[東京 22日 ロイター] -
個人投資家の外国為替証拠金取引(FX)が活況を呈している。新型コロナウイルス懸念による大きな相場変動が収益期待を高めていることに加え、在宅勤務の広がりも顧客のすそ野拡大につながっているという。最近人気の投資先はメキシコペソだ。
<4月取引高は前年比倍増、勢い衰えず>
金融先物取引業協会によると、会員54社を通じた4月の取引金額は513兆円と、2008年の統計開始以来4番目の規模となった。過去最大となった3月の1015兆円からは減少したが、前年比では倍増。3カ月連続の取引増は17年秋以来のことだ。
3月の取引高は、これまで最大だったスイスフラン・ショックの15年1月に記録した660兆円の倍近い規模だった。この数年ほとんど動きのなかったドル/円が突然動意を見せ、1─3月の値幅が上下11円と、米トランプ政権が発足した16年10─12月以来の大きさに達したことが主因だった。
このため、4月は反動減を想定する声が大勢だった。実際、対円相場の中で最も取引量が多いドル/円は3月から54%減少。ポンド/円は45%減、豪ドル/円は36%減と軒並み大きく減少した。
しかし、前年比で見ると様相は異なる。ドル/円は3月の5.3倍に続き、4月も2.7倍。豪ドル/円は3月が4倍増で4月も1.5倍増となった。最近人気のメキシコペソに至っては、額が小さいこともあるが、3月が29倍、4月は17倍と大幅な増加となった。
<在宅業務の合間に相場チェック><iframe id="google_ads_iframe_/4735792/jp.reuters/business/article_4" title="3rd party ad content" name="google_ads_iframe_/4735792/jp.reuters/business/article_4" width="694" height="133" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" data-google-container-id="9" data-gtm-yt-inspected-341207_491="true" data-load-complete="true"></iframe>増勢を支える主因は、根強い相場変動期待にある。市場が落ち着いてきたとはいえ、ドルの年初来変動幅はすでに上下11円を超えた。昨年は年間で過去最低の8.3円、瞬間的な変動だった1月のフラッシュ・クラッシュを除くと実質的には5円程度だったことを考えれば、値幅取りが狙えそうな機会は増している。
そうした環境下、在宅勤務を始める人が急増したことも、取引増にひと役買ったという。「オフィスでは行いづらい日中取引を、業務の合間に行う余裕が生まれた」(証券)ようで、ある大手FX会社の口座開設数は「3月ほどではないが、4月も3─4割は増えた。間違いなく在宅勤務が効いている」(幹部)という。
金先協会によると、会員各社の4月入金額は合計で2152億円。月間で歴代7位の巨額資金が投じられた。過去最大となった3月の4602億円と比べても、余韻が十分に残る水準だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジストの植野大作氏は「最近の顧客増でFX取引高はしばらく増加基調を維持するだろう。個人の活発な売買は潤沢な流動性を供給し、平時の値動きを抑制する一方、大手投資家が持ち込む巨額売買の影響をも薄めている」と指摘。個人は円相場の極端な値動きを抑制する「ビルトイン・スタビライザー」のような役割を果たしていると話す。
<今や昔のトルコリラ人気>
物色先にも変化が表れている。取引量が多く注目度も多いドル/円が一番人気であることに変わりはないが、対新興国通貨ではここ数年人気を集めていたトルコリラが次第に後退、代わってメキシコペソの取引が増えてきた。
人気のポイントは政策金利の高さ。メキシコ中央銀行は今月14日に政策金利を0.5%引き下げたが、その水準は5.5%と依然高い。1ペソ=4円前後という相場水準の低さも、投資金額を低く抑えられる利点となる。<iframe id="google_ads_iframe_/4735792/jp.reuters/business/article_5" title="3rd party ad content" name="google_ads_iframe_/4735792/jp.reuters/business/article_5" width="694" height="133" frameborder="0" marginwidth="0" marginheight="0" scrolling="no" data-google-container-id="a" data-gtm-yt-inspected-341207_491="true" data-load-complete="true"></iframe>
一方、トルコでは、高インフレと通貨安防衛のため一時24%だった政策金利は、エルドアン大統領がチェティンカヤ中銀総裁(当時)を更迭して以降、1年も経たないうちに8.25%まで急低下した。経済はリセッション(景気後退)入りがほぼ確実で、リラは現在も過去最安値圏で底ばいだ。
トルコ政府は最近、日英中などに通貨スワップ協定を要請した。市場では、外貨準備が枯渇し国際通貨基金(IMF)へ支援を要請する可能性をいぶかる声も出ている。
(編集:青山敦子)
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