査では、「日本が米国や中国などと行戦った戦争(第二次世界大戦)が間違った戦争だと思うか」という質問に、「間違った戦争だった」という回答が47%、「やむを得ない戦争だった」と「わからない」がそれぞれ24%だったと報じていました。
 さすがに「間違い」という認識が多数ではありますが過半数にも届いていません。
 政府による学校教育の歪曲などによって、戦後70年経過して今なおこういう到達にとどまっているのです。

 元々、韓国政府が合意しただけで、韓国国民が自らの思想に基づいておこなっている像の設置をやめさせることができるなどと考えることに無理があります。
 像の撤去は、日本国民の大勢が自国の歴史を正しく認識し、侵略された国の国民感情への理解に基づく謝罪の思想を醸成し、その上に立って、両国の友好が深まっていった時に初めて実現するものではないでしょうか。
 いや、そういう日本になった時には、像は「撤去」ではなく、韓国国民の自発的意志によって領事館前などからは移され、歴史的遺産の一つとしてしかるべき場所に展示されることになるのではないかと思います。

特定非営利活動法人 言論NPO・東アジア研究院が2016年7月におこなった、「第4回日韓共同世論調査 日韓世論比較結果」が重要な示唆を与えます。特に、「5-1.歴史問題に関する日韓両国民の認識」 http://www.genron-npo.net/world/archives/6313.html