今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。(2020.5.9)
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全世界の裏RPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。
新型コロナウイルス、全世界の感染者数は365万人を超えました。
死者数は、25万6000人。
感染者数が一番多いのは、アメリカ。
120万人を突破しています。
死者数は7万人を超え、これも世界一。
1か月前(4月7日)、私はダイヤモンドオンラインに、
「米中「コロナ情報戦」は米国の圧勝か、中国共産党が今後迎える危機」
という記事を書きました。
@まだ読んでない方は、こちらからご一読ください。
その中で、
<米国は、いつの間にか、感染者数世界一になってしまった。
4月3日時点で、感染者数は24万人、死者は5000人を超えている。
恐ろしいことに、感染者も死者も、どこまで増えていくかわからない。
経済的打撃も、リーマンショック後の08~09年を上回ることは確実だ。
破産、倒産が日常化し、町は失業者であふれることになる。
国民の怒りは普通なら、為政者であるトランプに向かうだろう。
しかし、トランプは言う。
「これは、私の責任ではない。
中国政府が、初期の段階で情報を隠蔽したことが今の惨状の原因だ。
我々は、中国政府の責任を厳しく追及していく」と。
こうして彼は、見事に責任を中国に転嫁することに成功する(「転嫁する」というか、事実であるが)。>と書きました。
そして、トランプは、「予想通り」に動きはじめました。
4月28日 AFP=時事。
<トランプ氏はホワイトハウスでの会見で、「われわれは中国に不満だ」「状況全体について不満だ。なぜならウイルスの発生源で(感染を)止めることができたはずだからだ」と述べ、「素早く食い止められたはずだし、そうしていれば世界中に拡大しなかったはずだ」と強調した。>
これ、どうでしょうか、皆さん。
トランプさんは、「中国で新型コロナウイルスが発生したこと」について批判しているわけではありません。
中国政府が情報を隠蔽したために、世界中に広まったことを非難しているのです。
客観的に考えれば「その通り」でしょう。
2020年の春節は、1月24日から30日でした。
中国がWHOに「新型コロナウイルス」について報告したのは、2019年12月31日です。
1月13日、タイで感染者確認。
中国以外に、感染が拡大しはじめました。
1月22日、23日、WHOは「公衆衛生上の緊急事態宣言」を出すかどうかの会議を開きました。
テドロス事務局長は、宣言に反対した。
「中国から圧力がかかったのではないか?」との疑惑が浮上しています。
同じ1月23日、中国政府は、武漢市を封鎖しました。
封鎖前に、数百万人が脱出したという情報もあります。
少なくとも、この時点で中国政府は、新型コロナウイルスが「大都市を封鎖するほど危険な存在」であることに気がついていた。
にもかかわらず、翌24日からはじまった春節で、中国人が大挙して国外に出るのを許した。
これで、一気に世界中にウイルスがばらまかれることになった。
このことは、専門家でなくても想像できます。
1月30日、春節最後の日、WHOは「公衆衛生上の緊急事態宣言」を出しました。
もし、1月22日にWHOが緊急事態宣言をしていれば?
中国政府が、春節時の外国への渡航を禁止していれば?
パンデミックは防げたのではないでしょうか?
これ、時系列で振り返ってみれば、「明白な事実」であるように思えます。
トランプは、さらにいいます。
<さらに、中国に「責任を負わせる方法はたくさんある」と述べ、「知っての通り、われわれは非常に重要な調査を行っている」と続けた。>(同上)
「責任を負わせる方法」とは何でしょうか?
<最近ドイツの新聞が、新型コロナウイルスによる経済的損失に対して中国がドイツに賠償金1650億ドル(約18兆円)を支払うべきだとする論説を掲載。
これについて、米国も同様のことを検討するか問われたトランプ氏は、「それよりももっと簡単なことができる」とコメントした。
「ドイツは検討しているし、われわれも検討している」「米国はドイツが考えている金額よりもはるかに高い額を話し合っている」と明かし、最終的な金額はまだ決定していないが、かなりの額だと述べた。>(同上)
要するに、トランプさんは、「中国に賠償金を払わせよう」と考えている。
その額は、18兆円よりはるかに多い。
新型コロナウイルスで、アメリカ経済がこうむった金額を含むと、莫大な額になるであろうこと、容易に想像できます。
アメリカのGDPは、ざっくり20兆ドル(2200兆円)。
新型コロナウイルスの影響で、たとえばGDPが5%減少した。
「これは中国のせいだ」ということになると、賠償の額は110兆円になる。
もし、GDPが10%減少したなら、賠償請求額は220兆円になる。
「・・・・・そんなこといっても、中国は払わないでしょう。請求する意味あるんですか?」」
こう考える人がほとんどだと思います。
もちろん、中国政府は、責任を認めることも、進んで賠償に応じることもないでしょう。
しかし、アメリカには、「強制的に賠償金を徴収する手段」があります。
たとえば中国は、アメリカ国債を約1兆ドル(110兆円)保有している。
これを、「帳消し」にすれば、「GDP5%減少分の賠償金」に相当しますね。
「・・・・そんなバカなことしないでしょう」普通はそう思います。
もちろん、私もアメリカ政府がそうする可能性は低いと思います。
ですが、アメリカ政府はこれまで、「経済制裁の一環として、〇〇国のアメリカ国内資産を凍結する」ということをしています。
たとえば、戦前、戦中、日本の資産も凍結されました。
2014年3月のクリミア併合後、アメリカは、対ロ経済制裁の一環として、「アメリカ国内にあるロシア資産の凍結」を実行しています。
順番でいうと、
1、アメリカ政府は、新型コロナウイルスと経済的打撃について、中国政府に賠償を請求する
2、中国政府がこれを拒否する
3、アメリカ政府は、「では中国保有の米国債で払ってもらう」と宣言する
こうなると、中国も、もちろん報復にでるでしょう。
中国国内にあるアメリカ企業の資産が差し押さえられる可能性がでてくる。
トランプさんは、「別に構わない」と思うかもしれない。
企業に、「アメリカに戻ってきて生産しろ!アメリカ人を雇用しろ!」と。
ここに書いたこと、現時点では、「ファンタスティックな想像」に過ぎません。
ですが、トランプさんは「有言実行」の人。
かなりの確率で、中国政府に莫大な賠償金を要求するでしょう。
中国政府は拒否するので、米中関係はさらに悪化します。
中国に賠償金を求める動きは、全世界に波及する可能性があります。
世界には、中国から借金している国がたくさんある。
それらの国々は、
「うちの国でも、感染者、死者がたくさん出た。経済的打撃も計り知れない。だから、中国からの借金は、返済しません。逆に賠償金払え!」となるかもしれない。
そうなると中国は、「不良債権の山を抱えて破産」ですね。
繰り返しますが、
ここまでの話、現時点では「ファンタスティックな想像」にすぎません。
しかし、今は「誰にも想像できなかったことが起こる時代」です。
年初の時点で、誰が新型コロナパンデミックを予想できたでしょうか???
---owari---
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