眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

100万回

2024-05-04 | 
空が高かった頃のお話
 白色の浮雲が青い空間を遊泳し
  浮き輪に掴まりながら空気の波に流される午後
   僕らの肥大した想像力は
    残暑の熱気で気球を草原から飛び立たせる
     やがて気球は地上から離陸し
      混沌とした思考から乖離する
       猫があくびをし
        人々がグラスを掲げて乾杯した

        蝉の声が鳴り止まない
         神社の階段に座り込み
          はっか煙草に灯を点けて
           ビールを飲む
            麦藁帽子を被り
             さんだるをぱたぱたとさせた
              気球が遊覧する
               Tシャツのジム・モリスンが微笑む
                ストレンジ・デイズ
                 知覚の扉

         図書室で貸し出された本達
        「100万回生きた猫」を眺めていた
       100万回生きれたら
      僕等は100万回泣くのだろうか?
     生まれ変わりが本当なら
    また地上に於いて
   混乱し路に迷うのだろうか?
  100万本の煙草を消費するのだろうか?
 
 残暑の午後
白い壁と白いシーツの病室で
 点滴がぽたりぽたりと時を刻む
  まだ三才の男の子はじっと歯を食いしばっている
   僕はベットの端に座り
    絵本を読んだ
     物語が終わると
      少年は不安そうにこっちを向いた

       ねえ、もう一回読んで。

       僕は絵本を最初から音読する
        繰り返し繰り返し音読する
         100万回読み聞かせる
          面会時間が終わるまで

          お外は暑いの?

          空が青いよ。
           僕が君くらいの頃には空はもっと高かったけどね。

          アイスクリーム食べたい。

          だめだよ。かわりにキャンディーをあげるからさ。

         僕等はレモンキャンデーを舐めながらくすくす笑った

        どうして洋服の叔父さん怒っているの?

       ジム・モリスンの顔に興味深々だ

      たぶん世界の不条理に怒っているんだよ。

     ふ~ん。笑えばいいのにね。

    僕は苦笑いした

   そうだね。

  ねえ、もう一回読んで。

 いいよ。

僕は物語のねじを巻き最初から世界を再構築する


  呆気ない出来事
   空の話
    病室の窓の風景
     調整された室内温度
      蝉の鳴き声

       少年は眠ってしまった

        僕は物語を読み続ける

         君が起きたら

         君が起きたら 

       いっしょにアイスクリームを食べようね


      

              

    

  
                   
コメント (2)
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